二次創作小説(映像)※倉庫ログ

Re: 東方崩壊譚 ( No.1 )
日時: 2016/08/20 22:21
名前: 彩都 (ID: J85uaMhP)  

東方崩壊譚(とうほうほうかいたん) 第一章 第一話 謎の少年

CHAPTER 1 異変

 ……此処は何処だ……? 一体此処は何処なんだ……? そう思いながら、僕は周りを見やる。
 此処は神社の境内の様だ──でも何でこんな所で僕は寝ているのだろう……? 記憶云々が無いので、何故此処に来たのかも分からなかった。
 でも境内の石畳に寝転がっていたのは不思議だった、僕は暴行でもされたのだろうか? いや、肉体に腫れ等無いので、その線は無い。
 でも一体誰が……? そう思っていると、赤と白のコントラストが美しい──見た目は高校生位だろうか?──巫女さんらしき人物がカツンカツンと石の階段を昇ってきた──そして僕と目が合った。
「あら……」
 そう言って、巫女さん? は目を輝かせた。
「参拝客!? こんな時期に珍しい、早くお賽銭頂戴」
「いや、参拝客ではないんですけど……」
 そう言った瞬間、彼女──巫女さんは俯いてしまった、仕方ない、少しはお金を入れよう、そう思った時だった、空から白と黒のエプロン姿の金髪少女──巫女さんより少し幼い感じだった──が巫女さんに近付いた。
「おーい、霊夢ぅー? 今日、レミリアがお茶会を──誰だコイツ?」
 誰だコイツ、とは酷い言い様だ、まぁこの金髪少女の方が正しいかもしれないけど──
「あっ魔理沙、丁度良い所に……彼を知らない?」
 巫女さんの問いかけに金髪少女は箒から僕の居る石畳に降りた。
「ふむ……ってお前はぁ!?」
 おっ、僕を知っている様だ、そう思いながら待機する。
「誰だ?」
 そのコメントで僕と巫女さんはズッコケた──まるで昭和のコントの様に転ける──そして金髪少女は言った。
「そういやお前の名前は何だ? 私は霧雨魔理沙(きりさめ まりさ)──魔理沙で良いぜ」
「私も自己紹介していなかったわね──私は博霊霊夢(はくれい れいむ)──この神社──博霊神社って言うの──の巫女よ」
「巫女さんの霊夢さんに──」
「私は魔法使いだ」
「魔法使いの魔理沙さん」
 僕がそう言うと、二人は笑う。
「呼び捨てで良いわよ」
「私もそれが良いぜ、言われ慣れてるからな」
「そうですか? 霊夢さ……霊夢に魔理沙、宜しく」
「あぁ」
「えぇ……でも、貴方は誰?」
 それを言われ、僕は黙った、勿論隠したくて黙った訳ではない、何故なら『覚えてない』からだ、すると霊夢が言った。
「まさか……記憶が無いの?」
 ドキリ……いきなり的中した為、胸の奥がきゅうぅ、と締め付けられる。
 僕はゆっくり頷いた。
「成程……それは仕方無いわね……」
「記憶喪失か……他に思った事を言って良いか?」
 魔理沙が深刻な声を出して言ったので、僕は少し固唾を飲んだ。
「いやさぁ? このガキの寝床やご飯はどうするのかなぁ〜って……」
 魔理沙がそんな話をするから、僕の胃が鳴った、お腹が減っているのか。
「随分大きな音……まぁ、戻ってきたらお昼にしようと思っていたから、二人共食べない?」
「おう! 食べるに決まっている!」
「いいのか? こんな初対面の僕を……」
「良いわよ、困った人を助ける、それが『博霊の巫女』だから……」
 目を逸らしながら、言う……その顔は憂いに感じる……

「木のお櫃(ひつ)……」
 こんな古臭いのを、霊夢は新しい炊飯器にしないのだろうか? そう思いながら、周りを見る、博霊神社の中は見た目の割に内装は綺麗だった、そして炬燵……今は少し暑い春なので、早めに直さないと……
「珍しいわね、櫃を知っているなんて」
 霊夢はそう言いながら、木製の茶碗に少し山盛りのご飯を盛る、それを僕に渡す、男の子だから沢山食べる、とでも思っているのだろうか? それは分からないが、その倍以上の量を魔理沙に盛っていた……
「頂きます」
 霊夢の分も盛って手を綺麗に合わせ言う、魔理沙も霊夢と同じ様に真似る、そのまま動かないので、『あっ、僕か』と思いながら、僕も手を合わせる、そして数秒してから二人は箸に手をつける、何て礼儀正しいのか……結婚したら霊夢は良いお嫁さんになるだろうな、そう思いながら僕も箸に、ご飯に手をつけた、目の前の食卓は鰯の塩焼きに味噌汁、少しばかりの漬け物だった。

「ふぅ、食った食った」
 まさかあの量を食べるなんて、魔理沙の食欲は凄いな、そう思いながら僕は食後のお茶を飲む事にした、おぉーこのお茶美味いなぁ、そう思いながら顎に手をやった。
 さて、こんな事をしている場合ではない、自分の記憶を少しでも早く思い出さないと、そう思いながら目を瞑り、一気に今迄の事を思い出す、うんあまり記憶が無い、短過ぎるからだ。
 すると霊夢は外出用の服を着始める、一体どうしたんだろう?
「少し出掛けるわよ二人共──場所は紅魔館よ」
「お茶会か」
 魔理沙がそう言うと、『それもそうだけど』と霊夢が付け加える。
「レミリアは知ってるかもしれない、彼の事を……」
 僕は思った、『レミリア』って『人』は僕の事を知っていそうだな、と……

Re: 東方崩壊譚 ( No.2 )
日時: 2016/08/20 22:23
名前: 彩都 (ID: J85uaMhP)  

「あら、霊夢じゃない、魔理沙の話を聞いた様ね──それで、隣の男は誰? 霊夢の夫?」
「彼は名前が無いの、記憶喪失みたいで……レミリアなら何か知ってると思ってね……」
 そう言いながらピンクのドレスの少女──レミリアという少女は玉座の様な椅子に座り、左足を上に、足を組みながら頬杖をかく──は右肘にいる少女に話しかける。
「逆に聞くけどフラン?」
「あら、どうしたの御姉様?」
 フランと呼ばれた少女──赤いドレスの少女は幼く、幼女でも見て取れる、小学生と間違われそうだ──は僕を見ながらにやにやと薄ら笑う。
「ふぅん……中々壊しがいがある人間ね」
「フラン、壊さないでね、あくまで今はこの少年の記憶を取り戻し、人間界へ戻す事だから……」
「分かってるわよ……でも他にも聞く相手は居るんじゃない? 八雲紫や四季映姫・ヤマザナドゥとか……その『人間』が『幻想郷』に『来た』ではなく、『死人(しびと)』が『幻想郷』に『迷い』込んだ、とかね……」
 そう言いながら、くすす、と笑うレミリア、何かありそうな話だな、そう思いながら僕は霊夢を見た。
「その可能性もあるわね──でも、『死人』ではなかったら?」
 その話を聞いて、レミリアは不思議がる。
「ちょっと待って霊夢……貴女の言い分だと、彼は『生者』って言いたいの? それなら大問題よ?」
「分かってる、でもそれしか思い付かないの──でも、迷い込んだって訳でも無いの──もしくは『誰か』から『連れて来』られた──か」
 その話を聞いて少し考えるレミリア、これはお茶会をしよう、とかほざいていられない空気、感覚、雰囲気だった。
 するとレミリアが言った。
「こんな事をするのは一人──絶対にただ一人──」
 霊夢も発言する。
「うん、今更ながら私もそうだ、とは断言出来ないけど、貴女が言うならそうかもしれない──」
 そして二人の声が重なった。
「八雲紫──!」
 カツン、その瞬間、僕の真後ろで靴が鳴る音がする、僕が振り向くと、紺色の白いエプロンをしている吊り目の女性──メイドだろうか?──が現れる。
「!?」
 僕が驚くと、そのエプロンの女性は静かに言った──
「お嬢様──紅茶の準備が出来ました──」
「有難う咲夜──今はお茶会を楽しみましょう? 未だ時間はあるんだから──」

 その後僕等はお茶会をした、そして僕はレミリアとフランの説明を受けた──
「私はレミリア・スカーレット──この紅魔館の主であり、高貴なる吸血鬼よ──レミリアで良いわ、この娘は──」
 隣の少女の話をしようとすると少女本人が割って割いた。
「はいはーい! 私はフランドール・スカーレット──御姉様──レミリア御姉様の事ね──の妹よ、高貴なる吸血鬼の妹──私もフランで良いわ」
「そうか、レミリア、フラン、僕の過去が分かったら、霊夢の所に連絡が欲しい」
「私も少しは協力するわ──今回は何だか面白そうだからね──」
「私も協力するわ、感謝しなさい」
「あぁ、感謝する」
 するとレミリアはあっ、と声を上げた。
「咲夜の事を教えてなかったわね──咲夜、自己紹介しなさい」
 そう言うと『はい、分かりましたお嬢様』と言って、咲夜と呼ばれたエプロンの人は自己紹介をする。
「私は十六夜咲夜(いざよい さくや)──お嬢様、妹様のメイドで御座います──」
 単純な解説で終わった、すると、レミリアの服の様な色の少女が現れる──片手には分厚い本を持っていた──そしてレミリアに話しかける。
「ねぇ、レミリア──この本に載ってる本が欲しいんだけど──あら、人間……珍しいわね、私への小間使いかしら?」
「違うわ、パチュリー……彼を救うのを手伝うのよ、霊夢等と共にね」
 ふぅん、そう言ってパチュリーと呼ばれた少女は僕に話しかける。
「貴方、名前は?」
「僕の名前? それが記憶喪失で忘れていて……何でこの世界にいるのかも分からなくて……」
「ふぅん……丁度こんな所に本があるの、人間の記憶の戻し方に『本の角に頭をぶつける』って言うのがあるけど、試してみる?」
「それ、迷信だよ? そんなんで戻ったら、逆に嬉しいよ」
「あら、そうなの? そう言えば自己紹介が遅れたわね、私はパチュリー・ノーレッジ──ただの本好きよ」
「ただの本好きが何で図書館レベルに迄本を所有してんだ」
 と、魔理沙にツッコまれるパチュリー、するとパチュリーは厭そうに魔理沙に言う。
「そんな事を言う暇があったら早く本を返してよ──何冊貸したと思ってるざっと──」
「あーあー! うるせぇ! それはまた今度な!」
 どうやらパチュリーと魔理沙は相性が悪い様だった。
 その後パチュリーもお茶会に参加して、色々とお話をした、特に女子会の様な経験した事の無い感覚で、周りから話を聞くだけになってしまい、自分は一人で紅茶を飲むばかりだった──何時の間にか、昼に出発した筈が、もう夜になっていた。
 僕は一人でベランダに出ていた、女子会の雰囲気に耐えられなかったからだ。

Re: 東方崩壊譚 ( No.3 )
日時: 2016/08/20 22:24
名前: 彩都 (ID: J85uaMhP)  

 すると隣に霊夢が現れた。
「あっ……霊夢……もっと楽しんできなよ、その方が楽しいだろう?」
 そう言うと霊夢は言った。
「何でよ? 皆と一緒に絡んで一緒に楽しむ、それが楽しいのよ? でも何で貴方は此処に?」
「僕は何で此処に居るのかが不思議でさ──こんな身に覚えの無い僕を見てくれたり、ましてや昼ご飯、お茶会に迄連れて行ってくれたりさ……全く……記憶を取り戻した後が怖いよ、皆に感謝しなきゃね──」
「そんな事をしなくても良いわよ──私はどんな人も助ける、それが私の生き甲斐……」
「へぇ……それは凄いなぁ……」
 そう言いながら僕は少し欠伸をする、少し眠たくなってきた様だった。
「では、今日は紅魔館で寝泊まりにしましょう? 記憶探しはまた明日」
「うん……そうしようか」
 そう言いながら、僕等は紅魔館で寝泊まりする事にした、レミリア達も僕等を寝泊まらせた。

「……起きなさい、貴方……起きなさいって……」
 そう言いながら、僕に馬乗りになるパチュリー──ん? 一体何なんだろう?
 そう思いながら、僕は起き上がる、こんな夜遅くに何だろう?
「貴方、この字は読めるかしら?」
「えっ? 字?」
 そう言いながらパチュリーは外へ歩く、僕もパチュリーに着いて行った。
 着いたのは大きな図書館だった、そしてパチュリーは一冊の小さなサイズの本を取りだした。
「これよ……貴方には読める?」
 そう言われながら、僕はその本を見る。
「……これは『坊ちゃん』……だね──夏目漱石だっけ?」
「あら、読めるのね、ではこれは?」
 そう言いながら、パチュリーはまたもや同じ位のサイズの本を取りだした。
「何が言いたいのか分からないけど、これは『銀河鉄道の夜』──宮沢賢治だね──パチュリー、君は何が言いたいんだ?」
 そう言いながら、問い詰める、するとパチュリーは言った。
「貴方がこれらを読めた、つまり、貴方は外の世界──日本の人間と言う事、貴方は日本人かもしれないわ──」
「へぇ、そんな事が考えられるパチュリーは凄いなぁ……」
 そう言うと、少し顔を赤くして、パチュリーは顔を隠した。
「そっそんなんじゃないわよ!早く紅魔館から人間臭いのが消えたら良いなって思ってるだけよ! それだけよ、では私はお風呂に入るわね──そう言えば貴方はお風呂に入ったの?」
「いや、霊夢達を待っていたら寝ていたよ、だから今から入る予定だよ」
「あらそう、私は入る時間が長いから急いでね」
「うん、分かったよ」
 僕の国が分かるだけで結構な収穫だったな、そう思いながら、僕はお風呂に向かった。

「ふぅ……広いなぁ、紅魔館って所は本当に広いなぁ、簡単に壊れなさそうだ……」
 そう言っていると、お風呂場の戸を開ける者が居た、それは咲夜だった。
「ん? ……」
「あっ」
 二人は声を出した、そしてそのまま硬直。
「ぴゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」
 最初に声を出したのは僕だった、僕は急いで後ろを向く、咲夜も後ろを向いた。
「……」
「……」
 無言のまま、声を上げたのは咲夜だった。
「あの……すみませんが、私も入って良いですか? どうも此処は寒くて……」
「あっはい、後ろ向いているので」
「あぁ、すまない……」
 そう言いながら咲夜は僕と同じ湯船に入った、すると、咲夜は話しかけてきた。
「お前はどうやって此処に来たんだ?」
 その質問は何回目だっただろうか? そう思いながら、答える。
「それが分からないんです、博麗神社の石畳の上に起きたら、起きる前の記憶が無くて……」
「成程な……だったらこの幻想郷や、スペルカードは分からないな」
「スペルカード? 幻想郷?」
 僕がアホらしく聞くと、溜息を吐きながら咲夜は言った。
「スペルカード──大まかに言えばこの世界、幻想郷での争いに使われるカードの事、まぁ強い存在に制限をかけましょうって言う感じね、そして幻想郷──紅魔館を含むこの世界の事──貴方達人間の世界とは少し隔離されてるけどね──」
 ふぅん、と頷いてから僕は言った。
「でもスペルカードについて一言、制限って?」
「あぁそれは簡単よ、この幻想郷を『いとも簡単に壊せる存在』が居るからよ、その対処法としてスペルカードが存在するの」
「へぇ……何れこの幻想郷って言う場所を見回ってみたいね」
 そう言うと咲夜は言った。
「あぁ気を付けた方が良いわよ、貴方達人間を食べる妖怪が跋扈しているんだから、幻想郷を『いとも簡単に壊せる存在』って言うのが、神様や人を食べる妖怪よ?」
「えっ? そうなの? それは怖いなぁ……」
 そう言いながら僕は立ち上がる、そして咲夜に感謝する。
「有難う、為になったよ……では僕は上がるよ、有難う咲夜」
 そう言いながら僕は脱衣所に入る、そして体を拭いて、服を着る。
 さぁ、もう寝ようか、大きく深呼吸を一つして、僕は自分の寝床に向かった──
 そして、目覚める、そして寝惚け眼のまま起き上がる、そして大きな欠伸をして僕は部屋を出て、朝御飯を食べに行こうとした、すると入口には霊夢が居た。
 僕は霊夢と共にご飯を食べに向かった。

Re: 東方崩壊譚 ( No.4 )
日時: 2016/08/20 22:25
名前: 彩都 (ID: J85uaMhP)  

「あっお早う二人共」
 そう言いながら魔理沙はパチュリーからパクっ……借りたであろう魔導書を読んでいた。
「今日は早起きね、魔理沙」
 少し笑いながら霊夢は魔理沙に言う。
「いやぁ、パチュリーの本が面白くてな……思わず熱中して徹夜しちまったよ」
 よくよく見ると魔理沙の目の下にクマが出来ていた。
「へぇ、それはさぞかし面白いんだろうね」
 そう言いながら僕は魔理沙の真正面に座る、霊夢は魔理沙の右隣に座る。
 そして僕等は朝御飯を食べた、僕はいち早く食べ終わり、魔理沙の魔導書を読んでみた……はぁ? 何これ? 読めない……
 すると魔理沙が僕に気づいた。
「おいおい……それは読めないだろう? それは外の世界の人間が読める言語じゃないからな……」
「へぇ……どおりで読めない筈だ……」
 僕はそう言いながら魔理沙に返した。

 その後僕等は紅魔館を離れ、博霊神社によく似た森林に来ていた。
「うわぁ、何か出そうだ……」
 僕はそう言いながら周りを見渡す、すると魔導書を持った魔理沙が言う。
「まぁな、気を付けておけよ? ある程度は守るが、自分の肉体は自分で守れよ?」
「う、うん、分かった」
 僕はそう言いながら足下に気を付ける、すると大声で霊夢が言った。
「おーい! 紫ー!? 居るんでしょー?」
 いきなりの大声で木々が少し揺れる、すると一つ目の一本角の図体がでかい──これは鬼だろうか? 僕を少し見つめている──妖怪が現れた、これは記憶喪失の僕でも分かる、『これは怪物だ』、と……
 怪物が登場した瞬間、霊夢は懐から御幣を取り出して怪物と戦おうとする、だがその怪物は──次元の裂け目でも言うべきか──謎の割れ目によって消えてしまった、そこから現れたのは紫色の服を着た綺麗なお姉さんだった。
 するとその割れ目から『こんにちわ〜霊夢さん』と喋る、割れ目から尻尾が九本ある女性が現れた、そして可愛い幼女──尻尾が二本あるので、妖怪だろう──が現れる、まるで一つの一味の様だった。
「紫、単刀直入に言うわ、『この少年は誰かしら』?」
 霊夢が僕に指を指して言った。
 すると紫と言った女性は僕を見るや否や、僕の方に向かって来て、僕を抱き締めてきた、顔には柔らかい物が……
「きゃー! 生きていたんだね、かおくん! 良かった、流石博霊神社ね」
 そう言う紫に問い詰める霊夢、紫は口を尖らせてから言った。
「少しは落ち着いて霊夢──この子は茨木華扇と同じ名前を持った珍しい子、華扇(かおう)君よ──物珍しいから、幻想郷に呼んだのよ、今日から華扇君はこの幻想郷に住む事になったの、だから博霊神社で宜しくね?」
 紫の言葉に三人は驚いた。
「ちょっと待て紫!? 相手は男だぞ!? 霊夢は女だぞ!?」
「だから何? まさかやらしい事でも考えているの?」
「そうじゃないが!」
「魔理沙の言う通りよ! ご飯を作るだけでも切羽詰まってるというのに!」
「そこは少し援助するわ」
「分かったわ」
「霊夢!?」
 魔理沙がツッコむ、僕はそのまま突っ立っているだけだった。
「あーうん……置いてけぼりだなぁ──あ、あのぅ僕の名前は華扇なんですよね? だったら僕の記憶は知っているんですか?」
 そう聞くと紫のお姉さん──紫は言った。
「それは……ごめんなさいね……私は知らないわ──私は気絶していた貴方を博霊神社に移動させただけなの」
「そうなんですか……僕の名前以外何も分からない……」
 僕が下を向くと、紫達が援護する。
「そっそんな事は無いわ! こうやって幻想郷で住めるのよ!? 結構楽しい場所よ!?」
「そっそうよね! やっぱり紫の言う通りだわ!」
「そうだな! のんびり記憶を戻せばいいじゃないか! 時間はまだあるんだしさ!」
 紫の次に霊夢、魔理沙が援護する、確かに魔理沙の言う通りのんびり記憶を取り戻すのもありかもしれない……
 そう思いながら、空を見上げた──

 博霊神社──
 僕は空を見上げた時に思った、『僕も霊夢みたいに巫女の力を扱える様になるのか?』と。
 それを霊夢に言ってみる。
「うーん、巫女って言い方では無いにしろ、神主? でも華扇がそれを望めば教えられるけど?」
「良かった、では僕に巫女の力を教えてくれないか?」
「えぇ、教えるからには徹底的に教えるわよ? 気を付けなさいよ?」
「あぁ、分かったよ霊夢先生?」
「先生って──フフッ」
 霊夢は僕の『先生発言』で笑ってしまった、僕も釣られて笑ってしまった。
 そして今は夕方、巫女の力を得る特訓はまた明日、という事になり、今日は晩御飯を食べて布団を敷いて隣同士で寝る事になった、その理由は、『もしも妖怪の類(たぐい)が神社に入ってきて、華扇を襲わない様に』だそうだ、僕ってそこ迄ひ弱に見られてるのかな? そう思いながら僕は寝る事にした──って隣に女子が居るとなると、少しドキドキしてしまう──そして翌朝──ドキドキで寝れなかった、これだと完全に巫女失格だな、そう思いながら重い体を僕は動かした──今日はどんな日になるだろう?

CHAPTER 1 終了 CHAPTER 2 に続く……

Re: 東方崩壊譚 ( No.5 )
日時: 2016/09/18 22:43
名前: 彩都 (ID: e.VqsKX6)  

東方崩壊譚(とうほうほうかいたん) 第一章 第一話 謎の少年

CHAPTER 2 残骸

 憎い! 憎い難いにくいニクいニクイ憎い!!!!!!
 一人の少女は頭を抱える、そして彼女の力で周りの竹林は荒れていく……
 少女は狂気に溢れていく──そんな空は真夜中だった──そんな彼女の瞳は赤く──紅くなっていった──

 博霊神社──
「……」
 僕の名前は華扇、突然博霊神社の石畳に寝ていた身だ、そんな僕は霊夢と同じ様な巫女の力を扱える様になる為に特訓の身──まぁ、僕は男だから巫女にはなれないけど──
 僕は綺麗な二葉に手を取る──そしてそれを引きちぎる。
「よっと、これで良いかな……?」
 そう言いながら僕は腕に篭を携え、霊夢の所に行く。
 すると霊夢は焚き火をしていた、その中に木々を入れていた。
「へぇ……焚き火か……甘藷でも焼くの?」
「えぇ、そうよ、木々のゴミとか此処に入れてね──そこの篭のゴミとかね」
「あぁ、分かった」
 そう言いながら僕は篭のゴミを放り込む、ゴウッと火が燃え盛る。
「綺麗だなぁ」
 そう言いながら霊夢を見た、すると霊夢は笑った。
「何よ? どうせ私は薄汚い巫女ですよーだ!」
 アッカンベーをして、霊夢は本殿にある甘藷を取りに行った。
 すると頭にぼんぼんを二つ付けた少女が博霊神社に来た、手にはカメラと新聞があった。
「霊夢さーん! 新聞ですよー! っとあれ? 君は?」
「僕の名前は華扇だ、宜しく」
 僕が自己紹介をすると少女は笑いながら言った。
「知ってますよ、華扇くん、私は射命丸文(しゃめいまる あや)と申します、因みに天狗です」
「天狗?」
「そうです、まぁ、その力を新聞に費やしているんですがね──」
 そんな話をしていると篭に甘藷を入れた霊夢が現れる。
「全く……そんな新聞は要らないって言ってるのに……んで、どうしたの?」
「そうそう! それなんですよね、ちょっとこの新聞を見たら分かります」
 そう言いながら僕に新聞を渡した、そして読んでみる。
「『竹林が荒れる? 恐怖の一日破壊!』? 何だろう?」
 そう言った瞬間、僕の持っていた新聞は霊夢によって奪われる、そして霊夢はじっくりと読む──そして、文に向かって言った。
「文、これって何処なの?」
「えーとですねぇ……」
 文は場所の説明をする、そして霊夢は僕に向かってこう言った。
「華扇、一緒に着いてきて、巫女の技を見せたりしてあげるから」

 被害の竹林──
「しっかし、派手にやられてるぜ……どんな力を持った妖怪なんだ……?」
 魔理沙が顎に手を当てながら土を触る……そして霊夢は言った。
「魔理沙、どう? 魔法の使い手かしら? この荒れ様は……?」
「いや、これは魔法ではない──もっと『何か』違う物だろう──その前に何でお前迄居るんだ? 文?」
「文は此処へ連れてきてくれたの」
「成程……でも華扇迄来る理由は?」
「彼も巫女の力を得たいの、少しは自分を守れる様にしないとね」
「一応男だけどな……」
「まぁ、そこは置いといて……」
 そう言いながら霊夢、魔理沙の捜査は続いた──そして夕方になった。
「もう夕日が……帰って晩ご飯を取らないと……」
 そう言いながら、僕はポツリと呟いた、その言葉に反応した霊夢が言う。
「確かに──華扇の言う通りだわ、魔理沙、今日はもう引き上げ──」
 刹那、その瞬間、その数瞬だった、僕と魔理沙の間を横切る一つの『影』が走った──その『影』は紅い瞳を持っていた──霊夢が急いで退治の準備をする。
「貴方は誰!?」
 霊夢が足早の様に口を走らせた、するとその『影』は見覚えのある影だった。
「おぅ! 誰なんだてめぇは……ってフラン……!?」
 その『影』の人物はフランドール・スカーレットだった──瞳が赤く紅い、何かに操られている様だった──そんな彼女が竹林を荒らしたというのか? そう思いながら僕は彼女が喋るのを待った。
「でも何で……? アンタはそんな事をする様な存在ではない……! どうしたのフラン!」
 だがそんな霊夢の言葉を聞かないフラン、そして彼女の周りの竹が壊されていく……! フラン、何て凄いんだ……!
「完全に我を失っているわね……! どうした物か……!?」
 霊夢が完全に自分の中に引きこもっている、その間にも周りの被害は甚大だ。
「チッ! 仕方無い! 私が相手する!」
 そう言いながら魔理沙が前に出る、果たして勝てるだろうか? 何だか勝てない様な気がしてならない。
 魔理沙は箒に乗って宙に浮く、そして魔法を発動していく、だがフランは華麗に避けていく。
 その瞬間だった、魔理沙の魔法の流れ弾が僕の方に向かってきた、僕は目を閉じながら顔の前で手をクロスしてしまった。
 だが、何も起きていない、逆に右手の手の平から煙が出ていた、僕は咄嗟に左手を手前に、右手を左手の奥に出していた、だが結論、『右手で魔理沙の流れ弾を打ち消した』に他ならないのだ。
 これはどういう事だろう? そんな事を考えている場合ではない、僕はその前に逃げないといけない、そう思いながら僕は霊夢の後ろに隠れた、霊夢はまだ考えていた。

Re: 東方崩壊譚 ( No.6 )
日時: 2016/09/18 22:44
名前: 彩都 (ID: e.VqsKX6)  

 魔理沙は魔法を避けられる事に苛ついていた、だが此処で力任せに攻撃なんてしていられない、すると霊夢は苦痛の顔を浮かべる。
「魔理沙!」
 一際大きい声に魔理沙と僕は驚いた、霊夢がこんな大声が出せるなんて知らなかった。
「逃げるわよ! 今は撤退しましょう!」
「んな事言ったって──」
「いいから!」
 霊夢の怒声に魔理沙は溜息を吐いて渋々承諾した。
「分かったよ……」
 そして僕等は急いで博霊神社に逃げる事にした──

「クソッ! 何で霊夢、お前は止めたんだ!?」
 そう言いながら、魔理沙は霊夢に怒る、だがその本人の霊夢は右手で湯呑みを持って、左手で底を持って飲んでいる。
「ふぅ……やっぱり良いお茶ねぇ──」
「おい霊夢! 私の話を聞いているのかぁ!?」
 すると霊夢は言った。
「フランの能力は『ありとあらゆるものを破壊する程度の能力』──簡単に言えば、『どんな物でも壊す事が出来る』──今の私達で勝てるかしら? 一般人の華扇を守りながら?」
 ……無言、確かにそうだ、僕はただの一般人、ましてや人間、普通の──霊夢や魔理沙みたいに力が有る訳でもない──そんな人間を守りながら戦うと言う事は、相当な負荷となる事だろう──それを『守りながら』戦う──彼女等の負担はもっと増えるだろう──そんな負担をかける為に一緒に行くのは間違いだ。
「確かにそうだね──僕は博霊神社で待っておく──」
 そう言った瞬間、僕等の居る部屋の戸を開ける者が居た、それは紫だった。
「間に合った様ね──かおくん、貴方に言い忘れていた事があったわ──」
 そう言いながら僕は紫について行く事にした──

 場所は博霊神社の境内、そして紫は言った。
「魔理沙、かおくんに何か魔法を『使って』?」
 その発言に対し、魔理沙は驚く。
「紫……それは本気か? 華扇の野郎が死んでも良いって言ってんのか?」
「あら? 『物は試し』、と言わない? さっさと使って?」
 そう言いながら魔法の使用を促す紫、何をする気だ?
 そして魔理沙は僕の見える範囲、十メートル程離れて、八卦炉を持って言った。
「あぁ! もうどうなっても知らねぇからな! 紫!」
 そう言いながら僕に向かって、熱い『何か』を放った、此処からでも感じる熱風に僕は少し後退る、だが、紫が僕の体をロックして離さない。
「少しは耐えなさい、かおくん、男の子でしょう? 良く見て? あの熱い『何か』に手を出しなさい──」
 そう言われて、紫は僕の右手を前に出した、その瞬間魔理沙の熱い『何か』は僕の手に当たる。
「!?」
 そこで驚いた、『触れても熱くない』のだ、そしてそのまま熱い『何か』は放出を終わらせた。
「……何だそりゃあ……?」
 魔理沙が間抜けな声を出す、その声に続き、霊夢の声がした。
「紫? 私は華扇を危険な目に遭わせまいとしたのに、何で貴女から危険な目にあわせようとするの?」
 すると、紫は笑う。
「あら? かおくんにも戦わせようとした私は間違いかしら?」
「戦える? あんな『何かを消す』感じの能力でどう戦う?」
 独り言の様に言った魔理沙は自分の発言に少し考え、ハッとする。
「あら、魔理沙はもう気付いたみたいね」
 紫が笑いながら扇子で鼻から下を隠す。
「……どういう事なの? 華扇に対しての狙いは何?」
 不審そうに霊夢は紫に聞く、だが、魔理沙が言った。
「バカ、霊夢──もしもだ、そのもしもだぞ?『コイツの能力が攻撃を消す』みたいな能力だったら?」
 そう言うと、紫は言った。
「大外れ、完全に違うわよ──まぁ、消すだけは正答に近いからいいけれど──」
 そして紫は言った。
「かおくんはねぇ──『元に戻す』能力なの──簡単に言えば、『最初に居た場所に戻す』が近いかな? だから『その場所に存在しない魔理沙の攻撃』は無くなったの──分かったかしら?」
 すると霊夢は言った。
「待って、それってつまり『壊れた物も元に戻せる』の?」
「そうなるわね、壊れた物なら『壊れた前に戻す』事になるわね」
「そうなんだ……」
 そう言いながら霊夢は頷く、まさか僕にこんな『力』があったとは……自分でも驚きだった。
 そう思いながら自分の右手を見ると紫が言った。
「その『力』があればどんな攻撃も痛みも『元に戻せる』──つまり無かった事になるのよ? 怪我でもね──?」
「だったら、華扇でも戦える? 工夫さえしたら?」
 霊夢が恐る恐る紫に聞いた、紫は単刀直入に言った。
「戦えるわ──工夫さえしたらね」
「そう──」
 そう言うと、僕にも自信が湧いた、僕だって、霊夢達と共に妖怪を倒せる!
「では、私はこれで……ちゃんと使い方を覚えなさいよ? 分かったかおくん?」
「あぁ、ちゃんと覚えておくよ」
 そう言いながら紫は歩いて消えた──僕は自分の右手を見ながら拳を作った。
 すると霊夢は言った。
「戦える事が分かったなら、後は私と魔理沙で死ぬ気の特訓よ!」
「えっ? 私もかよ!?」
 魔理沙は驚きながら逃げようとするが、霊夢に捕まる、こうして僕は二人からの楽しい特訓(※ただし死ぬ可能性あり)を受ける事になった──

Re: 東方崩壊譚 ( No.7 )
日時: 2016/09/18 22:44
名前: 彩都 (ID: e.VqsKX6)  

 一時間後──
 僕は汗だくになっていた、二人の特訓がキツくてキツくて……
「おらぁ! まだ音を上げんじゃねぇ!」
 魔理沙の大声に応える僕。
「こんなんでっ! 音を上げたらぁ! まだまだ弱い!」
 そう言いながら、右手を前に出す僕、この一時間で結構な右手の事が分かった。
 まず、一つ目は『手で触れた物しか消せない』事、これは手の対象内に入った物しか消せない、と言う事だ、なので、離れた物は触れない限り消せないのだ。
 これさえ分かれば、結構楽な物だ──そして今は魔理沙の魔法を打ち消そうとしている所だった──
「行くぜぇ! 光の魔法!」
 魔理沙がそう言うと、杖の先から、光のビームが現れる、僕は右手を出して、そのビームを『元に戻す』、すると光のビームは消えた、このビームに対しての使用方法は、『元々無かった場所』に現れているので、存在している物を『元々無かった場所』に『元に戻』したのだ。
 そうするビームは消える、と言う事だ。
 すると突然紫が空中から現れた。
「うわっ!? 驚いた──で、どうしたんだ紫?」
 僕がそう言うと、紫は言った。
「いえ──ね、かおくんがどこ迄自分の力に目覚めているか、確認しに来ただけよ──で、霊夢、魔理沙、どこ迄かおくんの能力を目覚めさせたかしら?」
「さぁな? 結構出来る様になったんじゃないのか?」
「多分、華扇は自分の力を使いこなせている、と言えるかしら」
 二人からは絶賛されて少し照れる、だが紫は口を扇子で隠しながら言う。
「でも、『幻想郷で生き抜くにはもっと強くならないといけない』わね──」
「強くなる? そんなののんびりで良いと思うぜ? この博霊神社に居る限りな」
「魔理沙の言う通りね」
 霊夢がそう言うと紫が言った。
「まぁ、それもそうね」
 そう言いながら紫は割れ目から消えた、そして僕は特訓を再開した──

「ふぅ、疲れた……」
 そう言いながら僕は胡座を掻いた、すると魔理沙が言う。
「結構大変だな、お疲れさんだ」
「そうか? 僕的にはまだまだ磨けると思うけどね」
「へぇ、そう言うか」
 魔理沙にグーで頭をぐりぐりされて痛がる。
「痛たたたたたたたた!」
「ヘッ! まだまだだな」
「何という強引さ……」
「何か言ったか?」
「いえ、何でも無いです魔理沙様」
「そうか」
 そんな会話をしていると、霊夢がお握りを持ってきた。
「二人共、汗を掻いたでしょう? お風呂に入ってきなさい」
「へぇ、今日は露天風呂か」
 そう言いながら魔理沙は喜々とする、すると霊夢は言った。
「安心しなさい、華扇の分もあるから」
 そう言うと、魔理沙は言った。
「あぁ、だから私に特訓を任せたんだな、華扇の分の風呂場を作る為に」
「へぇ、それは嬉しいね」
 成程、だから霊夢は魔理沙との特訓に付き合わなかった訳か、その理由に納得して、魔理沙と僕は露天風呂がある場所に迄向かった。

「いやぁ、露天風呂でお握りを食べるなんて初めてだ」
「それを言うなら、僕もなんだけどね──」
 そう言いながら、右手に持ったお握りを齧った、何とも程良い塩加減だった。
 中身は何も無い只の塩お握りだった、お米もほろほろ落ちず、しっかりとした堅さのお握りだった。
 そして今の状況、横を見れば、魔理沙の裸が見える──いや、ちゃんと遮る壁は有るもののその壁は少し薄くて、目を凝らしたら魔理沙は見える──まぁ、見ないけどね──そしてほっかほかに暖まった僕は湯船──と言うよりドラム缶だけれど──ってそんなにお金なんかかけられてやれるかって話なんだけど──を出る、そしてバスタオルを一枚羽織る。
「ふぅ魔理沙、僕は先に上がるからね? 自由に入ってってよ」
「そうか、分かった」
 僕はそう言って、服を探す──そう言えば僕は幻想郷に来てからそもそも着替えていなかったので、服装に少し困っていた。
 一体どんな服になるのだ──えぇ……? これはマジか?
「……霊夢、僕の服装は君と同じ様に腋を出さなきゃいけないのか?」
 それもその筈、今僕が掴んでいるのは何時も霊夢が着用している赤と白の巫女装束だった──男の僕がこれを着なきゃいけないのか……!?
「仕方ないでしょう? 華扇の服は一張羅、では裸で過ごさせる訳にはいかない──一応神社だし、参拝客が驚くかもしれないしね──だから華扇、その服を着なさい?」
「断固拒否という手段は無いかい? 服を他の所から買うとかね?」
「華扇、それはお金がある時に言いなさいよ──今は無い!」
「うわぁ! もうダメだ! 僕に選択権は無い!」
 半分涙目で魔理沙に聞いてみる。
「ねぇ! 魔理沙もそう思うよね!? 男が女の格好なんて──」
 魔理沙は考えている、『うぅ〜』と唸りながら考える、影からして顎に手を当てているのだろう──
 そして魔理沙は声色を下げて言う。
「華扇の女装──少し見てみたいなぁ……」
「わぉ! もう僕に拒否権等存在しない! 誰か助けてよぅ〜〜〜!」
 僕は泣きながら虚空に向かって声を荒げた──泣きながら僕は霊夢の巫女装束を着る事にした──あまり他の人に見られたくないなぁ、そう思いながら僕は虚空に願った──

Re: 東方崩壊譚 ( No.8 )
日時: 2016/09/18 22:45
名前: 彩都 (ID: e.VqsKX6)  

 翌日──
「ふえぇ!」
 変な声を上げながら僕は目覚めた、はて此処は──?
 って思い出さないと──あぁ、そうそう、僕は幻想郷と言う場所に来て、博霊神社で寝泊まりをしているんだった、つまり此処は博霊神社の中のどっか、と言う事だろう、そして自分の手に包まれる布団を折り畳んで、自分は立ち上がる──すると自分の格好が赤と白の巫女装束に気付く、そして赤面する、そうだ、僕はこんなにも『恥ずかしい格好』だったんだ──

 昨日 風呂上がり後──
「似合ってるじゃないか、華扇」
「そうね──何で私より似合って……」
 魔理沙の素直なコメント、霊夢の恨めしいコメントを身に受けながら
僕は自分の格好を見る──うぅ、やっぱり恥ずかしい──そう思いながら袴の裾を押さえる──流石に男だからスカートは止めて袴にしてもらったけど、流石に恥ずかしいよぅ……
「何で何で何で? 何で華扇の方が私より似合ってるの?」
 霊夢は僕の胸座を掴んで、鬼気迫る顔で睨む、僕が涙目になっていると、咄嗟に魔理沙が止めに入る。
「まぁまぁ! 霊夢も落ち着けって……」
「うぅ、憎い! 外の世界の人間が憎い!」
 ガルルルルとまるで猫の威嚇の様に喉を鳴らす、僕は少し汗を掻く──そしてその日は魔理沙は風呂に入った後、自宅に帰った──
 そして今に至る、と言う事だ──巫女装束を着てしまった以上もう、仕方無い、諦めて、巫女になる事にした──

 さて、まず何をしようか? そう思いながら部屋の戸を開ける──目に入ったのは落ち葉が散乱している事だった──僕は近くから箒を取って、落ち葉を掃く──
 ざぁ、ざぁ、と落ち葉と箒が擦れる音がする、この音は少し心地よい、そう思いながら無心に境内の落ち葉を掃いて、一部分に集める。
 そして場所を移動してまた箒で落ち葉を集める──すると石の階段を上る音がする──珍しい、参拝者かな? そう思いながら、石の階段の近くの石畳の落ち葉を集めて掃いていく──すると石の階段から声がした、その声は女性だった。
「あの……霊夢さん、居ます?」
 その人物の格好は、青いスカートの様な袴に白を基調とした服装の緑髪の女性だった──霊夢より少し身長は高い方か?
「あのー……聞いてますか? 霊夢さんは──」
 僕は彼女が言っている事を思い出す、彼女は霊夢を呼んでいる、僕は霊夢を呼びに行った──

「んー、どうしたのよ……」
 頭を掻きながら霊夢が現れる、服装も乱れていて、参拝客に見せる姿ではない──すると霊夢は目を見開いた。
「あれっ? 早苗じゃない? 今日はどうしたの?」
 あれっ? 霊夢の知り合いかな? まるで幼なじみと喋る感じに二人の女子は会話する。
「えぇ、神奈子様が『博霊の巫女に会いに行くのかい? だったら土産の一つでもどうだ?』って、言っていましたので、少しばかりのお土産ですけど──」
 そう言いながら、早苗、と言った人物はダンボールに入った野菜やお菓子等を霊夢に渡す。
「わぁ! 有難う! これで一週間は食に困らないわ! っと──忘れていたわね、彼は華扇って言うの、宜しくね?」
 左手で僕の事を紹介する霊夢、僕は自己紹介をする。
「僕は華扇って言います、一応記憶喪失で今は博霊神社で寝泊まりしています、因みにおと──」
 男と言おうとした瞬間、霊夢にダンボールの中の人参を僕の口に投げられる、いきなりの事に僕は投げられた反動のまま倒れる。
「うごぉ!?」
「華扇、箱を居間に持ってってくれるかしら?」
「まぁ、華扇ちゃん、大丈夫ですか?」
 あぁ、勘違いされた──そう思いながら僕は起き上がって、口の人参ごと博霊神社の居間へと運んだ──

 居間に行って、三人はお茶を飲む、すると早苗が言った。
「そう言えば私の自己紹介をしていませんでしたね──私は東風谷早苗(こちや さなえ)と言います、霊夢さんと同じ巫女で、守谷神社という神社にいます、これから宜しくお願いしますね、華扇ちゃん」
 深々と早苗は正座から頭を深々と下げる、見た目によっては土下座にも見えた、だが僕は言わなくてはならない事実がある──
「……早苗、一つだけ言うよ、僕はね──」
 僕は息を吸い込んでから言った。
「僕は男です、正真正銘の」
 その事を言った瞬間、霊夢が御幣を持って僕の頭を叩こうとする、だが僕の右手の力、『元に戻す』能力で触れて、御幣を『元の場所に戻』した、その行為をした瞬間、霊夢から舌打ちがされるが、僕は放っておく。
「……えっと、あの──男なのに何で霊夢さんの格好を?」
 早苗がそう言うと、僕は答える。
「服が無かったから、代理でね?」
「そうなんですか……でも可愛いですね、似合ってますよ」
 早苗に言われると少し嬉しかった、だけれど女装はあまりしたくない……そう思っていると、早苗が突拍子な事を言った、その事に僕と霊夢は驚いた。
「華扇さん、もしよければですが、守谷神社を見学しません? この博霊神社と違う、守谷神社の事も見学してみては如何でしょうか?」
「えっ? 華扇を守谷神社に!?」
「僕が他の神社に!?」
 そう言いながら早苗は笑顔で言った。
「はい、そうです、どうです華扇さん、守谷神社を見学してみませんか?」

Re: 東方崩壊譚 ( No.9 )
日時: 2016/09/18 22:45
名前: 彩都 (ID: e.VqsKX6)  

「…………」
 無言のまま僕は早苗を見つめる──すると早苗は目を逸らす。
「す……すいません、あまり男性に見つめられる事が無いので、少し恥ずかしいです……」
「あっ、すいません……」
 僕も目を逸らす、まるで初々しいカップルの様にも見える──そして霊夢が言う。
「華扇はどうするの? 巫女の修行は守谷神社でも出来る、私と魔理沙の特訓だけじゃ戦い方が二人だけになってしまう、守谷神社の場合、三人──正確には三体の神なんだけれど──も居る、つまり華扇一人に対して、三人での戦いも出来る、それの事を考えたら、私は守谷神社に行って、特訓する、というのも出来るけど?」
「確かにそうですね、霊夢さんの言う通りですね、神奈子様、諏訪子様と話を合わせれば、戦って貰えるかもしれませんね……」
 霊夢と早苗の話に対して、頷いてしまう点もある、僕は一体どうしたら……? いや──待てよ?
 一瞬で僕は思い付いてから、言う。
「待って下さい──行っても良いです、ですが神奈子様、諏訪子様って『人』が困るんじゃないんですか?」
「『人』、と言うより、『神』なんですがね……」
「そこはどうでもいいんだけど……ってそうじゃなくてさ、いきなり相手の家に行って、相手の家でご飯を食べる位失礼ではないですかね? もう少し時間が経ってから、早苗が二人に話して、何時でも守谷神社で僕を迎えられる様にしてくれれば、何れは守谷神社で特訓や、二人に会えるかもしれないでしょう?」
 僕の論を聞いて、早苗や霊夢は納得する。
「華扇の言う事も一理あるわね……」
「そうですね──失礼でしたね、すみません……」
 そう言いながら早苗は謝る、謝らなくてもいいのに……
「おいおい、謝るなよ、また今度誘ってくれよ」
 頭を下げる早苗を僕は頭を上げさせる、そして早苗は頭を下げながら帰って行った、そして霊夢は言った。
「……華扇? やっぱり行きたかったんじゃ──」
「いや、そうじゃないよ、いきなり相手の土俵に入るのが厭なだけだっただけさ──さぁ、貰った物でご飯を食べよう?」
 僕がそう言うと、霊夢はにっこり笑った。
「そうね──ご飯にしましょうか?」

「全くだ、完全に全くだ」
 そう言いながら魔理沙は僕の背中を椅子代わりにして頬杖を突きながら、喋る。
「何で早苗の事を断ったんだよ? 結構強いぜ?」
「そ……それでぇも……クッ、いきなり行くのは僕のルールにぃ! 反するっていうかぁ……」
 息も絶え絶えになりながらも僕は何とか言葉を紡いでいく。
「まぁ、私が言える立場ではないからいいんだけどな──さて、どうするんだ? まだ特訓を続けるか?」
 魔理沙がそう言うと、僕は行った。
「もう良いよ、少しは強くなった気がするよ、今から魔理沙と戦っても勝てないけれどね」
 そう言うと魔理沙は僕の蟀谷をグーでぐりぐりと回す。
「あだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだ!!」
「外の世界から来たお前が一丁前に言うんじゃねぇ!」
 魔理沙の拳は痛かった、非常に痛かった、いや、本当に。
 そして魔理沙は言った。
「どうする? 本気を出して戦ってもいいのか?」
 その言葉を聞いて、僕は驚いた。
「えっ? 今の今迄本気じゃないの!?」
「そりゃそうだろ、ガキ相手に本気なんか出してられないしな」
 帽子の上から頭を掻く魔理沙、すると僕の頭を撫でる。
「まぁ、お前も強くなった事は認めるぜ? 認めるだけだからな!」
 そう言いながら魔理沙はそっぽを向いて顔を赤くする。
 何だか可愛い、と思ってしまった、でもそれは口にしなかった、また頭をぐりぐりされそうで──

「華扇、晩ご飯よ?」
 そう言われながら、雑草を刈っていた僕は霊夢に呼ばれた。
「あぁ、今行くよ」
 僕はそう言って、背中に背負った篭に雑草を入れて、一段落をする。
 そして縁側の近くに篭を置いてから、僕は靴を脱いでから入った。
「今日は早苗から貰った野菜の味噌汁よ、そして魚、漬け物よ」
「へぇ、今日は一杯あるねぇ」
 そう呟きながら、僕は早速食べる事にした、うん、旨い、そう思いながら食を進めた。

 そして食べ切って、僕は体を伸ばす、欠伸もしてきたので寝る事を決意する。
「うーん……霊夢、今日はもう寝るよ、お休み……」
「あらそう? それではお休み、華扇」
「あぁ……」
 目を手で擦りながら、僕は布団と敷き布団と枕を用意して、床に敷いて、布団の中に入る、そして考える。
 果たして自分の論はこれで良かったのだろうか? 早苗に不快な思いはしていないだろうか? そう考えると目が覚めてしまう──いいや、もう寝ないと……そう思いながら僕は横になって、目を閉じる──
「何悩んでいるの、かおくん?」
 いきなり耳元に声がして、目が覚める、そして何処から声がするか、探す、すると頭を撫でられる、ん? と思って、枕の少し上を見上げる、そこには、『スキマ』から頭だけを出して、覗く紫の姿があった。
「うわぁ!?」
 つい、大声を上げてしまう、これが幻想郷で三回目の紫との邂逅だった──

Re: 東方崩壊譚 ( No.10 )
日時: 2016/09/18 22:45
名前: 彩都 (ID: e.VqsKX6)  

「あら? そんなに驚かなくても良いじゃない?」
 紫はそう言いながら『スキマ』から僕の枕を踏んづけて、紫は僕の前に現れた。
「……それで、何の様なのさ?」
 僕がそう言うと、紫は言った。
「いや、ねぇ? 私は『境界を操って』──見る事が出来るんだけどね──『スキマ』から見てたけど、かおくんって特訓頑張ってるじゃない? それで何か出来たらなぁー……何てね?」
「そうか、それで何か思い付いたのかい?」
 僕がそう聞くと紫は頭を横に振った。
「無いのか……」
 僕がそう言うと、紫は言った。
「そもそも傍観者なのに何も手伝える事は無いわよ」
「傍観者ねぇ……」
 僕はそう言いながら欠伸をする。
「その前にもう寝かせて欲しいなぁ? 明日は早いかもしれないしね?」
 そう言うと紫は言った。
「それもそうねぇ……明日も頑張ってね、かおくん?」
 笑顔でそう言うと紫は『スキマ』を作りだし、その中へ入った。
「今日の所はさよならかおくん? 特訓頑張ってね?」
 そう言って、紫は『スキマ』の中へと消えた……そして僕は目を擦りながら、布団の中へ入り、睡魔に襲われる……

 ちゅんちゅん、と小鳥の囀りが聞こえる、その鳴き声と共に僕は目覚めた──そう言えば昨日紫が来ていたなぁ、そう思いながらぼさぼさの髪をといて、布団を畳む。
 さぁ、今日も魔理沙や霊夢との戦い──基特訓をしようか──
 そう思いながら、霊夢の所へ向かう僕、すると霊夢と魔理沙が唸っていた。
「あぁ、華扇か……」
 僕の存在に気付いた魔理沙が挨拶をする、そして霊夢が唸りながら言った。
「ううむ……急がないとね……」
 一体どうしたんだろう? そう思いながら僕は魔理沙に聞いた。
「二人は何に唸っているの?」
 そう言うと、霊夢はすぐさま言った。
「華扇、貴方を利用させて貰うわ」
「利用──?」
「フランの事よ、あの子の能力は『ありとあらゆるものを破壊する程度の能力』、あの子の力で壊された物を貴方の右手の能力で直して欲しいの──」
 成程、利用とはそう言う意味か、納得──確かに壊された物を直す事が出来る、そんな能力の右手を僕は宿しているのだ、利用価値が高いだろう。
「分かったよ、協力するよ」
 僕がそう言うと、霊夢は笑った。
「協力する、じゃなくて、利用されるでしょうが、フフ……」
「今、それを言うのか?」
 呆れながら魔理沙は言う。
 そして今日は特訓はせず、博霊神社の境内の中のゴミを拾ったり、雑草を刈ったりもした──
 そしてその日の夜──
「とりあえず、私と魔理沙でフランを攻撃する、そしてフランは反抗して、色々な所を壊していくわ、華扇はその隙をついて壊された所を右手で修復してくれる? 魔理沙、明日の戦いは体調を全快にして、挑んでね? 華扇もよ? その場で腹痛が起きたら大変なんだから──」
「それを右手で治せばいいじゃねぇか?」
 魔理沙がそう言うと、霊夢は、『成程!』みたいな顔をする。
「まさか気付かなかったのか?」
 呆れた顔をしながら、魔理沙は手を額に置く、僕も『右手で治せると思う』と思っていた所だ。
「自分の肉体でさえ、戻せるのね、腹痛を起こす前迄戻して……」
「そういうこった、だから大丈夫だろ?」
 そう言いながら魔理沙は立ち上がって、左の掌を開けながら右手を握って、左手の掌にぶつける。
「やってやろうじゃねぇか! 勝つのは私と霊夢だ!」
 そう言いながら魔理沙の腹部から、『ぐうぅ〜』、と可愛らしい音がする。
「えっと、あの、これは……」
 あたふたしながら赤くなった顔を帽子の鍔の庇で隠す、そして僕は小声で言う。
「魔理沙は可愛いなぁ……」
 その声が聞こえたのかは知らないが、顔を赤くしたまま僕の事を蹴ってくる。
 痛い、痛い、痛いってば! そう言うと、霊夢は言った。
「魔理沙は可愛いわねぇ」
「そ……そうか? えへへ……」
 えっと何この変わりようは……? やっぱり魔理沙は僕を認めてはいないのだろうか? そう思っていると、霊夢は消える、魔理沙の為にもう晩ご飯にするらしい。
 ていうか、もう外は暗くなっていた、道理で少し涼しい訳だ──そう思っていると、今日は鍋だった。
 机に布を敷いて、水や野菜、肉等を入れる、そして魔理沙の魔法で暖めて、温かい鍋の完成だ。
 とても美味そうな一品で、僕もお腹が鳴ってしまった、すると魔理沙が言った。
「華扇は可愛いなぁ」
 邪悪な顔で笑われて、顔を赤くする、これが少し前に魔理沙が感じた感情か、そう思いながら魔理沙を蹴った。

 そして鍋に入った物を全て食べ終え、僕はその場で寝転がる。
 ふぅ、結構食べたなぁ、そう思いながら僕は湯呑みを持って、縁側に出る。
「ふぅ、今日も夜は綺麗だなぁ」
 そう言いながら僕は月を見る、すると霊夢が現れた。
「そうねぇ──『異変』も無い、平和な幻想郷になって欲しいわね──まぁ、妖怪が居る限り私は『異変』を解決しなくちゃいけないしね──」
 そう言いながら霊夢は憂える、そして言った。
「華扇、あのね、フランの状況は『異変』、と睨んでいるのよねぇ──」
「『異変』? それは何だい?」
 僕が聞くと、霊夢は言った。
「そのまんまの意味なんだけどなぁ……まぁ、良いわ──『異変』って言うのはね、妖怪や魑魅魍魎が突然暴走する事を指すの、そしてその『異変』を解決するのが、私、博霊の巫女の役目なの──」
 そしていきなり立ち上がって、霊夢は言った。
「そして私は全ての『異変』を解決してみせる!」
 そう言って霊夢はまた言葉を続けた。
「とりあえず、今日はもう寝ましょう?」
「それもそうだね」
 そう、僕は返答して縁側から部屋に入った──そし翌日の為に備えて早めに寝る事にした──

CHAPTER 2 終了 CHAPTER 3 に続く……

Re: 東方崩壊譚 ( No.11 )
日時: 2016/10/16 21:15
名前: 彩都 (ID: w93.1umH)  

東方崩壊譚(とうほうほうかいたん) 第一章 第一話 謎の少年

CHAPTER 3 破壊

 翌日──
 小鳥の囀る音で僕は目が覚めた、そして周りを見やる、何も無い、ただの和室に僕一人だけがいた、そして僕は起き上がって、欠伸を一つ、そして繰り返して、もう一つ──ボサボサの髪を少しいじって、僕は立ち上がり、布団を畳んでいく。
 僕はその場で座って、少しだけ柔軟体操をする、今しても意味がないかもしれないが、一応念の為の事を考えて、今してみる、そして首を鳴らしたりしてみる、コキキッと軽快な気持ち良い音がする、僕はその場で深呼吸、それを三回する、そして僕は立ち上がって、背を伸ばす。
 よし、今日も平穏だなぁ……そう思いながら僕は戸を開けて、霊夢の起床を確認しに行った。
 今日は念の為魔理沙も博麗神社で寝ている──序でに起こしてあげよう、そう思いながら霊夢を起こしに向かう、そして霊夢の部屋の戸を開ける。
 何とも呑気に寝ているものだ──少しだけ呆れる、そのまま僕は霊夢の布団を引っ剥がし、霊夢に向かって、大声で叫ぶ。
 霊夢はいきなり飛び上がって、周りを確認する、妖怪の仕業か!? そう思いながら周りを見やった様だった。
 いや、流石にこんな外が夕方の青くなった空の様な時間に妖怪が襲ってくるか? そう思いながら僕が見ていると、お前の仕業か、と思える様な顔をしながら僕を攻撃した。
 あまりにも痛かったが、その前に右手の能力、『元に戻す』能力で『痛みを痛くない時に元に戻』すので、意味が無いのだが──
 そして考える、巫女の仕事とは早い時間に起きる、簡単に言えば、七時八時に起きるのだ、まぁ、一般の学生と大体は一緒なのだ、そして魔理沙もその天秤に掛けてもいいのだろうか? いや、普通は違うだろう? だから今回は起こさない様にしよう、そして霊夢に怒られろ、僕の特訓のお返しだ、そう思いながら魔理沙を起こさない事にする。
 そして朝九時に起きた魔理沙は霊夢に怒られるが、僕は見て見ぬ振りをした。

 そして昼の十二時になった、丁度お昼の時間だった。
 僕はご飯を食べる中、怒られて、左頬が赤く腫れた魔理沙を見て、心の中でほくそ笑む、そしてその心の中のほくそ笑んだ僕に気付いて、魔理沙は僕に攻撃して、ご飯中に暴れるな! と霊夢が言って、僕と魔理沙の頭に拳骨を食らわした。
 そして結局、その日の昼ご飯はそこで終了、喧嘩した瞬間から回収された──
 そしてお昼ご飯の後、僕と魔理沙は落ち葉回収をした、少しでも体を動かした方が良い、と霊夢の言葉があったからだ。
 僕は博麗神社の境内の周り、階段部分を、魔理沙は博麗神社の裏の方を担当した、そして僕は参拝客に頭を下げたりした、最近可愛い巫女さんが博麗神社に居る、という噂を確かめに来たらしい、だが僕は男だ、可愛い巫女さんは霊夢以外に魔理沙か? とか思っていたが、参拝客に聞くと、僕の事だった、いや、僕は男なんだが……そう説明すると、参拝客は驚いていた、簡単に僕の経緯を教える、僕は博麗神社の境内で寝ていた男で、紫から、博麗神社で寝泊まりする様に、と言われていて、服が無いから、巫女装束を来ているだけ、と伝える。
 納得はしてくれた様で、僕は安心したが、まぁ、後々こういう間違いをする人はいるかもしれないな、そう思いながら箒で神社の石の階段の落ち葉を掃いていく──そしてちりとりで回収する──

 そしてもうすぐ夕方になる、霊夢の話によると、吸血鬼──レミリア・スカーレットやフランドール・スカーレット、二人の事、僕はそもそも吸血鬼とは知らないけれど──は太陽に弱い、つまり朝には出ない、昼にも出ない、と言う事は、夕方以降に出る可能性が高いのだ。
 遅くても夜には出る、実際、僕が特訓している間で、被害を受けた竹林は結構な程ボロボロになっている様で、僕が『元に戻』さなければならないが──まぁ、その吸血鬼のフランは霊夢と魔理沙が倒してくれるから問題はないが──
 そして何とか話を理解して、僕、霊夢、魔理沙の僕達三人はその被害を受けた竹林へ向かう──そして霊夢と魔理沙が勝つ、と思っていた、そう、『思っていただけ』だった──その時迄は……

 被害の竹林へ着いた僕達はその件(くだん)のフランを探すべく、僕達は離れて竹林の中を探す、そして十分が経った、中々見つからないので、僕は少し座って、休憩していた。
 大きく溜息を吐く、中々の大きさの竹林(と言っても、竹や笋(たけのこ)は物の見事に折られて、少し視界は良かった)だが、何と言っても広かった。
 軽く、霊夢の博麗神社の何十倍とか言えそうだった。
 そしてそんな中を結構歩いた僕は表彰されても良いかもしれない──だが霊夢と魔理沙の方が僕より一所懸命に探しているかもしれない──そう思うと、少しだけだが、力が湧いてくる、あの二人に負けたくない、そう思いながら僕はまた立ち上がる。
 そして少し歩いて、僕は赤い何かを見つける、薄いピンクの帽子に、赤色の服、そして極めつけは色々な色に光るクリスタルの様な翼、そう──フランドール・スカーレットその者だった──

Re: 東方崩壊譚 ( No.12 )
日時: 2016/10/16 21:21
名前: 彩都 (ID: w93.1umH)  

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
 僕の叫び声が竹林に響く、そしてフランがのっそりのっそりと僕に近づいていく──そしてフランは一言言った──
「あ? お久し振り……でも、貴方はもう死ぬから、お久し振りとか関係無いね──」
 その瞬間、フランが僕に向かって、綺麗な右手で攻撃しようとした、だが僕は何とかギリギリで避ける、避けた瞬間僕は足を絡めてしまい、ずっこけてしまう。
「あいたた……」
「……何で、何で避けるの……? 何で避けるのぉぉぉぉぉぉ!!」
 怒声、僕とは違った声で彼女は叫ぶ、そして僕に向かって攻撃をしてくる、だが僕は避ける、そして左手でフランの右頬を殴ろうとした。
 だが左手でフランは僕の左手首を掴んで、笑った。
「甘いのは、貴方でしょ?」
 くにり……僕の左手は手の甲と腕が当たっていた、えっと、どう言う事だ? その瞬間、とんでもない激痛が僕の左手から脳に伝える。
「うわぁぁぁぁぁぁ!?」
 そして少し頭の中が冷静になる、まさか自分の『左手が簡単に折られている』事に気が付かないとは! だから手の甲と腕が当たったのか。
「もう、逃がさないよ?」
 フランの言葉を聞いた瞬間、僕の左腕は捥がれた、まるでぬいぐるみの手を根本から捥ぐ様に──
 無くなった、僕の左腕が──
「アハハッ! 簡単に捥げちゃった!」
 笑いながらフランは僕の左腕を振り回す、一応自分のなんだから、振り回しては欲しくないが──
 そして僕の左腕に遂に激痛が走る。
「あっ……かぁっ……!」
 激痛の所為で上手く体が反応してくれない、これが激痛の感覚か。
「ねぇねぇ、捥がれたけど、どうする?」
 笑いながらフランは僕の左手を握り潰す──だけれど、僕の右手は『元に戻す』能力、左手に触れたら『元に戻』る、そして僕は自分の左手を『元に戻』す、そして激痛さえも自分の左腕から消える。
 そして僕の左腕を見て、フランは体を震わせながら、言葉を紡ぐ──
「何で……何で私が捥いだ『左手が在る』の!?」
 驚きながら、フランはもう一度僕の左手を捥いだ、そして僕の能力で『元に戻』す、捥いでも捥いでも、フランが持っていた左手は無くなって、自分の左肩に戻る、そんな事が何回も何回も繰り返す、そして僕は何回も何回も自分の右手で左肩を触る羽目になったのだが──そして何回繰り返したか分からない、それだけ何回も何回も繰り返していたのだろう──するとフランは言った。
「何で! 何で! 何で!? 何で無くならないの!?」
 そう言うと、僕は言った。
「もう諦めなよ? 僕の体は何度も何度も蘇る事になる、何度も何度もやってて疲れただろう? 生憎僕だって暇じゃないんだ、だからもう止めよう?」
 そう言いながら座っていた僕は立ち上がって、歩を半歩下がる、そして逃げる準備をする。
 そして僕は走って逃げた、すると僕を攻撃しようとするフランは勿論僕を追いかける、そして僕は考える。
 とりあえず、魔理沙、霊夢に合流しなくては──そしてフランと戦ってもらわないと──そして僕は縦横無尽に竹林の中を走り回った──そして赤い格好の女性──霊夢だ──を見つけて、少し安心する。
「霊夢! 魔理沙は何処だい!?」
 僕の声を聞いて、霊夢は返答する。
「えっ──? 魔理沙は──!? って何でお前にフランが!?」
「そんな話は良いから! 僕は魔理沙を探しに行く! だから霊夢はフランを止めて!」
 僕が必死に言うと、霊夢は驚きながらも頷いた。
「え、えぇ、分かったわ──頑張ってね!」
「それは君もだ!」
 僕は走りながら、霊夢の左手と僕の左手を合わせて、バトンタッチをする。
「さぁ、フラン、私と戦いましょう!」
 霊夢はそう言いながら御幣を持って、宙に浮いた──

「全く──フランは何処に居るんだ──」
 魔理沙が一人ごちていると、目の前に僕を見つける。
「おーい、華扇ー? フランは見つかったかぁー?」
 魔理沙の声が聞こえて、僕は周りを見回した、すると僕の真上に魔理沙は箒に乗りながら浮いていた。
「魔理沙!? 探していたんだよ! 今霊夢がフランと──」
 僕は喋っているのに、魔理沙は自分の右手を出して平手を見せながら、僕を黙らせる。
「分かった、分かった、お前の言いたい事は分かった、今、霊夢がフランと戦っているんだな?」
 僕が言おうとしていた事を魔理沙は簡単に言う、そして魔理沙は僕に向かってこう言う。
「霊夢の場所は何処だ? 早く案内してくれよ、華扇?」
 そう言うと、僕は少しだけはにかんで言う。
「あぁ! 行こう魔理沙!」
 僕と魔理沙は霊夢とフランが戦っている竹林の方へ向かった──

 ガリガリガリィ! と何かの砂を巻き上げる様な音がする、するとそこには、少しボロボロになった霊夢と右手が土で汚れたフランの姿があった。
 霊夢は少しだけ息を切らしていた、御幣も、白い部分が土で汚れている。
 もう少し早く着ていればあんなに汚れる事は無いのに──何て僕は遅いんだ、僕はそう思いながら霊夢に声を掛ける。

Re: 東方崩壊譚 ( No.13 )
日時: 2016/10/16 21:24
名前: 彩都 (ID: w93.1umH)  

「霊夢! 大丈夫かい!?」
 僕がそう言うと、霊夢は少し汗を掻きながら僕に言う。
「あんたぁっ! 見たら分かるでしょう!?」
 険相な顔を浮かべる霊夢、すると箒に乗った魔理沙が言う。
「加勢するぞ、霊夢──!」
「全く──遅いわよ、魔理沙!」
 霊夢がそう言うと、魔理沙は笑って箒の棒に乗る、完全に臨戦態勢だった──
「さぁ、行くか、霊夢!」
 そう言った瞬間、魔理沙はフランに向かって箒の移動スピードを上げる、そして八卦炉を取り出して魔法を使う。
「はぁぁぁぁぁぁ! いっけぇぇぇぇぇぇ!!」
 魔法をぶつけようとする魔理沙、だがフランは右手を前に出してその『魔法』ごと壊す──そして魔理沙は笑う。
「やっぱり正面突破は出来っこない、かぁ──でも、楽しくなってきたな!」
 そう言いながら八卦炉から幾つもの魔法を生み出して、フランにぶつける、流石にこれは僕は『倒した!』と思った、だが僕の思いは簡単に潰される、何故なら色々な魔法でさえもフランの右手で破壊されていたからだ。
「……霊夢、勝てるのか、魔理沙と霊夢はフランは──?」
 僕がそう言うと『まるで愚問だ』と言うかの様な溜息を吐いて霊夢は言った。
「さぁ? それは魔理沙次第よ──いい加減休憩も止めないと攻撃している魔理沙から何を言われるか──それじゃあ、私も行くわ、華扇、貴方はそこで見ていなさい」
「……こういう所で力になれなくて、僕は悔しいね、もっと力があれば……僕だって手伝えたのに──」
 すると僕の頭を撫でる霊夢、いきなりどうしたんだろう?
「私はアンタがいる事で嬉しいわ、だって掃除とか、雑草処理とか楽になったもん、でもね、華扇が来なかったら『私の博霊神社は今よりも賑やかにならなかった』わ、だから私は華扇が来てくれた事に感謝するわ──」
 そう言って、敵に立ち向かう霊夢の背中は大きく感じられた、そして霊夢はゆっくりと歩きながらフランと魔理沙の戦っている場所へ向かう。
 霊夢が倒すのか、魔理沙が倒すのか、それは分からないが、霊夢の眼光は鋭かった、これなら誰でも倒せそうだった。
「フラン、私が貴女を倒すわ、再戦よ──!」
「私もいるんだ、私も混ぜろって」
 そう言いながら魔理沙は箒を肩に掛ける、そして霊夢は左手の人差し指を立てる、魔理沙は右の人差し指を立てる、そして二人の腕はお互いにぴったりと合わせて二人は言った。
「私がお前を倒す、フラン!」
「私もお前を倒す、フラン!」
 二人の少女は一人の吸血鬼に刃向かった──その戦いを、見る事しか出来ない僕は歯痒かった──

 破壊、破壊、破壊! フランは目の前にいる三人の女(その内一人は男だ)を壊そうとしていた、いや、正確には『殺そう』としていた、そしてその内の霊夢と同じ巫女装束の女(華扇の事だ)の事が不思議だった、何度破壊しても復活する左手、その度に巫女装束の少女は右手で触れていた、まぁ、痛みが走る場所位触っても普通だろう、そう思いながら見ていると、自分が引きちぎった左手が右手に無い、そして少女が言った『僕の体は何度も何度も蘇る事になる』、その発言が未だに不思議だった、だがその不思議もすぐに解消する事になった、その巫女装束の少女は走り回って、何かをしている、右手で竹林の竹を触る、すると折れた竹が『元に戻』っているのだ、それを見て、フランは確信する、あの巫女装束の少女──彼女の能力は自分の屋敷のメイド長、十六夜咲夜の能力、『時間を操る程度の能力』に酷似していた、だが咲夜の能力は『時を加速させたり、遅くしたり停止させる』事が出来る程度だ、『時を巻き戻したり』は出来ない筈だ、なのでもしもの事だが、巫女装束の少女が『時を巻き戻す程度』の能力なら、自分がもいだ左手が何時の間にか元通り、という不思議も頷ける、だが本当に『時を巻き戻す』程度の能力、と断定してもいいのだろうか? もしかして『起こった事象を無かった事にする』程度の能力かもしれないし、そうでないかもしれない、まだ断定出来る事ではないかもしれない、だがこれ以上は何も思い付かない、なので、巫女装束の少女の能力は『時を巻き戻す』程度の能力、と仮定しておこう、そう思いながら巫女装束の少女を見続ける。
「目の前がお留守だ!」
 そう言いながら魔理沙が八卦炉でフランを攻撃する、僕はその戦いを見ているか、竹林の修復をしている以外何もする事が無かった。
 僕に何か出来る事は──無い、それだけだ、差し詰め僕は魔理沙や霊夢、フランの能力にだって弱い、そりゃあ霊夢は巫女で僕よりも強そうだし、魔理沙はあの八卦路とか魔法で弱さを補っている、では僕は? 僕の能力はただ単に『元に戻す』のみの能力、魔法や八卦炉でさえないのだ。
 だが攻撃を無かった事に出来るし、フランが破壊した竹林だって今正に『元に戻』している、これって強い能力なのか、分からない。
 そう思っていると少し奥の竹林が破壊される、さて、もう少し頑張るとするか──

Re: 東方崩壊譚 ( No.14 )
日時: 2016/10/16 21:26
名前: 彩都 (ID: w93.1umH)  

「クソッ! 中々手強いなぁ!」
 魔理沙はそう言いながら、八卦炉からフランに向かってビームの様な物を出す、その光景に僕はただ見る事しか出来なかった。
「フランも中々強いわね──私は今驚いているわ──でもね、異変解決をしなくちゃ博麗の巫女は務まらないわ!」
 そう言いながらも霊夢の攻撃は増すばかりだ、僕も早く強くなりたいなぁ、と思いながら竹林を修復していく。
 するとフランは僕の事を見ながら言う。
「アハハハハハァ! 巫女装束のお姉ちゃんも一緒に私と遊ぼうよお? 大丈夫だよ、私が綺麗に壊して上げるからぁ……」
「生憎僕は男でねぇ、巫女装束のお兄ちゃん、が嬉しいかなぁ? でも少しは遊んであげるか……」
 僕はそう言って、竹林の修復を辞めた、何時でも出来るだろう、そう思いながら僕はフランを見つめる。
「さぁ、かかってこいよ、僕だって魔理沙と特訓をした、少しは僕だって強くなっているだろう?」
 そう言いながらフランを少し挑発する、するとフランは僕の思惑通りに挑発に乗った。
「かかってこい、ですってぇ……? 面白い、行かせて頂くわ!」
 フランは僕の居る竹林に向かって急速な速度を出しながら僕に向かってくる。
「巫女装束のお姉ちゃん──じゃなかった、巫女装束のお兄ちゃん、私と遊びましょう?」
 そう言いながら自分の右手を出すフラン、また左手を毟った様に僕を破壊するつもりか? でも出来ないよ、何故なら僕は──
「余所見有難う、華扇」
「感謝するわ、華扇」
 二人の少女の声が聞こえる、そう僕は──一人で戦っているのではないからだ。
 魔理沙と霊夢、二人と一緒に戦っているからだ。
「!? しまっ──」
 もう遅い、魔理沙と霊夢の渾身の一撃がフランに襲いかかる、そして渾身の一撃でフランはどこかへ吹き飛んだ──これで退治出来たかなぁ……?

 そして少しだけ僕らは休憩をして、座り込んで話をする。
「ねぇ、二人共、フランの様子、可笑しくなかったかな? まるで目が紅くなっていた様な気がするんだけど──?」
 そう言うと魔理沙が言った。
「そうかぁ? 寝不足で目が紅くなっているんじゃないか?」
「魔理沙、それは無いわ……」
 若干霊夢が魔理沙の発言に引く、霊夢の発言で顔を真っ赤にしながら魔理沙は霊夢に言い返す。
 こういう話をしていると魔理沙も可愛いんだけどなぁ……そう思っていると、ボロボロのフランが現れた、しかも肩を押さえながら僕らの方へと向かってくる──
「アハハハハハァ、随分大きな痛手をしちゃったぁ……それでもお姉ちゃん達を壊す迄、私は止まらないわ……」
 僕は完全にボロボロのフランとは戦いたくなかった、だが霊夢が少しだけ動き出す。
「フラン、貴女一体どうしたの? 今日は何だか可笑しいわよ……?」
 すると霊夢は何かに気付いた、そして僕に向かって大声で言う。
「華扇! 貴方『壊れた人を壊れる前迄『元に戻』せる?』少し確かめたい事があるの」
 そう言うと僕は答えた。
「それは無いけれど……、少し試してみるよ」
 そう言いながら僕はフランの左肩に触れて、『右手』の能力、『元に戻す』能力を使用する──すると反抗的、暴走的、暴力的な紅目のフランから、僕が最初に出会った時の普通の綺麗な色をした目のフランに戻る、えーと、暴力的になった子でも右手で触れれば『元に戻る』のか、そう考える僕、でもちょっと待って? 何で『フランは触れられただけで『元に戻』った』んだ? 可笑しいではないか、それではまるで『フランが何者かによって操られていた』、と言う事になる、では誰がフランを操ったんだ……?
 僕が顎に手を置いて考えると、霊夢が言った。
「やっぱり華扇も気が付いた? フランが『操られていた』事に……」
「……やっぱり、そうだよねぇ霊夢──」
 すると僕と霊夢の会話に少しだけオロオロしながら困っている魔理沙を見つめる、すると霊夢が魔理沙に言う。
「魔理沙、これは簡単よ? フランは『誰かによって操られていた』、たったそれだけよ」
「へっ? つまり、洗脳に近い事になっていたのかフランは?」
「そうよ、魔理沙、誰かが『フランを洗脳した』、洗脳した相手が見つからない限り、フランはまた操られてしまうわねぇ……」
 ハァ、と溜息を吐きながら、霊夢は考える、すると僕は理解した、『洗脳されていたから、『右手』の能力が『洗脳される前迄元に戻』らせた』と言う事に──成程な、そう言う事だから『元に戻』ったのか、納得だ。
 それにしてもこの『右手』の能力は少しだけだが凄いなぁ、そう思いながら自分の右手の掌を見て、強く拳を握った──

 僕が能力でフランに触れるとフランは綺麗な目に戻ってから、気絶した、洗脳された人によくあるのかな、気絶って? そう思いながらフランが目覚めるのを待った──
 数時間が経った、フランはゆっくりと目覚める、フランが目覚めた事に気付いた霊夢は言う。
「フラン、起きたのね、早速なんだけど聞きたい事があるの」
 霊夢はそう言いながらフランに問う。
「貴方、此処に居る理由が分かる? もしくは今の今迄何をしていたか、覚えてる?」
「……此処は何処なの霊夢?」
「そうね、フラン、貴方は私に、魔理沙と共に倒される迄この竹林を襲っていたのよ、それは分かる?」
 霊夢が優しく言うとフランは頭を横に振る、本当に洗脳されている感覚がした、だが本当に洗脳されているかはまだ分からない。

Re: 東方崩壊譚 ( No.15 )
日時: 2016/10/16 21:29
名前: 彩都 (ID: z5ML5wzR)  

 するとフランは霊夢の服の裾を掴んで縋る様に言う。
「何で私は屋敷の外に出ているの!? 咲夜は!? お姉様は!?」
 フランは完全に霊夢と魔理沙と戦った記憶が無かった──僕は不思議に思いながら口を開けるしかなかった──その後霊夢と魔理沙と僕はフランを紅魔館へと送る──

「──フランが」
 そう言いながら紅魔館の主、レミリア・スカーレットは声を出す、そして霊夢は言う。
「フランは目が紅かったわ、そしてこんな事が出来るのは蓬莱人──輝夜の近くにいる兎の鈴仙・優曇華院・イナバ──ソイツしか思い付かないわ、だけれどフランが覚えていないのなら仕方ない、永遠亭を叩くしかない、そして話を聞く」
「……」
 レミリアは自分の裾を掴んでいる妹──フランドール・スカーレットを見ながら呟く──
「ねぇ、霊夢、魔理沙、咲夜、私とこの巫女装束のガキだけを残して、この部屋から出てくれない? 少しこのガキと話したいから」
「!? 何で華扇が!」
 そう言いながら霊夢は前に出る、僕も訳が分からなかった。
「いいから、じゃあ咲夜、登場人物の収束をお願いするわ」
「分かりました、お嬢様──」
 咲夜はそう言いながらフランを連れて行く、霊夢と魔理沙も僕とレミリアの居る部屋から離れる──そして部屋には僕とレミリアしかいない、そして魔理沙が部屋から出て、扉を『バタンッ!』と閉じた瞬間、僕の目の前にレミリアが現れて、僕の胸座を掴む。
「アンタ! 名前は!?」
 いきなりの事で僕は驚いてしまう、そして僕は名前を名乗る。
「僕の名前は華扇だ──それがどうし──」
 そう言うと掴んだ胸座を離す、僕はそのまま尻餅をついてしまう、そしてレミリアは言う。
「……アンタ、華扇、『その右手は何だ』!? 何でも捥がれた左手が『右手で触れた』だけで『元に戻った』!? 華扇──『貴方は何者』なの……!?」
 何で僕の左手の事を知っているのだろうか? 見ているなんて事は無い筈なのだが──そう思いながら僕は言う──
「僕は自分が何者かは分からない──だから今は記憶を探して……」
「違う! 華扇、貴方は『何かしらの理由でこの幻想郷に来た』! その理由は分からないけれど、貴方──『人喰い妖怪』には気を付けなさいよ、私もよく分からないけれど、その『右手で触れた部分が『元に戻って』いる』、それが問題なのよ!」
 そう言いながら僕の顔に指を指すレミリア、意味が分からない、何で『人喰い妖怪』に気を付けなければ──と、そこで気付いてしまう、『人喰い妖怪』、つまり『人を喰う妖怪』なのだ、そう、僕の『元に戻す』能力で『食べられた部分を『元に戻』せる』と言う事! 逆に考えてしまえば、『人肉を、人間を無限に食べる』事が出来るのだ! まさか、レミリアはこの事を──?
「そう、『人喰い妖怪』はどんな人間関係無しに食べるから、貴方の能力は重宝される──その事も考えて行動しなさいよ──」
 そう言いながらレミリアは自分が座っていた玉座に戻る──確かにこの能力は重宝されてしまう──そう思いながら自分の手に拳を作る──自分の身は自分で守らないとなぁ、そう思いながら拳を強く握った──

「華扇、どんな話をされたの?」
 紅魔館から博麗神社に帰る途中、宙に浮いている霊夢に話しかけられる。
「ん? 話? そうだなぁ、大まかに言えば僕の名前と能力の説明かなぁ?」
 そう言いながら僕は少しだけお茶を濁す、まぁ、詳しく話しても問題はないが、レミリアがそんな事を話した、と言っている気分がして僕は少し躊躇った、彼女だってプライドはあるだろう、人間相手にそんな事を話した、となれば彼女のプライドもズタズタだろう。
 ましてや彼女は吸血鬼、普通なら人間相手には慈悲もないのだ、僕みたいなひ弱な人間にそんな慈悲を見せたと言う事は──? とか思われてしまうだろう、それを阻止する為に僕はあまり語ろうとしなかった──
「……おう! 華扇ってば! 目の前に木が……」
 僕が俯きながら考えていると目の前の木に僕はぶつかった、何時の間にか道から少し外れていたようで、僕はそのまま太い幹に顔面をぶつけてしまった、その後霊夢から、『忠告したのに……』と声が聞こえる、考え過ぎるのもダメだな、少しは前と人の話を聞かないと──そう思いながら僕はぶつかった顔を優しく撫でる──
 どうせこんな痛みもすぐに治る、そう思いながら目の前をよく見て進む──これから何が起きようとも、この『右手』さえあれば生きていけるのかなぁ? それは少し分からないけれど、今はそんな事考えなくてもいいのではないか? 呑気に生きて呑気に霊夢と魔理沙の『異変解決』を手伝えればいい、そう思いながらまた前へと進む、僕の足は前に進む為だけに存在するのだから──
「……もう忠告しないわよ、華扇」
 霊夢が独り言の様に呟くと僕は霊夢の方向を向きながら首を傾げる、その格好のまま歩いていると、僕は本日二回目、またもや大木にぶつかった──ちゃんと前はよく見ましょう、それが今日の僕の格言となった──

 第一章 完

 第一話 完

 CHAPTER 3 終了

 第二章 第二話 CHAPTER 1 に続く──