二次創作小説(映像)※倉庫ログ
- Re: 刀剣乱舞、始めよう【オリ刀剣募集】 ( No.47 )
- 日時: 2016/11/04 22:12
- 名前: 藍紅 ◆jqzZxVcA6Q (ID: n6vtxjnq)
- 参照: 序章 歴史修正主義者を狩る者達 第二話
手当ての終わった少年たちは、抜丸に礼を言った後テントを出た。
見えるのは荒れ果てた大地と傷付いた仲間たちだけだ。
変わっていてほしかった、と言えばそうだが、変わるはずもない。
切刃は乾いた瞳で変わらない景色を眺めていた。
「切刃、大丈夫か」
「応答。平気だ」
「そっか?ならいいけどさ。あんま思いつめんなよ」
「不服。分かっている。お前に言われるまでもない」
「何を!?」
「微笑。冗談だ」
「お前って奴は……」
「感謝。お前の言葉は俺の心の支えになっている。大丈夫だ」
「……そっか」
雷切はふわり、と切刃に笑顔を見せる。
切刃も少しだけ笑って見せた。
切刃と雷切の回復に気付いたのか、小烏丸が二人へと声をかけた。
「二人とも。手当ては間に合いましたか?」
「返答。この通りだ。傷は痛むが、手当てを受けたからな。損害は少ない」
「俺も切刃と同じ感じ」
「そうですか」
小烏丸はほっ、と肩を撫でおろした。
この場を仕切る総隊長である故、心を落ちつけられないのだろう事が見てとれた。
だが、その安堵もつかの間だった。
息を切らしながら、姫鶴がこちらへ走ってくる。
ぶんぶんと手を振り、おーいと叫んでいる。
「姫鶴?どうしたのです?」
「質問。姫鶴、何があった」
「あのね、あのね、ハバキ隊が何人か居なくなっちゃったみたいなの」
「怪訝。あのハバキの部隊が?」
「うん、そうなの。どうしたらいい…?」
姫鶴はいつものようなふわふわとした口調を忘れたかのように必死に言葉を紡ぐ。
雷切は落ちつかない様子であたりをきょろきょろと見まわして、
「なぁ、ハバキ隊は犠牲がなかった部隊なんだよな」
と、小烏丸に問いかけた。
「えぇ、そうですけど……無事に、とはいかなかったんです。一番怪我は酷かったのもハバキ隊で、」
小烏丸はそこまで言いかけて、ばっと自身の両手で口を押さえた。
気付いてしまったかのように。
「……ハバキがあぶねえ。切刃、姫鶴、手を貸してくれ。小烏丸はここに居ろ。俺達で見回ってくる」
「分かりました。……気をつけて。ご武運を」
雷切は切刃の手を引き、姫鶴と声を掛け合って走り出した。
あてはない。だが、行かねばならない。
「ハバキ!返事してくれハバキ!!無骨!国重!村雨!蝶丸!痣丸!!何処に居るんだ!!」
雷切が吠えるように言葉を叫ぶが、虚空に消えるだけだった。
「捜索。ハバキ、ハバキ、何処に居るんだ、ハバキ」
普段大声を上げない切刃も、声を張り上げていた。
「皆、何処に居るの!?ねぇ、僕らを見失っちゃったの!?」
姫鶴も必死に叫んでいた。
返事は一向に聞こえない。
「おい、これ……やばいんじゃないか……」
「警告。この先は森だ。まだ明け方だからいいが、もう少し日が昇れば獣も起きてくるだろう。これ以上は手負いの俺達では無理だ」
「でも、ハバキ達がここにいるかもしれねえだろ!?」
「思案。…………」
「おい、切刃!!」
「……返答。深追いは禁物だ。戻ろう」
「ふざけんなよ……ハバキ達が、この森に居たらどうすんだよ。見捨てる気か」
「否定。そうじゃない。」
「だったらどうなんだよ!!」
ぐいっ、と、雷切が切刃の胸倉をつかんだ。
切刃の鉄火面は剥がれることなく、無表情のまま、淡々と切刃は続けた。
「憤慨。人数を集めてから、数で抹殺する。一匹残らずだ。ハバキ達が居れば、皆助かる。そうだろう。戦は戦闘力だけで決まるものじゃない」
「………わーったよ。お前のいうとおりにする。それでいいんだろ」
「肯定。そうそればいい。姫鶴、一旦戻ろう」
「う、うん、わかったー」
◆
がさがさがさがさ。
這い寄ってくる。
何かが。黒い何かが襲いかかってくる。
「やめて、やめ、……し、にたく…なっ………」
黒い「それ」が、首筋にかみついて。
体中の血を吸い取っていく。
「あ、あ………」
視界が揺らいでいく。
意識が遠のいていく。
「これが、死……?」
死ぬの?
死んでしまうの?
こんなところで終わりなの?
「あ、かにい……あの子達を、まも、って…………」
意識は、そこで永遠に途切れることとなった。
◆
音が聞こえる。
何処だ。何処だ。
手さぐりで進む。
俺には音しか頼れる物がない。
「ハバキっ……くそ、何処だハバキ……!!」
ハバキ国行だったものを通り過ぎた事に、彼はまだ気付かない。
◆
嫌だ。
嫌だ。嫌だ。
「くそ、何なんだこの森。隊長、隊長、何処行った…」
がさがさがさがさ。
悪魔の近付く音がする。
「あ、………いや、逃げるわけには…俺は、新撰組の刀だ。逃げな、い……?」
彼は見た。見てしまった。
その黒い「何か」を。
「あ、あ……ああ………」
しまいだ。
彼は悟ってしまった。
「終わりだ」
悟ったのだ。
自分が最期だと言う事を。
「あぁ……はじめ……一……いま、傍に……………」
体中の血が抜き取られ、魂ごと持っていかれる感覚を起こしながら。
彼は、永遠に目を開くことはなかった。
◆
「もう、いやなの………ちょうまる、こんなの、こんな、の……」
彼は見つけてしまった。
隊長、ハバキの死体を。血を抜かれ、真っ青になって死んでいる彼を。
「もう、いやなの…………隊長……たいちょううううう……!!」
既に冷たくなった隊長の胸に顔を埋め、彼はぐすぐすと泣き始めた。
背後に、何かが迫ってきているのを、気付きもせずに。
「っあ、」
気付いた時にはもう遅かった。
血を抜かれる感覚に、彼は最期を悟った。
「詠まなきゃ、なの」
届くはずのない手を伸ばして。
「咲き誇る、桜の色は、血に染まる……酷い、詩、なの………」
◆
「やめて、やめてよぉ……うっ、う……しずく、雫……」
「けひひ、もう逃げようよ。ハバキも鬼神丸も死んじゃったんだよ?蝶丸も死んでるし。
あのさぁ、いつまでその人形を惜しんでるの?」
「雫は、人形なんかじゃない……」
「へぇ。ま、僕には関係ないけどねーん。んじゃ、いこっか、村雨。逃げないと死ぬよ、多分」
「……無骨」
「なにさ」
「そこにいるの、だれ」
「え、」
響く悲鳴。
抜ける血液。
ぐちゃり、ぐちゃりと酷い音。
目の前で、仲間の彼が何かに貪られる音。
「や、めろ……むらさめ、村雨を、離せ……」
「ああ、あ……無骨、むこつ、た、すけ………ッ」
ぼきっ、と鈍い音。
悲鳴が聞こえる。
耳に残る悲痛な叫び。
抜けることをやめない血液。
飛んでいく意識。
「村雨エエエエエエエッ!!!」
無骨は、最期に残った力で村雨を貪っている何かに自身を突き刺す。
それは刺さることなく、無骨はその「何か」に頭を食いちぎられた。
ぼとり、と重いものが土に落ちる音。
「あ、あ……」
村雨はその場にへたり込んだ。
「いや、いやだよ。無骨……無骨も、いなくなるの?」
村雨は無骨だったものにすり寄る。
「僕も、一緒に行くよ……ごめん、ごめんね……」
ドスッ、と、自分の体に刃物が突き刺さる感覚。
「ねぇ、最期に貴方に聞きたい事があるの。……貴方は、だれ?」
村雨はかすれた声で「何か」に問いかけた。
何かは、言った。
「晴思剣」
と。
◆
後、雷切達はハバキ達を発見した。
血を抜かれ、真っ青になって死んでいる者達ばかりだった。
唯一村雨だけは血に濡れて死んでいた。
「ハバキ、国重、無骨、蝶丸、村雨、痣丸……皆死んでたよ、小烏丸」
「………そうですか」
小烏丸の、声が重い。
雷切はそう感じることしかできなかった。
隣に居る切刃は、いつもの無表情だ。だが、雷切の左手をしっかりと握って離さなかった。
お前は何があっても守る。そう言われているかのようだった。
「………ありがと、切刃」
「疑問。何の事だ」
「あぁ、いや……手。何か、すげえ安心する。ありがとな、切刃」
「理解。……そう言う事か。構わない、このくらい」
「……そっか」
「断言。雷切は寂しがりだから、俺が居ないとだめだろう」
「は、はぁ!?そんな事ねーっての!」
「疑念。では、お前は今夜一人で寝られるのか」
「ね、寝れねえ、けど」
「首肯。そうだろう。だから、俺が傍に居る」
「……わかってる。お前、そういう奴だもんな」
「不服。俺ではいけないのか、雷切」
「ううん。切刃がいい。」
「……肯定。俺も、雷切がいい」
ぎゅっと切刃の手を握り返す。
希望であってほしい。ハバキ達の死を無駄にしない為に。
雷切のその想いは、すぐ打ち砕かれる事となるのだが。
それは小烏丸の放った一言だった。
「第三テントで、日光隊も全員死を遂げていました。もう、残っているのは私達6人だけです」