二次創作小説(映像)※倉庫ログ

Re: EVIDENCEーmonster hunter: ( No.16 )
日時: 2016/07/31 13:00
名前: 年中漢 (ID: Kot0lCt/)

超帯電状態……ジンオウガが背中の体毛、甲殻などに雷光虫を集め、その電気エネルギーを自身に蓄電した状態。背中の雷光虫もジンオウガと共鳴し、より高電圧を発生させる超電雷光虫となる。

「早ッ……!」
スルガは飛び退く。

バヒュゥゥッ!

すぐ横にジンオウガの腕が叩きつけられる。地面は高すぎる電圧で焦げる。

「ルォォオオオッ!」
ヴァルハが走る。そしてその勢いをつけて、切り上げ。

シュッ、ガン

避けた?!

もうヴァルハがそう思った瞬間、ジンオウガはすぐ後ろにいた。

「なっ……!」
「危ないです!!」

ヴァルハが絶句した瞬間、ミリアがジンオウガの今にも襲い掛かりそうなジンオウガの腕に弾丸を撃つ。

バンッ!

腕からは水飛沫がとぶ。水属性が内蔵された、水冷弾だ。
『ギャンッ』
ジンオウガは怯み、腕を引っ込める。

「おお、ナイスだ。」
「もちろんです!」

だが、ジンオウガは離れた場所に跳び、体を小さく回転させる。

光を放つボールが3個、宙に現れる。

「ヴァルハ!」
スルガが叫ぶ。

「見えてるぜ。」
光るボールが迫る。ヴァルハは避ける。が、

「ぬッ?!」
光るボールの軌道が変わり、ヴァルハに急激に迫る。
「これは……」
間近にボールが来た時、ヴァルハはボールの正体がわかった。

集まって群れを成す超電雷光虫の大群だった。

「避け…」
無理か。ヴァルハがそう思った瞬間、世界が水色に包まれた。

「うぐあああァァァァッ!」
バチジジジッ!
痺れる。全身の筋肉が痙攣し、呼吸もままならない。

「ヴァルハッ、今行く!」

痙攣して動けないヴァルハに、ジンオウガは突進して来る。

スルガはヴァルハの前に立ち、刀を握りしめる。

「このジンオウガ、何で止まらないんですかァ?」
ミリアも焦りを感じつつ、ガノバッシャーガンから通常弾を撃つ。

「来い!」
スルガが叫ぶ。

しかし、ジンオウガは目の前にいない。

バチバチバチバチ!

上から音が聞こえる。

「まさか!!」

上に背中を下にして落ちるジンオウガがいた。
背中には大量の電気を貯めた雷光虫が潜んでいる。背中の下でそれらと共に下敷きになったら……

まずい…

「止ァめるんです!!!」
ミリアが叫びながら、1発の弾丸をジンオウガの今にも落ちる胴に撃つ。

ボンッ!

胴に横方向の小さな爆発。

その勢いに乗せられ、ジンオウガも横にずれて落ちていった。

スルガとヴァルハのすぐ隣で背中から着地。

バヒュウゥゥゥッ!!
スパークが飛び、地面が焦げ、電気の異様な匂いが立ち込める。
_______危なかった。

「大丈夫ですか!!」
ミリアが心配する。
ミリアが撃った弾丸は徹甲榴弾だ。本来は弾が効かない相手に当てて、爆発のダメージで相手を倒す弾丸だが、今回はその爆風で、ジンオウガの着地位置をずらしたのだ。

『グゥルル……』

ジンオウガは一旦この戦いで疲れた体力を回復する為か、エリア4番の方角に去っていった。

「ヴァルハ!」
「ヴァルハさん!」

スルガもミリアもヴァルハを心配する。
あの電力を保った雷光虫に直に触れたら死んでいただろう。

しかし、
「俺は大丈夫だ。痺れも……取れてきたようだ。」

「ああ、よかった…」
ミリアが呟く。

きっと、ヴァルハの身につけているガルルガSシリーズが電気の衝撃を和らげたのだろう。
スルガは思う。

ガルルガSシリーズは雷耐性に優れている防具だ。

「おい、ミリア……」
ヴァルハが聞く。

「?……なんですか?」

「お前地形がニガテなんじゃねェのか?」

「それは、このクエストの狩場が原生林だとは思わなくて……えへへ…原生林はウチの地元なんですぅ…」

「ンだよ。早めに言ってくれ。」

「はい…」

ミリアがしょんぼりする。

「なあ、スルガ。」

「なんだ、ヴァルハ。」

「お前さ、超帯電状態の解き方って知ってるか?」







Re: EVIDENCEーmonster hunter: ( No.17 )
日時: 2016/08/01 10:16
名前: 年中漢 (ID: MHTXF2/b)

4番エリアにジンオウガがいる。

「なあ、スルガ。お前さ、超帯電状態の解き方って知ってるか?」
ヴァルハが聞く。

「……きちんとしたやり方は分からない。」

「なんだよ。それじゃあ終わらねェじゃねえか。」

「ただ、ダメージを与え続ければ、ジンオウガの超帯電状態も解除が出来るって図鑑には書いてあった。」

「じゃあ、単純にダメージを与え続ければいいって話だな。」

「まあ…そういうことになるね。」

「死にそうになったら、言えよ。スルガ、ミリア。」

「もう、なんですかァ。」

「ガンナーは遠距離から攻撃できる分、防具の構造上、防御力が薄くなる。ジンオウガの攻撃が触れた瞬間、分かッてんだろな。」

ゴクリ……

ミリアが生唾を飲む。ジンオウガの攻撃に当たったヴァルハだからこそ、その言葉には重みがある。

「エリア、移動すッぞ。」
ヴァルハが声をかける。ジンオウガに1発かまされてしまったから、復讐に燃えているのかもしれない。

エリア4番……

ジンオウガが闊歩している。まるで陸の王者のようだ。

背中の体毛は静電気で完全に立ち、甲殻も開いてそこから青白い光を放っている。

蒼く光る狼。

雷狼竜の異名が冴えているように感じる。

「ここから、正念場だね……」
スルガは息をひそめる。

Re: EVIDENCEーmonster hunter: ( No.18 )
日時: 2016/08/01 10:14
名前: 年中漢 (ID: MHTXF2/b)

『ヴォルゥゥム』

ジンオウガがそこに立つ一人のハンターに気づく。

「おい、糞野郎、こっちに来いよ。」
大声で挑発をするハンター。ヴァルハだ。

ジンオウガに言葉の意味が分かったかどうかは分からないが、ヴァルハに突進して行く。

だが、ヴァルハはトッと横にステップして、突進してくるジンオウガに斬撃を当てる。

まるで、突っ込んでくるボールにバットを当てるかの様に。

ジンオウガの皮膚、筋肉はこの程度では切れない。

ヴァルハは何度も斬撃を繰り返す。

切り上げ、斜め切り、峰打ち、薙ぎ払い、切り下げ、切り返し。

これが、重い大剣を動かすハンターなのかと思うほどの速さ。

だんだん、鱗や体毛が所々剥げていき、場所によっては皮下組織が見えている。

鮮血が飛ぶ。ジンオウガが仰け反る。

と、その時、草むらの陰からパチンと音がした。

「おおッ、きたきた。」
そこにはスルガとミリアがいた。
音はスルガの合図だ。

「ヴァルハ、囮お疲れ様。」
スルガが言う。
「おお!」
ヴァルハはジンオウガの視界から引く。

その時、ミリアが水冷弾を撃つ。

「振り向くですぅ〜」
ジンオウガの身体に当たり、水滴が飛ぶ。

そして、ジンオウガは振り向く。

視界には、スルガとミリアしか写っていない。もちろん、スルガもミリアも攻撃対象だ。

そしてジンオウガは飛びかかる。
「やっぱり…」
スルガはそう呟き、ジンオウガの飛びかかりを避ける。
ミリアも別の方向に避ける。

ズドン!

……真っ直ぐに向かっていたジンオウガだけが、スルガたちの足元にあった落とし穴にはまった。

Re: EVIDENCEーmonster hunter: ( No.19 )
日時: 2016/08/02 11:21
名前: 年中漢 (ID: w4lZuq26)

落とし穴。
大型モンスターが入るぐらいの穴を掘り、そこに丈夫なネットを被せて見えない様に隠す罠。

ジンオウガはそれに見事にはまり、もがく

もがけばもがくほど、ネットは絡まっていく。

「良し!爆弾を置こう。」
スルガはそう言って、草陰から大きな樽の様な物を持ってくる。
大タル爆弾と呼ばれるアイテムだ。殺傷力が強いことで名が知られる。単純にダメージを与えるなら、これしかない。

「こいつを置くしかねェよな。」
ヴァルハも爆弾を置く。

ミリアも置いて、一人2個ずつで、合計6個。
ジンオウガは尚も暴れる。

ネットを破られる前に小タル爆弾で起爆させる。

小タル爆弾は小さな爆弾で、置くと勝手に爆発する。普段は爆発しない大タル爆弾の信管の様な役割を果たす。

ピッ

小タル爆弾が設置される。

ジジジジジジ……

みんな、離れてて…
スルガは言う。

プシュッ、ドオオオオオオオオオォォオオンンッ!!

爆発。耳を塞ぐぐらいの爆音が鳴る。

「どうだ?」
ヴァルハは期待をする。
この一撃はとてもデカイ。普通は死ぬはずだ。

硝煙が晴れる。

そこには、ボロボロのジンオウガがいた。
角は2本とも折れ、顔の右半分顎側の皮膚はなくなり、歯と筋繊維が見えている。コゲが全体的に目立ち、胸元から肋骨がうっすら見えている。腕の甲殻も粉々になっている。周りの虫も少なくなっている。

頭をふらふらさせているそのモンスターには、以前のような王者の威厳はもう無かった。
_______死んだか?

「うおっっしゃアアアッ!」
ヴァルハが歓喜の声を上げる。

「終わったか……」
ここまで疲れる狩りは経験したこと無いな、とスルガは思う。

「?……あれ…?……え……?」
「?どうした、ミリア」
ヴァルハが何か聞く。ミリアはヴァルハの後ろをプルプルと指差す。

「は?………」
ジンオウガが、後ろにいた。

刹那。

爪がヴァルハの胸と脇腹をえぐる。
防具を突き抜け、素肌に触れる。爪に溜まっていた最後のものであろう電力がヴァルハに流れていく。

バヒュンッ
「ぐああああああアァッ!!」

「ヴァルハ!」
スルガが太刀を構える。が、それより前にジンオウガの長い尻尾がスルガに叩きつけられる。

避ける。間一髪か……?

グショリ。

あれ…?

「うぁあああッあああああぁぁうグッううあッ!!!」

スルガは転げ回る。脚が変な方向に曲がっている。
防具の隙間から白い骨が出ている。流血も酷い。

「ヴァルハさん!スルガさん!あッ、やだ……こっち来ないで……」
ミリアは涙を浮かべる。ジンオウガは右の頬と顎の無い顔でミリアを見つめる。ミリアは感電した。ジンオウガの雷光虫玉に当たってしまったのだ。ミリアは腰が引けて避けられなかった。

黒こげになって倒れる。

「うぐっ…… ぐっ……」
スルガは動き出す。戦う意思は捨てないつもりか、氷刃【雪花】の元まで這っていく。

バタッ

スルガは途中で倒れる。脚の流血が酷い。

コヒューコヒュー……ヒュー

息も荒い。

何でだよ。何でだよ。スルガは悔しく思う。

全てを奪ったのはモンスターだ。こんなやツラは、ゼンブ殺サナイト…



なんで嫌いなハンターになったの?

問われる。

いつも君は疫病を持ち込んだハンターを恨んでいたじゃ無いか。

_______そのハンターはもう死んだよ。

君は疫病を持ち込ませた原因が分かっているの?

ハンターは……父さんは、村の人から、僕からも恨まれながら、母さんの病気の原因を解明しようとしていた。けど、みんなに恨まれて、殺された。

誰に?

モンスターだ。

じゃあ、復讐の為に戦うの?

そうだ。ここで死んだら意味が無い。

一回死んでみたら?

死んでたまるか。

さあて、ここで生き延びられるかな。

生きてやる……生きてやるよ。








______________復讐の為にな。

ドクッ
生命の鼓動。

「コロス………ゴォロシテヤァル……ウウゥ」

スルガは立ち上がった。それは狂気にも見える。
脚がズルズルと音を立てて再生する。

髪が紅くなっていく。
太刀、氷刃【雪花】を手に取る。

それは一瞬の出来事。
ジンオウガが振り向く瞬間、スルガはジンオウガの顎に下から刃を刺し、そこからズダダダダと腰まで一直線に切り裂いた。

甲殻や、強靭な皮膚、筋肉、骨も裂いていった。
無数の肉片と血液、そして、長い腸や、胃などの消化管臓器系統が傷口から飛び出していった。



そしてスルガは切り終えるとバタッと気絶した。

「………スルガ?」
感電の影響で痺れながらも、ヴァルハはその様子を朦朧な意識の中見ていた。

クエストクリア

それはかなり荒んだ結果だった。



Re: EVIDENCEーmonster hunter: ( No.20 )
日時: 2016/08/05 10:04
名前: 年中漢 (ID: KZRMSYLd)

ガタンガタンゴトゴト

揺れている。日の光が自分を包み込むようだ。

ハッ

目が覚めた。

「ン……ここは……」
「船の上だ。」

スルガの問いにヴァルハが答える。

「船………」

思い出した。迫り来るジンオウガ、捻り折れる足、死、死、死、死
足を見る。
______________折れてない。アイルーか何かに治してもらっただろうか。


そしてスルガは気づく。
「……ミリアは?」

「応急処置をされながら、別の船に乗っている。」
「それ……じゃあ…?」
「あいつはかなりの重体だ。」
「そんな……」

スルガは落胆した。重体だって?この狩りでそんなことが起きるなんて……
だが、スルガはもう一つ疑問に思うものがあった。

「……誰が、ジンオウガを倒した?」
スルガはもう敵わないと思っていた。死ぬかも知れないと思っていた。しかし、違う。しっかりとヴァルハの手には「クエストクリア」を表す認定証が握り締められていた。

「……それは……ッ!」

言えない。ヴァルハはそう思った。ヴァルハは知っている。スルガが強大な力でジンオウガを切り裂いたことを。スルガ本人は知らないようだが、果たして、スルガにこのことを伝えた方がいいのだろうか。
これを伝えたら、本人にどんな影響があるか分からない。スルガの力をもし、他人に話せば、どんな研究をされるかも分からない。

「……俺だ。」
「凄いな、ヴァルハ一人か?」
「ああ、そうだぜ。」
「じゃあ、みんなに広めようかな。」
「武勇伝にするつもりか?」
「そのぐらい凄いってことだよ。」
「ははッ、ありがとよ。」

本当に倒したスルガには申し訳ないが、こうしておこう。これが一番良い答えだ。

ヴァルハは思った。


Re: EVIDENCEーmonster hunter: ( No.21 )
日時: 2016/08/04 10:14
名前: 年中漢 (ID: Kot0lCt/)

原生林、ジンオウガの死骸……

周りに倒したかどうかを実際に確認する調査隊がいた。
「……これは……!!」
「信じられん……」
口々に隊員が言う。

ジンオウガは最早、肉の塊に近いような状態になっていた。

「……いや、この力は人間のものじゃあない。他のモンスターが荒らしたのでしょう。イビルジョーとか。」

冷静な見解を述べながら、じっと死骸を見る20代ぐらいの若さの男。背中には大きな盾斧_______チャージアックスと呼ばれる武器を背負う。ハンターだ。

「なるほど、確かにそうですね。そんなアオアシラみたいな人間はいないですもんね。」
調査隊の一人もそのハンターに納得する。

「いやぁ、【円卓の騎士】の貴方のような素晴らしいハンター様について行って貰って心強いですよ。」
もう一人の調査隊の人間がそう言う。

「ああ、そうか。」

彼の名はソウゴ・イルナルク
ギルドから選ばれし【円卓の騎士】の一人。

「……」

彼は訝しげに、切り裂かれたジンオウガの死骸を見ていた。