二次創作小説(映像)※倉庫ログ

Re: EVIDENCEーmonster hunter: ( No.29 )
日時: 2016/08/09 14:11
名前: 年中漢 (ID: w4lZuq26)

図鑑でも細かくは書いてはいなかった気がする。それどころかその殺気に圧倒されて、あまり物事を考えることが出来ない。
スルガは思った。


「ここに隠れて。よく見ているんだ。」
ソウゴが言う。
そして、背中に背負ったチャージアックスの柄を握る。チャージアックスは両刃式の大きな斧のような形状だ。しかし、

ジャルルルルルルキンッ!

金属音を立てて変形、いや、分解した。
斧らしさを見せる飛び出た刃が盾のようになり、柄とそこから伸びる芯のような細い刃が剣になっている。

大きな片手剣のようだ。

ダッ!

ティガレックスに向かって走る。
ティガレックスもそれに気づく。

『グルォォォォ……スゥゥ……』

ティガレックスは肺に空気を吸い込む。これは咆哮の構えだ。しかし、ティガレックスの咆哮は違う。余りの音の大きさに凄まじい破壊力を持つ。

真っ直ぐに突っ込んで大丈夫だろうか。

しかし、ソウゴは曲がらない。

『ンギャアアルゥゥオオオオオオオオォォォォッ!!!』

鼓膜が潰れそうな大音量。
ソウゴ盾を構え、それを受け止め、右手に持つ剣の部分で喉、胸、足と切りつける。剣には血液が染み込んでいくように見える。

凄い……
スルガは思う。
離れたくなる咆哮を逆に受け止める度胸には驚いた。

ティガレックスが腕を振り、その勢いでさらに長い首を伸ばして噛み付こうとする。

タタッタタタッ

ティガレックスの腕を下に潜って避け、剣を上に向け腕を切ってから、噛み付こうとする頭を横に避け、剣を横に構え、頭に刺す。頭は骨が多く硬いため、表皮をえぐるだけで済む。

そしてさらに走り、背後に回る。

ティガレックスが首をソウゴの方に向けようとする。

だがその瞬間、ソウゴは宙にいた。剣を逆手に持ち、ティガレックスの背中から頭まで一気に切り裂いた。

『ギァヤァァァァルォオオ』
ティガレックスが悶える。頭の甲殻が欠損して血が流れている。

ソウゴの剣が赤く光っている。その剣を盾に差し込むと光が消え、ジャコッという音と共に内蔵されたビンにモンスターの血液が貯められる。

チャージアックスはモンスターの血液を利用して膨大なエネルギーを生み出す機構を持っている。
『ギャアアォォォォオオォォォォッ!』
「くっ!」

ティガレックスの突進。ソウゴは盾を使い衝撃を受け流しながら左に避ける。

ズドン!壁にぶつかりつつも方向転換し、再度突っ込んでくる。

瞬間、ソウゴは剣を盾に差し込み、合体させる。それはさながら巨大な斧のようになる。チャージアックスの真の姿だ。

ソウゴは突進してくるティガレックスに走り寄り、

シュゥウウン!!

回転して切り裂く。
ティガレックスとすれ違うようにして。

ジュバァァァァアッッ!
ティガレックスの全身から血液が出る。しかし、かすり傷のようだ。すぐティガレックスは立ち上がり、ソウゴを見る。
『グルゥゥゥゥ……』
ティガレックスの腕や顔に赤い血管が浮き出て見える。

鼻から白い息が出て興奮している。

___________怒ったのだ。

Re: EVIDENCEーmonster hunter: ( No.30 )
日時: 2016/08/11 08:39
名前: 年中漢 (ID: FpNTyiBw)

『グルゥゥゥゥ……』
怒った。

ソウゴは飛びのいた。その横をティガレックスが突進する。途轍もなく速い。まるでトラックのようだ。

ズザザザザザァァッ!

ティガレックスが土煙を上げながら豪快にカーブする。そして壁の横を走り、ソウゴに飛びかかる。

ソウゴは避ける。

ドン!プチュッッ!

ティガレックスは地面に着地する。周りにいて今まで警戒して離れて見ていたイーオスと言う小さい恐竜型の小型モンスターがいとも容易く潰れる。

イーオスは同胞が潰されたことに怒る。

『ギャァギャァァッ!』

イーオスが小さく吠える。

ティガレックスは決まりが悪くなったのか、両腕に付いている翼を広げて逃げる。
ソウゴはそれを見る。どうやら今後ティガレックスがどこに逃げるのか見るつもりだ。

今まで少し大きな岩の裏に隠れて見学していたヘレンが、同じく見学していたスルガに話す。
「……ねぇ、スルガ、」
「ン……?」
「何でソウゴさんは疲れないんだろう?」
「……そういえば……何でだろ。」

走ったり、盾でガードしたりすれば必然的に疲れるはずだ。

「その理由はこれだ。」
「うわァッ!!」
スルガは驚いた。いつの間にか隣にソウゴがいる。その手には一本の小瓶を持っている。表面には強走薬グレートと書いている。
「ああ、なるほど……納得です。」
強走薬グレートは、人間のスタミナ、持久力を最大に近い状態まで引き上げる薬だ。
「……次は2番エリアだ。行こう。」
そう言って2番エリアに向かう。1番エリアを経由して行けるはずだ。


___________2番エリア。上にツタが全面に生えて広がっており、床のようになっている。地面が下にあって、ツタの床が上にある。要は二階建てのフィールドなのだ。

「……いた。君たちは2階に登れ。僕も登る。」
下階……地面のエリアにティガレックスはいた。
しかし、ソウゴは2階のツタの床で戦うつもりだ。

登る。ガサガサッ。ツタで音がする。

ピクリ。

下にいるティガレックスがその音に反応する。
そしてティガレックスはジャンプをするのか腰を低く構える。

_________今度こそ逃げなきゃ

スルガは思う。でないと、幾らソウゴでも強大な爪や、鋭利な牙でミンチになってしまう。

だが、ソウゴはティガレックスの構えに合わせるようにチャージアックスを逆手に持ち、剣が盾に刺さった状態で構える。
その構えは、まるで居合切りのようだ。

ガション プシュウウウウゥゥ

盾の変形機構が開き、蒸気が出る。

刹那、ティガレックスが跳ぶ。
『ギャァルゥゥアァァアアアァァッ!』

ツタを力任せに破り、勢いよくソウゴに飛びかかる。爪や牙を総重量をかけて突きたてようと空中でソウゴに向ける。

「……見えた。」
ソウゴはその一瞬を見逃さなかった。チャージアックスは一瞬で属性解放ブーストし、まばゆく輝き、ソウゴは居合切りの要領でそれを叩きつける。

チュイイイイン!

バシュンンッ

青紫色の紫電が迸る。ティガレックスは20メートル彼方まで飛ばされた。

何て力なんだ。
スルガは思う。




Re: EVIDENCEーmonster hunter: ( No.31 )
日時: 2016/08/11 09:02
名前: 年中漢 (ID: FpNTyiBw)

ティガレックスが起き上がろうとする。怒りで浮かび上がった血管も今は収まってしまっている。
頭から胸にかけて深い傷があり、流血もひどい。所々、雷エネルギーの所為か、焦げ目も出来ている。

『グルゥ……グ……』

バタン

ティガレックスが力尽きる。ツタの床の上で、静かに。
ソウゴは腰の脇に提げている剥ぎ取り用ナイフを持つ。
ハンターはモンスターから、鱗や甲殻などの「素材」を剥ぎ取る。それは今後の武具に使われるのだが、素材を剥ぎ取ることはモンスターに対する慰霊にも繋がると言う。ハンターは自然に感謝し、素材を貰うのだ。
ソウゴはティガレックスの鱗に手を伸ばす。しかし、ふと、その手を止めた。

ドクン

ティガレックスの生命の鼓動が蘇った気がする。危険だ。
ソウゴは飛び退く。

プス、プスプス…
黒い煙がティガレックスの身体から出る。

「何だあれ」
今まで見ていたスルガは驚く。モンスターの死体から黒い煙が出るなんて見たこともないからだ。

ソウゴも再び剣を構える。

『ゴボエェッ、ギャッ、ヴァッ』
ティガレックスの身体がビクビク震え、体色が血管に沿って黒くなって行く。

『グベッ、ギャッ……ガルウウウウゥゥ』
ブリッチをする様に手をついてから、グワンと不自然に起き上がった。

ティガレックスの眼は白目を向いていた。そして赤く充血していた。

『ギャァァルァァァァ!!』
ティガレックスが吠える。その声は生物が出す声ではなかった。

Re: EVIDENCEーmonster hunter: ( No.32 )
日時: 2016/10/08 11:09
名前: 年中漢 (ID: KZRMSYLd)

「ほう、こいつは凄いな。」
ソウゴは、黒みがかった体色のティガレックスを見る。

『グギャァゥゥアアアアア!!』
ティガレックスが走ってくる。以前よりも早いスピードだ。

ソウゴは横に避ける。

しかし、

「何ッ?!」

ティガレックスはソウゴの手前で急に首を伸ばし、噛み付く。

さらにソウゴはティガレックスの頭に手をついて上に避ける。すぐ近くでガチッと歯が噛み合う音がする。その瞬間、ティガレックスの口から黒い唾液が出る。
あの黒い唾液は体内に入ってしまうとどうなるか。
ソウゴはこれが人智を超えた病のようなものだと確信した。

それでも、ソウゴは尚も攻撃の手を止めない。

回って、尻尾、後ろ脚、背中、前脚、頭__________

だが、ソウゴの思った通りにティガレックスは動かなかった。ソウゴの予想では、一番攻撃を加えている自分に頭を振り向かせるはずだった。だが、ティガレックスは勢いよく、ソウゴを無視して、岩かげでじっと見ているスルガ達の方に前進したのだ。

ソウゴは不意を突かれた。

そしてスルガが驚く。
「やばッ……!」
スルガは噛み付くティガレックスの口を太刀で受け止める。本当ならば見学者はモンスターに手を加えてはいけないのだが、今回ばかりは仕方ない。

「スルガ……」
後ろでヘレンが震える。無理もない。いきなりティガレックスがやって来たのだから。


糞ッ、何て力だ!
スルガは思う。しかも、太刀を伝って黒い唾液が流れてくる。気持ち悪くて触る気がしない。しかし、ここで耐えなければ殺される。

「スルガ君、よくやった。」

後ろで声が聞こえる。ソウゴだ。

ソウゴは大きくチャージアックスを振り上げ、ティガレックスの背中を踏みつけ、ジャンプし、そのまま勢いよく振り下げた。

巨大な斧と化したチャージアックスはティガレックスの首の頸椎に食い込み、そこから身体を切り裂いていく。

ズザザザザザジャジャブチュルグチュア

一気に真っ二つになる。

「……どうやら筋組織も脆くなっているようだ。何かの病気だろうか。」
ソウゴは地面に着地し、チャージアックスの血糊を拭きながら呟く。グチャグチャに分かれたティガレックスの死体を見ている。

「ソウゴさん……ぁありがとうございます……」
なさけなくスルガは例をする。

「君らはよく頑張った。ヘレン君、君もさっきスルガ君の後ろで閃光玉を投げようとしていたね。」

「えっ……」
ヘレンはピンを引っ張って投げると閃光を撒き散らして破裂する、目眩し用のアイテム、【閃光玉】を手に持っていた。ソウゴがあの戦闘の中、それに気づくとは、思ってもいなかった。
「いい判断だ。閃光玉でティガレックスの目を眩ますことができれば、僕らにも逃げるチャンスが生まれる。スルガ君も太刀で攻撃を受け止める覚悟は素晴らしいと思うよ。」

ヘレンはソウゴに褒められ、顔を赤くする。

「さて、剥ぎ取りはやらないのか?」
ソウゴが言う。
「えっ……剥ぎ取りはしても良いんですか……」
スルガは驚く。
モンスターから鱗や甲殻などの素材を剥ぎ取る行為、剥ぎ取り。
本来は見学者はやってはいけないことになっている。

「特別だ。」

スルガは期待してナイフをティガレックスの肉に滑らせる。剥ぎ取り回数は規定で3回までなので、3つの素材が取れる。

スルガの入手した素材は、
轟竜の堅殻
轟竜の尖爪
轟竜の堅殻

「やったー♪」
ヘレンも何かとったらしい。

ソウゴは慎重に鱗を選び、何か黒紫色の結晶がこびり付いた鱗を取る。スルガはどこかでそれを見たような気がした。