二次創作小説(映像)※倉庫ログ
- Re: ボカロ曲sストーリー【ハウトゥー世界征服】 ( No.2 )
- 日時: 2016/05/12 20:15
- 名前: シロマルJr. ◆o7yfqsGiiE (ID: 4qcwcNq5)
- 参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no=11083
2.
HRが終わり、生徒達も散り散りに帰って行く頃には、空はさっきより少し暗くなっていた。
グラウンドを一丸となって走る運動部員達、脱離前でお喋りを交わす女子生徒など、さぞ青春を満喫して
いるであろう者達の姿が、アヤトの目に次々と入り込んでくる。
「冬って…本当に日が沈むのが早いな……」
白い吐息交じりに、そんな独り言を呟いた。
冬は日没が早いという当たり前の事も、今は何故か気にかかってしまう。
「よし、僕もそろそろ帰ろう」
そう思って振り返ると、もう教室にはアヤト以外の人間はいなかった。
あれだけ賑やかだったのに、今となるとこんなにシンと静まり返ってしまっていた。
腕時計で時刻を確認し、机の上に置いたままのバッグを手に取り、足早に教室を出ようとしたーーーー
「よぉ〜水澤、遅かったじゃねぇか?」
ふと、扉の向こう側から男の声が聞こえた。
そこには、まるで親しい友人をずっと待っていたかのように、4・5人の男子生徒が立っていた。
彼らの顔には見覚えがある。確か3組の生徒達だったはず。
ほとんどの輩が髪を染め、カッターシャツをズボンから出して、不良のようななりをしている。
「………ごめん」
何か嫌味を言われるのが嫌だったので、とりあえず謝っておいた。
まぁ、今日もどうせ期待なんてしていなかった訳だが。
また今から、いつもみたいな邪魔事が起きてしまうのだろう。
「まぁいいや、今日も一緒に帰るよな?水澤クン♪」
その不良男子の1人が、笑顔でアヤトを連れとして誘った。
そう、笑顔で。何か良からぬ事を企んでいそうな、不敵な笑みを口元に浮かべて。
「う……うん」
これから本屋に行って、新発売の小説を買いたかったのだが、"これ"を断れば、後々どうなるか分からない。
「よし、じゃあ早く行こうぜ!なぁ!」
彼らの中でも一番背が高く、リーダー的存在の生徒が、アヤトの肩にグッと手を回した。
そのままリーダー男子が先頭を歩き、後の4人が後ろをついて行く。
アヤトは彼らの嬉々とした笑い声に紛れて、ぎこちない笑顔を浮かべる。
そうして6人は、教室を離れて、駅までの道のりを辿って行った。
駅まで行く途中、アヤト達6人は街の国道沿いを歩いていた。
リーダー男子がアヤトと肩を組んで、残りの者達と楽しそうに話をしている。
「つーかさ、数学の吉田マジうざくね?」
「何なんだろうなあいつ、あのムカつくハゲ面ぶん殴ってやりたいわ」
「あはは、それな〜!」
この時間帯、仕事帰りのサラリーマンとか、保育園のお迎えをする主婦など、多くの人がここを通りかかる。
そんな中、6人はこうして街の雑踏を歩いていく。
でも、誰1人彼らの事を気にかけない。気にかけようがない。
万が一気にかけても、「ああ、友達同士仲良くふざけ合って楽しそうだな」程度にしか思わないであろう。
真ん中で肩を組まれている少年が、まさかこんな目に遭っていようとは、思いもしないのだろう。
しばらくすると、人の多い国道とは打って変わって、人気のない小さな路地に入った。
すると誰かが
「何かさ、みんな喉渇かね?」
と、ふと思いついたように言い出した。
思えばこの一言が、すべての悪夢の始まりだったのだ…
「あ、俺も俺も!」
「言われてみれば渇いたよな〜」
それに便乗するかのように、他の者も沸々と続く。
「誰か買って来てくれる人、居ないかなー?」
「居ないかなー、5人分の飲み物買って来てくれる優しい人ーーーー」
その言葉が出た瞬間、5人の視線が一斉にアヤトに注がれる。
彼らが言わんとしている事を、アヤトはこの一瞬で全て察してしまった。
「なぁ龍太、優しいアヤトなら買って来てくれるんじゃね?」
1人がそう呟いた。龍太というのは、5人の中のリーダー男子の事だろう。
「そうだな、じゃあ優しいアヤトに頼んでみるか!俺にはコーラ頼むな」
龍太と呼ばれた男子が、アヤトの顔を覗き込んで言った。
「あ、じゃあ俺ファンタグレープで!」
「何となくカフェオレ飲みたい気分だな〜」
「ウーロン茶よろ」
「……炭酸以外なら何でも」
みんな好き勝手に、自分の飲みたいものを次々と注文してくる。
呆れるを通り越して、半ば諦めてしまっている自分が存在した。
こんな日が……もう何日も続いてしまえば尚更だ。
「いや……でも僕ーーーー」
「あ?何、どうしたの?」
自分で精一杯反抗したつもりだが、そんなせめてもの言葉も、龍太の強気な姿勢によって、
呆気なく潰されてしまった。
「……ううん、何でもない」
ついには彼の剣幕に押され、黙り込んでしまう始末。
「買って来てくれるよな?俺達友達だもん……な?」
龍太に真下から顔を覗き込まれ、アヤトは完全に戦意喪失してしまった。
「……じゃあ、買ってくる」
アヤトは力無く龍太の手を払い、とりあえず近くの自動販売機に向かって歩き出した。
自販機なら、確かここまで来るまでに何台かあったはずだ、そこに買いに行けばいい。
大丈夫、買ったら終わりなんだ…買ったら………
「じゃ、気をつけてなー!」
命令した本人達は、呑気に手を振りながら、アヤトを見送る。
あんなに乾いた「気をつけて」は何度もある。それも全て彼らからの言葉だ。
アヤトはみんなのジュースを買いに、一番近い自販機を目的地として、歩を進めた。