二次創作小説(映像)※倉庫ログ

Re: 東方崩壊譚 ( No.80 )
日時: 2018/01/03 22:08
名前: 彩都 (ID: h4V7lSlN)  

東方崩壊譚(とうほうほうかいたん) 第五章 第五話 体で支払う天狗世界

CHAPTER 1 天狗と巫女と魔法使いと僕

 アリスとの激闘を繰り広げた僕は博麗神社に帰るべく、魔理沙の箒を掴みながら魔法の森を抜け、魔理沙と共に博麗神社へと向かっていた。
 何だか激動の一週間だったなぁ、と、思いながら自分は溜息を吐いていた。
「んー? どうしたんだよ華扇?」
 自分の溜息を聞き逃さなかった魔理沙が言う、自分は溜息の理由を魔理沙に話した。
「えっ? あぁ、この一週間の事を振り返るとね……無意識に溜息が出るんだよなぁ、だから溜息が出たんだと思う」
「ふぅん……それはつまり『無意識に疲れている』って事か?」
「多分そうだろうねぇ……ってか、特に疲れるのはアリスの時だった気がする……」
 自分はそう発言し、アリスの事を思い出す。
 まずは監禁からの、移動制限、更に自分はアリスにセクハラされ……うーん、やっぱり原因はアリスかもしれない、そんな事を思っていると、魔理沙が自分に言う。
「おっ、華扇! もうすぐ博麗神社に到着するぞ! 喜べ!」
「えっ? もうなの? 案外早いなぁ」
 自分は魔理沙の発言に少々驚き、下を確認する、結構高い所で浮いているが、確かにこの道は博麗神社に通ずる道だった。
 そして自分と魔理沙は博麗神社の鳥居前に辿り着いて、地に足をつけた。
「ふぅ、やっと到着だ」
「有難う魔理沙……って、あれは何だぁ?」
 自分が魔理沙に感謝して、横目で博麗神社の境内を確認すると、其処には博麗霊夢と射命丸文が口論をしていた。
 射命丸文の声は自分達が居る境内外迄聞こえていた。
「だーかーらー! 華扇くんは何処にいるんですかって! 言っているじゃないですか! ってか、何処に隠したんですぅ!?」
「あぁっ? その前に華扇は知らないっての、勝手に出て行ったんだから、私の知る限りではないわね……ってか、記憶を取り戻して、紫の所に行って、元の世界に戻ったんじゃないの? 私はこの可能性を押すわ」
「流石にそれはないですよ! まずは貴方に連絡や情報を流す筈ですし!」
「だから、私は知らないわよ……って、華扇じゃない、どうだった? 魔理沙の所は?」
 二人に近づく自分に霊夢は気付いて声をかけた、すると射命丸文が振り向いて、自分を抱き締めた。
「いやぁ、探しましたよ、探しましたよぉ!! もう、私の華扇くん! 勝手に出て行ってぇ! ささっ、さっさと妖怪の山に向かいましょう!」
「えっ? えっ? 何? いきなり過ぎて情報が飲み込めな──」
 強く抱き締める文に対し、自分は少しドキドキしながら文を押して、離れる。
「はぁはぁ……い、いきなり何なんだよ!? 急に抱き締めて来やがって!? ……柔らかかったけど」
 自分がそう言うと、文は自分の事を睨みながら発言する。
「そうですよそうですよ! そりゃ怒る理由も出来ますって! 貴方、この前約束した内容、軽く一週間は遅れているんですよ! だからさっさと妖怪の山に来て下さい!!」
 文はそう言って、自分の右手を掴んで、宙に浮く、自分も序でに宙に浮いた。
「じゃっ、そう言う事で華扇くんを借りますねぇ?」
「ちょっ!? 待てよ文! 華扇は色々と疲れているんだよ! だから明日にしねぇかぁ?」
「魔理沙さん、それは無理な相談です、何故なら天狗は規律正しいですからね! ルールを破るなんて言語道断なんですからね!」
「た、確かにそうなんだが……だが、今の華扇は使えないぞ! だって、女性恐怖症を発症しているからなぁ!!」
 魔理沙の咄嗟の発言に自分は焦ってしまう、いや、そんな事はないのだが……だが、ここで魔理沙の発言を鵜呑みにして、女性恐怖症の真似をするってのも、良いかもしれない……自分は内心魔理沙に感謝して発言する。
「そ、そうなんだよ文ぁ? 僕、今絶賛女性恐怖症を発症していて、医者にも言われたんだよねぇ? だから、女性が多い場所に移動すると、頭がクラクラして……」
 自分がそう言うと、鋭い目つきで自分を見る文。
「それは本当ですか華扇くん? もしも嘘を吐いていたら、地獄に送りますよ? でも、此処で本当の事を言ったら、地獄には送りません」
「えっ? 地獄?」
 自分はそう言って、文の言った事に恐怖する、まさか『幻想郷』に地獄があるとは……自分はそう思いながら、視線を逸らしながら『嘘です……』と言う。
「結局嘘ですか……で、疲れているってのも嘘ですかぁ?」
「……それは違う!」
 自分は文にそう言って、真実を話す。
「じ、実はアリスという魔法使いと魔理沙に魔法の特訓を受けていたんだ、だから疲れているのは本当……だから、連れて行っても、今日は何も出来ない、出来るのは明日からだよ」
「…………」
 自分の発言を聞いて、文はその場で少し考えて、溜息を吐いた。
「はぁ……分かりましたよ、ですが、今日は私達天狗の本拠地、妖怪の山に連れて行きますからね? それでもいいですか?」
「あ、あぁ、いいよ……それなら」
 自分はそう言って、静かに頷く、すると魔理沙は『えぇー』と言いたげな表情をする。
「そう言う事で華扇くんを借りますね、霊夢さん?」
「あーもう、分かったわよ……勝手に連れて行って頂戴?」
「霊夢の僕に対する評価が下がっている気がしてならない……」
「それは霊夢さんが華扇くんを信用しているからですよぉ? それでは、妖怪の山に向かいましょう!」
 文はそう言って、自分を背後から抱き締めて、高速移動する──せ、背中に何だか柔らかいモノが当たっている……自分はその場で顔を赤らめながら、天狗の本拠地、妖怪の山へと向かう──

Re: 東方崩壊譚 ( No.81 )
日時: 2018/01/10 21:50
名前: 彩都 (ID: Btri0/Fl)  

 自分は背中に二つの柔らかいモノにドキドキしながら周りを確認すると、其処は『守谷神社の近く』だった、そして『守谷神社から人里への道』も確認出来た。
「えっと……もしかして『妖怪の山』って『守谷神社』の事?」
 自分がそう言うと、文は首を横に振って説明する。
「いいえ、『この山そのものが妖怪の山』なんです、守谷神社は『妖怪の山』に勝手に建てられた神社なんですよ」
 文の説明を受け、自分は静かに言う。
「えっと……それはつまり不法侵入、不法建設、不法住居って事?」
「えぇ……華扇くんの脳味噌で言えばそうなります……」
 ……守谷神社、完全に悪の巣窟だった、自分はそう思いながら『そうだったのか……』と頭を垂れる──そして自分と文は『妖怪の山』に入った瞬間、『何か』を投擲され、文は自分ごと避ける、自分は文の背後に飛ぶ、投擲されたモノ──それは刀だった──を横目で確認し、不思議がる。
 何故刀が飛んできたのだろう? 自分がそう思っていると、文と自分の目の前に一人の存在が宙に浮きながら現れた。
「おい、此処は人里の人間は入ってはいけない筈だぞ、何故入ろうとする?」
「あややー、バレちまいましたかー」
 軽く言う文に対し、自分は目の前の存在に言う。
「えっと……僕はこの妖怪の山に入っても良い、という話を早苗から聞いていないのか?」
 自分がそう言うと、腕を組んで目の前の存在が言う。
「さぁ? 私はその話を聞いていないが?」
「えぇっ……」
 まさか話が通っていない事に驚きを隠せない……ってか、早苗の奴、山に話を通していなかったのか!? もしくは情報が広く伝わらなかったかのどちらかじゃないか! 自分はそう思いながら、落胆する、すると文が自分の名前を切り出して、質問してきた。
「そ、それじゃあ、『華扇』という人間は通しても良い、と言う話も聞かなかったのですか?」
「勿論だ、『華扇』と言う名前の存在を通しても良い、と私は聞いていないからな?」
 そう言う存在に自分と文は絶句するしかなかった、そして文は目の前の存在に言う。
「……貴方ねぇ、哨戒(しょうかい)するのは良い事かもしれないけれど、敵味方の区別はして欲しかったわね……」
「ふんっ、貴方に言われる筋合いはない、私はただ単に仕事をしているだけだ、だが、そのガキが妖怪の森に入れる理由は今の所ないだろう? 何故なら、そのガキは『敵味方の区別がつかない』からな?」
 目の前の存在はそう言って、腰に提げてあるもう一本の刀を前に出して、宣言する。
「だから忠告する、『そのガキを人里に置け』、いいな? 有無は言わせんぞ?」
「……中々に困った相手とぶつかりましたねぇ」
 文はそう言って、静かに溜息を吐き、自分に言う。
「華扇くん、今から超高速で移動します、だから『決して眼を開けないで下さい』ね? 開けると失明し、眼が無くなります」
 そう言う文に対し、自分は鼻で笑って言う。
「おいおい? 文よ、僕の事を少し下に見過ぎていない? 僕の右手の『能力』を何だと思っている? 僕の右手の能力を使えば、視力だって『元に戻る』んだぜ?」
 自分がそう言うと、文はその場で少し微笑んだ。
「アハハ……確かにそう言えばそうでしたね……それでは、とりあえず、眼を閉じていて下さい、良いですか?」
「あいあーい、分かりましたーっと」
 自分は文に言われるがままに眼を閉じる、そして目の前の存在が言う。
「巫山戯るなよお互い? 私は白狼天狗(はくろうてんぐ)だぞ? そう簡単に逃げられな──」
 目の前の存在──基、白狼天狗(はくろうてんぐ)がそう言った瞬間、『文は目の前の白狼天狗(はくろうてんぐ)の背後数メートルの付近を浮遊して』いた、そして白狼天狗(はくろうてんぐ)が首を横に振って、周りを確認すると、白狼天狗(はくろうてんぐ)の後ろから文が言う。
「こっちですよ、白狼天狗(はくろうてんぐ)さん?」
 白狼天狗(はくろうてんぐ)が振り向いて自分と文を確認し、白狼天狗(はくろうてんぐ)が叫ぶ。
「お、おい……? 今さっき『何をした』んだ……? 教えてくれよ……!?」
 そう言う白狼天狗(はくろうてんぐ)に対し、文が口の端を歪ませて笑う。
「アハハ……そんなの簡単ですよぉ? これは『私の能力で移動しただけ』ですからぁ」
「は、はぁ……? 貴様の能力だと? 一体どんな能力と言うんだ!?」
 白狼天狗(はくろうてんぐ)が叫び、文が『おやおや』と呟く、そして文は続けて言う。
「もしかして私の事を知らないんですかぁ? 私は『文々。新聞』の制作者であり、烏天狗の『射命丸 文(しゃめいまる あや)』と申します、そして能力は『風を操る程度の能力』です、だから白狼天狗(はくろうてんぐ)の貴方より地位が高く、貴方より優れています」
「なっ……! 貴方様があの烏天狗……! そして『文々。新聞』制作者の……! 射命丸文殿だったとは! 数々のご無礼、お許し下さい!」
「いやいや、いいんですよぉ、分かって下さればぁ……それで、『この少年を妖怪の山に入れても良いです』よねぇ?」
「そ、それは別問題で御座いま──」
「へぇ、烏天狗の命令が聞けないとでも? あーあー、大天狗様に報告かなぁ?」
 文がそう言うと目の前の白狼天狗(はくろうてんぐ)がとんでもなく焦る。
「だっ、大天狗様に!? そっそれだけはご勘弁を! 分かりました! 文様、人里の少年も通って良いですから!」
「あら? それは有難いわね……でも、この子は人里の少年じゃなく、博麗神社の人間よ、そして名前は先述言った通り、華扇よ」
 文がそう言うと、目の前の白狼天狗(はくろうてんぐ)が『分かりました!』と叫ぶ、そして文が続けて言う。
「分かれば宜しい、それでは、私と華扇くんは妖怪の山に進みますね」
 文はそう言って、前に進む、ふぅ、これで一難去ったなぁ、自分はそう思いながら他の一難が来ない事を切に願う──

Re: 東方崩壊譚 ( No.82 )
日時: 2018/01/24 22:18
名前: 彩都 (ID: ???)  

 自分と文は目の前に現れた白狼天狗(はくろうてんぐ)から何とか逃げて、『妖怪の山』の奥に来ていた。
「はぁ、何とか、白狼天狗(はくろうてんぐ)以外何にもなかった……漸く一安心だなぁ」
 自分がそう言うと、文が静かに否定する。
「いいえ、実際まだまだ一安心は出来ませんよぉ? この先に一悶着、出来事、異常があるかもしれません」
 文がそう言うと、自分は項垂れる、嘘だろぉ……? 自分はそう思いながら溜息を吐いた。
 すると近くに水が流れる音がする、一体何があるのだろう? そう思っていると、文が言った。
「どうかしたんですか?」
「えっと、実は水が流れる音がするなぁ、と思って……何があるんだろう? と思ってね」
「あぁ、何だ、その事ですか、実は近くに滝がありましてね? その音でしょう」
 滝? 滝なんか『妖怪の山』にあったのか……早苗と一緒にいる時は全然気付かなかったなぁ、と、思いながら『成程』と思う。
 すると文が急に言い出した。
「どうです? 滝、見に行きます?」
「ん? いいのか? いいのなら見に行きたいなぁ」
 自分の発言を受け、文が『分かりました!』と叫ぶ。
「それでは滝に行きましょうか! それではしゅっぱぁーつ!」
 文はそう言って、スピードを上げて、滝がある場所へと向かう──文、早い……冷たい……うぅっ……──

「はい、到着しました!」
 文はそう言って、水飛沫がかかる程、滝の近くに移動し、自分は全身に水飛沫がかかった。
「文……水飛沫が冷たい……」
「おっと、これは失礼」
 文はそう言って、滝から離れ、滝壺の近くに移動し、浅瀬に移動した。
「ふむ、此処でいいでしょう? ここいらで少し休憩しませんか?」
「あ、あぁ、そうだね……白浪天狗とかが現れたしねぇ」
 自分はそう言って、靴を脱いで、浅瀬に足を乗せる、左から右へと流れる清らかで冷たい水に自分は少しゾクッとした。
 すると近くに何本かのキュウリが網に入って、水で冷やされていた、自分は『何なんだろう?』と思い、網の中に入ったキュウリに手をやろうとすると──
「華扇くん! 待って下さい!」
 文の大声に自分はビクッとして、姿勢を元に戻す。
「な、何さ!?」
 文の大声に驚いた自分は文に問う、すると文は人差し指を立てて、説明する。
「あれは『河童』のご飯ですよ!」
「か、『河童』ぁ!? 何だそれぇ!?」
 自分が大声でそう言って、驚愕する、か、河童……聞いた事もない名前だな、そう思っていると、文が腕を組んで説明する。
「『河童』とは、水がある場所で生活する妖怪です、『尻子玉』というものを食べて生活しています、ですが、紆余曲折があって、好物のキュウリを食べて生活しています……どうです、分かりました?」
 文がそう言うと、自分は『尻子玉』について問う。
「あ、あのさぁ、『尻子玉』って何?」
「『尻子玉』ですか? そうですねぇ……人間の肉体にあるという玉ですね、私も実際見た事がないので分かりませんが……」
「へぇ、そうなんだぁ……」
 自分はそう言って、成程、と思う、すると後ろの茂みから、『キュウリは冷えてるかなぁ?』と呟きながら、青い帽子の少女が現れる。
「うぉっ、冷えてる冷えてるぅ……って、人間!? 何しにきた!?」
 青い帽子の少女がそう言って、キュウリが入った網目の袋を上に上げる、確かキュウリが好きって言うのが河童って言ったから……まさかこいつが河童ぁ?
「ってぇ、後ろには天狗ぅ!? もしかして天狗さんは人間を誘拐したのかい……?」
 驚く青い帽子の少女に対し、文が訂正を入れる。
「い、いえ、流石に誘拐はしてません! 合意の上です!」
「そ、そうだったのか……! まぁ、それにしても、人間、お前は大変だなぁ」
「あぁっ? どう言う事だよ 河童ぁ?」
 自分がそう言うと、頭を抱えて、しゃがんでから、発言する。
「ひゅ、ひゅいっ!? い、いきなり驚かすなよっ!」
「脅かしていないけど!?」
 自分がそう言うと、文が説明する。
「華扇くん、河童という存在は案外臆病なのです、なので、あまり大声で喋らない方がいいと思います、後喋り方も普通に敬語の方がいいです」
「あっ、そうなの? それは知らなかった」
 自分がそう言って、再度河童に言う。
「で、どう言う事、河童さん?」
「え、えぇっと……大まかに言えば、天狗って『小さい子を攫う』妖怪なんだよ、そして攫った後は──」
「あー! それ以上はダメです! 華扇くんの教育上良くないですからね!!」
 大声で止める文に少し驚く自分、一体どう言う事なのだろうか? 自分がそう思っていると、河童が近づいて、自分の事を見つめながら発言する。
「そういやお前、華扇くん華扇くんって呼ばれてるけど、お前が博麗神社に来たって言う外来人か?」
「え、えと、そうです……名前は華扇、僕は記憶喪失で、記憶を取り戻す為に、色々な所に行って、色々な刺激を受けているんだ」
「成程なぁ、私は河童の河城 にとり(かわしろ ──)ってんだ、機械の事ならお任せだよっ!」
「そ、そうか……宜しくにとり」
 自分はそう言って、右手を前に出す、すると河童──基、河城にとり──が言う。
「うわぅ!? 吃驚したぁ、いきなり刺されると思ったぁ……」
「…………」
「だからあれ程気をつけろ、と言ったのに……」
 文がそう言って、その場で溜息を吐く──僕とにとりの相性は最悪なのかなぁ? と思った──

Re: 東方崩壊譚 ( No.83 )
日時: 2018/01/24 22:19
名前: 彩都 (ID: ???)  

「おい、人間」
 そう言って、自分の隣に座るにとり、にとりは網目の袋から、てかてかと光るキュウリを取り出し、自分に見せて言う。
「腹減ってるか? 腹減ってるならキュウリ食うか?」
「い、いや、いいよ、ご飯はもう食べたし」
「そっか」
 にとりはそう言って、てかてかと光るキュウリを歯で噛んで、『パキッ』と華麗に割って、食べ始める、……何だろう、何故か自分は股間を押さえてしまった。
「ん、どうしたんだ人間?」
「い、いえ、何でもないです……」
「そっか」
 にとりはそう言って、『パキッ、パキッ、パキッ、パキッ』とキュウリを食べていく、自分は得も言われぬ感覚を覚えた。
「本当にどうかしたんですか華扇くん?」
 口の端を歪ませて、口を手で隠す文、完全におちょくろうとしているなぁ、と判断する。
「な、何でもないです……!」
「へぇ、じゃぁ、何で股間を押さえているのでしょうねぇ?」
「!? お、押さえる訳ないじゃないか! なぁにを言っているんだい!?」
「さぁ? 何を言っているのでしょうねぇ?」
 完全におちょくりモードに入っている文に対し、にとりはずっと自分の事を見つめる。
「……人間、本当に大丈夫かぁ?」
「だ、大丈──」
 自分が言うよりも先に文がにとりの隣に移動し、小声で言う。
「河童さぁん? このキュウリをー──」
「うわっ!? いきなり何すん──」
「…………」
 まぁた、何か、良からぬ事を考えているなぁ……? 文の姿を見て、自分はそう察する、するとにとりは少し顔を赤らめながら、網目の袋から、反りに反ったキュウリを手にし、『うぅっ……』と呟きながら反ったキュウリを持って、キュウリの先を舌先で舐めた。
「ペロ……ペロ……」
「!?」
 自分は急いで、振り向いて、にとりを見ないようにする、すると文が言う。
「んー? どうしたんですかぁ華扇くぅーん? いきなり振り向いてぇ?」
「な、何でもないです!」
「それなら、こっちに向きなよぉ?」
 振り向いた自分に文が言う、み、見れる訳ないじゃないか! だ、だって……キュウリを舐める河童とか、頭が可笑しくて見てられないし!! 自分がそう思っていると、つんつん、とにとりが突っついた。
「こ、これならどうだ?」
 にとりはそう言って、反ったキュウリを下から上へ、舌先で舐める、その妖艶さに少しだけ鼻血が出てしまった。
「おやおやぁ? どうしたんですかぁ華扇くぅーん? 鼻血なんか出してぇ?」
「ほ、本当に効果があった……!?」
 文の発言に対し、にとりが驚愕したような声で言う、うぅっ……もうダメだ……自分は鼻血を出して、その場で倒れる──そして倒れる前に文とにとりの悲鳴が聞こえたのは事実かもしれない──

「……ん? 此処は?」
 自分はそう言って、周りを確認する、するとエプロン姿のにとりと文が存在していた。
「あっ、起きたな? おーい、天狗ー華扇が起きたぞー!」
 にとりの声に反応し、自分の目の前にいきなり現れる文、そして文は自分の事を抱き締めた。
「すっ、すみません! まさかそんなに耐性がないとは思っていませんでしたぁっ!」
 文はそう言って、強く強く抱き締める、うぅっ……首が締まる……自分がそう思っていると、にとりが止める。
「待て待て待て待て! 天狗、待って!? 華扇がまた寝込むぞ!?」
「おっと、これは失礼……いやぁ、生きててよかったですよぉ!」
「いやぁ、キュウリ舐めるからこうなったんですぅ! 少しは自重して下さぁい!」
「た、確かにそれはそうですけど……!」
 自分の発言を受けて、文はその場で頭を垂れる。
「は、はぁ……全くもう……」
 自分はその場で溜息を吐いて、文とにとりに問う。
「えっと……大分此処涼しいけど、一体此処は何処だい?」
「此処ですか? 此処は滝の裏ですよ、滝の裏は少しだけ空洞があって、河童達の住処となっているんです」
「へぇ……んで、何で二人は前掛けなんかを?」
「へぇっ!? まさか華扇くんがエプロンに目をやるとは……これが女子力!?」
「いえ、完全に違います……」
 文の発言にツッコミを入れると、にとりが説明する。
「んー、どう説明すればいいだろう? 天狗が『この格好の方が華扇くんは興奮しますー!』と言ってだなぁ……」
「ちょー!? 河童ぁ!? 何漏らしているんですかぁ!?」
 指先を突っついて、顔を赤らめて言うにとりに対し、完全に顔を赤らめた文がにとりを押し倒す、そしてにとりと文がほっぺたを抓ったりして、言い合いと喧嘩をする。
 …………はぁ、何で今日はこんなにも気苦労が起きるのだろうか……? 自分はそう思いながら、二人の戦いが終わるのを静かに鑑賞する──

「いい加減にしなさいこの河童ぁ!」
「それはお前の方だ天狗ぅ!」
「はぁ、飽きないの……」
 軽く十分が経っても喧嘩は終わらない、なので、自分が動く事にした。
「あーはいはい、喧嘩は終了、終了! さっさと仲直りして!」
「か、華扇くん……」
「人間……」
 自分の発言を受けて、文とにとりは口を尖らせて、そっぽを向く、ま、まぁ、喧嘩は終わったし、これでいいか……自分はそう思い、文に言う。
「それで? 文の住処は何時になったら着くの?」
「あっ」
 自分が文にそう言うと、文は『あっ』と言って、顔から大量の汗を流す。
「か、完全に忘れてました……! と、とりあえず、華扇くんも起きている事ですし、それでは向かいましょうか!」
 文はそう言って、いきなり立ち上がる、そして自分の体を抱き締めてにとりに言う。
「そ、それでは、お暇しましたぁ!」
「も、もう行くのかぁ!?」
「う、うん!」
 にとりの発言に自分は大声で返事をして、にとりから離れる──ふむ、河城にとりという河童と出会った、だから今後仲良くなれればいいなぁ、と自分は思った──

Re: 東方崩壊譚 ( No.84 )
日時: 2018/01/31 21:20
名前: 彩都 (ID: ???)  

 河城にとりと別れて、自分と文は『妖怪の山』を飛行していた、ふむ、紅葉が美しいなぁ、と思っていると、下の方に二人の少女がキャッキャウフフしていた、楽しそうだなぁ、と思っていると、文が言う。
「あれは……華扇くん、あまり関わらない方がいいですよ、あれは『神様
』なので」
 文の発言を受けて、自分が返答する。
「『神様』? それって神奈子や諏訪子みたいな?」
「えっ? 何で華扇くんがそのお二方を……? まぁ、いいでしょう、あの『神様』は『秋の神様』です、だからあまり関わらない方がいいでしょう」
「何で関わっちゃいけないの?」
「あの二人は『秋の行動をしている』のです、紅葉にさせたり、作物を育てたり、とか……色々と忙しいのですよ、なので『神様の仕事』の邪魔をさせてはいけません──ていうか、華扇くんが関わったら、あの神様に華扇くんの『初物』を奪われてしまいますしね──」
「ん? 何か言った?」
「いえ、何でもないです、独り言です」
 文はそう言って、口に手を当てて、口を閉じる、そして紅葉を見ながら自分と文は前に進む──

 そして紅葉を見た後、少し移動すると、目の前に巨大な建物がある事を確認する、何これ? そう思っていると、文が言う。
「此処が私が住んでいる場所です」
「は、はぁ……!? でっかい家だなぁ……」
「いえ、流石に一人で住んでいる訳ではありません……色々な天狗が集まって住んでいるんです」
「はぁ、成程……って、もしかして、『妖怪の山』に入った時のあの天狗も?」
「ま、まぁ、そうですね……」
 自分がそう言うと、文は頭を垂れる、そして文は大きな建物の中へと進入する。
 建物の中は案外綺麗な感じだった、まるで集合住宅っぽい、そして文は廊下に足を乗せ、体重をやっと下に下ろした。
「いやー空の旅って案外面白いなぁ、文はこんな風景を毎日見れるから凄いよ、僕も毎日見れたらなぁ?」
「アハハ……まぁ、華扇くんは人間ですし、霊夢みたいな能力は持っていないからねぇ……」
 文はそう言いながら、スカートのポケットから鍵を取り出し、近くのドアの鍵穴に入れ、ドアを開錠させる。
「此処が私の家、射命丸宅です!」
「うおぉ……おぉっ!」
 自分はそう言って、文の部屋を見て、驚愕の声を荒げる──

「きったねぇ!」
 自分はそう言って、文の部屋の中にツッコミを入れる、こ、これ、完全に魔理沙より汚……いや、それを本人の前で言うのは止めておくか、と考えて、『汚い』以外の発言は控えた。
「な、何これ……? 本当に部屋なの?」
「部屋ですよ! 一応新聞記者ですし、ネタ帳とかをメモして置かなくちゃいけません! なので、こんなにぐちゃぐちゃに……」
「……それにしても、汚過ぎない……?」
 自分はそう言って、首を傾げる、まさか新聞記者の部屋が汚いのかなぁ……? 自分はそう思いながら、腕を組む。
「少しは……片づけようとしないの? だって、幾ら新聞を作る、と言ったって、休み位はあるでしょう?」
「ま、まぁ、ありますよ? でも、それを潰してでも、新聞のネタが欲しいんですよ!」
 怒鳴る文を見て、『こりゃ完全に末期だわ』と思う、そして自分は溜息を吐いて、足元のモノを横にどけて、その場に座る。
 そして文も机の前に座って、自分を見つめる。
「それで? 僕に向かって『体で支払え』ってどういう意味なの?」
 目を細めて言う自分に対し、文は急いで正座をして、目をまん丸にして、自分を見、発言する。
「えぇ、そうなんです! 実は華扇くんに、『体で支払って』頂きたいのです!」
 そう言う文に対し、自分が溜息を吐いて言う。
「うん、分かった、『体で支払えばいい』んだね? でも、どうやって『体で支払う』の?」
「そりゃあ、勿論! 『華扇くんの体力』で、でしょう!」
 文はそう言って、自分の履いているスカートの端を掴んで、上に上げる、自分はスカートを踏んで座っているので、後ろにころりーん、と転んで、背中を打つ。
「痛い! 本が! 本の角が僕の背中に!?」
 あまりの痛みで周りを転げる自分に対し、文が『動くな!』と叫ぶ、だから自分は背中を右手で押さえながら、動きを制止させる、すると文は『自分のスカートを脱がして、褌姿にさせる』、そして次に上も脱がして、スッポンポンにさせる。
「さ、寒い……だから、服を返してぇ?」
 そう言う自分だが、文は『体でまだ支払っていませんけど?』と発言する、ってか、何で『体で支払う』のに、『脱がない』といけないんだよぉ!? 自分はそう思いながら、ぐへへ、ぐへへ、と笑う文に対し、襲われた──そして幾らか時間は過ぎ、文は額の汗を拭い、『ふぅ……』と目を細めて息を吐いた、そして自分も目を腕で隠し、息を荒くして呼吸する。
「はぁはぁ……終わった……大変だった……」
「アハハ……確かに色々ありましたもんねぇ……」
 文はそう言って、自分の格好を見る、自分の格好は『文の格好をしていた』、つまり自分は『文に自身の服を着させられた』と言う事だ。
 自分は暴走する文に対し、暴れたので、息を荒くして、呼吸をしているのだ。
「全く……暴れなきゃ、そんなに疲れないんですよ……」
 文はそう言って、机に肘を突き、頭を抱える、文は自分に向かって『でも、結構似合ってますよ?』と笑われる、『黙ってろ』と自分は返答する。
 果たして、僕は文の格好をして、どうなってしまうのだろうか? それはまだ分からない──

Re: 東方崩壊譚 ( No.85 )
日時: 2018/02/07 21:47
名前: 彩都 (ID: ???)  

東方崩壊譚(とうほうほうかいたん) 第五章 第五話 体で支払う天狗世界

CHAPTER 2 西へ東へ、華扇よ走れ

 何とか息を整え、最初に座った場所に座り直す僕、文も正座のまま、机の前に座る。
「……それで? 何で僕は文の服を着ているの?」
「え、えーと……『これ』が『体で支払う』条件の内の一つです……」
 そう言う文に対し、自分は聞き返す。
「それで? 『体で支払う』、ずーっと、そう言っているけど、『僕の体で何をする気』なの? さぁ、言って?」
「…………」
 無言を貫く文に自分は服を脱ごうとする、すると文が『はーい!! 分かりましたから脱がないで!』と叫んで脱ぐ事を止めさせる。
「え、えーと……実は『その格好で私の新聞を売って』くれませんか?」
「は、はぁ……?  そ、それじゃあ、この格好じゃなくても……」
「いえ! その格好でないとダメなんですよ!」
「はぁ? 何でさ?」
「そんなの簡単じゃないですか! 『可愛いから』ですよ! 華扇くんみたいな女の子に見える子に『新聞を買ってくれませんか?』と上目遣いで言ってみて下さいよ!? 世の人里の男共は購入するに違いないです! だから華扇くん、君が女子の格好をして、私が発行する『文々。新聞』を売って下さい! だから『体で支払え』って言う事です! 『華扇くんが里の中を東奔西走し、華扇くんの見た目、体で新聞を売って下さい』!」
 自分の事を睨んで発言する文に対し、自分はその場で溜息を吐く。
「……はぁ、分かりましたよ、一応『体で支払う』って約束だし……」
「やったぁ! 有難う御座います! それじゃあ、新聞を売るのは明日からにして、夜も遅いので、今日は寝ましょうか?」
 文はそう言って、二組の布団と枕を取り出し、床に敷く、そして自分は文の服が寝ている間に皺がいかないように博麗の巫女に着替えて、文と共に二つの布団にくるまって、寝息を立てながら眠る──

 そして朝になった。
 自分は静かに起き上がって、周りを確認する、隣には文が寝ていた。
 まぁ、昨日はお互い寄り添って寝ていたようなもんだ、別にそこ迄可笑しい事はない。
「……眠いな、だが、今の時間が分からないから、寝るにも恐怖……」
 自分はそんな事を呟きながら、首を横に振って、周りを再度確認した、だが、周りを探しても時計というモノは存在せず、一体今が何時かが分からない……自分は仕方なく、スヤスヤ寝ている文の肩を掴んで揺らす。
「おーきーろー? 朝だぞー?」
 自分が大声でそう言うと、『う、うーん……』と声を出してやっと目を覚ます文、そして文は『どうしたんですかぁ?』と言って、目を擦る。
「いや、もう朝だよって……」
「何だ、朝の事ですか……私は地味に疲れたんですよ……寝ている華扇くんの世話をしたので……」
「な、何やってんだアンタ……?」
 自分はあ頭を垂れながら、文に言う。
「ってか、朝食はどうするの?」
「朝食ですかぁ? そうですねぇ、私は基本摂らないですねぇ……どうも朝は食が細くて……」
「いや、僕は食が細くないんだけど……?」
 自分はそう言って、首を掻く、すると文が起き上がって、『仕方ないですねぇ』と言って、四つん這いで何かを探す、その時、スカートの中からチラリと見える文の太股、足、お尻にドキッとしたのは秘密だ。
「あったあった、これで勝手に食べて下さい、無料券なので、安心して食べられます」
「成程、つまりこれで勝手に朝食を摂れ、と?」
 自分がそう言うと、文は首を縦に一回振る。
「そうです、それでは私は二度寝をします、だから私が起きる迄、家の前で遊んでいて下さい」
「あい分かった」
 自分は文の発言を受けて、大きく頷く、そして文は布団の中に潜り込んで、寝息を立てる──何でそんなに眠いのさ? 自分はそう思いながら、はぁ、と息を吐いて、靴を履き、文の家を出る──

「ハハッ、色々な意味で詰んだわこれは」
 自分はそう言って、頭を掻く、それもその筈、『文から貰った無料券の使い道、無料券が使える場所を聞いていなかった』からだ、あーあ、こりゃ完全に詰んだわ、完璧に詰んだ、紺碧に詰んだわ、自分がそう思っていると、一人の少女が浮きながら自分に声をかける。
「アンタ……博麗の巫女、人間ね? こんな天狗だらけの場所で何してんの? いや、天狗に誘拐された、か?」
「あっ、えっと……」
 自分は突然現れた少女に対し、頭が真っ白になる、そして少女は自分の前に降り立ち、自分の顔を覗き込む。
「ふむ、ふむむ……何だ、まだ『食べられていない』のか、少し珍しいわね……おっと、独り言ゴメンね? それで? 君は何をしているの?」
「えっと……この無料券の場所を探していて……」
 自分がそう言って、少女に無料券を渡す、そして少女が無料券を見て、『あぁ、そこかぁ』と呟く。
「よかったわね、私もその場所に向かう途中だったのよ、一緒に行こう?」
「えっ? 一緒に!? やったぁ、流石に一人は心細かったし……安心しました……」
「いやいや、流石に博麗の巫女だけに心細くはないでしょうよ……?」
 少女はそう言って、細目で自分を見る、何言ってんだコイツ? と思いながら、自分の格好を見る。
 あっ、そっか、今の自分の格好は博麗の巫女だった、文の格好は寝る前に脱いだんだった……自分はそう思いながら、先に進む少女の後を追いかける──

Re: 東方崩壊譚 ( No.86 )
日時: 2018/02/14 23:38
名前: 彩都 (ID: ???)  

「それで? アンタ博麗の巫女なのに何でこんな所に来たの? 天狗を壊滅させる為?」
 そう言う少女に対し、自分は首を振って答える。
「違うね、まぁ、自分にも色々とあるんだ、詳細は省かせて頂こう」
「……何それ? つまんないなぁ」
「つまんなくてもいいさ、その前に僕は腹の虫を押さえないといけないから、早くご飯が食べたいんだよ……」
「はっ! ただの食いしん坊ね……それで、アンタ名前は?」
「僕の名前か? 僕は華扇だ」
「華扇? うーん、何処かで聞いた事がある名前だわ……何だっけ?」
 首を傾げ、顎に人差し指を当てる少女に対し、自分は『忘れとけよ?』と思う。
 そして自分と少女は前に進む──

「あっ」
 少女はそう言って、虚空を見つめながら自分の方を振り向いた。
「そう言えば、アンタ、名前は華扇、と言ったわよね?」
「えっ? あぁ、まぁそうだな」
「逆に私、アンタに名を名乗ったっけ?」
「いや、一回も名乗っていないね?」
 自分がそう言うと、『あちゃー、忘れてたかぁ』と言って、少女が名を名乗る。
「忘れていたのなら名乗ろうか、私の名前は姫海棠 はたて(ひめかいどう ──)、鴉天狗よ」
「へぇ……姫海棠『はやて』、ね」
「違うわよ、私の名前は姫海棠『はたて』!」
「成程、姫海棠『はやせ』か」
「……姫海棠! 『はたて』!」
「分かった分かった、姫海棠『ほたて』」
「貝類じゃないわよ! ……はぁ、もう姫海棠で良いわ」
「冗談だよはたて」
 自分はそう言って、口の端を歪ませる、するとはたては自分の方に向いて、胸倉を掴んだ後、自分を近くの壁にぶつけた後、自分の股に足を突っ込んで、動きを制止させる。
「……あまり、天狗を舐めない様に?」
「舐めていないさ、ちょっとばかしのお巫山戯さ?」
「あぁっ?」
 ドスが聞いた声で言うはたてに対し、自分は飄々に言う。
「おいおい? たかが人間のガキに対して、イライラしているのかぁ?」
「……チッ、こんのクソガキ……!」
 舌打ちをして、はたては自分の胸倉から手を離し、足も離す、そして歩き始める。
「さっさと付いてこい!」
「……はいはい、ついて行きますよ、さーせんした」
 自分は後頭部に手を組んで、のんびりと歩き始める──さぁ、一体何処に到着するのか、自分には分からない──

 そしてのんびり歩いて数分が経過した、自分ははたてに殴られるのかなぁ? と思いながら歩いていた、するとはたてが静かに自分に言う。
「そういやアンタ、『次世代の博麗の巫女』か?」
「…………」
 無言ではたての言う言葉を頭の中で復唱する、『次世代の博麗の巫女』って何なんだよ? ちっともさっぱり分からない言葉に対し、自分は静かに返答する。
「……あぁ、そうだ」
「成程、んで、あの博麗の巫女に幻想郷を見て回れ、とか言われたのか?」
「近いっちゃ近いね」
「あらそう? それなら……」
 はたては振り向いて、自分に犬歯を見せて発言する。
「『ちゃんと妖怪の怖さも見せないと』ねぇ……?」
 そう言って、謎の雰囲気を放出するはたてに対し、自分は静かにはたてに返答する。
「……それは」
「?」
「その『妖怪の怖さ』ってのは『吸血鬼より怖い』のか?」
「そ、そうねぇ……別に吸血鬼よりかは怖くないわ、逆に吸血鬼の方が怖いわね」
「……そうか」
 自分ははたての発言を受け、静かに安堵した、流石にレミリア、フランドールより怖い妖怪が居てたまるか、自分はそう思いながらはたてに言う。
「そうか、それなら、大丈夫だ、僕は安心した」
「は、はぁ? もしかしてアンタ、吸血鬼と戦った、なんて言わないでしょうねぇ?」
 そう言って、腰に手を当て、上半身を自分の方に曲げて近づけさせるはたてに対し、自分は両手を前にして両手を振る。
「ばっ、バカな事は言うなよ!? 僕だって吸血鬼とは直接戦った事はないよ! 戦うにしてももっと仲間が必要さ!」
「は、はぁ? 何で戦う話になるのよ? ……まぁ、良いわ、さっさとご飯を食べましょう?」
「あ、あぁ、そうだね……何か白熱しちゃったなぁ?」
 自分はそう言って、頬を掻く、全く、何で自分は要らない所で熱くなってしまうのだろうか? 自分はそんな事を考えながら、息を漏らした。

 そしてのんびり歩いていると、目の前に大きな建物が見えた、更に出入り口には黒い翼が生えた存在が建物の中に吸収されていく。
「うわぁ……何だこのでっかい建物……紅魔館よりでけぇ」
「そりゃでっかいわよ、何せ此処はアンタと私が目指していた『ご飯処』よ? ってか、天狗って、案外体が大きいのばっかなの、だから必然的に建物も大きくなるのよ」
 そう言うはたてに対し、自分は静かに納得する、ふぅん? 文やはたてよりも大きい天狗、ねぇ……そんなの見た事がないけれどなぁ? でも、はたての言う言葉だ、自分ではまだ見た事がないので、信憑性は薄いんだよなぁ、自分はそう思いながら、目の前の建物を見つめる。
「さぁ、さっさと入るわよ? さっさと入らなかったら、ご飯も食べれないんだから?」
「あっ? そうなの? それじゃあ、急いで入店しないと……」
 前を先に進むはたてに対し、自分ははたてを追いかける──さぁ、一体何を食べようかなぁ? 自分はそう思いながらはたての後ろにひっつく──

Re: 東方崩壊譚 ( No.87 )
日時: 2018/02/21 21:39
名前: 彩都 (ID: ???)  

「ほら、さっさと行くわよ」
「わ、分かったって!」
 自分が先に進むはたてを追いかけると、横から来た人と自分はぶつかって、お互い倒れた。
「いたっ」
「ひゃっ!?」
「あ、アンタ何をしているの……? 大丈夫?」
 はたてがそう言って、自分にぶつかった人に手を差し伸ばして、立ち上がらせる、自分は自らの力で立ち上がって、ぶつかった相手を確認する。
 するとぶつかった相手は昨日、文と自分を『妖怪の山』に入れさせようとしなかったあの白狼天狗だった。
「あっ」
「あっ」
 お互いそう言って、驚いた顔でお互いを見つめる、するとはたてが静かに言葉を発す。
「ど、どうしたのよアンタ達?」
「ひ、姫海棠さん!? こ、こいつ……人間の分際でこの天狗の、『妖怪の山』に進入したんですよ!?」
「そりゃそうじゃない、だって博麗の巫女なんだし?」
「そ、そう言う問題じゃなくて……」
 はたてに何を言っても聞かないので、呆れる白狼天狗に対し、自分は静かに言う。
「だから博麗の巫女じゃないって……」
「じゃあ、貴様は何の為に此処に来たんだ!?」
「何の為って……体を売る為?」
 自分がそう言うと、白狼天狗とはたてが驚愕する。
「体を売る為!?」
「あ、アンタ巫女なのに何売女みたいな事を……」
「うーん、巫女じゃない、と何度言えば……」
 自分はその場で溜息を吐いて、店の中に先に入ろうとする。
「それじゃあ、はたて、僕はお腹が減ったから、先に入るよ?」
「あっ、ちょっと……」
 自分の事を追いかけるはたてに対し、白狼天狗は怒りを露わにして、自分に言う。
「お前……私を無視するなぁ! 人間の癖にこんな所来るんじゃねぇ!」
 白狼天狗は怒鳴って、両手の人差し指の先から弾幕を発射する、背を向けていた自分は、振り向いて、弾幕の量を確認し、右手の能力を発動させる。
「人が腹減って、飯を食べたいのに、何で自分を攻撃するかねぇ? せめて、能力を使う場合は飯を食べた後の運動にしてほしいなぁ……」
 自分はそう言って、白狼天狗が放った弾幕を能力を発動した右手で触れて、『弾幕を目の前から消滅させ、『元に戻』し』た、『目の前の弾幕が消えた』事にはたて、白狼天狗、店の中の店員、他の客が呆然と自分を見る、そして自分は右手を四方八方、右往左往、上下斜めに動かして、白狼天狗が放った弾幕を『全て目の前から消し、『元に戻』し』た、すると白狼天狗が驚愕しながら、その場で膝を突き、自分に言う。
「あ、アンタ……何よそれ……? 何よそれぇぇぇ!?」
 両手を蟀谷(こめかみ)に当てながら叫ぶ白狼天狗に対して、自分は静かに言う。
「……その前に店の中の自分に向かって弾幕を放つなよ? もしも僕が能力を発動せず、避けたらどうなっていたか?」
「そ、そんなの関係ないじゃない! あ、アンタ……博麗の巫女よねぇ!? だったら……だったらその『能力』は『何なの』よぉぉぉ!?」
「…………」
 自分はその場で呆れながら、白狼天狗に近づいて、頭を掴んで白狼天狗に言う。
「……はぁ、分かったよ、言えばいいんだろ? 僕は華扇、博麗神社に現れた『外来人』だ、そして『右手で触れた大体のモノを『元に戻す』能力』の持ち主だ! 分かったか!?」
 自分がそう言うと、『あー!!』と大声で口を手で隠すはたて、そしてはたては大声で自分を指指して言う。
「あ、アンタが『あの』幻想入りの人間か! まさかアンタだったとは……」
「えっ? はたて、僕の事を知っているのか?」
「し、知っているも何も……あの『レミリア・スカーレット、フランドール・スカーレットの両名の吸血鬼を倒した』って噂の!」
 …………はぁ? お前は何を言っているんだ……? た、確かに倒した、というより、『触れた』と言った方が正しいんだが……自分はそう思いながら、頬を掻く。
「うーん、少し語弊はあるけれど、一応、『大まかに区分すれば合っている』な……でも、倒した、のではなく、『触れた』が正解だ」
「そんなの関係ないわよ! まず、『あの吸血鬼姉妹を倒した』って所が凄いのに!」
「あっ、はい、そうですか……」
 自分ははたての発言を受け、もう面倒だ、と思いながら返答する、すると周りの客の天狗が自分に近づいて、手を差し出す。
「おぉー! アンタがあの人間かぁ! 記念に握手してくれぇ!」
「俺も俺もぉ!」
「僕も握手しーたーいー!」
「ねぇ、君? 私にも握手してくれるかしらぁ?」
「え、えと……何だこの集まりは……?」
 自分が呆れていると、はたてが腕を組んで言う。
「そりゃアンタ、『吸血鬼姉妹を倒した』って事で有名なんだよ? そりゃ、こんなに集まるだろうさ? もしもアンタが『吸血鬼姉妹を倒していなかった』ら、こんなに集まらないんだけどなぁ?」
「えぇっ……?」
 自分ははたての発言を受けて、涙目になる、まさかレミリアとフランドールを『言葉の綾』だが、倒したってだけで、こんなに集まるのか……? それ程迄に吸血鬼、レミリアとフランドールは強いって事か? 自分はそう思いながら頬を掻く。
 そして自分は握手をせがむ大量の天狗、白狼天狗に押し潰されそうになる、だ、誰か助けて……? 心の中でそう思っても、はたても誰も助けてくれないのは事実だった──自分は何時になったらご飯を、朝御飯を食べる事が出来るだろうか? それは握手を終えないと分からない……?

Re: 東方崩壊譚 ( No.88 )
日時: 2018/02/28 21:50
名前: 彩都 (ID: ???)  

「うぅっ……た、大変だった……」
 自分は目を回しながら、何とか人混みを脱出した、すると宙に浮いていたはたてが笑う。
「アハハ、お疲れ様ぁ」
「てめぇ……一人だけ逃げやがって……」
「んー? 逃げてなんかいないわよ? 私は人混みの邪魔にならないように浮いていただけだしぃ?」
 そう言うはたてにイライラを募らせる自分、すると、自分の事を睨む白狼天狗を見つけた。
「……アンタ、まだ僕に喧嘩と弾幕をふっかける気か?」
「そ、それがどうかしたか?」
「いい加減にしろよ? お前と僕とじゃ、ある程度差は離れているんだ、だから戦っても僕が勝つ、君がどれだけ攻撃しても、右手の能力で『痛みを『元に戻』せ』ば、無限に攻撃する羽目になり、君が疲れるだけだから?」
 自分がそう言って、店員の方へ向かう、白狼天狗は『畜生!』と叫びながら、自分の背を見つめた──

「えーと、これ下さい」
 自分は店員に文から貰ったチケットを渡す、店員は『分かりやしたぁ!』と言って、チケットを受け取る。
「よし、これで朝御飯が食べられる……」
 自分はそう言って、その場で安堵し、料理が完成するのを待機する。
 すると店内に入って食券を購入し、店員に渡した後、自分の隣にはたてが来て、自分に話しかける。
「まさか……貴女があの幻想入りした人間だったとはねぇ……もっと早く言いなさいよ?」
「はぁ? 何でさ? 何で僕は貴女に言わないといけないんだ?」
 自分が目を細め、横目ではたてを確認すると、はたては鼻息を荒くして、何処からか文と似たような形の紙を見せる。
「実は私、新聞記者なの、『花果子念報』って新聞の、ね? だから取材させてちょうだい! 勿論取材料は弾むわ! だから私に取材をさせてぇ!」
 ……何だ、文と一緒の存在か、まぁ、自分に取材をしないだけまだマシ、あっちはあっちで新聞を売る為に自分の体を利用しようとしている悪魔天狗だが……自分はそう思いながら、首を横に振った。
「無理だ、僕はもう他の人に取材された、だから今から僕の事を新聞に書いても無駄だ、新鮮味がないと思うよ?」
「な、何ですって!? それはどう言う事!? だってまだ貴女に対しての記事は書かれていない筈……! 体の隅から隅迄書きたいのに! 貴女が隠している情報、全て書き明かしたいのに!」
 ぷんすかぷんすか鼻息を荒くするはたてに対し、自分は仕方なく、文の名前を出す事にした。
「もう書かれたよ、一人の烏天狗、射命丸文に、ね?」
 自分がそう言うと、はたては『文に!?』と、大声で叫んだ、大声を出した影響で自分は少し前後に揺れた。
「えっ? 嘘でしょ!? 貴女……もう文に記事を書かれたというの!?」
「う、うん……一応はね……でも『幻想郷に新たな幻想入り!』っていう小さな記事にしてもらったけどね……僕はあまり目立ちたくないし……」
 自分の発言を聞いて、はたては『くぅぅ……またしても先にネタを盗られたぁ……!』と小さな声をひりだすはたて、自分はそんなはたてに対し、料理が運ばれてくる迄時間があるので、質問を受ける事にした。
「……はぁ、あぁもう分かったよ! 料理が運ばれてくる間だけ質問を受け付ける! それでいいだろう!?」
「えっ!? いいの! 有難う! それじゃあ、一つ目の質問! 『貴女の名前は何ですか!?』」
「まずそこからかぁ!?」
 はたての質問に対し、自分はツッコミを入れてしまう、するとはたてが言う。
「そりゃそうじゃない! 私は此処に来る道中自己紹介したもん! 『姫海棠はたて』って! でも貴女は一つたりとも言っていないじゃない! 名前を! だから名前を教えて下さい!」
 そう言うはたてに対して、自分は肩を落とし、頭を垂れさせ、名を名乗る。
「えーと……僕の名前は──」
 そう言った瞬間、厨房の店員が『博麗の巫女さぁん! 料理が出来ましたぁ!』と言って、お盆の上に乗った料理を置く、自分はそんな様子を見ながら、料理を受け取って、『有難うございますぅ』と、可愛い声を出して、厨房の店員に頭を下げて、はたてに言う。
「……料理来たから、質問は終了ね?」
「それは反則よぉぉぉ!?」
 自分の発言を受けて、はたてが叫ぶ、で、でも、一応は『料理が運ばれてくる迄質問を受け付ける』って言ったからなぁ……するとはたてが『はっ!』と閃いて、自分に指を指して反論する。
「待った! 貴女はまだ質問を受け付ける事が出来る!」
「はぁ? 何言ってんだよアンタ? 僕は最初に言ったぞ? 『料理が運ばれてくる間だけ質問を受け付ける』、と……」
「そう! でも貴女は『料理が運ばれてくる間だけ質問を受け付ける』としか言っていない!」
「えっ? ま、まぁ、そうだけど……な、何が言いたいんだ?」
 自分がそう言うと、はたては目を細めて自分に指を指す。
「『料理が運ばれてくる間だけ質問を受け付ける』とは言ったが、『貴女の料理が運ばれてくる間だけ』とは言っていない! この解釈は『私の料理が運ばれてくる間だけ』とも解釈出来る!!」
「なっ……!? そんな解釈は酷いよ! 普通は『僕の料理が運ばれてくる間だけ』って解釈だろ!?」
「黙れ! 言い出しっぺの癖に! 言い出しっぺなんだから折れろ!」
「は、はぁ……?」
 自分はそう言って、溜息を吐いた後、空いた机に目をやり、料理が乗ったお盆を置いて、再度溜息を吐く、そしてはたてに言う。
「あーもう、分かったよ、君の料理が運ばれてくる間だけ質問を受け入れよう……」
 自分は仕方なく、はたての質問に付き合う事にした──

Re: 東方崩壊譚 ( No.89 )
日時: 2018/02/28 21:50
名前: 彩都 (ID: ???)  

「それじゃあ、一つ目の質問、『貴女の名前は何ですか?』」
 そう言って、はたては、メモ帳のような物を取り出し、ペンも取り出す
、自分は仕方ないので、回答する事にした。
「……華扇(かおう)、たった三文字だ」
「成程、それじゃあ、漢字は?」
「漢字? 漢字は書けないから無理」
「えっ? それじゃあ何で自分の名前を知っているのよ?」
「えーと、紫、八雲紫が教えてくれた」
 自分が少し悩みながら説明すると、『八雲紫!?』と大声で叫ぶ、一体何なんだ? 自分はそう思いながらはたてに言う。
「な、何……? そんなに大声になる事?」
「そ、そりゃそうじゃない! 八雲紫ってこの『幻想郷の賢者』なのよ! それを呼び捨てだなんて……!」
「そ、そこなのか……」
 自分はそう呟いて、息を吐く、中々に面倒な質問責めだ。
「成程ねぇ、アンタの名前の制作者は八雲紫っと……それじゃあ二つ目の質問、『貴女の『程度の能力』は何ですか?』」
「……『程度の能力』……?」
 自分がそう言うと、はたてが説明する。
「そう、私達は『程度の能力』を使用して生活しているの、博麗の巫女なら『空を飛ぶ程度の能力』、とかね? 私の場合、『念写をする程度の能力』だけど……ってか、アンタ、右手で弾幕を消していたじゃない、『弾幕を消す程度の能力』って事?」
「いや、違うけど」
 自分ははたてに『程度の能力』の説明を受けた後、はたての発言に即座に否定する。
「違うの? それじゃあ、どんな『程度の能力』なのよ?」
「い、いや、『程度の能力』という枠に当てはまらないんだけど……僕の能力は『元に戻す』能力、右手で触れたが最後、『元に戻す』事が出来る不思議な能力さ」
「……へぇ、少し面白い能力ね? って、少し前に言っていた気がするわね、それで? 今迄『どんなモノ』を『右手で戻してきた』の?」
「ん? そうだなぁ、魔理沙の『マスタースパーク』とやら、他にはフランドール、レミリアの暴走とか……?」
「えっ? どういう事? あの吸血鬼姉妹がまた暴れたって事?」
「ま、まぁ、そう言う事になるのかな?」
 はたての発言に返答する自分、するとはたてが自分に小声で近づいてきた。
「それでそれで? その『元に戻す』能力に弱点ってあるの? 流石に記事にはしないからさぁ?」
「…………」
 自分ははたての発言に無言になる、会って数時間の相手に能力の説明をしてもいいのか……? まぁ、見た目だけでは悪そうにも見えないし、一応、ちょっとした弱点でも教えるか、自分はそう思い、はたてに返答する。
「……大まかに言えば、『死んだモノ』は『元に戻す』事は出来ないね、『死んだモノ』と言っても、『生命を絶たれた』モノ、『生命を絶たされた』モノ、『自殺をした』モノ、『精神的に死んだ』モノ、『概念として死んだ』モノとかも含まれるかもしれない、色々と解釈は自由だけど……前に人喰妖怪に食べられ、死んだ人に触れて、能力を使用したけど、生き返らなかったね、だからこの能力は基本的に『暴れたモノを正常に戻』したり、『弾幕を元に戻』したり、っていう使い方しかしないね」
 自分の説明を受けて、はたては『へぇ』みたいな表情をしていた。
「中々に面白い内容ねぇ、少し哲学っぽく感じたわ」
「へぇ、そうかい、それは嬉しいね」
 自分はそう言って、椅子に座って、溜息を吐く、そしてはたてに言う。
「それで? まだ話を続けるのか? ……いや、質問か」
 自分の発言を聞いて、はたてがハッ! とする。
「あっ! わ、忘れてた……それじゃあ、三つ目の質問! 『好きな男性のタイプは何ですか!?』」
「……はぁ、男性? 何を言っているんだ? 僕が男性を好きになるとでも?」
「へっ? てっきり、おませさんな博麗の巫女だと思ったんだけど……違った? まだ男には興味ない?」
 そう言うはたてに対し、自分は静かに言う。
「ひ、一つだけ質問するよ?」
「えぇ、いいわよ?」
「僕の事、性別はどっちとして見ている?」
「へっ? そんなの簡単じゃない、『女の子』でしょ? 博麗の巫女の格好をしているしさぁ?」
「…………」
 成程、はたて、君は『僕の事を女だと見ていた』って事か……自分はそう思いながら、その場で溜息を吐いて、はたてに正体を明かす。
「はたて、ごめんね? 僕は華扇、性別は『男』だ」
「……えっ?」
 驚いた表情で自分を見つめるはたて、すると厨房の奥の店員が、『料理出来ましたー!』と叫ぶ。
「えっ……? アンタ、男なの?」
「うん、れっきとした男ですよ? 博麗の巫女の格好の理由は『服がない』からです、だって博麗神社って女子ばっかの神社らしいしさ? 無いみたいなんだよ、神主の服装ってのが……」
「ま、マジ……?」
 焦るはたては自分から離れ、厨房の店員から料理を受け取って、自分の前に料理を置いて食べ始めるが、口の前で箸を離してしまい、料理を食べる事が出来なかった。
 そ、そこ迄衝撃なのか……? 自分はそう思いながら、腹が減ったので、椅子に座って、料理を食べる事を考える、自分は『いただきます』をして、料理を食べ始める──
 そして自分はご飯を食べて、ご飯を食べた後に文の部屋へと戻る──も、もう、起きている……よなぁ……? いや、起きていてくれ──

Re: 東方崩壊譚 ( No.90 )
日時: 2018/03/07 21:34
名前: 彩都 (ID: ???)  

東方崩壊譚(とうほうほうかいたん) 第五章 第五話 体で支払う天狗世界

CHAPTER 3 暴風少女

 僕は料理を食べ終わった後、お皿を流し台に置いて、店を出ようとする、するとはたてが『待って!』と言うので、店の出入り口で立ち止まる。
「……何だよはたて?」
「ちょ、ちょっと待ちなさいよ……も、もう少し取材を……質問を……」
「無理、僕だって忙しいんだ」
「だ、だからって……!」
「無理なモノは無理、まずは文の所に向かわなくては、はたての事はその次だ」
「文、ですって……?」
 自分が文の事を言うと、はたては自分を睨みながら言う。
「アンタ……文に何をされたの?」
「えっ? いや、文には何もされていないけど……」
「嘘おっしゃい! 博麗の巫女を誘拐するって事は『それ程迄にヤバい状況に陥っている』って事よ! 絶対アンタ、何かされたわね? 話しなさい? 私が手伝ってあげるから」
「い、いや、手伝わなくても良いよ……? 元はといえば、自分が悪いんだし……」
「いいえ! 流石にそれは可笑しいわ! こんな幼い少女……じゃなかった、少年を誘拐するだなんて! よし! 華扇と言ったわね!? 手伝ってあげるから文の場所に案内して!」
「え、えぇっ……? 何か面倒な事になったなぁ……」
 自分はそう言いながら、はたてに文の住居を教える事にした──まぁ、自分も文の所に向かうから、一緒に向かうんだけど──

「それでねぇ? 私は誘拐された文を助けたって訳よぉ!」
「へ、へぇ……そうなんですか……」
 歩きながら、自分ははたての口から発せられる文の過去をぺらぺらと喋る、実際はどうかは分からないが、こう言うのは『凄いッスねぇ!』とか、『カッコいいッス!』とか言っておけば、相手は煽(おだ)てられ、いい気分になるから、案外楽だ。
「それでねそれでね! 文はどう言ったと思う!? 泣きながら、『有難うございますぅ、姫海棠様ぁ!』って! いやぁ、あん時は面白かったわ
ぁ! 『文の鼻を挫いてやったわ!』って!」
「へぇ、それは凄いッスねぇ」
「でしょー! それで一躍私は有名人の仲間入りよ! 更に文から『姫海棠さん! はたてさん!』だなんて言われて、嬉しかったわぁ!」
「へぇ、それはカッコいいッスねぇ」
「でしょー! いやぁ……あん時が自分にとって、人生で一番輝いていた時なのかなぁ……と思うと……何だか悲しくなる……」
 ……んっ? 何? 何なのこの空気? あれっ? 最初は凄い話だったけど、今になって急に暗い話に転向? 何で? 何があった? はたての過去に何があった!? 自分はそう思いながら、はたてを確認し、冷や汗を流す、はたては頭を垂れて、暗い雰囲気を醸し出していた。
「あーあ……何であぁなっちゃったんだろうなぁ……あーあ……」
「え、えーと……はたてさん? 差し支えなければ、その話を聞かせていただけません──」
 自分がそう言うと、はたてが『ねぇねぇ』と言って、自分の発言を斬る。
「は、はい? 何でしょうか?」
 自分がそう言うと、はたては建物の一室を指指して、自分に言う。
「ねぇ、あそこが、文の家でしょう?」
「えっ……?」
 はたての指の方向を見る、するとそこは文の家だった、と、という事はもう文の家の真近くに来ていた、という事か……自分はそう判断して、文の家迄階段を上る。
 自分が階段を上っていると、踊り場から宙に浮くはたてから声が発せられる。
「ねぇ、博麗の巫女なんだから、宙に浮けばぁ?」
「えっ……?」
 自分は目の前の光景に目を疑った、えっ……? はたてが……宙に浮いている……? 自分はそう思いながら、はたてに言う。
「え、えーと……何で……宙に浮けるの……?」
「えっ? そんなの簡単じゃない、私は鴉天狗だから、天狗が宙に浮けないとか、笑えるじゃない?」
 そ、そうか……鴉天狗だから、宙に浮けるのか……自分ははたての発言を受けて、最初に出会った時の事を理解した、あぁ、だから宙に浮いていたのか、と。
「ってか、『貴男』、一応博麗の巫女よね? 男だけど? 宙に浮けないの?」
「えっ? あぁー……うん、宙に浮けないね、まず、宙の浮き方さえ知らないのに……」
「あら? まだ習っていなかったの? あの外来人である東風谷早苗でさえ浮ける、というのに……」
「そ、そうなんだ……」
 自分ははたての発言に適当に返答する、うるせぇなぁ、浮きたいって衝動が起きねぇっての。
「でも、階段で移動するのって大変じゃない? だから私がアンタの体を掴んで、移動しても良いけど?」
「い、いや、僕は良いよ、階段でも動けるし」
「でも、私が待たないといけないじゃない?」
「仕方ないじゃん? 人間なんだし僕は? 君みたいに宙に浮けないし、そこ迄万能じゃない」
「い、いや、それはそうなんだけど……あぁ、もうじれったい! 良いから私に抱き締められなさい!!」
「えっ? えぇっ!?」
 踊り場に侵入し、自分の胴体を掴むはたて、そして自分の胴体を掴んだまま、はたては踊り場を出て、上昇する、そして何時の間にか文の家の前迄移動していた。
 は、早いなぁ……自分はそう思いながら、踊り場から侵入し、床に足をつけられる、そして自分は文の家の玄関を開けて、文の家の中に入る──文、もう起きているかなぁ……?

Re: 東方崩壊譚 ( No.91 )
日時: 2018/03/14 21:12
名前: 彩都 (ID: AtgNBmF5)  

 そして文の家の中に入って、自分は靴を脱ぎ、ゆっくりと侵入していく、勿論はたても靴を脱いで、文の家の中に侵入する。
 ぜ、全然寝息が聞こえない……という事は起きているのかなぁ? と判断する自分、そして文が寝ている場所に到着し、文を確認する、すると『文は布団の中でまだ寝て』いた。
「…………」
「…………」
 さっさと起きろよこの野郎……! 自分がそう思いながら、怒りを露わにすると、『うぅーん……』と言って、文が寝返りを打った。
 これで起きるだろう、自分はそう思いながら、文を見つめる、するとはたてが自分に小声で言う。
「ね、ねぇ、文、起きてるの?」
「さ、さぁ? まだ起きていないんじゃあ……?」
 自分とはたてがそんな会話をすると、文が自分達の会話に気付いて、声を出した。
「誰ですかぁ……?」
 文は寝起きの声でそう言う、あっ、やっと起きた、自分がそう思って、安堵した、はたても『やっと起きたか』と呟いて、腕を組んで安堵する。
 そして文が布団の中で体をもぞもぞと動かしながら、起き上がった。
「おはよう、文……!?」
「えぇ、お早うございます、華扇くん……」
 文が起き上がって、自分を見た、その時、自分ははっきりと確認出来た、『文の瞳が赤かった』事を……!
「あ、文……!?」
 文の瞳が赤い事を確認しながら、自分は静かに息を吐く、そして文に不思議そうに言う。
「あ、文……そう言えば……君の目は『充血していた』かなぁ?」
「……えぇっ? いきなり何の事なんですかぁ……?」
 眠たそうに自分に返答する文、文は近くの鏡を確認して、自身の目を確認する、すると『あっか!?』と叫んだ。
「か、華扇くん!? 何なんですかこの赤い目は!? って、はたて!? ど、どうして此処に……!?」
「えっ? あ、あぁ……この華扇ってのを運んだから──」
 はたてが言うも、文が左手で玄関を指指しながら呟く。
「はたて、まさか華扇くんを記事にする為に……許しません!!」
 文の発言を聞いた自分、はたては『何時の間にか外に飛ばされて』いた、そしてゆっくり、否、『高速で自分の体は落ちて』いく。
「!? !? !?」
 不思議に思って、自分は下を確認する、下は『地面』である! も、もしもこんな高い所から落ちたら……諏訪子、神奈子の時より酷い事になるぞ!? 気絶……だけじゃ物足りないだろう! 自分はそう思いながら『どうする!? どうする!?』と、考えていた、すると急に『落ちるスピードが遅くなった』、否、『落下が停止』したのだ、ど、どうして落下が止まったんだ……!? そう思っていると、聞き慣れた声が聞こえた。
「うー……落ちているのを掴むのは結構体力がいるわねぇ……!」
 聞き慣れた声、それははたてだった、そしてはたては自分を地面に置いて、安堵する。
「はぁはぁ……まさか案外速攻でバレるとは……流石文、凄いわね……」
「違う違う! あれは色々な意味で違う!」
 叫ぶ自分に対し、はたてが首を傾げる。
「はぁ? どう言う事なの? 説明がないから分からないわ」
「え、えーと……大まかに言えば、『文は操られている』、もしくは『暴走している』んだよ! レミリア・スカーレット、フランドール・スカーレットの時と一緒だ! 僕が戦って理解している!」
「そ、そうなの……? でも、どうして文は暴走とかしているの?」
「知るかよ!? そんなの……『文に何かをした存在』に聞かないといけない! ってか、もしも文以外に被害があるのなら……『この幻想郷に異変が起きた』って事になるんだよ! 今はまだ、レミリア、フランドール、ルーミア、アリス、文だけれど、これ以上被害が増えるのなら、『異変』になるかもしれない……!」
 自分がそう言うと、はたては目を輝かせて自分に言う。
「それならスクープね! 最高じゃない! さぁ、華扇、さっさと倒しちゃいましょう!」
「バカ! 逆に君が文みたいになるかもしれないんだぞ!?」
 自分がそう言うと、はたては『マジで!?』みたいな表情をしていた。
「うっそぉ? それなら記事にならないじゃぁん?」
「記事になるならないの問題じゃないんだけどね!?」
「そうなんですか、『私を倒したら華扇くんの記事と共に私の暴走した記事が出てしまう』のですか、それなら、『阻止しないといけませんね』ぇ?」
「!?」
「!?」
 不意に聞こえた声、その声の方に振り向くと、『何時もの格好の文』が自分達を上から見ていた、嘘だろ!? 自分とはたての会話は『文を着替えさせて、自分達の後ろで待機させてしまう程の時間を作っていた』って事か!? 自分がそう思っていると、文は自分の頭、はたての頭を片手で掴んで自分とはたてを睨む。
「ふむ、私の今を記事にされるのは困りますねぇ……」
 そう呟く文に対し、自分は頭の痛みを抱えながら『チャンスだ!』と思う。
「文、君は間違いを犯した、まず一つ目は『僕の頭を掴んだ』事だ、二つ目は『君が僕の頭を掴んだが故に僕の能力が容易に発動出来る事』だぁぁぁ!!」
 自分はそう言って、右手で能力を発動し、文の腕に触ろうとした、だが
自分が文の腕に触れる前に文は自分ごと横に投げて、自身の腕から自分を『離した』のだ。
 まさか、そういう回避をするとは……自分は鈍痛を受ける体を動かそうとせず、痛みを引くのを待った──

Re: 東方崩壊譚 ( No.92 )
日時: 2018/03/21 21:40
名前: 彩都 (ID: gKP4noKB)  

 ……痛い、自分はそう思いながら、はたての頭を掴む文を確認する。
 一体どう能力を発動しようか? まず、正攻法じゃ無理だ、あの素早い行動で避けられる、じゃあ文に抱き締めて能力を発動? でも、文は天狗、妖怪だ、僕みたいな存在とは違い、『力が強い』、だから逆に『胴体を抱き締められて、内蔵ごとぶっ壊しそう』だ。
 なので『自分の考え』じゃあ、文に触れて能力を発動する事は不可能! だからはたての力を借りたい! だが、今のこの状況で、はたてに力を借りる等そもそもが出来ない。
 自分はそう考えながら、気絶しているように思わせる為に静かに呼吸をする。
「……はたて? 華扇くんと私の事、記事にしないで下さいね?」
「な、何でよ……わ、私は文より先に情報を手に入れて記事にするわ!」
「だから止めて下さいって? 私にもプライバシーがあるんですから?」
 そう言って文は自分とは逆方向にはたてを投げて、両手を身軽にした。
 そして文は静かに自分の方に向かってきて、自身の胸倉を掴む。
「……分かっているんですよ? 『起きている』事位?」
「!? ま、まさかバレていたとは……」
 自分はそう呟いて、右手で胸倉を掴んでいる手を掴む為に目を開けた。
 すると『自分の胸倉を掴んでいるのは文の手ではなかった』のだ。
 文は空中で右手を伸ばして、『掴んでいる振り』をしているだけだった。
「……!?」
「あら? 気付かなかったんですか? 私の能力は『風を操る程度の能力』ですよ? そして『貴方の能力は分かって』いる、だから貴方への能力の対処は『貴方の手が届かない範囲に存在すればいい』事……そう、『言葉通り、手が届かない場所』に!!」
「くっ……!」
 自分は怒りを露わにしながら、『風の手』を見つめる、何もない場所、空間なのに、『捕まれている感覚がする』というのは他人から見たら多少滑稽に感じるだろう、だが、今はそんな事、どうでも良い。
 その前にこの『風の手』をどう逃げるかが問題である、簡単に言ってしまえば、この『風の手』から自分は逃げる事が出来ない。
 だから、少しでもこの『風の手』の範囲内から『範囲外』に移動しなければならない。
 自分はそう考えながら、静かに息を吸い、文に言う。
「文……どうして、どうして僕を傷つけるの? だって昨日、あんなに自分を着せかえ人形にして楽しんでいたじゃないか……あの文は偽物なの?」
「…………」
 無言のまま文は自分を見つめ、『黙れ』と一言。
「お前には関係がない、それは『昨日の私』であって、『今の自分、今日の自分ではない』のです、だから『昨日の私』なんて忘れな──」
「忘れられないよ」
 文の言葉を切る自分、そして自分は静かに言葉を続ける。
「だって……『昨日の文』も、『今の文、今日の文』も、全部全部、『一つの文』じゃないか!? まるで、『昨日の私と今日の私は別人だ』って言っているようなもんじゃないか!」
「黙れ……黙れ黙れ! お前には関係がないだろう!? ……あぁ、段々と腹が立ってきた、はたてより貴方を先に殺害します、その方がいいでしょう」
「あ、文……じゃあ、さ、最後に一つだけ、最後に一つだけ、言ってもいいかなぁ……?」
 そう言う自分に対し、首を傾げる文、そして自分が静かに言葉を発す。
「文……昨日の君とは楽しかった、今迄の君とは楽しかった、でも、『今の君は、とてもつまらない』ね」
 冷酷に発言する自分に対し、文は目を細めた状態から一気に目を見開いた。
「何だその発言は? 逆にこっちが言いたい位ですね、それじゃあ、最期の言葉も終了した事でしょう? だから、私も最期の言葉を貴方にぶつけます、『さよ』」
 文の発言中に『背後から丸太を持ったはたてが、文の頭を丸太で薙いだ』、そして文は一気に横へと吹き飛んだ。
「はぁはぁ……文ぁ、なぁに、『私』の事を忘れているのぉ? 私だって、『此処に存在している』のよ!? 忘れられちゃあ困るわねぇ!?」
「あ、有難うはたて……あー、君が背後で丸太を探しているのを発見して、良い丸太を見つけるのに、結構な時間稼ぎをさせられたよ?」
「アハハ……でも、何とか間に合ったわね、まるで紙一重って奴ぅ?」
「多分そうかもしれないねぇ? でも……『文はどうなった』んだい?」
 自分は胸倉を確認しながら、はたてと会話をする、もう『風の手』はないな、と判断し、安心する。
 すると、遠くから、砂埃を舞わせながら、文が自分達の目の前に現れる。
「あー危なかったぁ? 急いで暴風を自分の方に向けたから大丈夫だったけど……少しだけ丸太の重みを経験しちゃったなぁ? はたて? この借りは絶対に返しますね?」
「いやぁ? 返さなくてもいいんだけどなぁ?」
 はたてはそう言って、不敵な笑みを浮かべる、そして自分が言う。
「文……今から君を救う、そこで静かに待ってろよ?」
「アハハ? 少年は面白い事を言うなぁ? 『待てと言われて待つアホは居ない』でしょう?」
 文はそう言って、その場で空中浮遊しながら自分とはたての方に向かってくる──はたては丸太を持って、構える、自分は眉間に皺を寄せながら、右手を前に出した──

Re: 東方崩壊譚 ( No.93 )
日時: 2018/03/28 21:51
名前: 彩都 (ID: YzSzOpCz)  

 自分達の方へ向かってくる文を見ながら、自分は静かに口の中の唾液を飲み込んだ。
 自分の隣には丸太を持ったはたてが居る、そして自分は『何を持っていない』、武器一つ、ない、あるのは衣類のみ。
 だから、『必然的に自分の方に向かってくるのは分かっていた』、そう『分かっていた、振りをしていた』だけだった。
『文は自分の方ではなく、はたての方に向かい、右手を伸ばし、はたての胸倉を掴んで』いた、更にはたては自分と同じように『風の手』に胸倉を捕まれて、身動きが取れなくなっていた、そしてはたては手の力を失い、両手から丸太を離した。
「これで貴方はもう私を攻撃する事は出来ませんよ……? 『風で貴方を掴んでいる以上、貴方は風の呪縛を解く以外で私の風から逃げる事は出来ない』ので」
「ぐっ……あぁっ……!」
 呻くはたてに対し、『自分は何も出来ないのか?』と考える、すると少し不思議な事を思った、それは『何で『風の手』で掴んでいるのに、片手を前に出している』のか? と言う事だった。
 普通『風の手』で掴んでいるのなら、『片手なんか前に出さなくても良い』筈なのに……どうしてだ? 自分はそう思いながら、首を傾げる。
 すると、『とある事』を思いつき、『まさか……』と考える。
 そして、自分は今さっき思いついた、『とある事』の実行に移った。
「ぐっ……うぉぉ!!」
 自分ははたてが落とした丸太を掴もうと腕で抱き締めるように丸太を持とうとするが、『あまりにも重過ぎて、持つ事が出来な』かった。
 くそっ……万事休すだ……自分がそう考えると、ふと、文が自分に話しかける。
「……どうしたんですか? 丸太を持とうとして?」
「んー? そんなの文には関係ないだろう?」
「……そうですか」
 文はそう言って、『左手を前に出して』自分の胸倉を『風の手』で掴んだ。
「これでお互いを捕捉しました、私は貴方達を傷つけたくない、だからはたては記事の消去をお願いします」
「は、はぁ!? ふ、巫山戯んじゃないわよ……! それは新聞記者として、絶対に行いたくない!」
「……そうですか、それでは、さっさと貴方を殺害しましょうか、殺害すれば貴方はもう『記事を書く事すら出来ない』ですし」
「そ、それだけは厭……!」
「死ぬか記事を消去するかのどちらかですよ?」
 そう発言する文を見て、自分はその場凌ぎで笑う。
「アハハ、アハハハハハハ!」
「……何が可笑しい、そこのガキ?」
「可笑しいって? そりゃそうだろ? あっ、もしかして、『自分で自分を追いつめている』って事、文は分からないのかなぁ?」
 自分はそう言って、胸倉を指指す、そして言葉を発言する。
「『文が『風の手』で僕を掴んだ』、それが丸太を持つ前に行おうとした行動なんだよ」
「は、はぁ……? な、何を言っているんですか? 貴方……?」
「そんなの簡単だろう? 『今、この状況から離れる方法』だよ?」
 自分はそう言って、はたてを見つめ、発言する。
「はたて! 新聞記者ならカメラを持っているだろ!?」
「えっ!? え、えぇ……一応は……」
「じゃあ、『文に一個、使える記事でもある』でしょ? それを一個渡してあげなよ?」
「は、はぁ!? な、何言ってんのアンタ!? アンタも文側に堕ちたの!?」
「おいおい? 僕はそう言っていないぞ? 『使える記事』って、『文本人が関わった記事でもいい』と言っているんだ、例えば……『文が不利になる記事』とかね!」
「えっ!? ……って、それを脅しに!?」
 はたての発言を受け、自分は静かに頷く。
「あぁ! そう! 文! 今、はたては『文が不利になる記事』を持っている! もしもこのままその記事を文字に、紙に移されたくなければ、僕とはたてを解放しろ! そうしたらはたては『文が不利になる記事』を消すって!」
 自分はそう言って、文の反応を見る、そして文が静かに言う。
「……フフフ、もしもそれが『脅し』だとしたら、『どんな記事』なんでしょうねぇ? 『私が不利になる記事』だなんて……中々ないですよぉ?」
「えっ? ないの? じゃあ、『昨日僕を襲った事』もないってか? 実は昨日、はたてと話をして、『文が僕を襲うか?』って記事を作ろうって話をしたんだ、そして君は僕を押し倒し、文が着ているその服を着させた……もしも『僕を脱がしている場面を『激写! 射命丸文、人里の幼子を襲う!!』みたいな記事』にして、新聞に載せたら……どうなるかなぁ?」
 自分がそう言うと、文とはたては驚いていた。
「なっ……!? 本当ですかはたて!?」
「い、いや! 私は知りませんけど!?」
「まぁ、知らないのも無理はない、だって、『はたてはお酒を飲んでいた』からねぇ? そりゃ昨日の事なんか、忘れているよねぇ……! と言う事で、もしもその記事が公にされたくないのなら、急いで僕達を解放しろ、いいか?」
「……くっ、それじゃあ……『はたてのカメラを壊せばいい』んです! そう、『はたて』ごと!!」
 文はそう言って、右手を上に上げ、手の平の上に大きな『風の球』を作り上げていく、はたてはその場で落ち、地面に着く。
「はたて! 今だ! 文のお腹に丸太を投げろ!!」
「えっ!? え、えぇ!」
 はたては頷いて、足下の丸太を投げる、文はその攻撃を察し、『甘いですよ! そんなもの、避ければいい!』と大声を荒げる。
「おいおい? 『それ』は無理だぜ? だって、『左手で自分を掴んでいる』からね? もしも避けるなら……『僕を離さないといけない』んだ! だから君が『僕の胸倉を掴んだ瞬間から勝負は決まっていた』んだ!」
「なっ……じゃあ、左手を離せばいい事!!」
 そう言う文に対し、自分は静かに返答する。
「無理だぜ文? こんな……『剛速球のような丸太を避ける』なんて、幾ら文でも不可能だ」
 自分の発言を受け、『く、くっそぉ……!』と言い、文の腹部に太い丸太がぶつかる。丸太の威力で吹き飛ぶ文、それと同時に自分も吹き飛ぶ。
 矢張り、『そうなっていた』か……よかった、自分の考えが当たっていて……途中で文は手を離し、自分は空中に放り出される、だが、自分を追っていたはたてに掴まれ、何とか地面に落下する事は防いだ──

Re: 東方崩壊譚 ( No.94 )
日時: 2018/03/28 21:52
名前: 彩都 (ID: YzSzOpCz)  

「何とか……終わった……」
 自分は左手を掴まれながら静かに発言する、そして静かに地面に頭部から落ちる文を見て、右手を見ながら呟く。
「……はぁ、能力、使用しないとなぁ──」

「……ん?」
 文はゆっくりと目を覚まし、起きあがる、すると腹部と頭を擦った。
「いたたた……って、どうしてこの格好に……? この格好は華扇くんに着せていた服なのに……」
 文がそう呟くと、はたてが『あんたねぇ』と呟く。
「全く……迷惑をかけて……私なら良いけれど、そもそも無関係である華扇にも迷惑をかけて……」
「迷惑? 迷惑ってどう言う事ですか? 華扇くん、少しばかり説明を下さいな?」
「えっ? 説明? 説明かぁ、大まかに言えば、『文、君は暴走していた』、ルーミアの時のようにね?」
「えっ……? それは本当ですか? 本当なんですか!?」
 驚く文に対し、お互い頷く、そして自分は静かに右手を見せて発言する。
「そして暴走した文を二人がかりで協力し、助けた、って事、おまけに
右手の能力を使う羽目になった」
「お、おぅ……それは申し訳ない……でも、何時暴走したんですかねぇ? 何処で暴走したか、分かります?」
「暴走……家の中だね」
「えっ? 家の中ですって!?」
 大声を出す文、そして文は一瞬で移動し、自分の部屋の前で大声で叫ぶ。
「あー!! こ、これは……何をしているんですか私はぁ!? ……記事を纏めた手帳もボロボロだぁ……」
「あーあ、大変だぁ、こりゃあ」
 自分がはたてに掴まれて、宙を浮くと、文が振り向いて、悪魔のような笑みを浮かべる、そして自分に言う。
「そう言えば、華扇くんの右手は『元に戻す』能力でしたよねぇ……? だから、その能力でこの手帳を直していただきたいのですが……?」
「……面倒だなぁ」
 自分はそう言って、文の手帳に右手で触れて能力を発動し、『元に戻』す。
「有難うございます! よし、それでは、私はご飯を食べに行きますかぁ……あぁ、チケットを渡したから、また一から、かぁ……」
 そう呟く文を見て、自分は『仕方ないよなぁ』と思う。
 そして文が食堂に走り去った──否、浮遊して、移動した──後、自分とはたては文の家の中に進入し、その場で座って、はたてが先に喋る。
「……それで? 『文に対して分かった事』、教えてくれる?」
「……そうだな、それじゃあ、『風の手』の話をしようか、あの『風の手』はね? 『風で自身の手を作り出しただけ』なんだよ」
 自分がそう言うと、はたては『いや、それは分かる』と言う。
「じゃあ、その次か? 簡単だ、『文が何故か片手を前に出していた』、だから自分は予測、予想した、『自分の手が行っている行動を『風の手』も行う』、と、だから『風の手』は『文の手を模倣しているのでは?』とね? そう判断したら、物の見事に正解だった、って事だ、それ以外に質問は?」
 自分が解説をして、はたてに聞く、するとはたては右手を挙げて、発言する。
「ねぇ、何で剛速球の丸太が文の腹部に当たった時、『風の手』とやらで掴まれたアンタも吹っ飛んだの? 色々と可笑しくない?」
「んー? 何処が可笑しいんだ? ……あぁ、そうか、はたては気づいていないんだ、『風の手』の使用範囲が」
「か、『風の手』の使用範囲? そ、それはどう言う事よ? まさか『風の手』に使用範囲があるとでも?」
「うん、あるに決まっている、多分だ、多分なんだけど、『風の手』の使用範囲は『軽く3メートルから5メートル以内』だと思う、まぁ、これは予想なんだけど……ってか、僕を掴んでいるんだから、一緒に吹き飛ぶんだよ、だって、『風の手』は『文の手を模倣している』からね?」
「……まぁ、よく分からないけど、そう言う事にしてあげる、それにしても、アンタの右手、結構便利ねぇ?」
 はたてはそう言って、自分の右手をにぎにぎと触って確認する、まるで猫の肉球を触るように。
「くすぐったいなぁ……まぁ、でも、文みたいな状況になった時、気絶させるか、僕のこの能力、『元に戻す』能力を使用するしかない、と予測、予想されている……まぁ、自分みたいな能力を持った存在が仲間になってくれたらそれはそれで良いし、文みたいな事をしている存在も見つかって、案外簡単に倒せたら、それもそれで十分かな? ……ってか、一体文達を暴走させているのは誰なんだろうね? 僕には分からない……」
 自分がそう言うと、はたても『私も知る訳ないでしょ?』と返答する。
「まぁ、それもそうなんだよなぁ……さぁ、後は文が帰ってきて、人里で新聞の契約をするだけかぁ……」
 自分はそう呟いて、その場で溜息を吐いた──中々に面倒、重々に面倒だ、自分はそんな事を思いながら、その場で姿勢を崩した──もしも文や、レミリア、フランドール、ルーミア、アリスみたいに暴走した存在がこれからももっと登場するのなら……『僕の右手だけで救える』だろうか……? いや、救えない訳がないだろう、何故ならそれは『僕の右手の能力、『元に戻す』能力が右手にずっと宿っている限り救える』からだ、もしも右手の能力が消えたら、自分は一体どうなってしまうんだろうか? まるで存在価値がなくなる感覚がして、怖い……でも、それは『何時かの未来』だろう、今はまだ、その時ではない気がする──さぁ、早く文が帰ってこないかなぁ? 自分はそう思いながら、虚空を見つめた──

 第五章 完

 第五話 完

 CHAPTER 3 終了

 第六章 第六話 CHAPTER 1 に続く──