二次創作小説(映像)※倉庫ログ

Re: 東方崩壊譚 ( No.16 )
日時: 2016/10/16 21:50
名前: 彩都 (ID: YzSzOpCz)  

後書という名の駄文詰み合わせ

 はい、始めましての方は始めまして、毎日読んでいるよ、と言う方は有難う御座います、つまらん小説は書くんじゃねぇ、と言う方は後で校舎裏へ来いや、と思います、彩都(サイト)と申します。
 さぁ、この物語、主人公華扇(かおう)君の能力判明、更に博麗神社での寝泊り等も出ましたね。
 此処で少し訂正をしておきます、最初の1〜10において、『博麗神社』、『博麗霊夢』の事を、『博霊神社』、『博霊霊夢』と書いていました、正解は前者です、すいません、地味ににわかなので。
 一応11〜15では直していますが、1〜10はまだ直しておりませんので悪しからず。

 そして第二話 第二章 では、物語の幅が広がります、自分で華扇君に絡ませたいキャラも一杯出てきます、さぁ、華扇は能力で修羅場を乗り切る事が出来るのか!?
 そんな感じで後書の方は終了させて頂きます、そして次回の更新ですが、来年、2017年の一月頃を目安に考えております。
 綺麗に投稿を終わらせたい部分も有りますので、残り二ヶ月、二回の投稿は終わらないので、したくないなぁ、と考えての意向です。

 それでは、また来年、2017年 一月にお会いしましょう。

 小説の参照数を酒の肴にして、ジュースを飲む10月の冷え込んだ夜より
                                     彩都

Re: 東方崩壊譚 ( No.17 )
日時: 2017/01/15 21:26
名前: 彩都 (ID: ???)  

東方崩壊譚(とうほうほうかいたん) 第二章 第二話 守谷神社と二柱の神

CHAPTER 1 天地

「…………」
 僕こと華扇(かおう)は本格的に博麗神社の人間として巫覡を全うしようとして、御神籤に墨を浸した筆で一筆を認(したた)めていた。
 ……よし、完成だ、一枚数分で書き上がるのだが、この作業は案外体力が必要だ、何故ならこの作業は失敗してはならないし、失敗しては紙の無駄となってしまう、幻想郷では紙は貴重なので、体力と精神が問われる作業だった。
「ふぅ、結構大変な作業だな──」
 そう呟いた瞬間、霊夢が襖を開けて僕が居る部屋に入ってきた、そして僕に向かって言う。
「あら華扇、どう? 御神籤は?」
「結構完成しているよ、もう終わったけれどね──」
 そう言いながら僕は自分の席の隣を見る、隣には10枚程の紙があった、これが今日認めた御神籤の量だ、毎日10枚程度書いて置けば切れる事は無いそうだ──まぁ、あまり人も来ないし、御神籤も引かないから切れる事はないのだけれど──とかそんな事を言うと霊夢は怒ってしまうので、口は慎む。
 霊夢は僕にお茶を持ってきてくれたようだ、霊夢は何れ結婚したら良い妻になるのではないだろうか、そんな事を思ってしまう。
 ……まぁ、貰う相手が居れば、の話なんだけどね──おっと、これも口に出さず、慎んでおこう。
 そして僕はお茶を飲む、温(ぬる)い、実に飲みやすい、やはり霊夢は良い妻になりそうだ──
「そんなに褒めても何も出ないわよ?」
 霊夢がそう言うと僕は焦った、まさか口に出ていたか?
「飲みやすいだなんて……」
 ……何だ、妻の話じゃないのか、実に焦らせてもらったよ、霊夢──
僕が一安心していると霊夢は僕に運んだお茶のお盆を顔に近づけながら僕が居る部屋を去る──僕はよく分からなかったが、顔が赤く感じた──
「妻だなんて……照れるじゃない──」
 霊夢はそう言いながら走って何処かへ行った──何処に行ったかは僕は知らない──

「霊夢ー? 華扇ー? 居ないかー?」
 いきなり魔理沙の声が聞こえたので僕が出る事にした。
「どうしたんだい、魔理沙?」
「おっ、華扇か、いや、実はなぁ……」
 僕は魔理沙から話を聞いた、成程……そう言う事だったのか。
「だから一緒にパチュリーの図書館へ行こうぜ!?」
「いや、本を返さない魔理沙が悪いだろう? 自業自得さ」
 僕がそう言うと魔理沙は両手を合わせ、こう言った。
「そこを何とか! 華扇大明神!」
 流石にそこ迄言われると仕方ない、と思ってしまう、僕は空気を読んで、魔理沙と紅魔館へ行く事にした。
「大明神になった気は無いけれど──分かったよ、少しは本を返すんだよ? 良いかい?」
「へいへい……分かりましたよ」
「よし、それなら紅魔館へ向かおうか、霊夢、僕は魔理沙と一緒に紅魔館へ行くよ」
 僕がそう言うと霊夢が現れた。
「あら? 魔理沙と? 行ってらっしゃい」
「あぁ」
 そう言って僕と魔理沙は紅魔館へと向かった──

「ん? あれは……?」
 僕は紅魔館の門の前に立って寝ている女性を見つけた、一体誰だろう?
「あれは紅魔館の門番係、紅美鈴(ホン メイリン)だ、実際門番なのに寝てばっかりな奴だ」
 うつらうつら、と首をかくんかくんと縦に揺らす、するとその瞬間目を覚まして僕らの方に何かを投げてきた。
 僕は何とか避けて叢の中へ、魔理沙は箒に乗りながら美鈴の前に現れる。
「おい! 当たったらどうするんだ!?」
 すると美鈴は構えを作りながら言う。
「当てようとしたんですよ──って貴方ですか──それと隣にいる巫女は?」
 そう言われると僕は叢の中から紅魔館の門の前迄進む。
「やっぱり僕はこの格好だと女性に見られるのか……」
 そう言いながら僕は自分の性別と名前を言う。
「僕は男だ、そして僕の名前は華扇だ、宜しく、美鈴?」
「あら、礼儀正しいのね、宜しく華扇?」
 そう言うと僕と美鈴は握手をした──そして僕は説明をする。
「えーと、魔理沙がパチュリーの部屋で本が読みたいから監視役として僕が着いてきたんだけど、紅魔館の中へ入っても良いかな?」
「んー? どうしましょうかねぇ?」
 美鈴がそう言うと僕は右手を出して言う。
「だったら今から僕と戦って僕が勝ったら紅魔館の中へ入る、僕が負けたら急いで魔理沙と共に帰る、それで良いかな?」
 そう言うと美鈴の目の色が変わる、完全に獲物を狩る目をしている。
「私にそんな事を……? 良いでしょう、相手をします!」
 そう言うと構えを作る、一体この構えは何だろうか? そう思いながら僕も右手を前に出しながら僕なりの構えを作る、だが段々と美鈴の姿が上から小さくなる、僕って急に成長したっけ? そう思うと股がスースーする、何故だろう?
「今は本を読むのが先決だ、戦っている場合じゃないだろ?」
 魔理沙はそう言うと僕の襟首の裾を掴んで、箒に乗って宙に浮く、そして軽々と紅魔館の門の上を通る。
「あっ!? 上から!?」
 美鈴がそう言うと魔理沙は言った。
「またな、門番?」
 そう言いながら僕と魔理沙は紅魔館の中へと進入した──

Re: 東方崩壊譚 ( No.18 )
日時: 2017/01/15 21:28
名前: 彩都 (ID: ???)  

「って、こういう手段をするなら、門番の前に出なくてもよかったんじゃあ……?」
 僕がそう言うと魔理沙は僕に向かって言う。
「宙に浮く方法は今の状況での最後の手段だよ、華扇が『戦う』なんて言わなかったら正面突破が出来たかもしれない」
 魔理沙がそう言うと、僕は言う。
「そうか、僕が悪かったのか」
 僕が謝ると魔理沙は止めを刺した。
「そう言う事だ」
 魔理沙がそう言うと、魔理沙は下に降りて玄関前に僕を降ろして、紅魔館の玄関をノックして中に入る、僕も魔理沙の後ろに着いて行く。
 そして僕も紅魔館の館内に入った──何時見ても紅魔館の内部は広い、実に綺麗で、とても吸血鬼が住んでいる、と思えない。
 すると魔理沙が勝手に前へ前へと進む、僕も一緒のスピードで進む事にした。
 すると簡単にパチュリーの居る部屋に辿り着いた、そして勝手に侵入する魔理沙。
 僕は止めようとしたが、魔理沙が勝手に進んでいき、止める事は出来なかった。
 そこには僕がパチュリーに呼ばれた時に本を読んだ場所だった、成程、暗かったけれど、こんな所で本を読んだというのか──そう思いながら僕は周りを見渡す、すると遠くに巨大な本があった、あんなでかい本がこの世に存在するなんて──何て大きさなんだろう、そう思っていると僕と魔理沙の前に一冊の本を手に持ったパチュリーが現れる、そして僕らに向かって言う。
「ちょっと貴方達、勝手に私の本棚に入らないで、特に魔理沙?」
 眉間に皺を寄せながらパチュリーがそう言うと魔理沙は後ろに体を引き、たじろぐ。
「煩いなぁ、どうせ私が死んだら返すって言っているんだから、少しの我慢をしろよ?」
 少し汗を掻きながら魔理沙は反論する、だがパチュリーがもっと強めに言う。
「私にとっては一瞬、もしくは数瞬かもしれない、だけれど本にとっては相当な時間なの、貴方の持って行った本の中でまだ私が読んだ事が無い本があるかもしれないのに──だから早く返して欲しいの」
「まぁまぁ、少しは落ち着け、今日は借りに来た訳じゃない、ほら、霊夢の格好をした奴が私の監視役だよ」
 魔理沙が親指で僕を指しながらそう言うと僕はパチュリーの方向へと向く。
「ん? どうした魔理沙?」
 僕がそう言うと、パチュリーは僕に近づいてまじまじと見つめる、すると少し溜息を吐いてから言う。
「貴方って、まさか博麗神社に居たって言うあの少年?」
「あぁ、そうだよパチュリー」
 僕がそう言うとパチュリーは『ふむぅ……』と息を吐くと続けて僕に言う。
「それで? 何か分かった事がある? 例えば自分が何処に来たか、名前が分かったとか、能力が分かったとか──」
 その言葉を聞くと魔理沙が答えた。
「名前と能力が分かった、コイツの能力を聞いたら、きっと驚くぜ?」
 笑いながら魔理沙が言うと、僕の事を見ながらパチュリーは呟いた。
「それで? 名前と能力を教えてくれるかしら、巫女装束の少年?」
 僕はパチュリーの言葉に答えた。
「僕は華扇(かおう)、能力は『元に戻す』能力だ──」
「? 『元に戻す』? それはどういう能力なの?」
 僕が言うとパチュリーは不思議がった。
「どういうって……そのまんまなんだけどなぁ──とりあえず、『右手で触れた物』なら大体は『元に戻』せる、と言った方が分かりやすいかな?」
 そう言いながら僕は右手でグーとパーを繰り返す、するとパチュリーは僕に近づいて、僕の開いた右手に触れた。
「!?」
「……何も起きないわよ?」
 ふにふに、と僕の右手を揉んだり触ったりする、すると突然何か能力が発動してしまうのではないかと思ったが、だが何も起きなくて少ししょんぼりするパチュリー、すると魔理沙がパチュリーに助け船を出した。
「だったら何か魔法か、攻撃でも加えたらどうだ? 弾幕でも良いかもな? 何なら私の弾幕でも華扇に打って、右手の能力で『消して』もらおうか?」
 するとパチュリーは『ちょっと待って』と言う。
「可笑しくない? だってこの巫女装束の少年の言い分だと、『『元に戻』せる能力』って言い方じゃない? なのに貴女の言い分だと『攻撃、魔法、弾幕を消せる』、って言い方じゃない──」
 パチュリーがそう言うと魔理沙は言った。
「『だから』だよ、華扇には弾幕を打っても、『右手の能力で消える』んだよ、大まかに言えば、『弾幕を打っても、『打った場所には元々弾幕の弾は存在しなかった』から弾幕に右手で触れると、それごと『元に戻』して』『消せる』』んだよ」
 魔理沙が説明するとパチュリーは手に持った本を落とす、そして目を見開いて、体を振るわせながら言葉を紡いだ。
「それじゃあ……体の傷も、怪我も病気も──『右手で触れたら治る』、と言う事──?」
「そう言う事だ」
 魔理沙が頷くとパチュリーは落とした本を拾う、そして僕に向かって言う。
「何て面白い能力なの……? ねぇ、華扇とか言ったわね? だったら私に見せてくれない? 貴方の『右手』の能力、言葉だけじゃ信じれないわ、だから貴方の能力、私に見せてくれないかしら?」
 パチュリーがそう言うと魔理沙は言った。
「私は何時でも良いぜ? 後は華扇が許可するだけだ」
 魔理沙の言葉に僕も言い返す。
「僕も何時でも良いよ魔理沙、これで二人共了承を得た、さぁ、パチュリーの為に準備をしようか」
 そう言いながら僕と魔理沙は少しだけ離れる。
 さぁ、今から行われるのは僕の能力を見せる舞台だ──

Re: 東方崩壊譚 ( No.19 )
日時: 2017/01/15 21:29
名前: 彩都 (ID: ???)  

「行くぞ、華扇?」
「あぁ、何時でも準備万端さ、かかって来なよ?」
 僕はそう言いながら右手の掌を前に出す、そしてパチュリーを見る。
「僕は何時でも良いから、パチュリーの合図で言ってくれるかい?」
 僕がそう言うとパチュリーは頷いた。
「分かったわ──それでは、魔理沙、お願い?」
 パチュリーが魔理沙に向かって言うと、魔理沙は頷いた。
「おう、分かった、行くぞ華扇!」
 そう言いながら魔理沙は弾幕を放つ、僕は魔理沙の弾幕に対して、右手で触れる寸前の所で『元に戻す』能力発動──その瞬間、魔理沙の弾幕は僕の目の前で右手に触れながら消える。
 その光景を見てパチュリーは口を開けたまま閉じなかった。
「これが華扇の『右手』の能力、『元に戻す』能力だ──」
 魔理沙がそう言うとパチュリーは少しだけ放心してしまった──
「おいおい……」
 宙に浮いていた魔理沙は降りて、パチュリーの肩を揺らす、そして何とか放心状態から元に戻る。
「あれっ……? 私は今迄何を?」
 そういうパチュリーに対して魔理沙は放心する迄の説明をする。
「パチュリーが私と華扇を呼んで、本を貸してくれるって言うから来たんだよ」
「そんな事は言っていない」
 と、パチュリーの冷酷なツッコミが入る、パチュリーの対応に僕は少し冷や汗が出た。
「もう、魔理沙も嘘は吐かないの、えーと、パチュリーに僕の能力を見せたら放心状態になったんだよ、そして魔理沙がパチュリーの肩を揺らして目を覚ましたんだよ」
 僕が丁寧に説明するとパチュリーは納得する。
「成程──」
「って何で私の時だけ信じないんだよ」
「私は貴女を信用していないから、信用されたかったら早く本を返してよ?」
「うぐぅ」
 情けない声を出す魔理沙、僕は早く閑話休題させようと話を進める。
「とりあえず、今回は本を盗まないらしいから、本を読ませて欲しい」
 僕がそう言うとパチュリーは少しだけ首を前に傾けながら、顎に手を当てる、揺らいでいる、そう感じた僕はまだ言葉を紡ぐ。
「流石に読む位は良いんじゃないかな? ダメかなパチュリー?」
 僕も少し首を傾げながら言う、これで良い方向に進めばいいのだが──すると、はぁ、と大きな溜息をしながら頭に手を添えるパチュリー、良かった、パチュリーは折れた様だ。
「分かったわよ──ただし、本は破らないでね? 特に魔理沙?」
 パチュリーの眼光が魔理沙を捕まえる、まるでギクゥッ! という擬音が聞こえそうだった。
「流石の私でもそれは無い!」
 魔理沙が眼光にたじろぐ、そしてパチュリーに言い返す、だがパチュリーは更に言い返す。
「貴女ならしそうで怖いの」
 パチュリーが魔理沙に正論を言った感じがして僕も流石に冷や汗が止まらない。
「僕も……魔理沙ならしそうかなぁ〜とは思うけど……」
「いや、思うなよ!」
 魔理沙のツッコミに乾いた笑いしか出来ない僕──そして僕は手を叩いて場を落ち着かせる。
「まぁ、二人共落ち着いてよ? 魔理沙はさっさと本を選んで読んだ方が良い、パチュリーも早くイスに着いて、本を読んでおきなよ?」
 そう言いながら僕は近くのイスを引いて、パチュリーに座る様促す、パチュリーは少し不満そうに顔をむすっとしながら僕が引いたイスに座る。
 そしてイスに座ったパチュリーが言う。
「貴方は優しいのね、華扇──魔理沙とは段違い」
「おい、聞こえてるぞー!」
 パチュリーの言葉に梯子の上から声を出す魔理沙、そのやりとりに少し苦笑しながら僕は言う。
「ハハハ……そうかな? 僕はこれが普通だけどね」
「あら? それなら何時もの貴方は『優しい』って事になるわよ?」
「パチュリーが言うならそうかもしれないね」
 僕はイスの背凭れに肘を置きながら呟く、本当に僕は優しいのか分からないが、パチュリーがそう言うのなら優しいのだろう。
 そう思っていると何時の間にか僕はパチュリーの長髪を触っていた、綺麗なさらさらとした髪、手の平からさらさらさら、と撫でているとパチュリーが不審がった。
「……何をしているの?」
「あっ、ごめん、あまりにもパチュリーの髪が魅力的で何時の間にか触っていたよ、厭だったかい?」
「……別に、あまり触られた事無かったし、ちょっと驚いただけ」
「そうか、それはすまなかった」
 僕が謝るとパチュリーは振り向いて、僕に向かって言う。
「いや、別に触りたかったら触っても良いわよ……? 但しちゃんと褒めながら触って欲しいかな?」
 髪を人差し指でクルクルと回しながら言うパチュリー、何だ、怒った訳ではなかったのか。
 そう思いながら更にパチュリーの髪に侵入する僕の指──
「パチュリーの髪は綺麗だなぁ──まるで手に絡み付いても絡み付いていない感じがする、そしてさらさらで綺麗だし、触っていても気持ち良い──」
 僕がそう言うともう一度振り向いてパチュリーは言う。
「綺麗を何回言うつもりなの? やり直し、今度は『綺麗』禁止ね?」
 そう言われて焦る僕。
「それはキツいよパチュリー、あまりにも少ないんだ僕の語彙力は」
「だったらその少ない語彙力が入った脳味噌でもフル回転でもして言葉を紡ぎなさい?」
「大変だなぁ、頑張ってみるか──」
 そう言いながら僕は触りながら考える──うぅ、『綺麗』と言う言葉を制限されて、今迄言っていない言葉を探すのは大変だ──そう思いながら無言のまま、パチュリーの髪に触れ続ける──パチュリーは無言のまま本を読み続ける、早く何かを言わないと──そう思っていても中々言葉が見つからない──然う斯うしている内に時間は段々と進んでいく──

Re: 東方崩壊譚 ( No.20 )
日時: 2017/01/15 21:31
名前: 彩都 (ID: ???)  

「ふぅ、堪能したなぁ」
 そう言いながら魔理沙が僕の目の前に現れる。
 僕はパチュリーの髪を撫で終わっていてイスに座っていた、別に本を読む為に此処に来た訳ではないし、読みたい本も無いので、のんびり待つ事にしていたのだ。
「あーえっと、何でアイツはほかほかしているんだ?」
 魔理沙が少し顔が赤いパチュリーを指指す、僕は髪を撫でた事を隠した。
「あーえっと、本の読み過ぎで逆上(のぼ)せたんじゃないのかな?」
 僕が曖昧模糊な回答をして、納得する魔理沙。
「それじゃあ私は帰るぜ、早く霊夢に顔を見せないとなぁ」
「そうか、もう帰るのか、それじゃあ、また会えると良いねパチュリー?」
 そう言いながらパチュリーに手を振る僕、すると本を読んでいたパチュリーが声を出す。
「今度此処に来る時は魔理沙は本を返す事、華扇は語彙力を高める事」
「へいへい……って華扇、語彙力って何だ?」
「何でも無いよ、アハハ……」
 そう言いながら僕は軽い笑いをして魔理沙に返す、そして僕らはパチュリーの部屋から出て、紅魔館の玄関へと向かう──
 そして紅魔館の玄関から出て、少し歩く、すると何時の間にか目の前に人が居る事に気が付いた、目の前に居たのは、レミリアと一緒にいたメイドの──
「私は十六夜咲夜です、以後、お見知り置きを」
 そうだ、思い出した、咲夜だ、だが何で僕らの目の前に現れたのだろう?
「いきなりどうしたんだ?」
 呑気そうに魔理沙は前に進もうとする、だが咲夜は何処からか小型ナイフを取り出し、魔理沙に向かって投げる、そしてその瞬間、厭な感覚を感じ、僕は右手で能力を発動する。
 その予想は当たった様で、揺れていた木々が動きを止め、そして風さえも感じなくなる、木々から落ちた葉っぱが空中で静止している、これは一体……?
「ほう? 私の能力を『偶然にも回避した』、って事ね? これは驚きだわ」
 咲夜が僕の方に向かって小型ナイフを持ちながら近寄ってくる、どうする、自分……?
 するとそのまま僕の前を通り過ぎ、振り向いてから咲夜は言う。
「今回は面白い物が見れたからこれで許してあげる、貴方、名前は分かったの?」
 僕はそう言われて、答える。
「あぁ、分かったよ──僕の名前は華扇、それと能力以外分からない──」
 僕がそう言うと咲夜は驚く。
「あら、貴方能力持ちだったのね、そして人間、まるで私みたいだわ──」
 咲夜はそう言いながら言葉を紡ぐ。
「それじゃあ、華扇? 今回の侵入は貴方が面白い事をしたから許してあげる、その代わりちゃんと正面から入って欲しいわ、と魔理沙に伝えておいて? だって客人のおもてなしが出来ないですもの──」
 そう言いながら咲夜は紅魔館の玄関を開け、中に入る、その瞬間僕の頬に木々の葉っぱが擦られる、一体咲夜の能力は何だったのだろう? 多分だが、『全ての物の動きを止める』能力かもしれない──そう思っていると魔理沙が僕に話しかける。
「……ーい、華扇ー? おーい、華扇って! 早く霊夢の所に行くぞ!」
 そう言いながら僕の手を引っ張る、僕は魔理沙のおでこを見る、おでこに刺さったナイフ、気付かないかなぁ? 僕はそう思いながら魔理沙の手に引っ張られる──

「あっ、華扇ちゃん……じゃなかった、華扇さんじゃないですか」
 博麗神社の境内で早苗が呑気そうに箒で周りを掃いていた、その行為に僕は少し焦る。
「えーと、華扇ちゃんでもいいから君が何で箒で博麗神社の境内を掃いているんだい?」
 僕がそう言うと霊夢が頭を掻きながら僕らの目の前に現れる。
「んー? どうしたの華扇……って何で早苗が!?」
 あれっ? 霊夢が命令したのでは無いのか、まさか勝手にやったってか? 僕がそう考えると早苗は言った。
「すいません、霊夢さん、あまりにも汚かったので、少し掃かせて頂きました──何でも綺麗にしないといけないですよね!」
 早苗の綺麗な笑顔に霊夢は、確かにそうだ、と言わんばかりの顔をする、これは早苗が正論だなぁ、そう思いながら早苗は僕に向かって言う。
「どうです? 華扇ちゃん、守谷神社に行きませんか? まだ考えていますかね?」
 早苗がそう言うと、あぁ、と思い出す、確かにそんな話をしていた様な気がする……いやあ、していた筈だ、うーん、どうしようか? 行かないといけないよなぁ? 流石に二回も来られて拒否するなんて酷い奴のやり方に感じてしまう、仕方ない、男、華扇、腹を括ろうじゃないか。
「……分かった、守谷神社に行こう、じゃあ霊夢、僕は守谷神社に向かうよ、店番ならぬ神社番、宜しくね? 場合によっては何日も滞在する可能性もあるからね?」
「ちょ、ちょっと華扇!?」
 霊夢が驚く、それもその筈、いきなり守谷神社へ向かおうとしているからだ、そして僕は隣にいる魔理沙に向かって言う。
「魔理沙、ちょっと箒で守谷神社に連れてってくれるかい? 霊夢の様に宙に浮いて移動は出来ないからね」
「あ、あぁ……良いが」
 魔理沙はそう言いながら僕を箒に乗せる。
 すると霊夢が言った。
「全く──居ないとなって、紫に何言われるか私は知らないわよ?」
「言われても良いさ、妖怪を倒せるレベルの人間になってくる、とだけ伝えてよ?」
 そう言いながら僕はもう一言付け加える。
「大丈夫だ、安心しててよ? 少しは強くなって戻ってくるよ」
 そう言いながら『お別れの言葉は良いですね?』と早苗が言う、僕はそれに対し頷くと、霊夢も厭々ながら頭を縦に振る。
 そして僕、魔理沙、早苗は守谷神社へ向かった──博麗神社に一人、霊夢という少女を残して──

Re: 東方崩壊譚 ( No.21 )
日時: 2017/01/15 21:35
名前: 彩都 (ID: ???)  

 守谷神社──
「やっぱり魔理沙の箒は早いなぁ」
 そう言いながら守谷神社に着いた僕と魔理沙は箒から降りる、次に遅れて早苗が現れる。
「二人共、早いですねぇ……ハァハァ──」
 完全に早苗は息が切れていた、そこに背中に巨大な注連縄を背負った女性と謎の目が付いた帽子を被る少女が現れた。
「おや? 早苗じゃないか、お帰り──そこの隣の巫女服の子は?」
 巨大な注連縄を背負った女性は僕に向かって言う。
「あっ、神奈子さま、彼が私が話していた人間の、華扇ちゃんです!」
「あっ、えっと、僕の名前は華扇、れっきとした男です」
 僕は自分の自己紹介をする、何とか性別の事が言えた、それに少し安堵する僕。
「へぇ、その顔と見た目で男……詐欺している様に見える──」
「そっ、そうですけど、僕はれっきとした男なんですよ!」
 念には念を、強めに言う僕に神奈子と呼ばれた人は溜息を吐く。
「分かった分かった、んで、華扇と言ったな? お前はどんな力を秘めているんだい?」
「僕の力?」
 そう言いながら僕は自分の右手の掌を見る、さて、どう表現したらいいのやら?
「えーと、簡潔に言いますよ? 僕の力は『元に戻す』能力です、傷も、痛みも、『元に戻す』事が出来るんです、それが僕の力──です


 僕がそう言うと謎の目が付いた帽子を被る少女が言う。
「それはどんな事でもかい?」
 そう、謎の目が付いた帽子を被る少女が言う、すると謎の目が付いた帽子を被る少女の手に凍らされた蛙が出てくる、一体何をすればい

いだろうか?
「アンタ、『元に戻す』能力なんだろう? だったらこの、氷漬けになった蛙を救う事は出来るのかい? まぁ、蛙は死んでるから『氷か

ら救え』って事にしておこうか?」
 そう言いながら僕に氷漬けの蛙を放る、何とか受け止めた僕は謎の目が付いた帽子を被る少女に対し、やってみる事にする。
「では、行きますよ……」
 そう言って、右手で触れる、そして能力発動、すると段々と氷が小さくなっていく、二、三秒で氷が溶ける事はまず無い、だから少しは

信じてくれるだろう、そして氷が溶けきる、そしてまだ試した事は無いが、『死んだ蛙を蘇らせる』事にしてみる──さぁ、いけるかな…

…?
 僕はそう思いながら、溶けて、冷たくなっている蛙を右手で握りながら能力を発動、死んだ『存在』を蘇らせるなんて出来るか分からな

い、でも『試してみる』価値はあると思うんだ、だから──生き返ってくれ!
 その瞬間、右手に『ドクン……ドクン……』と脈が動くのを感じる、そして蛙が『ゲコッ!』と元気に鳴き、僕の手から離れ、飛んでい

った──その光景に、魔理沙、早苗、謎の目が付いた帽子を被る少女、神奈子、僕が唖然とする──そしてハッ! と我に返った謎の目が

付いた帽子を被る少女は言う。
「……アンタ凄いじゃん、驚いたよ、おっと、名前を名乗るのを忘れていたね、私は洩矢諏訪子(もりや すわこ)、そして注連縄を背負

っているのが、八坂神奈子(やさか かなこ)、そして私と神奈子は神様なのさ」
「…………」
 静寂──僕の中で静寂が起きる、そして僕は一言言う。
「えっ……? えぇーっ!?」
 初めて見た、神様を──その衝撃で腰が抜けてしまう。
「えっ? えっ? えっ? 二人共神様? あっえっと……」
「全く、諏訪子さぁ、展開がいきなり過ぎるよ、もう少しゆっくり解説した方がいいんじゃないか?」
 そう言う神奈子に対し、諏訪子は言う。
「いやさぁ、流石に神様を相手にしたんだから少しは驚かさないといけないって思ってねぇ──流石にここ迄驚かれるなんて考えてもなか

ったよ──」
「はぁ、華扇、お前は苦労が堪えなさそうな存在だな──」
 魔理沙はそう言いながら片手で頭を支える──
「落ち着け僕、落ち着け僕……」
 そう言いながら僕は目の前がぐるぐるの自分に対して、ゆっくりと諭す──
「あはは……私も神様の一人なんですけどねぇ──」
 早苗はそう言いながら柔らかく笑う。
 その場で一人と三柱は華扇が元に戻るのを待った──

「さて、私は帰るか──守谷神社での特訓、頑張れよ?」
 そう言いながら魔理沙は箒に乗る、だが僕は魔理沙を止める。
「えっ? 特訓? それはどういう事? 僕は日帰りで帰ろうと思ったのに──」
 すると魔理沙が言う。
「お前、自分で言った事を覚えているか? 何日も滞在するかもしれないからって言っていたんだぞ? そして霊夢の所であんな言い方を

したら完全に守谷の所でお世話になるって言ってるもんじゃないか?」
 ぐぅぅ……! 確かに、あの言い方はお別れっぽい感じだったけど──仕方ない、少しの間だけだが、滞在させて貰うか──
「あー、えっと、守谷神社の皆さん? 少しだけ僕を居候させてはくれないかな?」
 僕がそう言うと早苗は言った。
「私は良いですよ」
「私も良いよ、賑やかになって面白い」
 と神奈子、次に諏訪子が言った。
「まぁ、居候ぐらい、いいけれど?」
「そうか、よかった──と言う事で魔理沙、霊夢に『数日は帰らない』って伝えてくれるかい?」
 僕がそう言うと呆れながら魔理沙は言う。
「はいはい、分かったよ──達者でな、華扇」
「あぁ、少しは強くなってみるよ」
 僕はそう言いながら箒に乗って遠くへ飛ぶ魔理沙に手を振った、さぁ、少しは強くなるぞ、そう思いながら振り向いて、守谷神社を見る

──僕はどこ迄強くなれるだろうか?

CHAPTER 1 終了 CHAPTER 2 に続く……

Re: 東方崩壊譚 ( No.22 )
日時: 2017/02/19 22:12
名前: 彩都 (ID: lBubOowT)  

東方崩壊譚(とうほうほうかいたん) 第二章 第二話 守谷神社と二柱の神

CHAPTER 2 二柱の神 神奈子と諏訪子

「はぁ……どうして人里なんか向かうんだ?」
 僕こと華扇は守谷神社で居候する事になった、そして今は道すがら早苗の後ろを着いて来ている。
「それは簡単ですよ、華扇ちゃん、『私達は『信仰』を大事にしている』ので……」
 そう言いながらしょんぼりとする早苗、何かあったのだろうか?
「えぇ、実は神奈子様と諏訪子様の話なんですが──神奈子様と諏訪子様は神様だって、言ったのを覚えてます?」
 そう言う早苗に数時間前の事を思い出す、僕ながら驚き過ぎだとは思うけど、初見でそう言われると本当に驚きだ。
「あ、あぁ……覚えているよ、それがどうしたんだい?」
 僕がそう言うと早苗はいきなり振り向いて、腕をガッツポーズの様にし、鬼気迫る顔で言う。
「そこが問題なんですよ! 神奈子様、諏訪子様が今、守谷神社に存在しているのは『信仰』されている証拠なんです! それでは『信仰』の話でもしましょうか──『信仰』、それは神や仏を信じて敬う事──というのはまだ分かりますよね?」
 立ち止まり、早苗は言う、それに対し、僕も言葉を発す。
「あ、あぁ、それはまだ分かる、だけれど何で『信仰』が必要なんだ? 無くても大丈夫じゃないの? 実際霊夢の事もあるしね?」
 そう言うと早苗は反論する。
「居なきゃいけないんですよ……そうですねぇ、『信仰』をご飯にしましょうか、つまり『信仰』される事でご飯が食べられる、というのはどうでしょう? 分かりやすいですかね?」
「あぁ、そうだねぇ、何となくだけど、分かりやすい」
「そうですか、それではご飯にしましょうか──えーと、『信仰』される事でご飯が食べられる、と言いましたね? では逆に『信仰』されなくなって、ご飯が食べられなくなったら、華扇ちゃんはどうなると思います?」
「えっ? 僕が? うーん……何も食べられなくなって死ぬ?」
 僕がそう言うと早苗は頷いて答える。
「はい、そうなります、そして死ぬって事は?」
 顔面と顔面がぶつかりそうな近さ迄早苗は僕に近付いてから言う。
「死ぬって事はぁ……この世界から魂が消える、つまり、この世界から消えるって事?」
 僕が不思議そうに言うと早苗は頷く。
「はい、そうなります、さて、もうここで答えは出たと思いますが──その答えは分かりますか? 華扇ちゃんは?」
「……多分だけど、『ご飯が食べられなくなると死ぬ』、つまり『この世に存在出来ない』、結論、『ご飯が食べられなくなると死ぬからこの世に存在出来ない』、それを『信仰』に直すと、『『信仰』が無いと、神様は死ぬ』……?」
 不思議そうに僕が言うと早苗はそっと頷いた。
「はい、そうです、『信仰』が無いと、神様は存在出来ません──なので『信仰』が無くなると、神様は居なくなるのです……つまり、神奈子様も諏訪子様もこの世界──幻想郷、外の世界も含めてです──から存在しなくなる、と言う事です──」
 唖然、そう、簡単に今の心境を書けば、唖然、その漢字二文字だけだった、『『信仰』が無いと、神様が居なくなる』──『『信仰』が無いと神奈子、諏訪子の二柱が居なくなる』──と言う事、居なくなったら早苗が独りぼっちになってしまう──
「……大変だね、色々と苦労した事はあるだろう?」
 僕が言うと、明るい笑顔で早苗は言った。
「無いですよ、神奈子様と諏訪子様が居るだけで私は嬉しいのですから──」
 そんな言葉を言う彼女の笑顔は綺麗だった、自分の事なんか関係無しに他人──というより、他神か──に尽くすなんて僕は出来ない。
「──そうか、だったら尚更もっと頑張らないとね、急いで『信仰』を集めようか!」
 僕がそう言うと早苗は凄く喜ぶ。
「そうですね! 一緒に頑張りましょう!」
 そう言いながら早苗は走って人里へ向かう、僕も一緒に走って人里へ向かった──

「さぁ、守谷神社を『信仰』して下さい! 宜しくお願いします!」
 僕はそう言いながら守谷神社の地図を渡したりする、早苗は箱に乗って、神奈子、諏訪子のお話をしている、今日は『信仰』が増えたらいいが──そう思っていると村人に話しかけられる。
「君は博霊神社の……」
「あっ、華扇って言います、今は守谷神社でお手伝いをしているんです、よかったら守谷神社も『信仰』して下さい!」
 僕は可愛い笑顔とやらで村人を勧誘する、本当に可愛い笑顔かどうかは分からないけれど、村人が顔を赤くしているから成功している、でいいのかな?
 そう思いながら僕は地図を配っていく、そして早苗もお話が終わったようで、少しだけだが片付けをしている、僕も男だ、手伝わないと……
 そして片付けを終わらせて、僕と早苗は一緒に守谷神社に帰る、今日はどれだけの人が『信仰』してくれただろう? それはまだ分からないが、今日は声を出し過ぎて疲れた、早くお風呂に入ってゆっくりしたいなぁ、そう思いながら僕は歩を進める──

Re: 東方崩壊譚 ( No.23 )
日時: 2017/02/19 22:12
名前: 彩都 (ID: lBubOowT)  

「お帰り、早苗に華扇」
 神奈子が言う、早苗は『ただいま戻りました、神奈子様』と言う。
「ただいま、さて、どれだけ『信仰』されたんでしょうね?」
 僕が不思議そうに言うと神奈子は言う。
「なぁに、まだまだだよ、私達は最近こっちに来たんだ、だから『信仰』もまだまださ」
「へぇ、そうだったのか、つまりこの幻想郷の中ではまだまだ新参って事か」
 僕がそう言うと神奈子は笑いながら言う。
「フフッ……確かに、華扇に言うならそう言う解釈の方が分かりやすいかもなぁ」
「そうか? それを言うなら僕の方が一番の新参だけどね」
 そう言いながら僕も笑う、賑やかで楽しいなぁ、守谷神社って。

「さて、ご飯でも食べようか、華扇、お前も一緒に食べようじゃないか、同じ釜の飯を食べて、仲良くなろうじゃないか」
 神奈子が僕の頭をヘッドロックしながら蟀谷をぐりぐりと拳で擦られる、地味に痛いなぁ、痛みも『元に戻』せたっけ? そう考えながら僕はご飯を頂く事にする、そしてご飯を一口、口の中に入れる、美味しい! 霊夢のご飯よりも美味しい! これは何だろう? 炊き立てだからか? もしくは炊き方が違うのか? そう思っていると神奈子が言う。
「美味しいだろう? お前は男だから一杯食って、精を付けるんだ、お代わりも自由だぞ?」
 えっ? このご飯がお代わり自由!? 霊夢の所だと、一杯しか食べれなかったのに──何て太っ腹な神様なんだろう、そう思いながら僕はご飯を食べ続ける、おかずも美味しいし、ご飯も美味しい、ここは天国か、そう思いながら口の中でご飯とおかずの味のハーモニーをゆっくりと噛みしめながら咀嚼する──

「はぁ、美味しかったー!」
 そう言いながら僕はそのまま寝転がる、すると神奈子が言う。
「そうかそうか、それは良かったよ──それで、少しは華扇の話が聞きたいんだが? いいか?」
 神奈子がそう言うので、了承すると神奈子は単刀直入に言った。
「あぁ、良いよ、こんなご馳走を頂いたんだから、大体の事は話すよ」
 僕がそう言うと、神奈子は僕の方向を見ながら言う、僕も神奈子の方を向く為に起き上がって、正座で座る、一体どんな話がされるのだろうか?
「華扇……お前はどうやってこの『幻想郷』で来たんだ?」
 ドクン、思いもよらない話で僕は正座のまま固まった──だが、何も言わないのは流石にダメだろう、一体何処から話せばいいのやら……
 そう思っていると神奈子が言う。
「……言えない程、の事なのか?」
 その言葉に僕は反論する。
「い、いやっ! そう言う訳じゃないけど……本当に話しても良いんだね? 呆気ない終わり方でも怒らない、と言えるのなら、僕は言うけど、どうする?」
 逆に凄みを出して言ってみる、さぁ、どう反論するか──
「……そうか、だがそれでも気になる、教えてくれ」
 ……やはり、『そう来る』か……仕方ない、話さないといけない雰囲気にもなっている、諏訪子も早苗も僕を見ている、流石にこんなに見られたら、降参するしかないだろう──
「……分かったよ、話せばいいんだろ? ちゃんと早苗も諏訪子も聞いていてくれよ? 僕がどうやって、この『幻想郷』に来たのかを……」
 僕がそう言うと、三人の唾を飲み込む音がする、そして僕は深呼吸をして、重い口を開ける──
「僕がどうやって、この『幻想郷』に来たのかを、それはね、『まだ分からない』んだよ、目覚めたら博麗神社の境内で寝転がっていたんだ、その後、紫に僕のこの『右手の能力』と名前を教えて貰ったんだ──そして僕はこの『幻想郷』で、自分の記憶を取り戻す為に頑張っているんだ、これが僕の真相だよ、これで満足したかい?」
 ……無言、言ってしまえば、神奈子、諏訪子、早苗は僕に対して、『口を滑らせてしまった』、もしくは『聞かなければ良かった』等と思っているだろう。
 あるいは後悔をしているかもしれない、だけれど、何れは言う内容な気がするので、先に言っておく事にした。
「…………」
「…………」
「……だったら、だったら華扇ちゃんの右手の能力で、『思い出して』みては如何でしょうか? 『元に戻す』能力なら、『記憶も『元に戻』る』のでは?」
 口火を切ったのは早苗だった、その発言に対し、諏訪子は言う。
「確かに……華扇ちゃんの『元に戻す』能力なら、『記憶を『元に戻』して思い出せる』かもしれない!」
 早苗の言葉に反応した諏訪子は僕の右手を持って、僕の頭に近付ける、だが僕は二人に反論する。
「ちょっと待って! それは出来ないよ──僕の『元に戻す』能力は、『対象物に触れると能力発動』が出来るんだ、つまり、『記憶をしている部分に直接触れないといけない』って事なんだよ!? 僕の何処にそんな場所が!?」
 僕が焦りながら言うと、一人、頭を垂れながら考えている存在がいた、それは神奈子だ、神奈子は僕を睨みつけて一言言う。
「『記憶をしている部分に直接触れないといけない』──と言ったな、華扇、その部分は、『お前の体の中にある』んだよ」
 それを聞いて、僕は驚いた、そんな部分があるのか!?
 そう思いながら僕は神奈子の話を聞こうとする──

Re: 東方崩壊譚 ( No.24 )
日時: 2017/02/19 22:14
名前: 彩都 (ID: lBubOowT)  

「華扇、少しは『頭』を使え」
 神奈子はそう言いながら右手の人差し指で自分の頭をコンコン、と当てる、『頭』を使え……どう使えばいいのだろう?
 僕が『頭』を使って必死に考える、『頭』を抱えても、答えが出ない、はぁ、と神奈子が溜息を吐いて、答えを言う。
「簡単だよ、『頭』の中──『脳味噌』に触れるんだよ、『脳味噌』には記憶を司る部分、『海馬』が存在する、そこに触れてしまえば、華扇、お前の記憶は『元に戻る』──!」
 『海馬』に触れる……それを聞いた瞬間、何だか合っている様な気がしてならなかった、だが神奈子は何を言った? 簡単だ、『『頭』の中』、だ──もっと簡単に解釈してみれば、『『頭』の中に触れる』と言う事、『頭』を切ると言う行為をしなければ、『海馬』には触れられない──
「いっ厭だ! 流石に痛い思いをして迄、記憶は戻したくない!」
 僕が泣きながら言うと、諏訪子は言った。
「そんなの関係ないよ、切った後、右手の能力で、『元に戻』せばいいだしね」
「いや、そうじゃなくて、痛みを伴うのは厭だって言いたいの! 何れは『元に戻る』かもしれないでしょ!?」
 僕がそう言うと、早苗が言う。
「確かにそれもそうですが……『元に戻』らない、という可能性もあるんですよねぇ……」
「確かにそれもあるけれどね、でも、時間は無限にあるんだ、まだまだゆっくりと記憶を取り戻せばいいんだよ、ねぇ?」
 僕がそう言うと、諏訪子も早苗も納得する。
「はぁ、助かったなぁ……」
 そう言いながら僕は体が熱くなって汗を掻いている事に気付く。
「うぅー、話し合いが過熱して、暑くなっちゃった、汗も掻いてる……」
 そう言いながら僕は手でパタパタと仰ぐ、すると早苗が僕に向かって言う。
「華扇ちゃん、お風呂に入ります? 今から用意しますよ?」
「えっ? 良いのかい? でも流石にそこ迄されるのは客人として、抵抗があるなぁ……どうせ一日ぐらい入らなくても臭わないでしょ?」
 僕がそう言うと早苗が怒声を放つ。
「ダメです! 華扇ちゃんは可愛いんですよ!? その可愛さを捨ててはいけません! だからお風呂に入って下さい!」
「……あぁ、はい、入ります──」
 僕がそう言うと、『そうですよね!』と早苗が可愛く言って、僕らの居る居間を離れる──僕は神奈子と諏訪子を見る、二柱は僕が見るやいなや、そっぽを向く、どうやら僕は『不運』という物を買ってしまった様だ──

 あの後、神奈子と諏訪子から聞いた話だと、早苗はたまに押しが強くなってしまう時があるらしい、だからその時はそのまま頷くしかない様だ、はぁ、それもそれで大変だなぁ、そう思いながら僕は早苗が用意したお風呂に入る事にした。
 僕は巫女装束を脱ぎ、服を籠の中に入れる、そして風呂場の戸を開ける、おおっ、これはこれは……何とも綺麗な木で周りを被われた浴槽だった。
 綺麗で湯船に入るのも少し躊躇ってしまう、まぁ、入らないと綺麗にはならないけれど。
 さて、少し体を洗って、湯船に入りますかぁ……そう思いながら石鹸でタオルを泡立てて、体を洗う、はぁ、気持ち良いなぁ。
 体を洗い終わった後、僕はそのまま湯船に入る、あぁ、程良い暖かさで安心する、何だろう、少し眠くなってしまう──すると早苗の声が聞こえた。
「華扇ちゃん、お湯加減、どうですか?」
「湯加減か、あぁ、この温度は心地いいよ、有難う」
 僕がそう言うと、早苗は喜んでくれた、さぁ、のんびり浴槽でお風呂を楽しもう──

 数十分後──
「遅いなぁ、華扇は何をやっているんだ?」
 神奈子が日本酒片手に上の空を見ながら考える、今日は満月が見える、酒の肴になりそうだ。
「そうですねぇ……」
 早苗が神奈子に反応する、次に諏訪子が言う。
「男の子だから、『ヤッてる』んじゃないかな?」
 諏訪子の発言に不思議がる神奈子。
「『ヤッてる』? 何を何だ?」
 諏訪子は神奈子に近付き、耳打ちで『ヤッてる』という言葉の意味を説明する、神奈子は顔が赤くなるも、急に青醒めて、『確かに有り得そうだ』という様な考えになる。
 そして急に立ち上がり、とぼとぼと歩いて居間を出る、その移動に早苗が言う。
「どうかされたんですか、神奈子様……?」
「ん? いや、何でも無いよ、少し風に当たりに行くだけだ」
 そう言って、居間を出る、ニヤニヤと笑いを浮かべる諏訪子を見て、『不安』という二文字が頭の中で過ぎる、華扇ちゃんがお風呂場で倒れていなければいいですが──

 神奈子は急いでお風呂場に急ぐ、神が神社に居る前で、何淫靡な事を! そう思いながらお風呂場の戸を開けた、まだ中には華扇が入っている、そしてその戸を強く開ける。
「おい、華扇!何をやって……」
 神奈子の目の前に入ったのは、湯船に浮いている華扇だった、少しでも重心がズレてしまえば、湯船のお湯が鼻や口に入って呼吸出来なくなる──いや、神が目の前に居る中で、見殺しにはさせない! そう思いながら神奈子は濡れても良い様に、上半身の服を脱ぐ、そして華扇に詰め寄る。
「華扇! 大丈夫か!?」

Re: 東方崩壊譚 ( No.25 )
日時: 2017/02/19 22:15
名前: 彩都 (ID: lBubOowT)  

「えっ?」
 顔を叩かれて目覚めた僕は誰が僕の頬を叩いているのかを確認する、僕の頬を叩いていたのは神奈子だった。
「あれっ? 僕は何時の間に寝ていたんだろう?」
 そう思いながら周りを確認する、神奈子は上半身裸だった──えっ? 裸……? そう考えると、急に恥ずかしさが込みあがってくる、自分も裸、相手も上半身裸、だけど、神様でありながら女性──
「どうしたんだ? 何か顔が赤くなっているぞ?」
 神奈子はそう言いながら僕を起こしたかと思うと、急に立ち上がる、すると僕の目に写ったのは、神奈子の胸……一瞬、何が起きたのか、ゆっくりと頭の中で解釈している間に目の目が真っ白になって、僕の鼻から鮮血が飛び出す……そして上の空の僕に対して不思議がる神奈子、だが自分の格好を見て、神奈子も理解し、顔が赤くなる、そして神奈子は僕にビンタをする。
「みっ、見るなぁ!!」
 パチーン、と叩く音にしては気持ち良い音がする、だが僕にとっては激痛だった……

「すっ、すまん、華扇! 私の勘違いで……」
 神奈子はそう言いながら僕の腫れた左頬に氷水と塩が入った袋を当てる、そして居間の状況は、こんな感じだ──諏訪子がニヤニヤ声に出さずに笑いながら、僕は神奈子の膝枕で左頬に氷水の袋を当てられている、という状況だ。
 早苗はもう遅いから、という理由でもう寝ている。
「はぁ、全く……こっちも悪かったと思うよ? 他人の家──いや、他神の家か? よく分からないや──で風呂に入って寝てしまうだなんて……」
「全く、神奈子も早とちりだねぇ」
 諏訪子がそう言うと、神奈子が言う。
「元はと言えば諏訪子だろう!?」
 二人が喧嘩しそうな雰囲気だったので、僕が辛うじて止める。
「まぁまぁ、落ち着いてよ、こうして僕も生きている事だしさぁ?」
 両者の真ん中に入って、両手を出しながら落ち着かせる、もしも早苗が毎日こんな事をして、宥めている、というのなら、毎日が大変だなぁ、と思う。
 すると諏訪子が言う。
「で、どうだった、華扇……今日一日の守谷神社体験は?」
 諏訪子がそう言うと、僕は少し考えてから言う。
「うーん、どうだろう……ご飯が美味かった事と、お風呂が気持ち良かった件、他には村人の人達とも関われて、とてもためになったなぁ」
「そっかそっか……だけども、忘れてはないかい? 本来、此処に来た理由を?」
 諏訪子が言うと、僕は溜息を吐いて答える。
「僕の、『『幻想郷』を生き抜く為の特訓』、だろ? 忘れる訳が無いさ、僕はこの事を少したりとも忘れた事はないさ」
 僕がそう言うと、後ろにいる神奈子が言う。
「そうか、だったら明日から特訓開始だ、明日の朝から厳しいから、気を付ける様に」
 えっ? 今さっき、何て言った? 僕が聞こえたのは、『明日から特訓開始』? 僕が振り向くと、神奈子が言う。
「うん? 明日から特訓開始だが? 何か不満でもあるのか?」
「いや、不満がある訳じゃないんだけどね? いやさぁ、急過ぎないかなぁーなんて……」
 僕がそう言うと、諏訪子が言う。
「不満が無いのなら、明日からでも良いと思うよ?」
「いや、あのねぇ、僕の話を聞いて──」
 僕が話をしようとすると神奈子が割って入る。
「不満が無いのなら、明日からだな、それじゃあお休み」
 神奈子はそう言って、居間を出る──僕は振り向いて、諏訪子の方を見る。
「さて、私も寝るかな……明日から頑張ってね、華扇ちゃん!」
 可愛い笑顔を見せて諏訪子は神奈子と同じ様に居間を出る──はぁ、明日から気苦労をしそうだなぁ……そう思いながら早苗が寝る前に用意してくれた寝室へと向かう、はぁ、少しだけだが、明日が憂鬱に感じられる──

 僕は寝る前に早苗が用意した寝室へと向かう、そして明かりを消して、布団の中へ潜り込む、ふぅ、今日の疲れをこのふかふかの布団で癒そう、そう思いながら思いっきり、息を吸って、吐いた、さぁ、これで体の中の空気を循環した──気がする体で睡眠を取ろうとする──あっ、案外早く眠れそうだ……そして僕はそのまま睡魔に襲われる──
 そして朝になる、『ふあぁ……』と欠伸をして、僕はゆっくりと起き上がる、そして自分が昨日寝た場所より少し横にズレている事に気が付いた、何だ、少し寝相が悪かったのかな? と思ったが、隣で、『んんっ……』と、可愛い声が聞こえた、誰か居るのか? いや、そんな筈は無い、何故なら昨日は一人で寝たのだ、そして布団に入っても、何も感じなかったのだ、なのに、何で隣で声がしたんだ? 可笑しい、寝て起きたら、可愛い声が隣から聞こえた、それはとてもおかしな事では無かろうか? 流石に可笑しいと思ったので、僕は自分を被ってくれた布団をめくった──
 するとそこには神様の洩矢諏訪子が眠っていた──しかも体を縮こませながら──
「えっ? あの、諏訪子さん……?」
 僕は焦りながら諏訪子を起こそうとする、だが中々起きない。
「起きて下さい、もう朝ですよ?」
 僕はそう言いながら諏訪子の肩を揺らす、するとやっと目を覚ましてくれた。

Re: 東方崩壊譚 ( No.26 )
日時: 2017/02/19 22:16
名前: 彩都 (ID: lBubOowT)  

「ん? もう朝……?」
 そう言いながら諏訪子が起き上がる、さて、何で僕の寝室に入って、一緒に寝ていたのだろう? それを聞かないと。
 僕が声を出そうと立ち上がった瞬間、寝室の襖を開ける者が居た、それは早苗だった。
「華扇ちゃん、もう朝ですよ──」
 早苗が声を出した瞬間、僕と諏訪子の両名を見て固まる、早苗は今の光景を見て、何を思ったのだろう? それは僕には分からないが、次に諏訪子が何も言わなければ、僕は弁解を出来たかもしれない──
「ふあぁ……よく寝た、はぁ、それにしても夜の華扇は激しかったなぁ、もう赤ん坊みたいだったよ──ってどうしたの二人共?」
 プルプルと震える早苗に対して、僕は言う。
「待て、早苗、話がある、少しは聞いてくれると嬉しいなぁ?」
 冷や汗しか出ない僕に対して、怒りのオーラが感じ取れる早苗には何を言っても無駄な様だ──
「諏訪子様、夜中に何があったか、教えて頂けますかねぇ!?」
「ひぃ! 僕は何も知らない! 逆に教えて欲しい所なんだけど!?」
 早苗は御幣を使って僕を攻撃しようとする、その僕は滝の様に汗を出しながら滝の様に涙を出している。
 そんな諏訪子はあくどい顔をしながら二人に言う。
「うーん、そうだなぁ……何が知りたい? 私が華扇に抱かれた話か、華扇が汗だくになった話か」
「へぇ、そうなんですか華扇ちゃん……やはり華扇ちゃんも男なんですね……」
 早苗はそう言いながら僕に近付いていく、待って! 僕の話を聞いて下さい!
「待て待て待て待て、少しは落ち着こうよ? 神様相手に僕は何もしていないんですけど!?」
 必死に僕が弁解をしようとすると諏訪子が止めを刺す。
「嘘っ!? じゃあ夜中にあった事は全て嘘なの!?」
「ちょっと待て神様、その前に深夜の僕は何をしたんだ!?」
 僕は深夜の事は覚えていないのだ、なのに何でこんなに曲解しているんだろう?
 すると早苗は御幣を落として、そのまま僕を抱き締める、えっ? 一体何なんだろう?
「もう! 私だって女なんですよ──現人神ですが──私にだって甘えていいんですよ? 諏訪子様も独り占めしないで下さいよぉ?」
 ぷっくーと頬を膨らませながら早苗は言う、僕は早苗に対し、何だか可愛い小動物を感じてしまう。
 それを見ながら諏訪子は思う。
(少しおちょくったつもりだけど、何だか面白い方向に転がったなぁ、実際は久し振りの男で、寝室に侵入して、布団の中に入ったら、華扇が私の事を抱き枕の様に抱き締めてきたから、仕方なく一緒の寝室で寝ただけなんだけどなぁ……)
 諏訪子はそう思いながらも、言わない方が面白いと判断して、黙る事にした。

 そして僕は布団を片付けて、体を縦に伸ばした、起きたての時は色々あったけど、今日から特訓なんだ、さぁ、頑張ろう。
 そう思いながら居間へ行き、朝御飯を食べようと思う。
 今日は白いご飯に味噌汁、そして魚だった──そう言えば幻想郷に海はあるのだろうか? あったら一度見てみたいな、そう思いながら味噌汁の匂いを嗅ぐ、味噌の良い香りが自分の鼻の奥の鼻腔を擽る──僕はそのまま湯気が立つ味噌汁を飲み込んだ。
 暖かい、いや、温(ぬる)い、これが正しいだろう、何とも飲みやすい温度で少し自分はほっこりする。
 日本人で良かった、と、僕はそう思う、だが僕が日本人かどうかはまだ分からないのだが──
「華扇ちゃん、味噌汁はどうですか?」
 突然早苗が喋ったので僕は驚く。
「えっ? あぁ……美味しいよ、適度な温度で安心する味噌汁だね」
 僕がそう言うと早苗は喜んだ。
「えへへ、それは嬉しいです──その味噌汁、私が作ったんです、華扇ちゃんにも口が合って良かったです」
「へぇ、早苗が作ったんだ……」
 そう言いながら僕は味噌汁を見つめる、結婚した男性は良い妻を持ったなぁ、僕はそう思いながら味噌汁を一気飲みする、若布と薄い揚げが美味しい。
 次にご飯をかきこんで、味噌汁の余韻を感じながらご飯を食べる、うん、美味しい。
 僕は残った魚をゆっくりと身を解(ほぐ)して、白いご飯と共に食べる、塩味が利いている魚だなぁ、そう思いながら口の中で味を噛みしめる、こんなに細い魚なのに味がしっかりしている、まるで人里で見た『鰯』という魚の様だ。
「魚も美味しいなぁ、塩味が利いている」
 僕がそう言うと早苗が言う。
「それは昨日華扇ちゃんが来る前に貰った魚ですねぇ、味付けは私ですよ」
「へぇ、それは凄いね、結婚したら絶対旦那さん恨まれるよ、『こんなに優しくて手料理が美味しい妻を持つなんて……』ってね」
 僕がそう言うと早苗は両手で自分の頬を触りながら照れる。
「そんなに褒めないで下さいよ、何も出ませんよ?」
 早苗がそう言うと僕が言い返す。
「でも、『早苗の優しさ』は滲み『出ている』けどね?」
 僕がそう言うと、二柱はポカーンと口を開ける、少しの間の後、諏訪子が僕の方を叩く。
「巧い返しだねぇ、こりゃ、早苗の旦那さんは華扇でもいいんじゃないかなぁ?」
 諏訪子がそう言うと僕は言う。
「アハハ……でもまだ僕は結婚する気は無いので、早苗とは結婚出来ないなぁ」
 まぁ、記憶を取り戻したらすぐに元の世界に戻るしねぇ、と僕がそう言うと、諏訪子が悲しむ。
「ありゃりゃ? それは悲しいねぇ」
 諏訪子が言うと僕が続けて言う。
「仕方無いさ、記憶を取り戻すのが今の僕の役目だからね──」
 僕はそう言った後、僕はご飯を食べ終わり、先に外で特訓する事にした、さぁ、どんな特訓が待っているだろう? そしてどれだけ強くなる事が出来るだろう? 僕はそう思いながら深呼吸をする、さぁ、特訓の開始だ──

Re: 東方崩壊譚 ( No.27 )
日時: 2017/03/19 22:05
名前: 彩都 (ID: ???)  

東方崩壊譚(とうほうほうかいたん) 第二章 第二話 守谷神社と二柱の神

CHAPTER 3 坤を創造する程度の能力 洩矢諏訪子

 ピチュンピチュン、と小鳥の囀(さえず)る声がする、僕こと華扇は地面に対し、大の字で寝転がっていた。
 今さっき、何が起きた? そう思っていると僕の胴体に謎の目が付いた帽子を被る少女──洩矢諏訪子が座ってきた、まぁ、見た目が幼いだけに座られてもあまり重くないので苦ではないが──
「ねぇ、どんな気持ち? あんな攻撃でこんな状況になったのは?」
 諏訪子がそう言うって、僕は目を閉じて答えた──
「……完敗じゃないか、完全敗北って奴なのかな?」
 僕はそう呟きながら大きく深呼吸をした──そう、僕は何で地面に寝転がっているのかをゆっくりと思い出す──そう、それは数分前──いや、一分あったかどうかの出来事だった──

「それでは、特訓を開始しようか?」
 僕がそう言うと守谷神社の近くの雑木林で特訓を開始する事になった、雑木林なら足元、後方、色々な場所から見なければならない為、視力をよく使いそうだ、そう考えながら、僕の目の前に謎の目が付いた帽子を被る少女──洩矢諏訪子が現れる、初戦は諏訪子なのか。
「流石に人間、神である私はちと弱気で行くよ?」
 諏訪子がそう言うと僕は笑う。
「何を? 僕は相当強い、かもしれないんだぜ? だから本気で来いよ、神様?」
 そんな事を言うのが間違いだった、いや、その前に正解なんてあるのだろうか? 今考えても、『だから本気で来いよ、神様?』とか、言わなきゃ良かった──それを回想している時に思っても無駄だった──
 ドゴン、急に変な音がする、そしてその音の後に急に諏訪子が小さく見える、いや、『自分の地面が高くなっている』!? 急に隆起した、とは考えられない……そう考えた瞬間、急に隆起した地面が下に下がる、僕は一瞬で高い所に動かされてしまったので、空中で少し静止して、落ちていく、流石に守谷神社や森が自分の小さな目で視界に捉えているので、相当高い場所なんだなぁ、と感じる……って、今落ちたら流石に死ぬじゃん! フランドールの左手をもいだ時よりも酷い事になるんじゃないか!? 僕はそう思いながら自分の右手を地面に向ける──いや、意味無いじゃん! あの時、隆起した地面に触れて発動していれば何か変わったかもしれないが、今はそんな地面も元の平らな地面に戻っている! くうぅ! もう無駄だ──死ぬ、そう思って僕は目を瞑った、皆ゴメン、記憶を取り戻せなくてゴメン……霊夢、弟子になったばっかりなのに死んでゴメン……魔理沙、は特に無し、フランドール、助けれて良かった、あのまま暴走してたら幻想郷が消えてたかもね、僕は知らなかったけれど……早苗、美味しいご飯有難う、神奈子、もフランドールと同じく特に無し、諏訪子、お前だけは恨んでやる……紫、僕に仮の名前と能力を教えてくれて有難う……今迄の思い出がまるで走馬燈の様に思い出される……ていうか、基本的に思い出すのは特訓の日々と、痛かった思い出だけしかないけれど──
 それらを思い出しながら僕はそのまま地面に向かって落ちていく──
「本気を出すとこれなんだからなぁ、神様も大変だ」
 諏訪子がそう呟きながら地面から砂や土で作られた手を作り出し、落ちていく僕を掴む、そして掴んだ後、砂や土で作られた手はゆっくりと沈んでいき、地面に僕を置いて、砂や土で作られた手は跡形も無く消える──そして閉じた目を開けた僕は大の字のまま寝転がっていた──そして
僕の胴体に諏訪子が座った──

 あぁ、思い出した、簡単に一撃も攻撃せずに僕に戦意喪失をさせた、目の前の少女──いや、目の前の神様、洩矢諏訪子、の恐ろしさを今知った。
「どうしたの? もう特訓終了?」
 と、諏訪子が少し笑いながら言ったので僕は言う。
「まさか、そんな訳が無いだろう? 僕はまだまだ本気を出してさえ居ないんだぜ? そんな簡単に負けるのか? いいや、負けないさ、さて、今のはウォーミングアップみたいなものだ、さて、行かせて頂こうか?」
 僕がそう言いながら起き上がる、すると諏訪子は言う。
「うーん、私にとっては特訓終了に感じたんだけどねぇ──今回は弾幕もスペルカードも無しで戦ってあげるよ、私の『坤を創造する程度の能力』で戦ってあげる、さぁ、華扇、本気で戦おうじゃないか?」
 諏訪子はそう言いながら、背中からオーラの様な物を出す──あっ、これは勝てそうにない、僕の本能がそう判断した後、戦闘という特訓は始まった──

「今日も平和だねぇ……早苗が入れたお茶は今日も美味い」
 守谷神社の二柱の内の一柱、八坂神奈子がゆっくりとした溜息を吐いて早苗に言う。
 当の本人である早苗は少し照れる。
「そんなっ! 神奈子様、私はまだまだですよ……」
 早苗が自分を卑下にしながら、正座で座る、そして早苗が神奈子に言う

「神奈子様のご飯も美味しいですよ……!」
 そういう早苗に少し照れる神奈子。
「……早苗も言うようになったじゃないか」
 神奈子はそう言った後、もう一度温かいお茶を飲み込む──すると何か女性の悲鳴が聞こえる、はて、誰の声だろう?

Re: 東方崩壊譚 ( No.28 )
日時: 2017/03/19 22:07
名前: 彩都 (ID: ???)  

「あら? この声は何なんでしょうか?」
 早苗がそう言うと神奈子は言う。
「何だか聞き覚えのある声がする──誰だっけ?」
 神奈子がそう言った瞬間、縁側の方から誰かが飛んでくるのを早苗は視認する、それは華扇だった、華扇が此方に向かって吹っ飛んで来ているのだ。
「えっ!? 華扇ちゃん!? 何でこっちに!?」
 早苗はそう言いながら立ち上がる、すると神奈子が言う。
「えっ? 華扇だって? 何でこっちに来るんだい? 華扇は諏訪子と共に森林で特訓している筈じゃあ……」
 神奈子がそう言いながら縁側を確認する、確かに華扇が吹っ飛んでいた。
「ああああああああああああああああああああ!!」
 華扇はそう言いながら神奈子の方へ近付いていく、神奈子は避ける事も出来ずに華扇とぶつかる──
「いたたたたたた……」
 神奈子はそう言いながら起き上がる、すると華扇は神奈子の胸に顔を置いて、『むぐぅ……』と言いながら気絶する──それに対し、神奈子は顔を赤らめながら悲鳴を上げる──

「…………」
 どうしてこうなったんだ? 僕は状況が読み込めないんだけど? ねぇ、少しは聞いているのかなぁ? 僕はそう思いながら腫れた頬を触る、完全に腫れている、そりゃ痛い訳だ。
「いやぁ、ちょっと攻撃したら吹き飛んじゃって……神奈子も少しは機嫌を直そうよ? 華扇じゃなくて私が悪いんだし……」
 諏訪子はそう言いながらぷんすかぷんすか怒っている神奈子を慰める、これは僕が頬を殴られた事と、神奈子が怒っている事は関係するのかなぁ? 僕はそう思いながら、右手の『能力』で『腫れた頬を『元に戻』』した──

 そして夜になった、僕は手洗い嗽(うがい)をして、ご飯を食べようと席に座る、すると神奈子が僕の方向を見て僕に向かって喋る。
「華扇、すまないがご飯を食べ終わったらこの神社を出ていってくれないか?」
 あまりにも突然の事で僕と早苗、諏訪子は驚く。
「どうしてですか!? 神奈子様!」
「どうしたのさ、神奈子! 確かにお昼のは不可抗力って奴だけど……」
 諏訪子が語尾を弱めていく──それに対し神奈子は言う。
「簡単だ、お前が来てから私は胸を見られるわ、胸を揉まれるわ──後者は諏訪子が悪いけれど──お前が来てから禄な目にあって無い気がするんだ、だから博麗に戻れ、いいな?」
「それは少し我が儘過ぎます神奈子様!」
 早苗がそう言うと神奈子は怒鳴る。
「早苗には関係ない!」
 そのやりとりを見て、僕は立ち上がって言う。
「分かったよ、今から出ていくよ、今迄有難う御座いました」
 そう言って僕は三人、基三柱にお辞儀をして守谷神社を出る、僕が出ようとすると早苗が近付いてから言う。
「華扇ちゃん、今は夜遅いです、流石に明日の朝になってから外に出た方がいいと思われますけど──」
 だが僕は早苗の言葉を切ってでも言う。
「いや、大丈夫だよ、そりゃ迷惑をかけた存在だもん、僕が悪いに決まっている、だから心配しないで?」
 僕がそう言って振り向いて守谷神社を出ようとする、すると早苗がまだ僕に向かって言う。
「それでもご飯を食べた方が良いと思うんですけど──あっ、夜遅いですし、一緒に博麗神社迄行きません──」
 早苗が喋っている途中に僕は割って入る。
「いいよ、自分が蒔いた種は自分で回収しないとね? 魔理沙の箒に乗っている間にある程度の道は分かってる、人里にでも行けば博麗神社の場所位教えてくれるだろ? だがら一人で帰れるよ、それじゃあ、また会えたら会おうか?」
 僕はそう言って早苗に手を振る、その時僕は早苗の方を向いていなかったので分からなかったが、多分同じく手を振っていると思う──

「……はぁ、流石に食べずに出ていったのはダメだったかなぁ?」
 僕は『ぐきゅるるる〜』と鳴るお腹を摩りながらトボトボと歩く、今はお腹が減って仕方ない、そんな僕は真っ暗な森を歩いていた、すると目の前に俯いた金髪の幼女が現れる──その幼女はとても幼く、可愛かった、簡単に言えば人形と言われても信じてしまいそうな程可愛く、人形ぽかった。
 だが、『可愛い』等と言う感情も一瞬で消え去った、彼女の右手にある物、それは『人の腕』だった、その『腕』は前に霊夢と魔理沙が戦いあったフランドール・スカーレットが僕と対峙して、僕の左腕を捥いだ時の様に捥がれていた、そして捥がれた部分からはまだ少しだけ血が出ていた──そして暗闇から俯いた幼女が顔を上げる、顔を上げて僕は戦慄する、幼女の口元は『赤く濡れていた』のだ、歯も赤く、顔も少し赤い液体で濡れている、そして僕はその『赤く濡れてい液体』の正体を匂いで感じる、そうそれは──『『血』の匂い』──だ──そして幼女が声を出す。
「ねぇ、お姉さん? 少し聞いて良い」
 金髪の幼女がそう言うと僕は返答する。
「その前に僕は男だけどね──まぁ、それは良いけれど──一体何なんだい?」
 まぁ、この巫女装束の所為で何回女性に間違われた事やら……それを数えるのも面倒になってきた──そう思っていると金髪の幼女は言う。
「お姉さん、『食べて良い』?」

Re: 東方崩壊譚 ( No.29 )
日時: 2017/03/19 22:08
名前: 彩都 (ID: ???)  

「……はぁ?」
 いや、いきなり何を言っているのだろう? 僕はそう言おうとして口を開けた、だがその次の瞬間、金髪の幼女の持っている『人の手』を幼女は『食べ始めた』、くちゃ、むちゃ、ぬちゃあ……とゆっくりと『人の手だった』物はゆっくりと幼女の口の中へ収まっていく──そして食べ終わり、白い骨を草むらへと投げ捨てる、そして幼女は言う。
「あっ、切れちゃった──だからお姉さんを『食べても良い』よね? 私お腹が空いているんだぁ、だからもっと食べなきゃいけないの──」
 幼女の言葉に頭の中で警報が鳴る、僕は体が動かなかった、動け! そう思っていても体は動かない、そしてそのまま幼女の言葉を聞いてしまう──
「だからもっと食べなきゃいけないの──『人間の肉』を──」
 ぞわりっっ! 体の警報が一気に鳴り響く、動かないと──動かないと僕は『食べられて』しまう! 僕はそう思いながら少しだけでも良いから声を発した。
「あ……あぁ──」
 よし、少しは声を出せる! 僕はそう思いながら金髪の幼女に向かって言う。
「え、えーと、君の名前は何だい? まず、それが聞きたいなぁ」
 話を少しでも逸らさせる為に他の事を聞く事にする、すると彼女は普通に答える。
「それがお姉さんの最期の言葉? いいよ、聞いてあげる、私の名前はルーミア、能力は『闇を操る程度の能力』、これで良い? お姉さん? でも私だけ名乗るのは可笑しいなぁ、お姉さんも教えてよ、名前?」
 うっ、確かにそうだ、名乗ったら名乗り返さないと──
「僕の名前は華扇だ、因みに男だからお兄さんなんだけどなぁ──」
 僕がそう言うとルーミアという幼女は驚いていた。
「えっ? 男の人なの? これは驚いたなぁ──じゃあお兄さんだね」
 お姉さんからお兄さんに言い直すと僕は安心する、って安心してどうする、僕はこの子に殺される運命にあるんだぞ!?
 そう思いながら周りを確認する、隠れて身を潜めて逃げるという手段があるが、何より僕はこの森を初めて歩いているのだ、もしもルーミアがこの森の住人だったら簡単に敗北してしてしまうだろう──そう考えているとルーミアが突然喋り出す。
「それじゃあ、名前も言い終わったし、お姉さんならぬ、お兄さん? お兄さんは『食べて良い』?」
 ルーミアがそう言うと僕はゆっくりと答える──
「その質問には──『厭だ』、と答えるよ!」
 僕はそう言いながら来た道を戻る、するとルーミアも僕の事を追いかけてくる、矢張り、僕の事を食べるのか……僕はそう思いながら考える、どうやって倒せばいいのか? とりあえず手荒な真似や攻撃をせずに『気絶、もしくは失神させたい』のだ、なので、どれだけ簡単に、素早く気絶、失神させるかが問題だ。
 どうする? どうする!? 頭の中で『?』マークが回転する、そして
思い付いた事があった、だがこれは果たして正解なのだろうか、それは分からないが、試してみなければ分からない、その気持ちが大事だ、僕はそう思いながら急にその場で立ち止まる、追いかけるルーミアはそのまま僕に近付いていく──ルーミアが僕の視界に入って、数メートルの部分で、僕は下から滑り込みをした、そのまま僕は滑って、振り向く、ルーミアは僕の後ろにいる、よし、成功した、僕はそう思いながら急いで立ち上がり、前へ、前へと走っていった。
「そんな事をして逃げられると思うなー?」
 ルーミアはそう言いながら滑り込んで逃げた僕を追いかける、流石幼女、体力だけは有り余っている様だ、何で小さい子はこんなに体力があるのだろう? あっ、ルーミアは『ご飯』を食べた後だから体力が有り余っているのかな? 僕はそう思いながら心の中で溜息を吐く、全く、僕は食べても美味しくはないんだけどなぁ──
 そう思っていると『何時の間にか目の前が真っ暗になっていた』、月の光があるからまだ自分の影や木の影が見える筈なのに……そう思っていると急に後ろから自分の脹ら脛に口がぶつかる、一体誰のだ? そう思いながら振り向くと、何も無い、何だ、ただ単に狐や小動物がぶつかっただけか、そう思ったが次の瞬間、そんな考えが吹き飛んだ。
「へぇ、此処にいたんだ、お兄さん? 捕まえたことだし、頂きます──」
 何でルーミアの声がするんだ? こんな暗闇の中で──そう思った時、自分の右の脇腹に謎の痛みが走った、そのあまりの痛さに叫んでしまう。
「ああああああ!!」
「煩い」
 ルーミアはそう言って、僕の左脇腹に向かってパンチをしてきた、両脇腹が痛い、一体何が起きているんだ!? 僕はそう思いながら痛みの元である右の脇腹に触れる、そして顔の近くに持ってくるが見えない、仕方ない、匂いは嗅げそうなので、嗅いでみる──これは、匂った事のある物だった、そして頭の中でこの『匂い』が分かった、それは『血』だ、でも何で『血』が出ているのだろう……? すると何か音が聞こえる、僕はその音に耳を澄ましてみる──ぶちぶちぃ、ぬちゃ、ねちゃ……もぐもぐ、音が鳴る度に僕の脇腹が痛くなった、そして頭の中で、『頂きます』、という言葉が繰り返される──そして一つの結論に辿り着く、それは『ルーミアが僕の右の脇腹を食べている』、という事だ──

Re: 東方崩壊譚 ( No.30 )
日時: 2017/03/19 22:12
名前: 彩都 (ID: ???)  

 流石にそれは無いだろう、僕はそう思いながら見えないルーミアに聞く。
「おい……ルーミア? 君が食べているのは一体何なんだい?」
 僕がそう聞くとルーミアは簡単に言う。
「お兄さんの脇腹」
 くっ、矢張り食べられていたか──そう思いながら自分の右手で食べられた脇腹の部分を『元に戻』す、痛みと共に元通りに感じる、だが『元に戻』した場面をルーミアは見ていた、更にルーミアは怖い事を言った。
「うわぁ、食べる部分が増えた、また食べれるね、同じ部分」
 ゾクリ、背筋に冷たい何かが注がれた感覚がする、まるで背筋に冷水でも注がれた様な気分だ、僕はまた叫びながら前へと進む。
 だが進んだ感覚はない、何でだ? まるで自分の影を踏まれている気がする、気がするだけだが。
 嘘だ、死にたくない、食べられたくない、そう思いながら体をじたばたさせる、そして右手に何だか柔らかい物がぶつかる、そうだ、右手には『元に戻す』能力があるのだ、もしかしたらこの暗闇を解除出来るかもしれない、そう思いながら僕は柔らかい物に対して、『元に戻』す能力を使用する──すると急に視界が開けた、全く、何だったんだ、あの暗闇は……そう思って自分の右手の手の甲を見る、一体何を触ったんだろう? 不思議そうに自分の右手の手の甲を見ながら触れた部分を確認する、まだ柔らかい、何に触れたのだろう、そう思っているとルーミアの顔がほんのり赤かった、そしてルーミアは自分の腕を握り締める、一体何に触れているんだろう? そう思いながら自分の右手に目をやる、目をやると自分がルーミアの何処に触れているかが分かった、その場所は──ルーミアの胸だった、一瞬、何処に触れているんだ? ともう一度確認したが、触れているのはルーミアの胸以外変わらなかった。
「お兄さんの変態……」
 ルーミアがむすっとした顔で言う、僕は素直に謝るしかない。
「あ……あの、ごめんなさい……」
 僕は謝った後、ルーミアの胸から右手を離し、ルーミアに向かって言う。
「ゴメンね、ルーミア、僕は急ぎの用事があるから急いで帰らないといけないんだ、それじゃあね」
 僕はそう言って、逃げようとする、だがルーミアは走ろうとした僕に対して、僕の左手を手首から口の中に入れて、ルーミアは『噛み千切った』──
 えっ? ルーミアは何を口に入れている? そして左手から何か無くなった感覚と手首から熱い感覚を感じる、僕は自分の左手を見る、手首から無い、指も手の平も、手の甲も爪も指先も親指も人差し指も中指も薬指も小指も、何もかも左手首の先から無くなっている──そして僕は判断する、『コイツは『人喰い妖怪』』だと──まさかこんな所で『妖怪』に会うなんて──何て僕はついていないんだろう、ちゃんと妖怪に警戒さえしていけば、レミリアの、『『人喰い妖怪』には気を付けなさいよ、その『右手で触れた部分が『元に戻って』いる』、それが問題なのよ』、『そう、『人喰い妖怪』はどんな人間も関係無しに食べるから、貴方の能力は重宝される──その事も考えて行動しなさいよ』、その言葉が頭の中で回転する──もっと警戒していれば、もっと油断していなければ僕は食べられなかった筈だ──今更後悔してももう遅い、僕は左手を食べられたショックでその場で跪く、そしてルーミアは僕に対して言う。
「お兄さん、頂きます──って待って? お兄さん、どうやって自分の脇腹の怪我を一瞬で治したの? 食べる前に聞いてあげる」
 ルーミアが完全に僕の事を下にして見ている、僕は仕方なく、自分の右手の事を説明する。
「僕の右手は『元に戻す』能力、怪我も痛みも『元に戻す』のさ、これで良いかい? ルーミア、君が噛んだ脇腹はこの能力を使って『元に戻』したんだ、『怪我をする前の脇腹』に『元に戻』して──」
 僕がそう言うとルーミアは不思議そうな目で言う。
「と言う事は、『その能力で『元に戻』し続ければ、無限にご飯を食べられる』って事?」
「……あぁ、そう言う事だ、どうする? このまま食べて殺すか、生かすか、生かした場合は逃げる、殺した場合は無限にご飯が食べられない、さてどうする?」
 僕は究極の二択を作って、ルーミアに問わせる、さぁ、君の回答は何なんだろうね? そう思いながらルーミアを見る、するとルーミアは言った。
「うーん、逃げられたら困るし、無限に食べられないのも困る……あっ、そうだ!」
 急に笑顔になるルーミア、だが顔に付いている血がなければもっと可愛い笑顔だったろうに。
「『今、抵抗出来ない様にお兄さんを食べてしまえばいい』んだ、それはいい考えだね、と言う事でお兄さん、さよなら──」
 そう言いながらルーミアは大きく口を開ける──結局喰われるのか、僕はそう思いながら目を閉じる、これで僕の人生も終わりか、そうかそうか、何気に楽しかった人生だ、さよなら霊夢、さよなら魔理沙──僕はそう思いながら食べられるのを待つ、だが中々食べないので、僕は片目を開ける、すると目の前に『ルーミアが居なかった』のだ、そして声をする方向へ顔を向けるとルーミアが謎の棒を顔面に突き刺さりながらどっかに吹き飛んで行った──あの棒は、誰のだろう? そう思っているとルーミアが吹っ飛んだ方向の逆の方向からじゃりっと、砂と靴が擦れる音がする、一体誰だろう? そう思いながらその音の方へ顔を向けるとそこには神奈子が存在していた。
「……華扇、お前は大丈夫なのか?」
 神奈子がそう言うので、僕は答える。
「少し、大丈夫じゃないかも……?」
 僕はそう言いながら自分の左手を右手の能力で『元に戻』した、『元に戻』した所で、『元に戻』した前の左手の出血は触れていないので、変わらない、僕は段々と目の前が真っ暗になる──そのまま僕は倒れてしまった──

Re: 東方崩壊譚 ( No.31 )
日時: 2017/03/19 22:13
名前: 彩都 (ID: ???)  

 …………、ん? 此処は何処だろう? 暖かいし、何だか心地良い、ん? って僕は何で布団に包まれているのだろう? そう思いながら起床した僕の初めての思った事だった。
 そう思いながら横に寝転がる、すると目の前に早苗が居た、えっ? 何で早苗が? 落ち着け、そう思いながら逆の方へ振り向くとそこには諏訪子が居た、えっ? 何で諏訪子が? って此処は守谷神社って事なのか? 僕はそう思いながら起き上がる、僕の両隣には早苗と諏訪子が、つまり僕は二人に挟まれて就寝していた、と言う事か……って、そうじゃない、何で僕がこの二人に挟まれて寝ているんだ!? 意味が分からない! 僕は頭を抱えながら悶絶する、何で僕は此処で寝ているのだろう……? すると早苗が目を擦って起きた。
「んんっ? あれっ? 華扇ちゃんじゃないですかぁ、昨日は大変でしたねぇ、よく寝れましたかぁ?」
 えっ? 昨日は大変でしたね? どういう事だ? 僕はそう思いながら早苗に聞く。
「えっ? どういう事? 昨日は何があったんだい?」
 不思議そうに聞くと、早苗は不思議そうに言う。
「えっ? 覚えてないんですか? 昨日はあんな事が起きたというのに……」
 早苗はそう言いながら説明する。
「昨日華扇ちゃんは神奈子様に背負われて此処に戻ってきたじゃありませんか」
 えっ? あの神奈子が? 確か昨日は喧嘩した筈──そう思っていると少しずつだが記憶が蘇ってくる、確か喧嘩して僕は外へ出た、博麗神社に戻る為──
「そして顔が青醒めていたじゃないですか──妖怪に襲われて左手を食べられて、失血して、気絶した、と神奈子様から聞いていますが──もう大丈夫なんですか?」
 そうだ、確かにそうだ、僕はルーミアに左手を食べられ──『元に戻す』能力で左手を『元に戻』した後、気絶したんだ──つまりその後神奈子が運んだ、と言う事か、少しは状況が読み込めてきたぞ……
「そして一人で寂しそうだったから私が隣で寝て、私がトイレに行って、戻ってきたら諏訪子様が華扇ちゃんの隣に……と言う事です」
「おい、何さらっと凄い事言ってんの!?」
 さらっと添い寝宣言されて驚く僕、ていうか二人で添い寝なんかしなくてもいいのに……
「本当は神奈子様も添い寝したかったらしいけど、先に諏訪子様が寝ていたので、『神が両隣に寝ていたら驚くだろう』って言って、トイレ後の私に譲ってくれたり……」
「いや、早苗も神でしょ?」
 冷静にツッコミを入れる僕、まさか三柱共僕と添い寝がしたかったとは……
「言えば添い寝ぐらいするよ? 言えば、だけど」
 僕がそう言うと早苗が喜ぶ。
「そうなんですか!? だったら今日から添い寝して下さい! 毎日です!」
「えっ!? いきなりだなぁ、考えておくよ……」
 僕がそう言うと、早苗は喜んでくれる、まぁ、いきなり添い寝されているから驚くだけなんだよなぁ、言ってくれれば、添い寝ぐらいしてあげるのに……僕はそう思いながら食べられた左手を確認する、血は出ていない、握ったり、開けたりするが何も無い、良かった、ちゃんと『元に戻』っている──フランドールの時は『左腕』という大まかな場所だったので、あまり気にしていなかったが、今回は『左手』という指や爪等細かい部分もあるので、少し不安だったが、大丈夫な様だ──
「よし、大丈夫な様だね──さて、朝御飯を食べようか」
 僕はそう言って、欠伸をする──

 そして僕は居間に行き、早苗が作ったご飯を食べる、本当、ゆっくりとだが、昨日の事を思い出してきた──でも、人喰妖怪って言うのも初めて見たな──でも、人喰妖怪が可愛い女の子なのは驚きだが──僕はそう思いながらもぐもぐもぐもぐご飯のみを食べ続ける──
「……い、華扇……おい、華扇!」
 神奈子の声にハッとする僕、一体何なんだろう?
「どうしたんだ? 無心に白米だけ食べて……?」
 気づくと僕のお茶碗は白米が入っていなかった、何時の間にか食べ終わっていた、何でご飯が無い事に気付かないんだろう? そう思いながらお茶碗にご飯をお代わりする──考え過ぎもよくないな、僕はそう思いながら、またご飯を食べる──

 そして一人縁側へと出る、昨日は諏訪子に簡単に負けたけど、今日こそは右手の力を存分に使って何とか勝利をもぎ取ってやる! 僕はそう思いながら大きく深呼吸をする、そして何時でも右手の能力を出せる様に右手を動かしたりする、すると諏訪子は縁側に座りながら湯飲みでお茶を飲む。
「ん? 今日は諏訪子、僕と戦わないのかい?」
 僕が縁側に座る諏訪子にそう言うと、笑いながら諏訪子は言う。
「私は華扇みたいに元気じゃない、だから今日は他の人を選んだよ」
 そう言いながら諏訪子は指を指す、するともう一人、縁側に座る人物が居た、それは神奈子だった。
「華扇、お前と戦う存在は、この我、八坂神奈子なるぞ?」
「えっ!? 神奈子が!?」
 僕は突然の存在で驚いてしまう。
「そうだ、この我、八坂神奈子なるぞ? 我に勝てると思っているのか?」
 神奈子は古臭い言い方で僕に言う。
「……まぁ、冗談はこれ位にして──今日の対戦相手はこの私、八坂神奈子だ、さぁ、華扇、お前のその右手の力、存分に発揮させて頂くぞ?」
 神奈子がそう言うと僕は大きく唾を飲み込む、大地の神様の次は、天の神様か……
「相手にとって不足無し!」
 僕がそう言いながらガッツポーズをする、神奈子は背中の注連縄を外して、僕の前に立つ。
 そして僕と神奈子の戦いが始まった──

Re: 東方崩壊譚 ( No.32 )
日時: 2017/04/16 22:26
名前: 彩都 (ID: ???)  

東方崩壊譚(とうほうほうかいたん) 第二章 第二話 守谷神社と二柱の神

CHAPTER 4 乾を創造する程度の能力 八坂神奈子

「じゃあ、頑張ってね、神奈子、案外──華扇は弱い」
 諏訪子がそう言うと少しにやりと口の端を広げる神奈子。
「成程ねぇ──それは良い情報だ、有難う、諏訪子」
 神奈子がそう言って、僕は焦る、簡単に諏訪子みたいにやられそうだな、そう思っていると諏訪子が言う。
「それじゃあ──神奈子と華扇の戦い、開始!」
 諏訪子が僕と神奈子の戦いの開始を宣告する、その瞬間、僕は空を浮いていた、いや、『跳ばされて』いた──
 そして『何も無い』場所から腹部を押され、一気に急降下、そのまま僕は地面に激突して──意識を失った。

「…………? 此処は?」
 僕は守谷神社の縁側で水と氷を入れた袋を腹部に当てながら目覚める、すると目の前に神奈子が居たので、驚く、どうやら僕は神奈子に膝枕されていたらしい。
「えっ? 何で神奈子が……?」
 僕がそう言うと神奈子は少し汗を掻きながら言う。
「いや、その……私が悪かったし、華扇があんなに弱いとは思っていなかったし……」
 神奈子がそう言うと、僕は起き上がる、だが背中が何故か熱かった、僕が背中を触ると湿布が貼られていた、道理で熱いのか──
「おまけに華扇、お前は背中を強打したんだ、少しは修行を休止する」
「えっ? つまり僕は背中の強打が治る迄、特訓も修行もダメなの?」
 僕がそう言うと神奈子は頷く、嘘だろ……!? 僕はそう思いながら、膝から崩れ落ちる──すると水と氷が入った袋を持った早苗が縁側に来る。
「あっ! 華扇ちゃん、目覚めたんですね! 良かったぁ……」
 早苗はそう言いながら僕の腹部を触る、腫れていたのかもしれないが、もう痛みもなく、元通りになっている──僕は腫れていた事実は知らなかったが、早苗が『治って良かったですね!』と言っているので腫れていたのだろう。
 ……それにしてもお腹が冷たい、何か温かい物をお腹に当てないとお腹を下してしまう、そう思いながら僕は居間にある、湯呑みに入った温かいお茶を飲む──

「全く──僕の右手の能力の事を考えて、発言してほしいなぁ、僕の右手はある程度は万能なんだから、腫れた部分を『元に戻』したり、背中の強打で痛い部分を『元に戻』せるのに──まぁ、少しは休憩するのもありかもしれないな」
 僕はそう呟いてから、斧で薪を割っていく、この割った薪でお風呂の火を焼(く)べるのだ、僕は斧を振り上げて、一気に下に下げて薪を割った。
 少しでも力を付けて、霊夢や魔理沙に勝ちたい、その一心で額から溢れる汗に気付かず、僕は薪を割る、だが僕の見えない所で神奈子は思う。
(全く、アイツには何を言っても聞かない様だな、どれだけ力を付けたいんだか──)
 神奈子は僕が頑張って斧で薪を割る所を見続ける、だが神奈子の瞳には僕への心配が籠もっていた──
「よし──完成した、これで一週間分は持つと思うんだよなぁ……」
 溜息を吐いた後、尻餅をついて、僕が言う、すると神奈子がお皿に大量に盛ったお握りを持って、僕に近付いて言った。
「えー、おほん! 華扇! よく薪割りを頑張ったな! これは神である私からのお礼である! たんと食え!」
 そう言って神奈子は僕にお握りを大量に盛ったお皿を渡す、まさかこれ全部神奈子が握ったのか?
「そうだ、私が握ったお握りだ、とても貴重だぞ?」
 神奈子がそう言うと、湯気が出ているお握りを見て僕が言う。
「えーと、これは全部食べても良いのかい?」
「あぁ良いぞ、これは華扇、お前の為に作ったお握りだからな、全部食べてもいいぞ」
 神奈子がそう言うと、僕は持っていた斧を地面に置いて、神奈子が握ったお握りを持って、一口食べる──そのまま僕は固まる。
「えっと……どうした華扇? もっと食べてもいいんだぞ? 何で一口目で止まっているんだ?」
 神奈子が言う、僕は『この事』を本当に伝えて良いか、悩んだ挙げ句、『この事』を伝える事にした。
「神奈子、このお握り──食べた?」
 僕がそう言うと神奈子は不思議がる。
「いや? 流石に塩と砂糖を間違えたって事は無いだろうが──何回も確認したし──味は保証する!」
 神奈子はそう言って、塩と砂糖を間違えては無い! と念を押す、いや、そうじゃない、そうじゃなくてさ──
「……とりあえず、神奈子、食べてみ? 止まる理由が分かるから」
 僕はそう言って、神奈子に神が握ったお握りのお皿を渡す、神奈子は不思議そうに自分が握ったお握りを一つ掴んで、一齧りする──すると目からぽろぽろと大粒の涙を出して、神奈子が言った。
「このお握り──塩辛い……華扇はこんなおにぎりを食べていたんだな──すまん! 完全に私が悪い! だからもう食べなくていい!」
 神奈子が皿を上に持ち上げる、だが僕は立ち上がって、神奈子が握ったお握りの皿を奪って、神奈子に背を向けて僕一人で食べ始める、すると神奈子は泣きながら僕に訴える。
「何でこんな塩辛い物を食べるんだ!? 私は言っただろう、『食べなくても良い』って! なのに! 何で……」
「誰が『塩辛い』って言ったの? 僕は『塩辛い』なんて言ってない、『不味い』とも言っていない──このお握りは『美味い』じゃないか、僕は『このお握りが美味しいから食べている』だけなんだよ、僕が一口で止まった理由を教えるよ、『このお握りが美味し過ぎて止まった』だけだ、だから……僕は食べる、『こんなに美味いお握りを食べた事は無い! 美味しいなぁ!』」
 僕はそう言いながら神奈子の塩辛いお握りを食べて涙が出る、この涙は『神奈子のお握りが美味いから出た涙』だ、決して塩辛くて泣いている涙じゃない、と自分に言い聞かせながら神奈子の握ったお握りを食べ切る、そして僕は食べ終わった皿を神奈子に渡す。
「神奈子──美味しかった、また僕に作ってくれよ?」
 僕は神奈子に背を向けたまま言う、すると神奈子の啜り泣く声が聞こえる、そして神奈子は言う。
「また……食べてくれるのか?」
「そりゃそうに決まっているだろ? 神奈子が握ってくれたお握りは美味しかったもん、また作ってくれよな?」
 僕がそう言うと、神奈子は啜り泣きながら言う。
「あぁ、分かった……今度はもっと美味しく作るからな! 期待しておけよ!」
 神奈子はそう言って、食べ終わったお皿を持って、僕から離れる──美味しかったなぁ、神奈子のお握り──僕はそう思いながら深呼吸をする──

Re: 東方崩壊譚 ( No.33 )
日時: 2017/04/16 22:29
名前: 彩都 (ID: ???)  

「華扇ちゃん、勇気有りますねぇ──」
 そう呟きながら早苗が縁側から現れる、どうやら隠れて見ていたようだ。
「勇気、ねぇ──これを勇気というなら、僕のは勇気ではなく、食欲、と答えておこうか──」
 僕は溜息を吐いて寝転がる、すると僕の顔を覗き込んで早苗が言う。
「フフフッ、華扇ちゃんは優しいですねぇ──今日の夕飯は神奈子様に作らせましょうかねぇ?」
「おいおい、またお握りになるかもよ?」
 僕がそう言うと早苗は言う。
「大丈夫です、お握りだけなら美味しいですし」
「そう? だったら食べたいね、今度は何が食べられるだろうね?」
 僕はそう言って、割った薪を見る、そして早苗に言う。
「これ位で良いかな? 薪を割るのは」
「えぇ、有難う御座います、何時も神奈子様に薪を割って頂いていましたし──男手ってあるだけで楽ですねぇ」
 早苗がそう言うと僕は言う。
「おいおい……僕もあまり力が無いよ? 霊夢や魔理沙の方があると思うんだよなぁ」
「まぁ、幻想郷は暮らしたり、妖怪と会うので、大変ですから、力そのものが現代人よりもあるんじゃないでしょうか? 私はまだまだ力が足りませんし──」
 早苗はそう言って、溜息を吐く、そして早苗は呟く。
「もっと……もっと力を付けないといけないですねぇ──まぁ、弾幕があるから多少は妖怪とかに対応出来ますが、華扇ちゃんは──」
「うん、『右手の力だけで生きなければならない』んだよね──僕にも弾幕が出せたら少しは霊夢や魔理沙の助けが出来るのに──」
 僕はそう言って、自分の右手を見て、拳を作った、もっと、もっと強い男になりたい、もっと、もっと強くなって、霊夢や魔理沙を助けたい──そう思いながら強く握った右手を降ろす。
「さぁ、僕も神社内に入って、風呂に入ろう、今日は汗を掻き過ぎたからね──」
 僕がそう言うと早苗が言う。
「あっ、お風呂の準備してきますね」
「有難う、早苗」
 僕は早苗に感謝して、神社の縁側に座って、休憩をする、さぁ、お風呂に入った後、ご飯を食べよう──

「大変だねぇ、薪割り」
 そう言って、諏訪子が僕の隣に座る、そして僕の両手を見る、あまり綺麗とは言えない両手、初めて薪を割って、自分の手の平はマメが出来ていた、潰れていないが、潰れたら相当痛いだろう。
「マメが出来てる──相当頑張った証拠だね、偉い偉い」
 諏訪子は立ち上がって、僕の頭を撫でる、何故だろう、何故か諏訪子の頭を撫でる行為は落ち着くのだが──
 すると早苗が僕の事を呼んだ、もうお風呂が沸いた様だ。
 僕は服を脱いで、お風呂に入った、温かい湯船に入って、僕はほぅ、と息を漏らす、だが風呂場前の脱衣所の所から、がちゃがちゃと何かの音が聞こえる、どういう事だ? 誰も脱衣所には居ない筈──まさか!? 僕はそう言いながら身を弁える。
 すると早苗と諏訪子が巨大なタオルを巻いて、僕が居る風呂場に入ってきた。
「さっ、早苗!? それに諏訪子!? 何で二人が入ってくるんだよ!?」
 僕が叫ぶ様に言うと、諏訪子が言う。
「だって、一緒に入った方がお風呂が温かくて、節約出来るし、おまけに華扇の身体検査も出来る」
「何の身体検査だ、何の!?」
 僕が怒鳴ると早苗が言う。
「まぁまぁ、華扇ちゃんも落ち着いて下さい、諏訪子様の悪戯ですから、あまり気にせずに……」
「悪戯、で片が付くのなら、僕は早めに出た方が良いですよね、では、先に上がらせてもらいまっ」
 僕がお風呂場を出ようとした瞬間、早苗が腕を、諏訪子が僕の足を掴んで言う。
「まぁまぁ、一緒に入って、仲良くしましょう? 華扇ちゃん?」
「早苗の言う通りだよ? 親睦を深めようじゃないか、一応、お風呂場を出ても良いんだよ? 出ても良いけど、神奈子に、『神奈子に隠れて私達に華扇が、『神奈子のお握りはとても不味かった、もう作って貰いたくないね』って言ってたよ?』って言ってもいいんだよ? 言われたくなかったら、三人でお風呂に入ろう?」
 それは言われるとマズい──僕は仕方なく、湯船に端に入って、二人が入るのを待つ──
 すると早苗が僕に言う。
「すいませんが、華扇ちゃん、後ろを向いててくれますか? 今からタオルを取って、体を洗うので」
「えっ? あぁ、分かった」
 僕はそう言って、早苗と諏訪子に背を向ける、すると、シュルルッと、タオルが外される音がする、すると早苗の後ろに座っていた諏訪子が、早苗に向かって言う。
「あれっ? 早苗、また成長した?」
「ひゃん!? 諏訪子様、何処を触って!?」
「いいじゃないか、結構大きくなったねぇ」
 僕は思う、何処を触っているんだ!? いや、そうじゃなくて、早く体洗うの終わって!
「諏訪子様、あまり触らないで下さいよぉ」
 早苗がそう言うと諏訪子は笑いながら言う。
「アハハッ! やっぱり、早苗をイジるのは楽しいねぇ」
「もう! 華扇ちゃんだって居るんですよ!? 私だって女です! 恥ずかしい感情もありますよ!」
「まぁまぁ、落ち着いて、さっさと体を洗って華扇と戯れようじゃないか」
 諏訪子がそう言うと、早苗が喜々とした声で、『はい、そうですね!』と言う、僕は……僕はこの後、お風呂でどうなってしまうのでしょう、神様……?

 まぁ、神様は僕の後ろにいるけれど。

Re: 東方崩壊譚 ( No.34 )
日時: 2017/04/16 22:32
名前: 彩都 (ID: ???)  

 早苗と諏訪子は体を洗った後、僕が入っている湯船に入ってきた、諏訪子、僕、早苗と言った、順番で入っている。
「お風呂は良いねぇ、そう思わない、早苗?」
 諏訪子がそう言うと早苗が頷く。
「そうですねぇ……気持ち良いですねぇ」
「いや、それもそうなんだけど……僕はもう出たいんだけどなぁ?」
 そう言いながら僕は手で、顔を仰ぐ、熱くて熱くて仕方ない──
「男なのに根性が無いねぇ、もっと耐えないと……」
 諏訪子はそう言って、肩迄浸かる、流石神様、僕より体力がある……
「それで、華扇? 何で男なのに、早苗を襲わないんだい?」
 諏訪子の突然に問いに僕はいきなり吹き出してしまった。
「なっ、何を言っているの!? 僕はただ単に力を付ける為に此処に来ただけであって、早苗を襲うとか考えてないよ! 逆に毎夜毎夜、二人に襲われそうで、僕が怖いんだけど!?」
 僕がそう言うと諏訪子が言う。
「そうか、抱き枕はダメなのか……」
「無断で入ってこなければいいよ、毎回朝に驚くのはゴメンだからね──」
 僕がそう言うと諏訪子が呆れる。
「何それ? 申告制?」
「まぁ、それになるかな……? とりあえず、僕は守谷神社で力を付けて、霊夢や魔理沙を助けられる男になりたいだけなんだよ、たったそれだけなんだよ、それ以外に欲は無いからね──いや、食欲はあるか」
 僕がそう言うと、諏訪子は呆れた様に言う。
「全く──それなら安心だ、明日も特訓を頑張りなよ?」
 諏訪子はそう言って、湯船から出る、僕はタオルが張り付いた諏訪子の背中を見続ける事しか出来なかった──
 そして湯船には僕と早苗が残った──

 無言のまま、僕と早苗は湯船に浸かっている、うーん、もう出ようかなぁ? と考えた時だ、不意に早苗が喋った。
「懐かしいですねぇ、他人とお風呂に入るなんて──」
「……えっ? どういう事?」
 僕はそのまま上がろうとしていた体を戻し、もう一度湯船に浸かった。
「懐かしいんですよ、華扇ちゃんみたいな他人と一緒にお風呂に入る事が──私、元々、華扇ちゃんと同じ、『外の世界』の住人って事は覚えてます? その時が懐かしいなぁって……銭湯とか、もう行っていないなぁ」
 そう呟く早苗に対し、僕は何時の間にか言葉を発していた。
「早苗は、早苗は『元の世界』に戻りたい、とは考えないのかい?」
 僕の、僕の言葉に早苗は不思議そうな顔をした後、柔らかな笑顔を作って僕に答えた。
「そうですねぇ、では逆に、華扇ちゃんは『『元の世界』に戻りたい』ですか?」
「そりゃ、記憶を取り戻したら、『外の世界』に戻りたいよ、僕はどうやって幻想郷に来て、どうやって『外の世界』に戻ればいいんだろう? それさえ分かればいいんだけどね──」
 と、僕が早苗に言った後、早苗は優しく僕に言った。
「それは──『今の華扇ちゃん』の答え、ですよね? では逆に、『過去の華扇ちゃん』は、『幻想郷に来たがっていた』、と言う事かもしれませんよ? 『記憶を失う前迄は幻想郷に来たがった、そんな華扇ちゃんを誰かが幻想郷に連れてきた、そして『外の世界』の記憶を消して、この幻想郷で生活させようとした』、とも考えられるんです、そんな可能性もありませんかね?」
 …………的確、そんな発言に聞こえた、確かにその可能性も拭えないな。
 そう思いながら自分の右手に拳を作る──少しでも、少しでも早く『元の世界』に戻らなければ、そう思いながら僕は湯船を出た。
「さぁ、僕はもう上がるよ、早苗、また、こんな会話をしようね?」
「そうですね──あっ、華扇ちゃん、一緒に寝る約束、忘れないで下さいね?」
 念には念を、そう言うかの様に早苗は僕に一緒に寝る事を強く言う、僕は呆れながら呟く。
「忘れる訳ないって……流石にね」

 その後、僕は風呂から出て、体を拭く、そして居間に向かって、正座で待機する、ふむ、のんびり待とう、そう思った時だった、何時の間にか早苗が出てきて、料理を居間に出してきた、あれっ? 早苗って僕より後に出たよね? どういう事? 幾ら何でも早苗の行動は早くないか? と早苗に驚きながら、晩ご飯が始まった、うん、今日も晩御飯は美味いなぁ。

「あぁ、そっか、僕は今日、一つの布団で二人と一緒に寝るんだったな……あぁ、あんな口約束とか、『言えば一緒に寝る』とか言わなきゃよかった……」
 僕はそう呟いてから、頭を抱える、すると僕の寝室をノックする音が聞こえた、あぁ、もうダメだ! と思って、僕は襖を引いた、すると神奈子が目の前に、その隣には、早苗が冷や汗を掻きながら笑っている。
「えっと……二人共どうしたの?」
 僕がそう言うと、神奈子が言う。
「何で諏訪子、早苗がお前と一緒に寝て、私がお前と寝ていないんだ? 不公平だろう? だから一緒に寝かせてくれ、後早苗が襲われては困るからな、早苗の為だからな!」
「私は大丈夫です、と言ったんですが……一応、落ち着かせる為に、三人で寝ません?」
 早苗がそう言うと、僕は頷く。
「い、良いよ、じゃあ三人で寝ようか?」
「そっ、そうですね!」
 僕の言葉に早苗が頷く、これで万事解決したか? 僕はそう思いながら神奈子、僕、早苗の川の字で寝る事にした──うぅっ、早く寝たいけど、神奈子の気が怖くて寝れない……

Re: 東方崩壊譚 ( No.35 )
日時: 2017/04/16 22:34
名前: 彩都 (ID: ???)  

 翌朝──
「う……寝れなかった、怖い気を放つなぁ、神奈子は……と言っても神様だから怖くないといけないんだけど──」
 僕はそう言いながら、風呂掃除をする、ブラシでお風呂場の湯船を洗っている所だ。
「華扇ちゃーん! もう終わりましたー?」
 不意に早苗の声が聞こえ、自分は後ろに置いてあった石鹸で足を滑らしてしまい、そのまま湯船の中ですっ転んでしまった。
「いったぁ!? 何でこんな所に石鹸置いているんだよ、僕!?」
 僕の大声が響いたのか、外で掃除をしていた早苗がお風呂場に来る。
「どうしたんですか……?」
 早苗は僕の格好を見て、顔を赤くしている、僕は自分の格好を見る、僕の格好は、水に濡れており、所々濡れている、胸や下半身が濡れている。
「あーあ、濡れちゃった……まぁ、多分だけど、右手で『元に戻』せるからいっか」
 僕は湯船から立ち上がって、石鹸を手に取り、湯船から出す、これで滑って転ぶ事は無いだろう、僕はそう思いながら風呂掃除を開始する。
「心配しないで、どうせ僕の失敗だしね、アハハ……」
 僕がそう言うと、早苗が心配する。
「そ、そうですか……それでは、私は外で掃除をしているので、終わったら呼んで下さいね、それでは」
 早苗がお風呂場から離れる、そして僕はお風呂場の掃除を再開した──

「ふぅ、終わった終わった」
 僕がおでこの汗を拭う、すると諏訪子が現れた。
「ほう、綺麗にしたねぇ、人里の女の子より、綺麗に出来ているんじゃない?」
「流石に僕は人里の女性よりかは汚いですよ、矢張り女性の方が綺麗にしやすいんじゃないですか? 体も柔らかいし」
「そうかねぇ? ねぇ、神奈子ー?」
 諏訪子の呼び出しに神奈子が現れた、神奈子は僕が掃除したお風呂場を見て、呟く様に言葉を紡ぐ。
「うん、綺麗にはなっているんじゃないか? まぁ、あまり風呂掃除をした事が無さそうだし、初心者にしては綺麗なんじゃないか?」
「二人して……」
 僕が肩を落とすと諏訪子が言う。
「二柱だけどね」
「うぅっ、言い直さなくても良いじゃないか……」
 僕は心の中で泣きながらお風呂場を出る──さぁ、早苗に掃除完了を伝えないと。

「凄いですねぇ、華扇ちゃんは」
「そんな、僕より綺麗な人はいるよ、探せば、の話だけど」
 早苗に誉められながら、僕は否定する、別にそこ迄綺麗な掃除ではないだろうに──そう思いながら僕は食後のお茶を飲む、あぁ、早く強くなりたい、だけど今の自分は神奈子、諏訪子共々戦ってくれない、だから特訓はお預けになっているのだ、早く特訓して強くなって、霊夢、魔理沙に勝ちたいなぁ、僕は、溜息を吐きながら項垂れる。
「華扇ちゃん」
 すると突然早苗が僕の髪を触りながら問いかける。
「華扇ちゃんの髪は綺麗ですねぇ、本当、女性みたいですよ?」
「生憎性別は男なんでね、どう足掻いても、女性にはなれません」
「まぁ、そうなんですけど──」
 僕の否定の言葉に、早苗は肯定する、すると早苗が僕に言った。
「華扇ちゃん、少し私と戦いません? 神奈子様、諏訪子様よりかは弱いですけど、どうです?」
 今、何と言った? 戦いませんってか? 何とも嬉しい言葉に僕は早苗に喜々となって言う。
「良いのかい!? よし、戦おう!久しぶりの戦いにドキドキするよ!」
「……華扇ちゃんは本当、戦いが好きなんですね」
 寂しそうに明苗は僕に言う、どういう事だ? 僕は不思議そうに思いながらも早苗に言う。
「そりゃそうだ、僕は霊夢や魔理沙よりも強くなって、僕を幻想郷に連れてきた奴を倒して、僕は『元の世界』に戻るんだ、その為にはもっと強くならないと!」
「それも良いですけど、『何時頃戻るか、分かる』んですか? もしかして、『何時か『元の世界』に戻ろう』とか考えていませんか?」
 ゆらぁり、と早苗はゆっくり立ち上がって、僕に言う。
「そんな甘い考えで、『元の世界』に戻ろうなんて、考えていませんよね? もしも考えているのなら──」
 大幣を取り出して、僕に突き刺す様に指す。
「本気で戦います、私は『『元の世界』なんか戻りたくない』、と思わせます──」
 早苗の低い声に驚く僕、女性ってこんなに怖い声が出せたっけ? 違う、そんな事を考えている場合ではない、早く返答しないともっと怖い──! そう思いながら僕は早苗に返答する。
「……違う、僕は『一刻も早く『元の世界』に戻りたい』一心だよ、たったそれだけだよ、『何時か戻ろう』なんて考えていない、『早い段階で『元の世界』に戻りたい』、単純にそれだけだよ」
 僕がそういうと、早苗は何時もの音程に変わる。
「そうですよねっ! もしも『何時か『元の世界』に戻ろう』なんて考えを言うなら、この場で弾幕を撃っていましたよっ!」
「怖っ! 何気に怖っ!」
 僕は早苗の恐怖を感じた、その返答だけしなくて良かった、そう思いながら深呼吸をする。
「それじゃあ、戦いましょうか? と言っても、華扇ちゃんの言う『特訓』なんですけどね──」
 早苗がそういうと、僕は安心する。
「良かった、戦うっていうから、魔理沙の魔法での巨大攻撃とか思ったよ──あの魔法は死にそうだったよ」
 僕がそういうと、笑いながら早苗が言う。
「えっ? 死ぬかもしれないですよ? そんな『特訓』です!」
「……え?」
 まさか守谷神社で一番怖いのは──早苗? 僕はそう思いながら、守谷神社最後の神、東風谷早苗と特訓する──生きてると良いなぁ、と僕は思いながら、苦笑する──

Re: 東方崩壊譚 ( No.36 )
日時: 2017/04/16 22:37
名前: 彩都 (ID: ???)  

「まだまだっ! ですよ!」
 早苗はそう言いながら僕に弾幕を撃っていく、僕は避けては右手で、『元に戻』しての繰り返しだ。
「そんなのでは霊夢さんや魔理沙さんを守れませんよ!」
 早苗は弾幕の撃つ量を増やしていく、初めて段幕を避けるけど、中々難しいぞ!? そう思いながら右手で早苗の弾幕を消していく、すると急に視界がぐらつき、その場で、膝を着いてしまう。
「ハァハァ……何だ、この感覚は?」
 そう呟いてから、立ち上がろうとするが、足がふらついて、中々立てない。
「どうしたんですか? こんな所で降りるんですか? 霊夢さんや魔理沙さんを守れませんよ?」
「いや、そんなの分かっているけど、何だか目の前が揺れる……?」
 僕は揺れながら、自分の右手で、この状態を『元に戻』そうとしたが、『能力が発動出来ない』のだ、僕は不思議に思いながらも、自分の右手を見つめる。
「えっ? 何で『能力が発動出来ない』んだ? 不思議だな、どうして?」
 その瞬間、一気に視界がぐわんっと動きだし、僕はその場で倒れてしまった。
「えっ? 華扇ちゃん? 華扇ちゃーん!?」
 突然の出来事で、早苗は戸惑っている、僕はその場でゆっくりと息をしていた──

「…………ん? 此処は?」
 布団の中にいた僕は目覚めた、そして座り込んで、周りを確認する、周りには、泣いている早苗と、早苗をあやす諏訪子、そして手を組んで、胡座をしている神奈子だった。
「ん? 目覚めたか、おい、早苗、華扇が目覚めたぞ?」
「えっ? 本当ですか!?」
 僕の起床に対し、早苗が大きな声で驚く、一体どうしたのだろう?
「早苗はてっきり、自分の弾幕で、華扇が死んだ、と勘違いをしていたんだよ、まぁ、無事でなによりだよ」
 早苗をあやしていた諏訪子が淡々と説明する、説明の内容に、僕は呆れる。
「死んでなんか無いよ、霊夢や魔理沙に勝つ迄僕は生きるよ、だから早苗も泣くのを止めろよ? ほら、証拠に生きているでしょ?」
 僕がそう言って、手を広げ、元気な証拠を見せる、すると僕を強く抱きしめて、早苗が僕の胸で泣く、何だろう、僕の立場が逆な気がしてきたが、今は放っておこう。
「さぁ、僕も起きた事だ、特訓の続きを──」
「何を言っているんだ、華扇、お前は隠れて特訓をしたな、だから博麗の方に戻る迄特訓は禁止だ、お前の体の事も考えての配慮だ、少しは自分の体の事も考えろ」
 神奈子が僕に向かってそう言うと、僕は驚く。
「えっ? 僕は特訓が出来ない? 霊夢の所に戻る迄?」
「あぁ、そうだ、お前は自分の体の事をよく考えずに行動をしている、少しは自分の体の事も考えたらどうだ?」
「だけど、僕は早く強くならないといけないんだ! 休憩して、立ち止まって、待機している場合じゃない! 体に鞭打って行動しなくちゃならないんだ! だから体を動かさないと……」
「いい加減にしろ! 強くなる!? 巫山戯るのも大概にしろ! お前は早苗の弾幕を受けて、その後倒れたんだぞ、つまり、『早苗の弾幕に耐えられない程、自分が弱くなっている』という証拠だ! 少しは頭を冷やせ!」
「頭を冷やした結果がこれだ! 僕は早急に強くならないといけない! それが今の状態、『弱くなっていても僕は強くならないといけない』んだ! だからもっと特訓しないといけないんだ!」
 僕と神奈子の言い合いに、呆れて、諏訪子が一人呟く。
「全く、少しは引いたらどうなんだい? これじゃあ頑固と頑固の押し合いじゃないか、頭を冷やすのは華扇のみじゃなくて、神奈子もだねぇ……」
 諏訪子の呟きの後、僕と神奈子は睨み合う、そして二人共そっぽを向く。
 早苗は移動して、諏訪子に頭を撫でられながら、あやされる──

「全くだよ、神奈子は分かっていない、僕はたまたま倒れただけ、逆にお腹がが減って、倒れたかもしれない、だから能力が使用出来なかっただけかもしれないのに」
 僕は縁側で、月を見ながら諏訪子と会話する、諏訪子は『うんうん、そうだねぇ、だけど神奈子だって、華扇が死んで欲しくないからそう言っているだけかもしれないねぇ』と相槌を打つ。
「いや、そうかもしれないけどさぁ? 少し大き過ぎるよ……僕だってある程度は理解している、だからもう少しは特訓出来る筈なのに……」
 僕はそう言って、近くにあった団子を手に取り、一口、口の中に入れる。
「うーん、やっぱり華扇は分かっていないんだ、まぁ、良いか」
 諏訪子は独り言の様に言って、団子を一口、口の中に入れる。
「でも、不思議だよなぁ、お腹も減っていないのに、突然右手の能力が使えなくなって、その後鼻血が出るなんて……」
「まぁ、そんな時もあるさ、さぁ、もう寝ようかねぇ?」
 諏訪子がそう言って、その場で立ち上がる、そして僕に言う。
「『あまり能力に過信し過ぎない』事、過信し過ぎると、何れ、自分の能力に泣く事になる、華扇の能力は『右手』にしか宿っていないんだから……」
「過信、ねぇ……」
 僕は自分の右手を見ながら考える、過信し過ぎてはないと思うけどなぁ……? そして僕はその場で立ち上がり、一人ごちる。
「いい加減、寝ないとなぁ……」
 僕はそう言って、寝室に向かう、今日は添い寝が無いようだ、ホッと安心する僕、僕はそのまま布団の中に潜り込んで、睡眠を取る──お休みなさい。

Re: 東方崩壊譚 ( No.37 )
日時: 2017/05/14 21:47
名前: 彩都 (ID: hxRY1n6u)  

東方崩壊譚(とうほうほうかいたん) 第二章 第二話 守谷神社と二柱の神

CHAPTER 5 ルーミア、人里襲撃

「……ん? もう朝か」
 そう思い、僕は起きる、すると、右手の方が暖かかった、どうしてだろう? と思い、右を見る、すると早苗が寝ていた。
「……今日もか」
 僕はそう呟いてから、寝室を出た。
 全く、勝手に入り込んできて……何で一緒に寝たがるんだろう? と思いながら今に辿り着く、すると縁側に文と神奈子が会話をしていた。
「おや、君は華扇、でしたっけ?」
「あっ、うん」
「それは良かった、お久しぶり、華扇くん」
「文、確かにお久しぶりだね、確か霊夢の神社以来だったかな?」
「確かそう記憶しています、が、何で貴方はこんな余所の神社にいるんです? 華扇くん、君は確か博麗神社の人間だった筈だ、いや、人間か分からないけれど──」
 自分は文と会話して、何故博麗の人間が守谷に居るのかを問われる。
「簡単に言えば特訓、かな? 少しでも強くなって、早く『外の世界』に行きたいからね」
「成程、ですが中々難しいですよ、その道は──私は強くはお勧めしませんけれど──」
「生憎、キツい道を登りたがるもんだ、男って言うのは」
「あら、そうですか──」
「んで、新聞屋、今日はどんな新聞なんだ?」
 僕と文の会話に割って入る神奈子、すると文は可愛い笑顔で神奈子に言う。
「そうですねぇ、一大紙面の事を話せば、『人里襲撃事件』ですね、全く、どういう事件かと思いますよね? だったら新聞を買って確認して下さいな」
「流石天狗、ちゃっかりしている部分もある」
「それ程でもないですよ、ちゃんと隅々迄読んで下さいね? 小さな情報だって見て欲しいですから」
「分かった分かった、買うからそこ迄言わないでくれ」
「有難う御座います」
「全く……天狗ってのは口も達者なのかい? 鴉天狗だから、少し経ったらすぐ忘れる、だからバカだとは思っていたが」
「そうですか? 生憎事件とかの記事はメモを取っているので安心です、相当昔の神様、貴方こそ目的があって、立ち上がったらその目的を忘れた、なんて事は無いですよね?」
「あ、ある訳がないだろう、仮に神様なんだぞ、忘れる事はそもそもない」
「あら、そうですか、それは安心しました」
「何処に安心しているんだ、何処に」
 文と神奈子の言い合い、何とか終わった様だ、自分は神奈子の隣に座って、『人里襲撃事件』の記事を見る。
『人里襲撃事件』、それはとある一家の事件から始まった。
 そのとある一家は、夫婦共々体を食べられて死んでおり(死因は失血死と見られる)、その家の息子でさえ、体を食べられて死んでいた、更に生まれたての赤ん坊も食べられており、人喰妖怪が一家を襲った、と見られる。
 ……何て惨い事件なんだ、食べられた、と言う部分を考えると、少し吐き気がする……
「何というか、凄い事件だな、どうやって襲ったんだろうな?」
「さぁ? 流石にその妖怪に聞いて下さいよ、というより、妖怪がしたか、人間がしたか、なんてそもそも分かっていませんけどね」
「だろうなぁ、この記事を読んだだけで犯人なんか見つかりもしない」
「でしょうね、もしも犯人側が分かったら驚きますよ」
 神奈子と文が会話している中、僕は『何か』に躓いていた、そう、『人喰妖怪』という部分に──

「今日は人里に行こう」
 僕はそう言って、守谷神社から徒歩で人里へと向かう為に玄関で靴を履く。
「なるべく早く帰ってくるんですよ!」
「はいはい、分かったよ、それじゃあ行ってくる」
 僕は玄関で叫ぶ早苗を背に守谷神社を離れた──そんな僕の背中を神奈子はずっと見続けていた──
「まずは情報収集だな、どんな小さい事件もこういう情報収集で案外簡単に解決するって思うんだよな、うん」
 独り言を呟いて、僕は欠伸をする、流石に独り言がバレていなければいいが──そう思いながらゆっくりと人里に向かっていく。
「人里、人が居るから、案外大きいんだよなぁ、来た場所を暗記しないとなぁ」
 僕はそう言って、守谷神社から来た道を思い出す、まず、このお店が僕が来た方の人里の入り口にあたるんだから……よし、何とか覚えた、これで迷わずに帰れるだろう。
 僕はそう思い、『人里襲撃事件』の現場へと向かう──

「ふむ、矢張り団子は美味しいですねぇ」
「……何やっているの、文?」
 僕は団子屋で焼き目が付いた白色団子を食べる文と遭遇した、文は団子を一口、口の中に入れて、咀嚼した後、僕に向かって言う。
「何って、団子を食べているんですよ、団子を……ずっと新聞のネタ探しだと疲れますからねぇ──華扇くんもどうです? 団子?」
「団子? いいのか、だったら頂くよ」
 僕はそう言って、団子が載っている皿から御手洗団子を取って、口の中に運ぶ。
「あっ! それ、私のお気に入り!」
「ほう、この団子が文にとってのお気に入りね、案外美味しいじゃないか、茶色いタレにかかっているから、醤油味、もしくは甘くない、と思っていたが、案外甘いね、美味しい」
「そりゃあそうでしょうよ、此処の団子屋は特に美味しいんですから、それはそうと、華扇くん? 何で人里なんかに?」
 流石新聞屋、そういう所は気になるのか、そう思いながら僕は文の問いに答える。
「なぁに、少し人里に『用』があっただけだよ、その『用』は文、君を見つけた時点で少しは終わったけどねぇ?」
 自分がそう言うと、妖艶な笑みを浮かべる文、さぁ、さっさと『情報』を貰おう。

Re: 東方崩壊譚 ( No.38 )
日時: 2017/05/14 21:50
名前: 彩都 (ID: hxRY1n6u)  

「へぇ、私に『用』、ですか、気になりますねぇ──」
 文は三色団子に手をつけて、僕に向かってにやにやしながら言う。
「その『用』とは何でしょう? 場合によっては、請求する場合もありますよ?」
「……請求? 何を?」
 僕が不思議がると文はほくそ笑む様に笑う、一体何なんだろう?
「そうですねぇ、もしも、もしもの話ですよ? 華扇くんの『用』に対して、私が『『不利、もしくは不利益、と感じた場合』、私はこの場を去ります』、ですが逆に『『不利、もしくは不利益と感じなかった場合』はこの場に居続けて、話を聞きます』、どうです? 華扇くんの『用』に応じて私はそういう態度を取ります、いいですか? 華扇くん?」
「……中々に賭事だね、生憎僕の中では、『後者』だと思っているよ、思っているだけで、文にとっては『前者』かもしれない──」
 僕が文に向かってそう言うと、文は腕を組んで頷く。
「そうです、自分の考えでは、大丈夫、と感じますが、相手によっては、不都合、不合理だと思いますもんねぇ?」
 そう言って、文は三色団子の串をぺろぺろと舐める。
「だからこそ、僕は言う」
「へぇ、そうですか、その心意気、嫌いではありませんよ?」
 僕がそう言うと、優しい笑顔になって、文は言う。
「さぁ、華扇くん、何でも言ってみなさい、『不利、もしくは不利益と感じる』か、『不利、もしくは不利益と感じない』か? 華扇くんの言葉は!?」
 文はそう言って、ペンを僕の口に近づけて僕が喋るのを待つ。
「…………」
 僕は深呼吸をしてから真顔で文に言った。
「『人里襲撃事件』の場所を案内して欲しい」
 プルプル、プルプルと文の唇が震えている、そして文は大声で笑い、自分の太股を叩く。
「あはははははは! アーッハッハッハッハッハッハッ!! 何なんですかそれ! いやぁ、面白いですねぇ、面白いから『逃げる』という行為でさえ放棄していましたよ! 何が真顔で『『人里襲撃事件』の場所を案内して欲しい』ですか! 末代でも語れる笑い話ですよ!」
 文に盛大に笑われて、怒らない僕ではない、こんなに笑われるのが腹が立つのか、僕はそう思いながら文の居る団子屋を離れる。
「そうかいそうかい、笑われるのか、だったら一人で探した方が早い様だねぇ、御手洗団子の代金はその笑い話として受け取ってくれ」
 僕が目を瞑りながら早足で移動する、そんな僕を見ながら文は僕の歩みを止めようとする。
「まぁまぁ、待って下さいよ、華扇くん、まだ『不利、もしくは不利益と感じる』か、『不利、もしくは不利益と感じない』か? って話は終わってませんよ?」
「その話は僕の中では終わった話だよ、文の笑い話でね!」
 僕はそう言って、前へ前へと進んでいく、だが文は僕を止める為に言葉を紡ぐ。
「まぁまぁ、落ち着いて下さいよ、ねっ? 私の話を聞いてからでも?」
「落ち着けない、あんなに笑い話にさせられて腹が立たない人間、妖怪は居ないと思う」
「君は一応は人間でしょう?」
「まだ分からない、人間の皮を被った妖怪かもしれない、もしくは人間の形の妖怪とかね?」
「うーん、どうも妖怪には見えないんですよねぇ、妖怪の癖に弱い、弱過ぎますから」
 僕の言葉に文が返答する、そして僕が文に言う。
「はぁ、分かったよ、文の不利不利益の話を聞いたら急いで『人里襲撃事件』の場所に行くからさぁ」
 僕がそう言うと、文は安心して、溜息を吐く。
「はぁ、やっと収まってくれましたか……分かりました、不利不利益の話でしたね? それは、『感じません』、案内します、ですが!」
 文の話を聞いて、僕は安堵した、と思ったが、文に指を指される、文の指が僕の鼻先に当たりそうだった。
「ですが、何でも話を聞く私じゃないですよ! 華扇くんにも『対価』っていうのを払って貰いますよ?」
 文は薄ら笑いを浮かべながら僕に言う、『対価』、もしもそれがお金なら払えないぞ……だってお金何か持っていないのだから。
「そうですねぇ……どうしましょう?」
 文は顎に手を当てて考える、今の間に逃げられたら良いが、文は空を飛ぶ事が出来る、上空なら簡単に僕の姿が分かってしまう、だから逃げても無駄だろう。
「あぁ、思いつきました、華扇くん、貴方が支払って貰う『対価』は──」
 文が僕に対しての『対価』が決まったようだ、僕は内心ドキドキしながら文の言葉を待つ。
「華扇くんの『対価』、それは『体で払って下さい』、いいですね?」
「えっ? 『体で払う』? それってどういう──」
 僕が言おうとすると文が僕の言葉を遮る。
「言った通りですよ、華扇くん、それでは『人里襲撃事件』の現場へ行きましょう、地味に現場が遠くにあるので、私の力で行きましょうか」
「えっ? 文の力? 何それって……あうわわわ」
 文はいきなり僕の両手の二の腕を力こぶを作る様に腕に引っかけて、宙に浮く、足がゆっくりと地面から離れて驚く僕。
「うわぁ、浮いているよ、完全に──」
「それでは、現場迄急ぎますよ!」
 文はそう言って、前へと移動する、何だろう、凄く風が気持ちいい、そして背中に感じる少し柔らかい『何か』……僕は気にしない様に景色に意識を集中させる──事件現場迄後少しだった──

Re: 東方崩壊譚 ( No.39 )
日時: 2017/05/14 21:52
名前: 彩都 (ID: hxRY1n6u)  

「到着っと」
 文はそう言って、ゆっくりと僕を降ろす、僕の目の前には腐臭と血の臭いが辺りを巻き込んでいた。
「此処が現場……」
 僕はそう言って、家の中に入ろうとする、すると文が僕に言う。
「私的にはあまり入らない方がいいと思いますよ? まぁ、忠告だけはしておきますよ、忠告は」
 僕は文の言葉を聞いて、中に入ろうとする、その行動に対し、文は呆れていた。
「もう、どうなっても知りませんからね?」
 最後にそう忠告して、僕の帰りを待つ事にした文、僕は段々と家の中を土足で歩んでいく。
 すると目に飛び込んできたのは大人の男性の遺体だった、体は所々食べられており多量出血だ、囲炉裏を挟んで隣には、大人の女性の遺体が。
 女性もまた主に胸を食い千切られている、僕はそのまま奥に進んでいった。
 奥は風呂場だった、風呂場には僕よりも幼い少年が首を食べられて死んでいた、何とも可哀相に……そう思いながら自分は早めに見つけられたら右手の能力で生き返る事が出来たのに……と思う。
 あれっ? そう言えば赤ん坊は何処なんだろう? と思い、家の中を隈無く探す、だが見つからなかった。
 仕方なく、台所へ向かうと──そこには首と体が離されている赤ん坊の遺体があった、あまりにも衝撃的過ぎて吐き気を催してしまう、だが今吐いてはダメだ、もっと他の場所で吐かなくては、そう思い、台所を離れる、赤ん坊は骨だけしか残っていなかった。
 何て残酷な事件だろう、自分はそう思いながら家を出て、文の所に向かう。
 文は手頃な石を見つけて、椅子代わりにして何やら手帳を開いている、まさか次の新聞でも作っているのだろうか?
「おや、華扇くん、中の物色は出来ましたか?」
「うん、一応は──犯人は誰なんだろうね? 同じ種族の人間が食べる、なんて可能性は無いだろうし──」
「それは分かりませんよ? 人間何をするか分かりませんし、妖怪である私は食人する人間の事なんてよく分かりません」
「それは僕もだ、だけど人喰妖怪が食べた、という可能性もあるよね?」
「まぁ、記事にそう書きましたので、その可能性もありますが」
「実は一回だけ、人喰妖怪を見た事があるんだよ、そいつ、自分の事を襲ってきた時もあった、だから犯人はそいつじゃないかな? って思っているんだよ」
「成程、華扇くんはそう言う考えをお持ち、と」
「そうだね」
 文の言葉に対し、自分は頷く、だがまだその人喰妖怪が犯人、と決まった訳じゃない、まずその人喰妖怪に話を聞かないといけない。
 僕はその人喰妖怪を文と共に探す事にする──

「……中々見つからないな」
 僕はそう言って、地べたに座る、そんな僕を見る文はスカートを抑えながら地上に降りてくる。
「体力が無いですねぇ、本当、人間よりも体力が無いかもしれませんね、華扇くんは」
「煩い、こんな鬱蒼とした場所を歩くなんて思ってもいなかったんだ、だから僕は体力が切れただけだ、逆に文は空を飛んでいるんだ、僕より体力は使っていない筈だけど?」
「うっ……それとこれとは違います」
「それとこれ、なのか……」
 僕は呆れながら溜息を吐く、中々情報が掴めない、というより、情報が見つからない、本当に犯人は人間なのか、妖怪なのか、真相は闇の中だ──そう思った瞬間だ、周りの草木から、『カサカサッ』と音がする、何だ!? と僕が思った、文は僕の目の前に立って周りを確認する、だが音の正体は中々僕らの目の前に現れてはくれない。
「誰ですっ!? 正体を現しなさい!」
 文が空虚に向かって叫ぶ、すると草木の中から金髪の幼女、髪には赤い髪飾り──リボンだ──をつけている、服装は白いYシャツに黒い上着、黒いスカートを着用している、僕はこの幼女の事を知っている、そう、ルーミア、人喰妖怪だ──
「…………」
 無言のまま僕らの前に現れる、そして僕は立ち上がってルーミアに言う。
「やぁ、探していたよ、ルーミア──僕は君に聞きたい事があるんだよ」
 僕がそう言うと、ルーミアは不思議がっていた。
「何なのだ?」
「そんなの簡単さ──『君が『人里襲撃事件』の犯人』、だね? と言っても、人間の言葉で表しているからなぁ『人里襲撃事件』ってのは──そうだな、昨日、ルーミアは人里を襲った?」
「まさか華扇くん、こんな小さい存在が人里を襲った、とお思いに?」
 文が僕とルーミアの会話を割く、だが僕は文の事を無視する。
「さっさと答えたらどうなんだ、ルーミア? 黙秘は肯定と一緒だよ?」
「…………」
 無言、ルーミアは無言を続ける、当たっているのか……
「分かった、君が犯人、と言う事でいいね?」
 僕が最後にルーミアに言うと、ルーミアは笑う。
「……アハ、アハハ……アハハハハハハ! お兄さん、正解だね、よく分かったね、でも結局はお姉さんもお兄さんも食べるから犯人である私を知っていても無駄だけどね──でも聞きたいなぁ、何で『私が犯人』と断定した?」
「えっ? 『人里襲撃事件』の犯人は貴女なんですか?」
「文は今は黙ってて」
「えっ……」
 僕は文を黙らせて目の前にいる存在、ルーミアに集中し、言葉を紡ぐ。
「ルーミア、それは簡単さ、『食べた歯形がよく似ていた』からだ、前に君は僕を食べた、そしてその前に君が食べた人間を見ている、その時に僕は君の歯形を見たんだ、だからこの『人里襲撃事件』の犯人は君、と決めつけたんだ」
「へぇ……よく見ているね、でも今から私が二人を食べるから歯形を覚えていても意味がない」
 そう言ってルーミアは僕らに向かって攻撃を仕掛ける──僕はその攻撃を避ける、文もルーミアの攻撃を宙に浮いて避ける。

Re: 東方崩壊譚 ( No.40 )
日時: 2017/05/14 21:55
名前: 彩都 (ID: hxRY1n6u)  

「何で避けるかなぁ?」
「そんなの決まっているだろ、死んじゃうから、だろ? 生憎僕はまだ死にたくないんでねぇ」
「私も、幻想郷のスクープは逃したくありませんからねぇ」
 僕と文はそう言って、ルーミアに返事する、だがルーミアは宙に浮いている文を標的にせず、地上に立っている僕を標的にする。
「うーん、あのお姉さんは翼が生えている分、不味そう……だから先にお兄さんを攻撃するよ」
 そう言ってルーミアは大きく口を開けて僕に向かってくる、そんな場面を見て文は叫ぶ。
「華扇くん!」
「うわぁ、僕を先に倒す気か──だけど、あのお姉さんを先に食べた方が良かったかもしれないね──だけど、僕は負けない」
 僕はそう言って、左手で僕に向かってくるルーミアの顔面を殴った、綺麗に僕の拳はルーミアの鼻に当たる。
「うっ!!」
「どうだ、あまり力は入る事が出来ないけど、僕の前に出した拳と君が来るスピードが相まって、大きい威力になったようだよ、こんな痛い思いをしたくないなら急いで人里に行って、謝ってくるんだ、もしくは霊夢に倒されるか?」
 僕がルーミアに向かって言う、だがルーミアはそんな言葉を聞かない。
「何で? お兄さんは私に食事をするなって言っているの? 私は人を食べる妖怪、食べないと生きていけないの、だから食べる、お兄さんもお姉さんもね!!」
 もう一度僕に向かって口を開けて僕を食べようとする、全く……人の話を聞かない妖怪だこと……僕はそう思いながら溜息を吐く。
「だから僕は食べられないって──『外の世界』に戻る迄はね──僕は生き続ける、人喰妖怪なんかに食べられない!」
 僕はそう言って、右手でルーミアの左頬を殴る、手応えを感じる、ルーミアにも重い一撃が行ったかもしれない、そう思いながらルーミアを見る。
「…………」
 ルーミアは顔面に二発も殴られて無言になった、そして僕を睨む。
「お兄さん、お兄さんは酷いねぇ、か弱い女の子を二発も殴るなんて……」
「いや、それよりも君は妖怪だろ? 僕は自己防衛しただけで……」
「そんなの関係ない! 女性を殴る男性は悪いんだっ!」
 僕はそう言うが、ルーミアは聞かない、そしてルーミアは空虚を食らう、何とか避けられてセーフだ──
「ふふっ、華扇くん、幼女の妖怪に正論言われていますねぇ、傑作です」
「文は文で僕を助けてよ!?」
 空中で手帳片手に口を隠して笑う文、僕は涙目になりながら文に言う。
「何で僕はこんなに苦労しなきゃいけないんだ……」
 はぁ、と溜息を吐きながら僕はルーミアの攻撃を避けていく、その瞬間だった、不意に僕とルーミアの視線があった、その時だ、自分は『前に感じた感覚』を覚えた、何なんだ? 何なんだよ、この感覚は? 何か忘れている感覚……一体?
 その瞬間だった、脳裏に一人の少女を思い出した、あぁ、そうだ思い出した、この感覚は『操られたフランドール・スカーレットと対峙した時の感覚』だ、まさかルーミアもフランドールと同じ様に『操られている』? いや、そんな筈は……だったら何故『そんな筈は無いって思っているのにフランドールと同じ感覚を肌で感じている』!? 可笑しいじゃないか、何でそんな『感覚を感じているのだ』!? 可笑しい、何かが可笑しいぞ……前に霊夢は言っていた、『誰かに操られている』可能性がある、と──そして操られていた時は『瞳が紅かった』! もしもこの可能性が正しいなら──『ルーミアは操られている』、フランドールと同じ様に……! そう思った瞬間だった、僕の左手の手首ごとルーミアは食べた、ぐちゃり、と音を立てた後、ルーミアは引っ張る、引っ張った後、自分の左手を確認する、『左手が無くなっていた』、その場面を見て文は驚愕していた。
「!? 華扇くん! 急いで離れて下さい! 食べられます……よ?」
 文はそう言うが、僕は自分の左手を右手で触れて『元に戻』す、『元に戻』した僕を見て文は安心する。
「何だ、偽物の手でしたか、てっきり本物かと……」
「いや、本物を食べられたんだけど……」
 僕が文に向かって補足する、文は驚いて僕に言う。
「えぇっ!? 大丈夫なんですかっ!?」
「大丈夫だよ、こうやって自分の左手が戻ってきたのも自分の能力だし……」
 僕がそう言うと文は手帳に文字を書き始める。
「成程……華扇くんの能力は『失った物を取り返す程度の能力』と……」
「うーん、僕の能力は『元に戻す』能力なんだけどなぁ……後で教えるか」
 僕はそう言って、目の前に存在するルーミアを見る、彼女は操られている、そう考えた自分は深呼吸してルーミアに言う。
「君は……操られているのかい?」
「操られている? 何を言っているの?」
「……操られていない可能性もあるなぁ、中々に面倒な時間だ」
 自分はそう言って、溜息を吐く、とりあえず、犯人は分かったんだ、今はルーミアと戦わずに逃げよう、そう思いながら僕はルーミアに言う。
「ねぇ、僕は用事があるから急いで帰らないといけないんだけど……」
「そーなのか……だったら急いでお兄さんを食べたらいいんだね!」
「違うよ、また今度、時間がある時にしてくれないかい? 生憎僕は忙しいのでね」
 僕はそう言って文を呼んだ、さぁ、文を使って移動しよう、そう思って深呼吸する。
「ん? どうしたんですか? 華扇くん?」
「えっとね、文、急いで僕を守谷神社に運んでくれない?」
「まぁ、いいですよ、でもあの人喰妖怪はどうします?」
「大丈夫だよ、話をつけてきた、とりあえず数日後、此処に一人で来るよ、一人で全て片付けてくる」
「そうですか、それでは頑張って下さいね、数日後の華扇くん?」
「えぇ、頑張ります」
 僕はそう言って文に掴まって、ルーミアから離れる──数日後、決着を着けよう、ルーミア──

Re: 東方崩壊譚 ( No.41 )
日時: 2017/05/14 21:57
名前: 彩都 (ID: hxRY1n6u)  

「…………」
 僕は文に守谷神社迄運んでもらい、守谷神社の縁側で腕を組みながら考える──さぁ、どうする? どうしてルーミアを倒す? 倒す為に霊夢を呼ぶか? たかがそんな為に呼ぶのはあまりにも身勝手だろう、だけど他に方法が思い付かないのだ、どうしてルーミアを倒す? ルーミアは人喰妖怪だ、そう簡単に倒せはしないだろう、ルーミアに触れようにも、あの口が恐怖だ、肩に触れようとしたらあの口で右手を食べられてしまう、代わりに何処に触れたらいいのだろう? 触る場所は口よりも上の方がいいのだろう、それにしてもいい案が思い付かない、僕は案や作戦を考えるのが下手くそなのかもしれない──そう思っていると隣に神奈子が座った。
「……華扇、人里へ行ってどうだ?」
「人里ねぇ……簡単に言えば『人里襲撃事件』の犯人が分かった、というのが大きな収穫かな?」
「ほう、それは凄い発見だな、で、誰が犯人だったんだ?」
「犯人? 簡単だった、人喰妖怪だった、流石に死んでいたから、人里の人間は『元に戻』せなかったけど──もしも早めに発見出来ていたら『元に戻』して、話を聞く事が出来たかもしれない」
「そうか、それは酷い事件だな……」
 神奈子はそう言って僕に温かいお茶を入れた、僕は神奈子が入れたお茶を受け取って、少し飲む。
「本当に……人里を襲うなんて……酷いよ、人喰妖怪は!」
「だけど、『食べなきゃ生きる事なんか出来ない』んだ、生きる為にも仕方ないさ」
「それはそうだけど……!」
 神奈子の言葉に反論出来ない僕、なんて弱い存在なんだろう、自分は……そう思いながらお茶を一気に飲み干す。
「うっ……熱い、だけど少しは耐えないと……!」
「おいおい……お茶なんかゆっくり飲めばいいだろう?」
「そんな事は出来ないよ、僕は急いで強くならないといけないんだ、少しでも強くならないと……また人里の被害が広がってしまうかもしれない!」
 僕は神奈子にそう言うと、神奈子は『そうか』と言って、下がる。
「だけど、無理だけはするなよ? 自分の体を潰したら、それだけでもっと守れなくなる」
「んなもん分かっているよ──僕のこの右手さえあれば、『色々な人を救う事が出来る』んだ、少しでも前に僕が進まないと意味がないからね」
「フフッ、矢張りお前はお前らしいな」
 僕の言葉の後にいきなり笑い出す神奈子、何がそんなに可笑しいのだろう?
「お前は十分に強いんだよ、誰よりも、神である私よりもな……」
「えっ? 僕の何処が強いのさ? 僕は神奈子や諏訪子にも簡単に倒されるんだよ、それの何処が強いんだか──」
 僕がそう言うと、神奈子は僕の言葉を遮って言う。
「能力、それは『能力の強弱』なだけだろう? 私や諏訪子の能力が華扇より強かっただけ、だ──お前は私や諏訪子、早苗よりも強いよ、その『思いの強さ』、がな」
 神奈子がそう言うと、神奈子は僕の胸を右手の人差し指でトントンとつつく、『思いの強さ』ね──僕はそう思いながら言う。
「『思いの強さ』、そんなの僕はまだまだ弱いよ、僕はそれも弱いし、体力も無いし、力も無い、だからこそ『自分の伸びしろ』を信じるんだ、『思いの強さ』もまだまだ弱いよ、神奈子、流石に自分の事を買い被り過ぎだよ」
「……まぁ、そう思うなら勝手にしろ、自由だよ、思うのは──」
 僕の言葉に神奈子は呆れながら言う、自由、ねぇ──僕はそう思いながら大きく深呼吸をした、空気が美味いなぁ、そう思いながら僕は早苗に呼ばれる──

「御馳走様でした」
 僕はそう言って早苗が作ったご飯を完食する、早苗は僕を見て、驚く。
「毎回毎回食べる量が凄いですねぇ、華扇ちゃんは……」
 早苗はお茶碗やお皿を片付けながら僕に言う、僕は笑いながら言う。
「アハハッ! それは簡単だよ、早苗のご飯が美味しいからだよ」
「そんなにお世辞を言っても何も出ませんよ?」
「出す物なんか無いなんかは前から知っているよ」
 僕はそう言って、温かいお茶を飲む──すると諏訪子が僕に言った。
「ねぇ、華扇、ちょっとこっちに来てくれない?」
 諏訪子は急に立ち上がって部屋を出る、自分は諏訪子に着いていく、そして僕の寝床に辿り着く、そして部屋に入って先に座る。
「何なんだ、諏訪子?」
 僕がそう言うと諏訪子は咳払いをして喋る。
「うん、そうだね……華扇、あんた、今日何処行ったの?」
「……今日か、今日は普通にぶらぶら人里を歩いただけだよ」
 自分がそう言うと、諏訪子は『ふーん』と相槌を打つ。
「そうなんだ、んで、『人里襲撃事件』の犯人を捜した、と?」
 ドクン、と心臓が高鳴る、何で『人里襲撃事件』を知っているんだ!? しかも犯人を捜した、とも知っている!? 自分は驚きながら諏訪子に聞く。
「何で……その事を!?」
「何でって……神奈子から聞いたんだよ、そして面白い事を思い付いたんだよ、それを話す為に此処へ呼んだ」
「面白い事? 何なんだよ……!?」
 自分が焦っているとにやにやと笑いながら諏訪子は言う。
「その『人喰妖怪を倒したら特訓は終了』だ、早急にこの神社から博麗に帰ってもらう」
「えっ……!?」
 いきなりの事で自分は驚いてしまう、どういう事なんだ……!?
「簡単だよ、これは私の挑戦状、と思ってもいいかもね、その人喰妖怪を倒す事が出来たなら、私でさえ簡単に倒せるよ、だから私はあんたに特訓をつけない」
「成程、挑戦状ねぇ……やってやるよ、僕が勝つからね」
「そうか、矢張り華扇は華扇だなぁ……それじゃあお休み」
「あぁ、お休み」
 僕はそう言って諏訪子は部屋から出る、さぁ、僕も寝ないとなぁ、そう思いながら布団の中に潜る、布団の中は暖かいなぁ、僕はそう思いながら目を瞑る──

Re: 東方崩壊譚 ( No.42 )
日時: 2017/06/18 21:40
名前: 彩都 (ID: ???)  

東方崩壊譚(とうほうほうかいたん) 第二章 第二話 守谷神社と二柱の神

CHAPTER 6 さよなら守谷神社

 数日後、僕は森林の方に来ていた、そして目の前には人喰妖怪であるルーミアが周りをきょろきょろしながら誰か来るのを待つ。
「本当に大丈夫なんですかぁ? 幾ら貴方の能力でも、妖怪に勝つ事は難しいと思いますがねぇ」
 そう言って、僕に対し、射命丸文は手帳に文字を書いていく。
「さぁね? 僕が勝てるかは分からない、まずルーミアの動きによる──それじゃあ、呑気に上で見ておきなよ、勝てばいいんだ、この勝負、『相手に触れたら勝利』っていう勝負にね……!」
 僕はそう言って、森林の茂みの中から現れる、文は『本当に勝てますかねぇ?』と言って、上空に飛んで避難する。
「やぁ、ルーミア、お待たせ、ごめんね、お昼ご飯が大量で処理するのが大変だった──」
 茂みから現れた僕はルーミアが食べているモノに驚いた、ルーミアが食べているモノ、それは『人間の腕の骨』だったのだ──僕はその場で尻餅をついて叫んでしまう。
「うわぁぁぁぁぁぁ!? おっ、お前! だ、だっ誰を食べている!?」
 戸惑いながら僕は『人間の腕の骨』をがじがじと噛むルーミアを指差す、そんな僕に対し、ルーミアは普通に答える。
「そんなの、人間の里の人間だぞ?」
 ルーミアの言葉を聞いて、僕は『急いでルーミアを『元に戻』して、人間を救わないと!』と思う、そして僕はルーミアに対して叫ぶ。
「ふっ、ふざけるな! そんなのが許されると思っているのか!? 急いで僕が助けに行かないと……!」
「もう無理だぞ? だって『人間の残りカスが『これ』』なんだから」
 えっ? もう一回言って? 『人間の残りカスが『これ』』だって? まさかもう『その腕以外人間を食べ切った』、というのか!? 今ルーミアが食べている『人間の腕の骨』にはまだ人間の血肉が付いている、と言う事からもう他の人間の部位は食べ終わっているのだろう、実際ルーミアの口周りは赤い液体や飛沫で真っ赤になっているのだから。
「全く、素早い行動だこと……」
 僕はそう言ってルーミアに呆れる、僕と戦う前からこんなに自由だとは数分前の僕でさえ考えないだろう、そう思いながら僕は大きく深呼吸して、立ち上がる。
「よし、一応は驚いた事だし少しでも食べられた人を救う為にも、動かないとね……! さぁ、かかってこい、人喰妖怪ルーミア、お前の暴走、僕の右手で全て止めきってやる!」
 僕はそう言って、自分の右手を前に突き出す、その行動にルーミアは『食べていい?』等と呑気な事を言う、僕の右腕は食用ではなく、修復用だと思う……そう思った瞬間だった、ルーミアはその場で前にジャンプして僕の右手を食べようとする、だが、僕は瞬時に右手を後ろに引っ込めて、右手の捕食を防ぐ。
「うーん、ダメなのか……それと、この人間の手、邪魔だな」
 ルーミアはそう言って、片手で食べていた『人間の腕の骨』をその場で捨てた、まぁ持っていて邪魔になったのだろう、それにしてもその場に捨てるとは完全にゴミ扱いに見えた。
「それじゃあ、お兄さんを早く食べる為に早めに倒すか」
 そう言ってルーミアは宙に浮いて、僕の方へ向かってくる、僕は左手でルーミアを殴ろうとしたが、ルーミアは僕の目の前にすんでの所で止まって、自分の両手で猫騙しをした、急な行動に自分は目を閉じてしまった、『それがいけなかった』、次に目を開けた時には周りは真っ暗で、何も見えなかった、そう、『ルーミアに能力を使わせてしまった』のだ、周りは何も見えず、真っ暗、そんな僕は周りを確認する為に回転して突破口を探る、だが何も見えないので、周りを回転して確認しても無駄だった、少し深呼吸して、態勢を整えようとするが、そもそも見えないので、態勢を整え様にも整えられない、その時だった、足に鋭い痛みが走った、その痛みは少しずつ鈍痛に変わっていく──この痛みは知っている、ルーミアが僕を噛んだ、という痛みだ、くそっ、もう動いているのか、と考える僕、僕は何も見えない周りを狼狽しながら、ルーミアの動きを待つ──痛いな、そう思いながらその場で座って、自分の右手の力で、噛まれた所に触れて、『元に戻す』能力を発動し、痛み諸共『元に戻』す、そしてその場で立ち上がって、周りを見回す、矢張り何も変わらないか、そう思いながら、その場で落胆する、とりあえず、ルーミアを見つけて、触れられたらいいんだけど……そう思いながら大きな溜息を吐く、この暗闇の外では文はどんな感情を抱いているだろうか? 『間抜けだ』とか、『死んだのか?』とか考えているのかな? そう思いながら僕は大きな呼吸をして、周りを見やる、だが何も動きがない、どういう事だ? 何でルーミアは動いてこない? 不思議だ、何気に不思議だった、だってこの暗闇の中ではルーミアは無敵だからだ、何も見えず、誰にも悟られずにルーミアによって朽ちていく、と言う事も出来るのに、何で僕を襲わない? それがとても不思議だった。
 まさか僕を倒すのに飽きてきた? どれだけ攻撃してもダメージは疎か、欠損した部分さえ復活する、という意味不明さに恐怖したのか? それはそれで嬉しいけど……その前に僕はルーミアに触れて『元に戻』したいんだけどなぁ、僕はそう思いながら大きな溜息を吐いた──

Re: 東方崩壊譚 ( No.43 )
日時: 2017/06/18 21:41
名前: 彩都 (ID: ???)  

「それにしても反応がない、一体どういう事なんだ?」
 僕はそう呟いて、考える、流石に逃げた訳ではないだろう、それでは彼女は何処に行ったんだ? 僕を攻撃する為に力を溜めているのか? それは分からないが、とりあえず、この場で立ち止まってみる事にしよう、そう考えて僕はその場で立ち止まる、これで来ればいいけどなぁ? そう思いながらルーミアを待つ事にした、そう思った矢先だった、自分の左手に謎の痛みが走ったのだ、そして左手を確認した、すると左手には歯形が付いていた、歯形から血が少し出ている、うっわ、本当に来たよ、ルーミアは気分屋なのか? と思ってしまう、と、とりあえずは自分の右手で『元に戻』しておかないとなぁ、そう考えて、僕は右手の力を使用し、歯形を『元に戻』して、綺麗さっぱり噛まれる前に『元に戻す』、さぁ、これで痛みもないし、完全に傷もない、とりあえず、現状は万全だ、この万全の状態で少しでも動かないと……そう思い、周りを見やる、その時だった、その時不思議な考えを頭の中で持ってしまった、その不思議な考えとは、『ルーミアが作り出したこの空間ごと『元に戻す』』という考えだった、流石にそれは不可能だ、何故なら、『空間ごと『元に戻』した事はない』のだから──だが、物は試しとも言う、一回試してみる価値はありそうだった、出来るかなぁ? 僕はそう思いながら右手を前に出して、能力を発動する、すると右手の手首から指先迄オーラというか、気というか、何か具現出来ない『何か』に纏われた右手が現れる、これが能力発動時の右手か、あまり詳しくは見ていないけど、こうなっているのか、と思う、そして僕は右手に一気に力を込めて、能力を使用する。
「どうかこの空間ごと『元に戻』ってくれぇ!!」
 僕がそう言って、左手を右腕に置いて能力を発動する、すると『バチバチィッ!』と右手から静電気の様な音がする、僕の能力とルーミアの空間が戦っているのか? と思う、と、とりあえず、僕の能力よ、ルーミアに打ち勝てぇ! そう願いながら僕は更に右手に力を込めた──

「…………」
 僕は叫んだ時に目を閉じていた、そしてゆっくりと目を開ける、すると周りはルーミアの闇の空間に入る前の明るい森林だった、そして僕は能力を発動した姿勢から、直立になり、自分の右手を見る、右手は無傷だった、そして僕はその場で尻餅をついて、一言呟いた。
「で、出来ちゃった……」
 そう呟いた後、僕は上空を見上げる、上空には呆然としている文の姿がいた、僕は周りを確認してルーミアを探す、すると案外近くにいた、ていうか真隣に膝を曲げて佇んでいた──近いよ。
「な」
「な?」
 僕はルーミアが言った言葉を一言だけ復唱する。
「何で私の能力が破られたんだ!?」
「えぇっ!?」
 僕は驚いてしまった、まさか右手の力でルーミアの能力を破ってしまうとは……僕は呆然としたが、ふと我に返って、ルーミアを見る、ルーミアは僕の能力で消えた空間に対し、空間があった場所をただ呆然と見ていた。
「…………」
 僕は無言でルーミアの頭を使んで、能力を発動する、と、とりあえず、これで『元に戻』ればいいけれど……そう思いながら『元に戻』したルーミアを確認する。
「あれっ? 此処は何処だ? あれっ? お姉さんは誰なのだ?」
「……僕は男です」
 そう呟いて、自分の格好を確認する、そう言えば自分の格好は霊夢の服を着ているただの女装少年だった事を思い出した。
「ふーん……よし、遊ぶぞー!」
 ルーミアはそう言って、宙に浮き、僕の下を離れた──えーと、これでルーミアは『元に戻』ったかなぁ? 僕はそう思いながら米粒の様に小さくなるルーミアを見続ける、すると急に頭がぐわん、と揺れて、視界が二重、三重に見える、そして僕はその場で倒れてしまう、何なんだ? 突然急に……? ていうか、この感覚は一回体験している感覚だ、そう、早苗の時とよく似ている──そして僕はその場で気絶した──

「……ん?」
 僕は木の天井を見て、目が覚めた、この木の天井は見た事がある、そう、確か守谷神社──
「大丈夫でしたか!? 華扇ちゃん!?」
 隣にいた早苗はそう言って僕に強く抱きしめてくる、痛い、痛い痛い、そう思いながら僕は早苗を離す。
「ちょっと待って!」
 僕はそう言って、深呼吸をする、ていうかどうやって僕は守谷神社に戻ってきたのだろう? そう思っていると、縁側に座る射命丸文の姿が目に入った。
「あっ、起きましたか」
「えーと、起きましたね……で、僕はあの後倒れたけど、誰が運んだんだい?」
 僕は文にそう言うと、文は自分を指差す、成程、文が僕を運んだのか、僕は布団から出て、文に感謝する。
「有難う、文、感謝するよ」
「いえいえ、私はただ倒れた人を助けただけです」
「それが有難いんだよ」
 僕はそう言って文に感謝する、もしも文がいなかったら僕はもう一度ルーミアに食べられていることだろう……そう思っていると、背後から神奈子、諏訪子の声が聞こえた。
「あっ、起きた」
「おぉっ! 起きたのか!? 大丈夫なのか!?」
 二人の言葉に対し、僕は言う。
「起きたし、大丈夫だよ」
「そ、そうか……」
 僕の言葉に胸に手を置く神奈子、何気に僕を心配していたんだな、そう思いながら僕は布団に戻ってもう一度寝転がる。
「と、とりあえず、もう一度寝てから活動する事にしよう、まだ疲れが抜けきっていないんだ……」
 僕はそう言って布団の中で居眠った──そして僕が次に起きるのは、今日の夜だった──

Re: 東方崩壊譚 ( No.44 )
日時: 2017/06/18 21:42
名前: 彩都 (ID: ???)  

「よく寝たぁ……」
 僕はそう言って、布団から起き上がって体を伸ばして、欠伸をした。
 そして外を確認する、外は真っ暗で、夜だと言う事が理解出来た。
「外が綺麗だなぁ……」
 僕がそう呟いた瞬間だった、不意に背後の襖が開く音がした、其処には真剣な表情で僕を見る洩矢諏訪子が存在していた。
「私言ったよね? 『『人喰妖怪を倒したら特訓は終了』だ、早急にこの神社から博麗に帰ってもらう』ってね……その約束を守って貰うよ?」
「……そうだったね、完全に忘れていたよ、人喰妖怪倒しに夢中になっていたね」
「そうなの? それはどうでもいいけど、明日の昼には此処を出て貰うからね? これは早苗や神奈子にも伝えておくから──『華扇は強くなった、だから博麗神社に戻る』とね──」
 僕は諏訪子の言葉を聞いて、僕は静かに頷いた──

「…………」
 色々な事があった、早苗、神奈子、諏訪子と一緒に寝たり、神奈子の胸を見たり、早苗と一緒に入浴──諏訪子もだけど──したり、色々な事があった、それ等全て一つ一つが僕にとっては大きな思い出となるだろう──他人にとって、こんな小さな事が記憶喪失の僕にとってはとっても大きい思い出になるのだ、『思い出』という物の大きさとは人によってバラバラだ、と言うのが分かる。
 それにしても本当に色々な事があったなぁ、文の事だってそうだ、ちゃんと文の事も対応しないとなぁ、次に行くのは文の所か、と考えながら、僕は縁側に座りながら暖かい緑茶を飲む、うっ、今回のは熱過ぎる……僕は暖かい緑茶に少し溜息を吐きながら、空を見上げる。
 此処で見る夜空はたった一つしかない、そんな夜空を今日で見るのが終わる、同じ空だったとしても場所が違えば、僕にとっては違う空なのだ。
 一日一日が僕にとっては記憶の探索の日々なのだ、未だにいい情報はないけれど──そんな事を考えているともっといい情報が来なさそうなので、この考えは今切り捨てる事にしよう。
「…………」
 無言のまま、目を閉じ、色々な記憶を辿る、すると急に僕の首に手を絡める者が居た、絡めたのは早苗だった。
「華扇ちゃん! 私は……私は……!」
 早苗の言葉に僕は静かに頷いて、早苗の細く、綺麗な腕を右手で触れる、分かってる、早苗の言いたい事は分かっている、『帰らないで下さい』、そう言いたいのだろう? だけどこれは諏訪子と決めた事なのだ、今更変更する事等出来ない。
 だから……僕は静かに早苗の腕を掴んで、抱き締める事しか出来ない、今はこれで許してくれよ? 僕だって早苗や神奈子、諏訪子と離れたくないさ、だけど僕は元々博麗神社の存在、守谷神社とは相容れないのだ、だから……ごめん、早苗……僕はそう思いながら抱き締める力を少しだけ強くした──

「もう夜遅い、寝れないと思うけど、もう一度横になって、寝てみるかぁ」
 僕は早苗の腕を抱き締めた後、寝る為に寝室に来ていた、この寝室とも今日でお別れか、そう思うと少し感慨深く感じてしまう、そんな事を思っていると、神奈子が寝室に入ってきた、彼女も早苗と同じ気持ちなのだろうか? と考えてしまう。
「華扇……」
 神奈子の言葉を聞いて、僕は静かに頷く、一体何を話すのか? 僕は想像もしていない。
「お前、諏訪子と小さな賭をしたんだな……」
「まぁね、少しでも僕は強くならないといけないからね」
「お前も……大変だな、強くなるって……」
 神奈子がそう言う、確かに記憶を取り戻す為に強くなるのは、大変かもしれない、だけど記憶を失ったのは自分の責任、だから自分で頑張らなければならない。
「まぁね……」
「私が言いたいのはそれだけかな? ぞれじゃあまたな、華扇──出会えたらまた出会おう──」
 神奈子はそう言って僕の寝室から出る、出る時に僕は神奈子の横顔が不意に見えてしまった、その神奈子の横顔には、涙が出ていた──

「あぁ、結構遅くなってしまったなぁ、もう本当に早く寝ないと、明日、美味しい美味しい朝御飯が食べれなくなってしまうかもしれない……」
 僕はそう呟いて、布団の中に入った、おっと、忘れてはいけない、光を消さないと……僕は何とか光を消す事を忘れずに、急いで光を消して、布団の中に入る、真っ暗な室内、流石に諏訪子も話すのを明日にするだろう、僕はそう思いながら、溜息を吐く。
 それにしても、ルーミアは案外強かったなぁ、結構痛手を負ったかもしれない、僕はそう思いながら自分の右手を布団の中で見つめる、……ん? ちょっと待って? 何か可笑しくないか? だってフランドールもルーミアも暴走していて、僕が能力を発動して、『元に戻』すと、普段の性格に戻っていた──ただし、ルーミアはよく分かんないけれど──これって『何か可笑しく』ないか? だって、フランドールもルーミアも『操られている』感覚がするのだから──もしも、もしもの話だ、『フランドール、ルーミアは誰かに操られていた』……? だとしたら霊夢の言っていた『鈴泉・優曇華院・イナバ』って奴がフランドール、ルーミアを操った? それは何故? それを考えると不思議なのだ。
 というより……『本当に鈴泉・優曇華院・イナバ』が行った事なのか? まずとして、『鈴泉・優曇華院・イナバ』が本当に行った、という証拠も確証もないのだ、だから本当にしたかは定かではないし、ただの推測の中だけだ。
 もしも『その推測が間違っていたら』……? 僕はそう考えながら、『誰が、フランドール、ルーミアを操ったのか』を考えた──

Re: 東方崩壊譚 ( No.45 )
日時: 2017/06/18 21:42
名前: 彩都 (ID: ???)  

 あーもう、訳分からん、僕はそう思いながら欠伸を一つする、結局誰が『フランドール、ルーミアを操った』のかは未だに分からない、僕は欠伸をしたので寝ようと考え、布団の中で縮こまった。
 ……ていうか何で僕はぶっ倒れたんだ? 早苗の時もそうだ、急に力が抜けて、能力が使用出来なくなった、寝た今では使えるけど……何で急に使えなくなったんだ? と考える。
 まさかこの能力、回数制限でもあるのか? 例えば、百回普通に使えるけど、それ以降は使えない、とか? ルーミアの時は、何回か一気に使用したから、疲れてぶっ倒れた、とか? そんな事を考えると少し笑いがこみ上げてくる、何なんだそりゃあ? 意味不明過ぎる、回数制限とか本当、無くてもいいじゃないか、と考える。
 うーん、もしも回数制限があるのなら、特訓するのにも支障が出るかもしれない、僕はそう思いながら溜息を吐く、もうこう言うのは考えるのを止めて、寝る事にしよう、そうしよう、僕はそう考えて、深く布団の中に潜り込んだ──

「……ん?」
 僕は小鳥の囀る音に目が覚めた、顔を布団から出し、外を確認する、外は明るく、昼よりも少し暗いので、朝と昼の中間位か? と考える。
「うーん、よく寝たぁ……か? 何だか数時間しか寝ていない気分だが……いや寝ている分まだマシか」
 僕はそう一人ごち、起き上がって体を伸ばす、服ははだけ、だらしない格好だった。
「おっと、早く服を整えないと……霊夢の服だし、あまり皺はつけられないからなぁ……」
 僕は急いで身嗜みを整え、もう一度体を伸ばした後、布団を片付けて、その場で座る。
「そっか、今日で守谷神社とはお別れなのか……案外長くて短かったなぁ」
 僕はそう言って、その場で正座になる、結構な時間、この守谷神社にいた、と思っていたが、精々二週間もいないのだ、そりゃ結構な時間、と感じてしまうのも間違いではないだろう。
「さて、朝御飯を食べておこう、これが最後の朝食──いや、最後の晩餐にならない様にしないとなぁ」
 僕はそう呟いて、寝室を出る、有難う、寝室、有難う、守谷神社──

「お早う」
 僕はそう言って、早苗、神奈子、諏訪子に挨拶する。
「お早う御座いますぅ」
「お早ぉう!」
「あぁ、お早う」
 早苗、諏訪子、神奈子が順々に返答する、この会話も今日で終わりか、そう思うと少ししみじみするな、僕はそう思いながら卓袱台の近くに座って、自分の右手を見る、今日も一日頑張ろう、僕がそう思っていると早苗が料理を運んできた、何だ、僕は良い時に起きてきたって訳か、偶然って凄いな、そう思いながら僕は守谷神社最後の朝食をとる──最後の朝食でも、四人一緒に朝食を食べた──
 朝食を食べ終えて、僕は深呼吸をする、あぁ、美味しかったなぁ、そう思いながら僕は綺麗な青空を見る為に縁側に座る。
 すると隣に諏訪子が座って、茶を啜っている、そして僕に話しかける。
「今日で最後だけど? 何か言い残す事ある?」
 僕は諏訪子の言葉を聞いて、静かに悩む、果たして言い残す事なんかあるだろうか? いや、一つだけあった、僕は早苗、神奈子に聞こえない様に諏訪子に言う。
「んっと……そうだなぁ……──────、かな?」
 僕の言葉を聞いて、『へぇ』としたり顔で僕を見る、するといきなり立ち上がって諏訪子が大声で僕が言った事を二人に言おうとする。
「ねぇ、二人共ー? 華扇がさぁー、二人に言い残す事聞いてさぁ、こういう返答してきたんだよー!」
「ちょっ!? 諏訪子、流石に暴露はダメ! 恥ずかしいからぁ!」
 僕がそんな事を言っても諏訪子は聞かない、そして諏訪子は僕が止めるのを聞かずに言い残す事を大声で言った。
「その返答がさー! ──────だってさー!」
 諏訪子の言葉を聞いて、早苗、神奈子が目を大きくさせる、僕はその場で四つん這いになって、諏訪子の言葉を止められなかった事を悔やむ。
「くっそぅ……!」
 そんな僕に対し、早苗、神奈子は笑いながら僕に言う。
「何なんだよ、華扇、お前は面白い事を言うなぁ!」
「うふふ、そうですねぇ」
「うぅっ、笑うなよぉ……!」
 僕が涙を流しながらそう言うと、神奈子は僕に言う。
「でも、ちゃんと本音を聞けたから、嬉しいぞ?」
「そうですねぇ、華扇ちゃんの口からそんな言葉が出たのは驚きですがねぇ」
 神奈子、早苗の言葉を聞いて、僕は拍子抜けする、まさかそんな返答をされるとは思わなかったからだ、そして時間は過ぎて、昼となる、もうすぐ──僕がこの守谷神社から離れる時間となった──
 僕は早苗が作ったお昼ご飯のおにぎりを持って、守谷神社の玄関で三人を見る。
「それじゃあ、この神社と僕はお別れだ、だけど、僕は君達と出会う事は出来る、出会える時迄、また会おう!」
 僕がそう言うと、三人は言う。
「そうですね! でもまた会えますよ、近い内に!」
「そうだねぇ」
「そうだな」
「アハハ、早い出会いになりそうだね……」
 僕がそう言って三人から別れ、守谷神社の玄関から一歩出る、すると目の前の虚空から、僕の目の前に白い格好の女性が現れた、えっ? と僕が内心驚いていると、白い格好の女性は僕に語りかける。
「迎えに来た、華扇、紫様の命でな」
 そう言って僕の目の前に現れた白い格好の女性、僕は『だ、誰ですか?』と言う、僕がそう言うと、白い格好の女性は簡単に答える。
「ん? 何だ、もう忘れたのか? まぁ良い、私の名前は八雲藍(やくも らん)、紫様の式だ、お前を博麗神社迄送り届けるのが今の命だ」
 そう言って、僕の目の前に白い格好の女性──基、八雲藍が現れた。

Re: 東方崩壊譚 ( No.46 )
日時: 2017/06/18 21:43
名前: 彩都 (ID: ???)  

「あ、えっと……」
 僕が少し戸惑っていると、八雲藍は僕に言う。
「藍でいい」
「あっ、はい……藍、僕を博麗神社に送り届けるとは一体どういう事?」
 僕がそう言うと藍は簡単に言う。
「簡単さ、此処は人間だって襲う妖怪がいるんだ、お前みたいなひ弱な人間一人を歩かせていると、すぐ妖怪がお前を食べるかもしれない、だから博麗神社に送り届ける迄、お前の護衛をする、と言う事だ」
 僕は藍の話を聞いて、成程、と納得する、だがその前に『どうやって自分が守谷神社にいる』という情報を得たのか? それが不思議だった。
「ん? 何だ? 私が守谷神社にお前がいるのを見透かした様に来たのがそんなに驚いているのか?」
 どきり、と心の中を見透かされた気分になる僕は静かに頷く。
「そうか、それもそうだよな、だってお前はまだ、紫様の凄さを知らないからな」
 藍の言葉を聞いて、紫ってそこ迄凄い存在なのか? と思ってしまう。
「んー、大まかに言えば、華扇、お前が守谷神社にいるのを最初っから知っていたからな」
 えっ? と僕は少し驚いてしまう、まず話を知っているのは僕を除けば、霊夢、魔理沙、早苗の三人だけなのだ、何時の間に情報を……僕はそう思いながら無言で歩き続ける。
「それにお前が次に行く場所の魔理沙の家も知っている」
「はぁ? 次に行く場所? それはどういう事だい?」
 僕はそう言って藍が言った事を聞き返す。
「なぁに、簡単さ、博麗神社に着いたら分かるよ」
 藍の言葉を聞き、僕は更に混乱してしまう、と、とりあえず、話を変更しないと、僕はそう思いながら藍の尻尾に目がついた。
「あ、あのさぁ、藍ってさぁ、尻尾多くない?」
「ん? そりゃそうだろう、私は九尾の狐から体を借りているに過ぎないからな、その尾は九尾の狐の尾だろう」
「きゅ、九尾の狐、ね……」
 九尾ってどれだけ尻尾あるんだよ、と心の中で呟きながら、少し考える、体を借りている、ねぇ……自分には少し小難しいかもね、そう思い、この考えは忘れる事にする。
 そしてこのまま無言のまま僕は藍に案内されて、博麗神社へと、帰宅する、帰宅という言い方も何だか可笑しいので、帰省、かな?
「あっ、華扇だ」
 博麗神社に戻ってきて、開口一番の声が魔理沙の声だった、その次に霊夢の声がした。
「あら、本当ね、どうだった、守谷神社は?」
「んー? そうだなぁ、此処より良かった、だけど霊夢と一緒にいる方が安心するや」
「なっ!? 此処より良かったってどういう事よ!? アンタなんか此処の子じゃありません!」
「その前に華扇はこの世界に来た浮浪者だけどな」
 僕と霊夢の言い合いの中、魔理沙が口を差して、霊夢にどやされる、やっぱり博麗神社の方が安心するなぁ、そう思った矢先だった、自分の肩に謎の手が置かれる、手を置いた人物は八雲紫だった。
「お久しぶり、かおくん?」
「……お久しぶり、盗み聞きのお姉さん?」
 僕は皮肉一杯に言うと、『お姉さんねぇ』と呟いて扇子で口を隠して言う。
「でも藍が居たから妖怪には襲われなかった、と言う事になるわ」
「それもそうだけど……僕にはこの右手がある、だから大丈夫なのに……」
 僕がそう言うと紫はルーミアと戦った時の事を話す。
「あら? たった一体の人喰妖怪の能力に惑わせられた挙げ句、その空間を打破する為に能力を使用して、その場でぶっ倒れた人間が言える立場かしら?」
「ちょっと待て、何でその事を知っている!?」
 僕が紫に怒鳴る様に言うが、紫は簡単に言う。
「何で知っているか? そんなの簡単よ、私は幻想郷の賢者だからよ」
「…………」
 僕は紫と会話するのがアホらしくなって、途中で会話を止めてしまう、すると目の前に魔理沙が来て、僕の両手を掴んで言う。
「なぁ、華扇! 今度は私の家に来ないか!? お前なら、魔法の一つや二つ、覚えていた方がいいと思うが!」
「う、うーん、魔法ねぇ……」
 実際どんな物なのか自分は未だ分からないが、確かに魔理沙の言う通り、覚えておくのも良いかもしれない、僕はそう思いながら霊夢に言う。
「それじゃあ、今度は魔理沙の家に行って、特訓の合間に魔法を習得してみるよ」
「あ、アンタねぇ……色々行き過ぎよぉ? 数日位神社で休憩すればぁ?」
 霊夢の言葉を聞いて、確かにそれもあるかもしれない、と納得する、少しは守谷神社に行った疲れを癒さないとね、僕はそう考えて魔理沙に言う。
「そうだなぁ、三日、三日後とかどうだろう? 博麗神社に程良く滞在している時間だからね」
 僕がそう言うと霊夢が横入りして言う。
「ふむ、三日か、確かにそれなら大丈夫ね」
「そうか! それじゃあ三日後、博麗神社に来るからな!」
 魔理沙は僕と霊夢の言葉を聞いて、三日後に来る、と伝言を残して、箒に乗り、何処かへと消えてしまう。
 ふぅ、次は魔理沙の家に行って特訓か、そう思いながら僕は何か引っかかる物を感じる、そして僕は藍に聞く。
「藍、あのさぁ? もしかして魔理沙の家って……?」
 僕がそう言うと簡単に藍は僕に答える。
「ん? 魔理沙の家か? 紫様は魔理沙の家を知っているぞ?」
 僕は藍の言葉を聞いて、驚愕する、まさか本当に次に行く場所を知っているとは……僕は紫に驚きながら紫から離れる──守谷神社に行って、起きた事は二つ、一つは、能力の使い過ぎか分からないけれど、鼻血が出た事、次にルーミアの時、能力を一つ目の時と同じ様に使い過ぎてかは分からないけれど、倒れた事。
 この二つに僕の『元に戻す』能力が関わっているかは僕には分からない──

 第二章 完

 第二話 完

 CHAPTER 6 終了

 第三章 第三話 CHAPTER 1 に続く──