二次創作小説(映像)※倉庫ログ

わすれなぐさ ( No.50 )
日時: 2016/09/25 20:35
名前: 抜間さん (ID: z/hwH3to)

シリアス長文の2話目。ここからしばらくは過去のハイラルでのエピソードになります。今回のパートは比較的平和ですが……?
あとどうでもいいことですが、SB69のアルバム1、2ともに買いました。CDなんて買うの何年ぶりだろう。ただ、浴を言えばアニメで使われた楽曲も入れて欲しかったなぁ。




チチチ…チュンチュン……



ゼルダ「……んっ…………?」



前回の運命的な偶然から一夜明けた日の朝。
穏やかな日差しと小鳥の鳴き声が、ゼルダの意識を深い眠りの世界から引き上げた。いつもよりもどこか懐かしい匂いがするベッドと、見覚えのない景色にしばしぼんやりとしていたが、やがて眠い目をこすりながらベッドからむくりと起き上がり、ふあぁと小さくあくびを漏らす。

ゼルダ「…ここは…?えっと、私は確か………そうでした、私はタイムジャンプしてきて、危なかったところをマーテルさんに助けられて……それで、この屋敷にお世話になっているんでしたね」

ゆっくりと昨日一日の間に起きた出来事を思いだしながら朧気だった意識をはっきりと覚醒させるゼルダ。続いてこれからどうするかを考えようとした時、「シークー、起きてるかしらー?起きてたら食堂にいらっしゃい」と女性の声が1階から聞こえてきた。何はともあれ、まずはベッドから出なければ…。
ゼルダは寝間着を着替え、髪をとかし後ろでシニヨンに束ね、ベッドサイドに置いていたタイムブレスレットを装着する。それから客室を出て階段を下り、大きな扉を開けた。


ガチャリ



マーテル「あらシーク、おはよう。よく眠れたかしら?席はこっちよ」
ゼルダ「はい、おはようございます。おかげさまでよく眠れました」

食堂の中に入ると、コーヒーを飲んでいたマーテルが手招きして迎え入れてくれたので、ゼルダは軽く会釈しつつ、既に食器とパンがセッティングされたテーブルにゆっくり着席する。食堂いっぱいに広がるいい香りにようやくゼルダのお腹がくうぅと鳴り、その音に先ほどの声の主…マーテルはふふっと笑った。

マーテル「ふふっ、それは何よりだわ。じゃあ早速朝食に…と言いたいところなんだけど、まだ準備に時間かかるみたいだからもう少し待ってていただけるかしら?」
ゼルダ「ええ、勿論です」





さて、ここで朝食が出来るのを待つ間、状況整理も兼ねてこの屋敷にいる人物を紹介しよう。


マーテル「今日はいい天気ね。こんな朝は紅茶が美味しいわぁ♪」

まず、ゼルダの目の前にいる女性がマーテル。この屋敷に住まう美しき婦人であり、1日目にゼルダをスタルベビーから助けてくれた上に屋敷に招き入れてくれたいわば恩人だ。多少おっとりした所はあるものの、同時に優しさと上品さを兼ね備えた女性であり、紅茶を飲み朝をのんびりと楽しんでいるその姿でさえ気品が漂っている。


サテラ「おまえ達、出来たものからどんどん運びなさい!奥様をこれ以上待たせてはいけませんよ!?」
メイ「はいメイド長、今運びます!!…っとと、リオ!そこどいて!!」
リオ「お姉ちゃんこそ危ないっての!!こっちは玉子焼いてるんだから近くで走らないでー!」

続いて、キッチンでバタバタと忙しそうに朝食の準備をしているのは、屋敷のメイド長をしている初老の女性サテラと、一日目でキースに襲われていたメイド二人組のメイとリオ。サテラは長い間この屋敷に仕えているいわばベテランであり、二人組の方はまだこの屋敷にやってきて一年も立たないがいつも元気で明るく、とても頑張り屋なメイドだ。ちなみに二人は一卵性の双子であり、メイが姉、リオが妹である。


マーテル「メイ、リオ、私ならいくらでも待つし、彼も来てないのだからそんなに慌てないでね?」
ゼルダ「(あの料理に関するの危なっかしさ、私も他人事ではないですね…;)…そういえばマーテルさん、ご主人は…?」
マーテル「あぁ、あの人ならそろそろ…(ガチャリ!)あら、噂をすればなんとやらね?」

そして、忘れていけないのがこの館の主人であr………





オリヴィエ「マーテル、さすがにおっぱいは俺には無理だ!!!」
ゼルダ「ごめんなさい、ちょっと何言ってるかわからないんですがOTL」





すいません、本編開始早々、しかも朝っぱらから金髪翠眼のイケメンがおっぱいとか普通に発言しないでくださいOTLなんですかこの反応に困るしかない出オチはOTLしかもあんた、右手に実の息子抱えてるのにそんなことを言っていいのか!?;


オリヴィエ「ん?どうしたシーク、そんな変な目で俺をじろじろ見て」
ゼルダ「いえ…オリヴィエさん、あの……おっぱいとは一体……?」
オリヴィエ「……?ただ俺は、この子がお腹すいたーってぐずりだしたからここに連れてきただけなんだが…何かおかしかったのか?「ふえぇぇ……!」よしよしリンク、今ママに頼んでミルクを飲ませてやるからな〜!」
ゼルダ「あ、あぁ……そういうことですか。びっくりしました…;」

つまり先ほどの発言は「俺は母乳をあげられないからマーテルが母乳を飲ませてやってくれ」的な意味合いだったらしい。しかし、まさか朝から屋敷の主がぐずる赤ん坊片手に現れてとんでもない出オチをぶちかますとは予測できず、ゼルダは机に手をついてなんともコメントしがたい気分でうなだれた。いやはや、なんとも紛らわしいSOSである…;


マーテル「ふふ、おはようオリヴィエ。なんだか朝から苦戦しているみたいね?」
オリヴィエ「おはようマーテル。リンクがお腹を空かせているんだ、後は任せていいか?着替えとおしめは取り替えておいたから」
マーテル「ええ、いつもありがとうオリヴィエ」

マーテルは、そんな二人のやりとりを呑気にくすくすと眺めながらリンクをオリヴィエから受けとると、ぐずる赤ん坊をよしよしと手際よくあやしながら、授乳のために一度席を外した。
なお、その一連の流れを?マークを飛ばしながら見ていたゼルダに気がついたのかメイが「旦那様は、休日に屋敷に帰ってくるとああして坊っちゃんの世話や子守りを進んでしているんですよー。でも、母乳は流石に無理があったみたいですねw」と耳打ちで事情を説明してくれた。しかし、その直後にリオの「それにしたってあの顔は、騎士ってより親バカまるだしのパパだよねー」いう独り言に、弟分を息子のように可愛がる某主夫勇者の姿が思いうかび、朝から必死に笑いをこらえることになった。どうやら、ハイラルの騎士は大層な子煩悩だったようだ。



オリヴィエ「それじゃあ…いただきます」
マーテル&ゼルダ「「いただきます」」
子リンク「あうー」



…とまあ色々とあったが、そんなこんなで数分後には屋敷の住人が全員食堂に揃い、無事に朝食が始まった。
それから、衛生面的な意味で今この場にはいないが、屋敷には他にもペットとして黒いハスキー犬のハーシーがおり、マーテル曰く現在はリビングにて眠りこけているとのことである。


まさかの出オチ。感想まだ

わすれなぐさ ( No.51 )
日時: 2016/09/25 20:40
名前: 抜間さん (ID: z/hwH3to)



さて、時間は過ぎてマーテルが用事で出かけ、メイド3人は食料の買い出しや庭の手入れやらで屋敷と街をいったり来たりして人もまばらな屋敷の昼下がり。

ゼルダは、初めのうちこそなんとか元の時代に帰れる手だてはないものかと考えを巡らせたりブレスレットをいじったりとあれこれ模索していた。しかし、この時代に時間を越えられるような都合の良いものが当然あるわけがなく、その上ブレスレットの機能も迂闊にいじれないようにと制限がかかっていたので、結局自分にはどうすることも出来ないと結論づけてフェイ達の救助を大人しく待つことに。


ゼルダ「この屋敷って結構広いですよね…これだけ綺麗な屋敷だと、少し歩くだけでも色々発見がありますね〜」


…しかし、そうなってくると「ただの少女」として存在しているこの時代では特にやることもなくかなり退屈なので(一度サテラに家事のお手伝いを申し出てみたのだが、客人にそこまでさせるなんて失礼に値すると丁重に断られた)、ゼルダは家主達に怒られない程度に屋敷を探検していた。今は落ち着いておしとやかになったとはいえ、幼い頃に家臣を振り回した行動力と好奇心は未だ健在のようであり、その足取りは妙にいきいきとしている。

ゼルダ「…さて、そろそろ疲れましたし、部屋に戻ろうかしら……ってあら?何でしょうかあの扉は?」

そうして食堂、庭、玄関、バルコニー、水回りと一通り回り、そろそろ部屋で休憩しようかと考えた時、ふと目の前に大きな扉が半開きの状態で佇んでいるのが見えた。 そっと隙間から部屋を覗いてみると、部屋には大きな暖炉や本棚やロッキングチェアやデスクが置いてあり風に乗ってかすかにインクのような匂いが漂ってくる。ベッドやクローゼットが見当たらない所から推測するに、ここは書斎か何かだろう。
ゼルダは「おじゃましまーす……」と呟いて部屋にそっと入り、家具に触らないようにしながらキョロキョロと部屋を見渡す。 家具はどれもこれも立派で、よく使い込まれていた。

ゼルダ「ここはオリヴィエさんの書斎でしょうか?マーテルさんの部屋にしては、家具もシンプルで男性の趣味ですし……あら?これって…」

と、ふと暖炉の上にかけられていた人物画がゼルダの目に止まった。絵画は、だいぶ古い時代に描かれたのか多少色褪せてはいたが、美しい装飾が施された立派な額縁に入っており、いかにもこの屋敷で大切にされているだろうことが伺える。


ゼルダ「…なんて立派な絵画…。でも、この描かれている人は…?」





オリヴィエ「その絵が気になるのかい?」
ゼルダ「きゃあぁっ!!?!」




と、絵画に描かれていたものに思わず釘付けになっていたところにいきなり後ろから声をかけられたものだから、ゼルダは思わず素っ頓狂な声をあげてしまった!バクバクする心臓を落ち着かせながら後ろを振り向くと、いつの間にいたのかそこにはリンクを抱っこしたオリヴィエが。

オリヴィエ「…そんなに驚くことはないだろう?にしても、まさか君がこの絵に興味を持つとはね」
ゼルダ「オリヴィエさん、いつの間にここにいたんですか?それに、リ…ご子息もちゃっかりいるんですね;」
オリヴィエ「明日の夕方頃にはまた城に戻らなければだからな。今のうちに可愛いわが子とたっぷり触れ合っておかなきゃだろ?なーリンク♪(すりすりと頬擦り)」
子リンク「ぶー?」
ゼルダ「な、なるほど……;」

屋敷の主の姿は昨日の夕方に見かけた鎧姿ではなく、清潔感漂う白いブラウスに黒のシンプルなベスト、深緑のズボンに金色のペンダントという服装でいかにも「屋敷の主」といった風貌をしており、ついでに腕に息子をしっかりと抱っこすることも忘れない。そういえばこの男、朝の出オチからほぼ息子にべったりだったような…?
苦笑いするゼルダの心情を知ってか知らずかオリヴィエは相変わらず腕の中の息子を愛おしげに撫でながら窓際に座り、絵画を仰ぎ見た。



オリヴィエ「まあそれはともかくとして、うちの家系はね、代々勇者の血を引く由緒正しい家系らしくてな。君が見ていたその絵画の人物も父曰く、かつてハイラルを救ったという俺の遠い先祖らしいんだ」
ゼルダ「勇者の血?」
オリヴィエ「ああ。伝説だと、ハイラルに大きなわざわいが降りかかる時、勇者の血族から生まれた男の子がその時代の勇者となり、禍を振り払ってきたらしい。しかもうちの家系、大昔にかけられた呪いか何かの影響で直系の血族には男の子しか生まれないんだとか。まあそれがどこまで本当なのかはわからないけどな?」

勇者というワードにゼルダは改めて目の前の絵画をまじまじと観察する。絵の中に佇んでいるのは凛々しい顔つきで剣と盾を構えた金髪の男性だが、よく見れば確かにその雰囲気はリンクやオリヴィエにどこか似ていた。


ゼルダ「なるほど…。確かに、この絵の方はオリヴィエさんにどこか似てますね。オリヴィエさんもその、勇者だったりするんですか?」
オリヴィエ「…どうだかな。、まあ、俺を知る奴らは口々にみんな言うよ。俺こそが国一番の勇者だー、って。事実、自分でこんなことを言うのもなんだけど剣の腕にはそれなりに恵まれたみたいだし」
ゼルダ「それなりなんて謙遜な…。それに、マーテルさんから聞きましたよ。オリヴィエさんは王の盾とも誉れ高いハイラル王国1の腕自慢で、その太刀筋は「金色の鬼神」と評されているとか」

わすれなぐさ ( No.52 )
日時: 2016/09/25 20:49
名前: 抜間さん (ID: z/hwH3to)


オリヴィエ「マーテルはそこまできみに教えていたのか///;でも、鬼神なんてそんな大袈裟にいうほどじゃないし、俺自身はまだまだだと自分では思ってるんだ。そもそも、鬼神が赤ん坊に対してこんなにでれっでれになると思うかい?」
ゼルダ「思いませんね(即答)」
オリヴィエ「あっははは、だろうね!じゃあきっと俺は勇者じゃないんだな!!」
ゼルダ「あら、結構あっさりと結論付けるんですね。でも、オリヴィエさんって随分冗談がお上手なんですね。なんだか、ちょっと親近感がわいてしまいます♪」

赤ん坊を抱いた男性と、うら若き女性がよく晴れた昼下がりに冗談を交えながら談笑をする姿はなんとも和やかな雰囲気を醸し出しており、その光景は誰が見てもとても戦争中の国の光景とは思えないほどに平和そのものだ。
このまま穏やかに時間が過ぎればいいと、誰もが思ったであろう、まさにその時だった。





うわぁぁぁぁぁぁぁぁーーーー!!!!!!





「「!!?」」


なんと、どこからともなく平和な空気を切り裂くように甲高い叫び声が聞こえたではないか!!?

ゼルダ「…!??今の悲鳴は、外から?」
オリヴィエ「ここから近いな……」

平和な城下町に似つかわしくない悲鳴に二人が急いで窓に駆け寄り外を見ると、向かいにある屋敷の周りに何やら人だかりが出来ており、怒り狂いながら地団駄を踏む男性やらなんだなんだと家から出てくる街の人々やら騒ぎを聞きつけた兵士やらで辺りはざわついていた。


ゼルダ「…オリヴィエさん、この騒ぎって一体…?」
オリヴィエ「…きっと奴らさ」
ゼルダ「奴ら?」
オリヴィエ「ゲルド族…砂漠に住まう女盗賊集団さ。奴らは、時々ああして人目をしのんで街にやってきては頭の悪い金持ちのハイリア人から金品を巻き上げてるんだ。今回も大方、どこかの汚い成金野郎からでも盗みを働いたんじゃないか?」
ゼルダ(ゲルド族…まさか、ガノンが治めているというあの?)

ゼルダがよーく耳をすましてみると、なるほど確かに人々の悲鳴やざわめきに混じって俺の宝石が盗られた、だのゲルドの小娘共が、だのといかにも下品で頭の悪そうな声がきこえてきた。ちなみに、特に何をするわけでもなくその光景を傍観するハイラルの騎士に「ゲルド族を追いかけなくていいのですか?」と聞くと、「今さら追い掛けても遅いさ」とさらっと返された。


オリヴィエ「…噂だと彼女らは戦争が起こる前は、金のため以外にもハイリア人の男と寝て子供を宿すためにもよく訪れてたらしい」
ゼルダ「つまりは…ボーイハントということですか?確かゲルド族って、ほとんど女性しかいないんですよね…」
オリヴィエ「ああ。盗みにしろ、ボーイハントにしろ、ゲルド族にはゲルド族の生き方があって、彼女達も生きていくためにやっている…俺自身にそれらを真っ向から否定するつもりも権利もないが、このご時世どうしてもこういうことに対して上の連中は目くじらを立てるんだよなぁ…」
ゼルダ「…今は激しい戦争が起こってるから、ですか?国家を統一するのに彼女達の種族は邪魔でしかないというのでしょうか…」
オリヴィエ「なんとしてでも国を統一したいハイラル王家にとって、ああゆう連中こそが格好の獲物になっちまう…言い方を変えれば上げ足取りってやつかな。そうやって、ハイラルを統一した方がああゆう野蛮なのも傘下に加わるからある程度はコントロール出来るようになるぞーって国民に対して口実を作っては、戦争を正当化してるのさ」

ゼルダは、憂いを帯びた瞳で窓の外をそっと見下ろす。ハイラルの騎士の言葉を体現するかのように、窃盗事件でざわついていた街はある程度落ち着きを取り戻してはいたものの、盗みを働いたゲルド族に対する不信感はたちまち尾ひれのついた噂話となって、じわりじわりと人々に広まっていた…。

オリヴィエ「これからこの国がどうなるか、それは誰にも予測がつかないさ。上手いこと統一されて形としては平和になるのかもしれないし、このまま戦争が激化して王家どころかハイラル中の国が滅びるのかもしれないしな。…ただ一つだけ分かるのは、平和と滅亡のどちらに転ぼうが、今戦争をしている以上罪のない人が巻き込まれ、多くの血が流れるのに変わりないということだな…」
ゼルダ「…………」

オリヴィエが知らない遠い未来のハイラル、つまりガノンを封印したのちゼルダが王女として納めたハイラル王国では、国を復興する際に長らく因縁のあったゲルド族とも和解し、ガノンに代わり新しい長となった女性ナボールの協力もあって両者の一族は新たな関係を築いていき、同時にハイラル王国全体も本当の意味で平和になった。
しかし、ゼルダがそこまで行き着くのには大変な犠牲や苦労や悲しみを乗り越えていく必要があったことはいうまでもなく、疑心暗鬼が渦巻いた戦乱の時代ではそんな都合のいい展開が所詮夢物語にすぎないことは、ゼルダには痛いくらい分かっている。


そして、それは目の前にいる騎士団長とて決して例外ではないはずだ……。


戦争の恐ろしさはリアルでも二次元でも変わらないと思う。感想まだ

わすれなぐさ ( No.53 )
日時: 2016/09/25 22:02
名前: 抜間さん (ID: z/hwH3to)


ゼルダ「……なんだか、そういうのって悲しいですね…」
オリヴィエ「ああ。俺達も結局は運命ってやつに翻弄されているしかないのかもな………でも」
ゼルダ「でも……?」
オリヴィエ「でも、それでも俺は思うんだ。運命に自分や大切な人達の命を好き勝手に弄ばれるくらいなら、俺はそんな運命なんてぶち壊していくくらいに暴れてやろうってな……」






「…それこそ、この馬鹿げた戦争を俺の手で終わらせて、マーテルも、リンクも、この手で守ってみせるくらいにさ…!!」




ゼルダ「オリヴィエ、さん……」

時代の渦に翻弄され、戦乱から目を背けられない運命を悟り振り回されながらも、それでもせめて大切なものを守り抜いてみせようと、オリヴィエはそう腕の中の愛息子を守るように抱き寄せながら強く言い放ってみせた。
その翡翠色の瞳が秘める静かな決意が、同じく運命に勇者であることを強要されながらも、気丈に笑って全てを受け入れてみせた彼の息子の姿と重なってしまい、ゼルダはもう何も言うことができなかった。






その後、オリヴィエはゼルダに「辛気くさい話に付き合わせてすまなかったな」と詫びたのち、気晴らしにリンクと近くを散歩してくると言い残しふらりと散歩に出かけたので、ゼルダも二人を見送りつつ部屋に戻る。それからぽすりとベッドに飛び込むようにして倒れ、腕につけたブレスレットを見た。ブレスレットは相変わらずピピピと無機質な電子音を出しながら、届くかも分からない電波を未来に発し続けている。
どうしてタイムジャンプをしているあの時、タイムマシンにトラブルが起きてこの世界に飛ばされたのかは未だに分からないし、きっと今頃必死に自分を探している未来人達もその理由を模索して頭を抱えていることだろう。…しかし、ゼルダには、この一連のトラブルによる不思議な出会いが全て偶然による出来事だとは、どうしても思えなかった。


ゼルダ(……オリヴィエさんとマーテルさん…リンクのご両親のもとに私が落とされたのも、運命というものなのでしょうか?…だとしたら、私がこの時代に導かれたのにも、何か意味があるのかしら……)


ゼルダには、まるでアーティファクトに込められた誰かの想いがその時代への道標となり時間を超えられるかのように、それこそ………誰かの強い意思によってマーテル達のもとに導かれこうして今ここにいるような、そんな気がしてならなかったのだ。






滞在3日目の朝。


ゼルダ「皆さん、おはようございます」
マーテル「おはようシーク。今日はなかなかに早いお目覚めだったのね?」
ゼルダ「おはようございます、マーテルさん。…あら、今日はオリヴィエさんだけがまだ寝ているんですか?」

この日は少し早く起きたゼルダが食堂に顔を出すと、2日目同様にマーテルが笑って迎え入れてくれた。食堂ではサテラとメイリオ姉妹が相変わらずばたばたと忙しそうに動き回っており、リンクはマーテルの腕に抱かれながらあうあうとマーテルにじゃれついている。だが、食堂をいくら見渡しても屋敷の主であるオリヴィエの姿が見当たらない。

サテラ「旦那様なら今朝、夜明けと共に城にお戻りになられましたわ」
ゼルダ「え?そうなのですか?ですが、昨日話した時には城には夕方戻ると……」
メイ「旦那様はハイラル直属の騎士団をまとめる長ですからねー。せっかくの休息を伝書鳩で城に呼び戻されて台無しに、なーんてことが結構あるんですよー」
リオ「しかも呼び出したのは王妃様なんだとか…何があったんでしょうね?」

首を傾げるゼルダの問いに答えたのは、テーブルに朝食を運んでいたサテラとメイリオ姉妹だった。聞くところによると、今朝早くにオリヴィエ宛の伝書鳩が屋敷に訪れ、それを読んで屋敷を早々に出発してしまったという。なるほどそういうことなら仕方ないとゼルダは納得して席につき、その日は屋敷の主抜きでの朝食となった。


マーテル「あ、そうだわ。ねぇシーク。貴女さえ良かったらなんだけど、お昼の2時頃になったら中庭にいらっしゃいな」
ゼルダ「はい、構いませんが…どうかしたのですか?」
マーテル「ふふっ、それは後のお楽しみね♪」






ゼルダ「……と、言われたから中庭に来てみたものの、私としたことが中庭のどこに行くのかを聞いていなかったのは失敗でした;」



そんなこんなで現在午後2時頃。朝食時に受けたマーテルの謎のお誘いに従って中庭に来てはみたものの、如何せんこの屋敷の中庭は広いので、どこに件の貴婦人がいるのかが全くわからない。メイド達にも聞いてみたが今日は三人とも外には出ていないらしく、マーテルの居場所までは知らないという。


ゼルダ「どの辺りに行けばよろしいのでしょうか……あら?」

広い中庭のどこに行けば分からずにキョロキョロとしていると、草むらから狼のような顔立ちをした大型犬が現れ、軽やかな足取りでゼルダに近寄ってきた。

ゼルダ「貴方は確か……ハーシー、でしたよね?」
ハーシー「わん!」

名前を呼ばれたハスキー犬は返事をするように一鳴きする。と、ゼルダのスカートをくわえてくいと一回引っ張るとスカートをすぐに離し、そのまま中庭よ奥へ歩きだした。犬式の挨拶でもしてくれたのかしら、としばらく様子を伺っていたゼルダだが、時折こちらを振り向きながら歩くハーシーの意図をすぐに察し、忠犬の後をついていってみる。



ゼルダ「……あ、マーテルさん!こんな所にいらっしゃったのですね?」
マーテル「シーク?来てくれたのね、良かったわ」
ハーシー「わうっ」
ゼルダ「あのー、これは一体?」

しばらくハーシーと共に歩いていると、中庭の一角に設けられたテラスにたどり着き、テーブルをセッティングしていたマーテルが待ちかねたように手を振って迎えてくれた。色とりどりの花に囲まれたティースペースには紅茶セットと焼きたてのお菓子が数点と日除けのパラソル、それからすやすやと眠るリンク入りのゆりかごもちゃんと用意されている。

マーテル「そんなに固くならなくていいわ。ほら、昨日は私に用事があって、帰ってきたのも遅かったから、なかなか貴女とお話できなかったでしょう?だから、今日は女同士でティータイムがてらゆっくりとお話してみたいなってー思って誘ってみたの。いかがかしら?」
ゼルダ「そういうことでしたか…。わざわざお招きありがとうございます。私などで良ければご一緒させていただきますね」
マーテル「ふふ、どうぞ。今日のお菓子はおいしく出来たのよ。きっと気に入ると思うわ。道案内ありがとうハーシー、楽にしてていいわ」
ハーシー「わんっ」

役目を終えたハーシーがごく自然にゆりかごに寄り添うようにして寝そべる。ゼルダもマーテルに誘われるがままに席につき、暖かい陽気の中でのお茶会が始まった。

わすれなぐさ ( No.54 )
日時: 2016/09/25 21:41
名前: 抜間さん (ID: z/hwH3to)



マーテル「そういえばシークって、恋人か何かはいるのかしら?」
ゼルダ「え?恋人……ですか?」



さて、お茶会が始まって数十分。始めのうちこそ美しく手入れされた庭やマーテルお手製の美味しいお菓子、傍らにきちんと座るハスキー犬についてなどのとりとめのない雑談をしていたが、そのうち会話は発展していき、恋の話題……所謂恋バナとなった。


マーテル「そ、恋人。貴女くらいの可愛らしくて優しいお嬢さんなら恋人くらいいたっておかしくないもの」
ゼルダ「それはまあ……一応いますけれど///」
マーテル「ふふふ、やっぱりね。そうよね、これだけの素敵な女の子を放っておくわけがないものねー。それで、お相手はどんな方なの?どの辺に住んでいる人かしら?」
ゼルダ「どうって……?えっと…ちょっと複雑な事情がありまして;」
マーテル「複雑な事情……?何かしら…」

マーテルは「何か言いづらい事情でもあるのかしら?」とうーんと考えこむ。いや、事情も何もまさかここで馬鹿正直に「恋人は大人になった貴方の息子です」なんて言えるわけがありませんハイ。言ったら確実にやばいことになるし、下手したら恋人どころか変人、あるいは息子を奪った泥棒猫呼ばわりだろう。

ゼルダ「…この場合はなんて言ったらいいでしょうかね;」

さて、どう言い訳をするべきか……。ゼルダは、恋人のことをどうやって誤魔化そうか考えを巡らせながら紅茶を口に含み…






マーテル「……もしかして、既に純潔も捧げているとか?」
ゼルダ「Σんぐぅっ!?;;////」





すいません、いきなり飛び出してきた爆弾発言に思いっきり紅茶をむせました;えー、皆さん…ここでの純潔の意味はあえて言いませんがお察しください;


マーテル「…ふふ、ビンゴみたいね♪」
ゼルダ「ビンゴみたい、じゃないですよ!?純潔ってそんな、あれな言葉がまさか貴女から出てくるとは思いませんって!;////」
マーテル「そんなに慌てなくてもいいのよ?私だってとうの昔に純潔は無くしてるから」
ゼルダ「あの、それは見れば分かります;」
マーテル「なるほどねー、それなら確かに相手を特定できるような情報は言えるわけがないわよね…もしどこかから話が漏れてトラブルになんてなったら、貴方の恋人さんにも迷惑がかかっちゃうものね」
ゼルダ「え、えぇ……;(ちょっと勘違いはしていますが、結果オーライですね;)」

詳細を言えない事情を(多少の勘違いはあったが)察してくれたものの、微妙に方向性がずれたフォローをするマーテルにツッコミを入れるゼルダ。まあ、傍らのゆりかごでハスキー犬に見守られながらすやすや眠っている赤ん坊をみれば、マーテルに純潔云々なぞとうに存在しないのは当たり前である(止めろ)。
ともあれ、これで一安心……



マーテル「じゃあ、質問を変えて……貴女にそんな真っ赤な顔をさせるくらいの男性って、一体どんな感じの人なのかしら?」
ゼルダ「…あのー、それは言わなきゃダメですか…?///」
マーテル「ええ、ぜひとも聞きたいわ♪」
ゼルダ「うぐぅ……;」


……と思いきや、目の前に座る貴婦人にはこの恋バナをやめる気は1ミリもないらしい。妙にうきうきしているマーテルの期待の視線に結局根負けしたゼルダは、恋人の正体について悟られないようにしながらこの恋バナに付き合うことにした。


ゼルダ「…まあ、個人を特定されないものならば教えられますしね;……えっと、私の恋人は…私にはもったいないくらいに魅力的な人ですね」
マーテル「魅力的?そんなにいい人なの?」
ゼルダ「ええ。剣の腕がたつのはもちろん、家事もこなせて、優しくて…。でも何よりもすごく勇気があって、どんな困難にも立ち向かっていける強さがあるんです。そんな感じだから、周りの方の信頼も厚くて…」
マーテル「へぇ、それって凄い良くできた彼氏さんじゃない。でも、そんな彼氏さんだと周りがほっとかないでしょう?恋人としては苦労してないかしら?」
ゼルダ「あー…確かにそうですね。彼、交友関係も広いですし色々な方に慕われていますから。まあ、それだけなら全然いいですし、むしろいいことなんですけど…街を歩いていると知らない女性にナンパされたりすることもあるから、そうなるとこの人は私のものー、って声を大にして言いたくなる時があって…」

自分で言っていておいてリンクが女性に言い寄られた時のことを思い出したのか、ほんの少しだけむくれるゼルダ。事実、ハイラルの王女のそういった独占欲はスマブラやSNS団内にもよく知れ渡っており、しばしばリンゼルおちょくりのネタにされているくらいだ(余談だが、リンクはそこまで焼きもちは妬かない方)。
マーテルはおしとやかで聡明なゼルダのちょっと意外な素顔が新鮮だったようだ。愛の力ってすごいなぁと思いつつ、ゼルダのむくれた頬を人差し指でつんとつついた。

マーテル「そんな顔しないの、美人がもったいないわ。…でも意外だわ。シークって、意外と独占欲があるタイプだったりするのね?」
ゼルダ「恥ずかしながらそうですね;唐突に我が儘を言って彼を戸惑わせてわざとその反応を伺ったこともありますし、かと思えば子猫のようにすり寄って甘えて、彼を満足いくまで振り回すこともありましたし」
マーテル「それはなんともかわいらしいやきもちね。でも、シークって見た目大人しそうなのに、結構ぐいぐい行く行動派なのね」
ゼルダ「自分でもこういうことをするなんて、我ながら独占欲があるなぁってたまに思うんですけど……でも、彼はそんな私の独占欲もやきもちもひっくるめて私の良い所も悪い所もきちんと見た上で、受け入れてくださるんです。そうなると、ますます彼に夢中になってしまって……///」
マーテル「まあまあ、若い人はお熱いわね///」


照れたように笑いながら恋人のことを語るゼルダの表情は「幸せ」という単語で語るには足りない程に満ちあふれており、いかに恋人を深く愛しているかが伝わってくる……。そのほんのりと赤い顔に浮かべる笑みに、マーテルは優しく微笑んだ。


マーテル「ふふっ。貴女にそんな幸せそうな顔をさせるんだから、その男性はきっと貴女にとっての最高のパートナーなのね?そんなに顔されると、なんだか妬けちゃうわね♪」
ゼルダ「さ、最高のパートナーってそんな…!確かにあの方は私にはもったいないくらいの素敵な方ですけど…////そ、そういうマーテルさんこそ、オリヴィエさんに深く愛されてるじゃないですか?あの方のことですから、さぞかし熱烈にアタックされたのでしょう?」
マーテル「オリヴィエの方から……。うふふ、やっぱり端から見たらそう見えるのかしらね?」
ゼルダ「え?あれ……」

愛する人のことを考えて思わず笑みを浮かべていた顔を指摘され、思わず火照る顔を必死に冷ましながら照れ隠しでマーテルに言い返す。しかし、当のマーテルは何故だかさも愉快そうにくすくすと笑いはじめたので、思わずきょとんとしてしまった。


ゼルダ「え?あのー、もしかして私、何か変なことを言ってしまいましたか?だとしたらごめんなさい…」
マーテル「ううん、違うのよ。……ここだけの話、周りからはオリヴィエが私を熱烈に口説いたって結構思われてるみたいだけど、実際には私の方が最初に彼に惚れてアプローチしていたのよ?」
ゼルダ「え……ええええええぇぇーー!?そうだったんですか!?てっきり、オリヴィエさんからなのかと思ってました……;」

あの子煩悩な父親のことだ、妻に対してもさぞかし惚れ込んでいたに違いない…ゼルダはそう考えていたので思わず身を乗り出して叫んだ。


マーテル「ええ、街で悪人に襲われていたのを助けてくれて、しかも足を挫いて動けなくなった私を抱っこして家まで送ってくれたの。その姿がすごくかっこよくて頼もしくて、思わず一目惚れしてしまったのが始まりだったわ。でも、オリヴィエは当時からハイラル王国期待の若手騎士と言われてて、人当たりもよくて気さくな人だったし、しかも見ての通りルックスもいいでしょう?その分恋のライバルも多くてね……」
ゼルダ「それはそれは…なんとも茨道な恋だったんですね」

わすれなぐさ ( No.55 )
日時: 2016/09/25 21:43
名前: 抜間さん (ID: z/hwH3to)


マーテル「…でも、彼を好きな気持ちは誰にも負けるつもりがなかったから、私も自分から行動してきっかけを作っていったの。訓練に顔を出して手作りのお弁当を渡したり、彼にふさわしいレディになるために立ち振る舞いや作法や家事を練習したり、休日に思い切ってデートに誘ったりして…」
ゼルダ「なるほど……それで、オリヴィエさんに振り向いていただくために一生懸命に努力したのですね?」
マーテル「ええ。あの時はとても大変だったし、くじけそうになったことも何度かあった。でもね、そうして努力を続けて自分からアプローチしていくうちに、オリヴィエも私を「どこかの家のお嬢様」ではなくて「自分を本気で好いてくれている一人の女性」として見てくれるようになったの。そうしたら、やがて彼も私を愛してくれるようになって……彼からプロポーズを受けた時は思わず泣いてしまうくらい嬉しかったわ///」
ゼルダ「……そうだったんですか……////」

頷きながらもなれ初め話に聞き入るゼルダ。その柔らかく幸せそうな笑みと、ほんのりと赤らめた頬にいかに夫を好いているかがうかがえ、ゼルダは聞いているこっちが恥ずかしくなってくるなぁと一人ごちる。


ゼルダ「……マーテルさんって、オリヴィエさんにすごく惚れていたのですね////一体、あの方のどういうところに心惹かれたのですか?」
マーテル「そうね…自分の信念をしっかり持っているところとか、時々見せてくれる純粋で可愛い顔とか、真剣なときにはしっかり決めてくれるところとか、沢山ありすぎてあげればきりがないわ。それに、パートナーと長く過ごしていくうちに、好きなところなんて増えていくものよ?そりゃあ、誰しも相手の嫌いなところや好きになれないところはあるものだけど、たとえ1つ嫌いなところを見つけても、好きなところを3つ4つと見つけて、嫌いなところもきちんと知って受け入れて、そうして深く相手を知っていくの」
ゼルダ「…分かる気がします。私も、あの人のことを知っていくたびに強く惹かれていってますもの。もっと知りたいって思って、側にいたいって気持ちが強くなるのを止められないんです」
マーテル「私も、オリヴィエのそばにいる限り、何度でも彼の好きなところを見つけて、何度でも恋をし続けるのでしょうね。そうして、人は愛し愛されて、命を育む……だからこそ、私達はこの命を守って未来に繋いでいかなければならないのよきっと」
ゼルダ「マーテルさん…」


ゼルダの中で、マーテルの姿と、昨日の別れ際に愛する人への想いを語ったオリヴィエの姿が重なった。二人とも、かけがえのない一生のパートナーとその間に出来た息子を何よりも大切に思い、形は違えど大切なひとを命をかけて守ろうとしている…その姿がゼルダにはとても眩しく、そしてたまらなく切なく思えてきた。

ゼルダ(…それこそが、きっと命を繋ぐということなのでしょうね。オリヴィエさんもマーテルさんも、その言葉通りリンクを愛し、守り、希望を繋いでみせた…。私にも、リンクと二人で新しい命を未来に繋ぐ日が来るのでしょうか?)

愛する恋人の姿を思い浮かべながらゆりかごの中を見ると、そこにはいつの間に起きていたのか、ハーシーに見守られながら嬉しそうに笑うリンクがいる。マーテルはハーシーをひと撫でしてからゆりかごの中に手を伸ばすと、息子をいとおしそうに抱き寄せた。




オリヴィエ「……でも、そう考えると、きっとこの子もそうやって素敵な人に恋をして、いつか誰かに持っていかれちゃうってことだから、母親としてはちょっと寂しい気もするわねー…(リンクに頬ずり)」
ゼルダ「ふふっ、大丈夫ですよ。お二人の子供ですし、きっとそれこそマーテルさんみたいな方に出会えて幸せになりますって」
マーテル「うーん、そうだといいんだけどね……あ!じゃあこうしましょう!ねぇシーク!」
ゼルダ「はい、何でしょうか?」







マーテル「リンクが大きくなって素敵な男性になって貴女の心を射止めたら、その時はリンクを貴女にあげるわ♪」
ゼルダ「ゑ?」





……すいませんマーテルさん、今何て言いました?それ、事情を知っているこっちからしてみれば割と洒落にならない発言なんですが。あげるも何も、既に息子は目の前の女性にかっさらわれてますハイ。つか、せっかくのしんみりしていた空気をお茶目にぶち壊さないでください!!?
このとんでもない一言にゼルダは思わずポカーンし、思考が停止。しかもこのお母さん、「返品不可だから、一生をかけて可愛がってあげてねー?」なんてテーブル越しにリンクをずいっと差し出しながら言うものだから色々と洒落にならない。



ゼルダ(えーっと、今のって、大人になったリンクを私にくださるってことでしょうか…しかも返品不可ということは、結婚して一生寄り添うってことですよね!?しかもマーテルさ…お義母様の公認で!?でも、彼は既に私のもので…でもマーテルさんはそれを知りませんし、赤ん坊のリンクと大人の私を考えてるんでしょうか…?だとしたら、リンクが大人になったら私はいくつになるんでしょうか……少なくとも、三十路突入ですよね?あれ、というか私先程から何を考えて…??)



マーテルの言葉の真意をひたすらぐるぐると考えるが、考えれば考えるほど訳がわからなくなるもとだからゼルダはただただ戸惑うばかり。
…だが、なんともいい笑顔でニコニコしながらこちらの様子を嬉しそうに伺うマーテルの姿に、ようやくゼルダは目の前の貴婦人が不意討ちで自分をからかったのだと気がついた。途端にゼルダの顔はぼっ!と効果音が出そうなくらいに顔が真っ赤に染まる。

ゼルダ「……も、もう!!マーテルさんったら変な冗談でからかわないでください!!!一瞬反応に困ってしまったじゃないですか!!?///;」
マーテル「あらあら、照れちゃって♪ちょっとからかってみただけじゃないのシークったら?」
ゼルダ「からかったってマーテルさん!!わ、私には既に心に決めた人がいますし……それに、ご子息が大人になる頃って、私はもうオバサンですよ!!?;///」
マーテル「甘いわねシーク、恋に年齢なんて関係ないわよ?恋なんて、いつどう堕ちるかわからないんだから。ねー、リンク?」
子リンク「ばぶー?(・ω・)」

マーテルはいたずらが成功した子供のようにころころと笑いながらリンクに「お姉さんは照れ屋さんですねー♪」と話しかけ、息子の小さな頬を優しく撫でる。一方、まんまとしてやられたゼルダはというと、頬のほてりと未だにバクバクと早鐘を打つ心臓をなんとか落ち着けようと必死に深呼吸を繰り返していた。からかわれたとはいえ、恋人の母親に結婚を認められるのもなかなかに悪い気はしないなぁ、なんて心の中で呑気に考えながら。



ゼルダ(なんというか……そのジョークが未来では実際に現実になってます、なんて口が避けても言えるわけありませんけど、こういう形でリンクとの仲を認められるのもいいかもしれませんね……///)



戦乱の時代の中訪れた束の間の平和な一時、空は雲一つない青空だった。







オリヴィエ「…………」


マーテルとゼルダが和やかな時間を楽しんでいたちょうどその頃。ハイラル城の一角にあるテラスでは鎧とマントを着込んだ騎士姿のオリヴィエが、何やら俯きながら立ちすくんでいた。ハイラルの騎士は余程思い悩んでいるのか凄まじいオーラを放っており、 その場から一歩も動くことなくただただ黙り込んでいる。

ダァン!!!

と、感情が昂ぶったのかオリヴィエは突然拳を壁に城壁に叩きつけた!


オリヴィエ「……何が、何が運命だ……!!そんなものに振り回されるために、あの子は生まれてきたんじゃない……!!」


わなわなと身体を震わせながら言葉を吐き出したその顔は苦虫を噛みつぶしたように険しく、たまたま通りかかったメイドや兵士が「ひぃっ!!?」と悲鳴を上げておずおずと彼の視界に入らないようにしているのにすら気づかない。一体何があったのか…?




「オリヴィエ騎士団長ーーーーー!!!こちらにいましたか!!」




と、その時部下の騎士がひどく慌てた様子でオリヴィエのもとに駆け寄ってきたではないか。騎士は、こちらを見るなり眼光鋭くにらみ付けてくるオリヴィエに一瞬びくっとするも、すぐに気を取り直して片膝をつく。

騎士「だ、団長!ご機嫌がすぐれないところ失礼いたします…大変なことになりました…!!」
オリヴィエ「……?どうかしたのか、そんなに慌てて…」
騎士「実は…たった今市街地に配置していた兵からの報告がありまして……!!!」

自分が信頼をおいている部下のその慌てように、流石にある程度の落ち着きを取り戻して一体何事かと怪訝そうな顔をするオリヴィエ。しかし…





オリヴィエ「な、何だって……!!?」





感想おk。次回、何かがおきる……?