二次創作小説(映像)※倉庫ログ
- Re: プリキュアラブ ( No.12 )
- 日時: 2016/07/08 12:58
- 名前: モンブラン博士 (ID: EBP//tx7)
二〇分ほど経った頃、表のインターホンがなったので、私は部下に構うことなくルンルンと鼻歌を歌いながらスキップで玄関に向かい、その扉を開ける。
そこにはニコニコと天使のような笑顔を向けたゆうこちゃんの姿があろうかと思ったが、私の目に飛び込んできたのは赤い髪に整った顔をした美青年だった。
それは忘れもしない幻影帝国幹部のプリキュアハンター、ファントムだった。
だが以前と異なる点がある。彼はいつもの白いコートにガントレット、タガーを装備した恰好ではなく、白シャツに黒いズボンというかなりラフな服装をしているということだ。
そして驚くべきことに、その両手にはおおもりご飯の幕の内弁当が握られていた。
なぜだ? なぜゆうこちゃんではなく彼がこの場にやってきたのだ。
あまりに予想外な出来事に思考がついていかないでいると、彼がようやく口を開いた。
「なぜ、お前がここにいるんだ……モラン……!」
「訪ねたいのはこっちのほうだよ、ファントムくん。なぜゆうこちゃんではなくきみが配達を担当しているのだね」
「俺は幻影帝国が壊滅した後ミラージュ様と別れ、大森家に居候兼見習いとして働いている。
昼間はゆうこは学校に行っているから俺の担当なんだ」
「幻影帝国最強の幹部として世界の恐怖とミラージュへの愛を受けていたきみが弁当屋の見習いになるとは、世の中不思議なものだね」
「……全くだ」
「そうだ、ついでだから伝言を頼もうか。今夜、おおもりご飯に夕食を食べに来ると彼女に伝えてほしいんだけど、できるかな?」
「……わかった、ゆうこに伝えておこう」
「助かるよ、ファントムくん」
終始笑顔でやりとりをし弁当を受け取り代金を払って部屋に戻った私であったが、そのはらわたは煮えくり返りそうだった。
幻影帝国の幹部時代から私はキュアハニーことゆうこちゃんのことが好きだった。しかし敵同士であるため告白はできない。それを自覚していたため、最後の一戦を超えることなく幾度も対決したライバル関係で彼女との距離は進展しなかった。
それなのにあのファントムはあろうことか彼女とひとつ屋根の下で暮らしているとは、同じ男として嫌でも対抗意識を燃やさずにはいられないではないか。それほど関係が近いのであれば、無愛想でミラージュ一筋だった彼も、ゆうこちゃんの可愛らしい容姿や優しさ料理の腕前に惚れて、鞍替えするかも知れない。
そうなればただの常連客に過ぎない私と家族の一員としてカウントされているであろうファントムのどちらに軍配が上がるかは明らかだ。
「こうしてはいられんな」
「モラン様、いかがされましたか。それから、幕の内弁当は食べないので?」
「ああ、いや……ちょっと考え事をしていてね。でも冷めて弁当の味が落ちては困るから早く食べようか」
「それがいいでしょう」
「では、いただきます!」
私は手を合わせてゆうこちゃんの愛が籠っているであろう幕の内弁当をかきこんだ。