二次創作小説(映像)※倉庫ログ

Re: ボカロ曲sストーリー【ハウトゥー世界征服】 ( No.6 )
日時: 2016/07/02 16:41
名前: シロマルJr. ◆o7yfqsGiiE (ID: 4qcwcNq5)
参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no=11083

お久しぶりです。
ちょうどテストが終わったので、溜まった分しっかり書きたいと思います!




4.

辺りはもうすっかり暗くなり、夜風が吹いていた。
ただでさえ寒くて堪らないこの時期の夜風。先ほど龍太によって、コーラをペットボトル1本分かけられた
アヤトには、地獄な事この上なかった。
コーラが制服に染み込んで、風邪が吹く度に冷えるのなんの。
アヤトは打ち震えながら、駅のホームに向かって歩き出した。

「くそっ、何で僕がこんな目に……」

そっと呟いてみたものの、答えなんて見つかるわけも無い。
あいつらはーーー龍太達は、アヤトの事を面白いオモチャにしか思っていないのだろう。
オモチャは人に使われるもの。
そう考えたら、そういう事を考えるの自体無意味なことなのかもしれない。

しばらく歩いていると、少し街灯らしき物が増えてきた。街の大きな場所に出たのだろう。
アヤトは、ただひたすら前だけを向いて、歩き続けた。
何人かの会社員、他の学校の生徒何人かが彼の方を向いたが、声をかける者はいない。
それどころか、すぐに目を背けたり、ヒソヒソ話をしたり、汚物でも見るかの様な目で、何の気にも留めず
素通りをしていく輩ばかりだ。
…まぁ、そんなものだろうと思っていたが。

前にも言った通り、彼らはたった1人の哀れな少年のことなんて、気に留めていないのだ。
酷い目に遭っていると思っていないのか、定番の見て見ぬ振りをしているのか。
恐らくこの2択だろう。いずれにせよ酷い選択肢だが。
アヤトはこんな感覚には慣れている。最近はあいつらといつも一緒に帰宅しているのだから。
別にこれでいい。誰かに助けて欲しいなんて思っていない。そんな期待もできない。
ただ毎日の様に続く拷問に、少しでも耐えて、その場をやり過ごして生きられればいいのだ。


20分ほど歩いただろうか。今や街の中心となっている駅に到着した。
階段を上り、改札を通って、ホームで自分の乗る電車を、寒さに震えながら待った。
時刻表の横の時計は、もう6時に差し掛かろうとしているところだ。
腕時計を見ると、5時半のところで針が止まっている。コーラで濡れて壊れてしまったのだろう。
錆びれて使えなくなってしまうのも、時間の問題と言っていいだろう。

この時計は小学4年生のときに母が買ってくれて、どこへ行くにもこの時計を付けていった。
買って自分の手に渡ったときは、ピョンピョン飛び跳ねて喜んだことを、今でもはっきり覚えている。
それ故に、この腕時計にはそれなりに愛着がある。
だが、それはほんの思い出に過ぎない。今の現状では、その様な思い出話を思い出す暇もない。

アヤトのように、毎日崖っぷちに追い込まれている者なら尚更だ。

待っていた電車は、5分ほどで来た。
マフラーに顔を埋め、ズボンのポケットに手を突っ込んだ状態で、電車に乗り込もうとした。
その時ーーーーーー







……………く……いの…かよ……………!







「………!?」
空耳だろうか?どこからか突如耳に入り込んできた声に、アヤトは肩をビクッと反応させる。
立ち止まって周りを見回すが、声の主らしき人物は見当たらない。
声が掠れていて聞こえなかったが、何か大切な事を訴えているかも、アヤトはそう感じた。

「あの…乗らないんですか?」

ふと何者かに肩を叩かれて、ハッと我に帰る。
振り返ると、ホームを巡回していた1人の駅員が、申し訳なさそうに尋ねていたところだった。

「あ、す…すみません」

「いえ、別に大丈夫ですよ?」

アヤトは駅員に頭を下げ、慌てて電車に乗り込む。
それと同時に、

「出発進行ー!」

と、電車内の車掌が前を指差して言った。1両目の車両のドアがゆっくりと閉まる。
やがて、音を立てて電車が出発した。

ーーー辛く苦しい、永遠に逃れられない明日へと。











ちょうどその時、ホームの柱からアヤトの乗った電車を凝視していた、怪しい人影がいた。
……が、その電車が見えなくなると、興味なさそうにどこかへ歩いて行った。



彼の左手首には、錆びれて使い物にならないような腕時計が、きっちりと付けられていた。