二次創作小説(映像)※倉庫ログ
- Re: 【ポケモン】海空の守り人 ( No.15 )
- 日時: 2016/10/23 21:41
- 名前: あさひ ◆GU/3ByX.m. (ID: kKmRLwWa)
『ルカリオ はどうポケモン 相手の 発する 波動を キャッチすることで 考えや 動きを 読み取ることが できる』
とチカが図鑑に気を取られているすきに、ルカリオが街灯の上から飛び降りてきた。街灯の光で、ルカリオの首にあるペンダントがキラキラと光る。
地面に着地したルカリオは顔をしかめながら、右手を前に突き出した。すると人の頭程はあろう青い球が、チカとイーブイ目掛けて放たれる。イーブイはチカの肩から飛び降りることで回避し、チカは頭を伏せて何とか避けた。青い球はそのままチカの背後の地面にぶつりかり、派手な爆発音が響く。恐る恐るチカが後ろを向くと、地面には小さな穴があき、そこから茶色の煙が上がっていた。確実に何かの技、それも強い力を持った。
ポケモンには技と呼ばれる、不思議な力がある。例として炎や水、光線を吐いたり、自分の能力を上げるものがある。ポケモンたちは技をぶつけ合い、戦い——ポケモンバトルを行う。
「く、イーブイ。〈スピードスター〉」
負けていられないとチカはイーブイに指示を出す。イーブイは口から星型の光線を吐き出し、ルカリオを攻撃する。避けようとルカリオは一歩踏み出したところで顔を歪め、その場に膝をついた。そこへスピードスターが一斉にルカリオを襲う。が、ルカリオは何事もなかったかのように立ち上がる。スピードスターがきいていない。チカはポケモン図鑑のボタンを押し、ルカリオの詳細を見た。
(ルカリオのタイプははがねか、ノーマルの技じゃ大して効かないわね)
ポケモンたちには、タイプと呼ばれる属性がある。この属性には相性の良し悪しがあり、例えばイーブイのスピードスターはノーマルタイプの技。はがねタイプのルカリオとは相性が悪く、ダメージを与えにくい。
その証拠にイーブイは何度もスピードスターを放ち全てルカリオに命中しているが、ルカリオはぴんぴんしていた。逆に連続で技を放ったせいでイーブイの顔に疲労の色が強く出ていた。
そこへルカリオが例の青い球を叩き込もうとして——前から崩れた。ルカリオの身体はうつ伏せの体勢で地面に倒れてしまう。
「ルカリオ?」
警戒しながらも、チカはポケモン図鑑をウエストポーチにしまい、ルカリオの元へ駆け寄った。すると、ルカリオの左足がひどく腫れているのが目に飛び込んでくる。腫れた部分は、淡いオレンジ色を纏ったようになっていて炎を見ているようだった。——やけどだ。状態異常と言って、ポケモンに悪い効果をもたらすものの一つである。
攻撃してきたのは、痛みから暴れただけかもしれないと察したチカ。ならば放っておけないと行動する。
「やけどなおし、あった!」
チカはリュックを地面に降ろすと、中から緑色の容器に入ったスプレーを取り出す。やけどなおしと言って、ポケモンのやけど状態を回復させる薬である。やけどなおしを手にすると、ルカリオの元へ向かう。攻撃してくると思ったのか、ルカリオは視線だけをチカに向けて低い声で威嚇した。それに反応したイーブイがチカを庇うように前へ立ち、前傾姿勢をとる。
「イーブイ、止めてったら。ここで大人しくしてて」
このままだとルカリオを攻撃しそうなので、チカはイーブイの首根っこを掴んで持ち上げると強引に自分の左肩に置く。そして大人しくするよう、釘をさす。無理やり左肩に置かれたイーブイは不満たっぷりにチカを見たが、やがて観念したように視線を外す。
それを確認したチカは、ルカリオの敵意がこもった視線を正面から受け止めた。図鑑によると、ルカリオは波動とやらで人の気持ちを理解できるらしい。波動が何かは分からないが、ルカリオは人の気持ちを察する力がある。敵意がないことが伝わると信じ、チカはルカリオの赤い瞳をしっかり見つめた。
「攻撃しておいてこんなこと言うのおかしいと思うけど、私は何もしない」
一歩、また一歩とチカはルカリオに歩み寄っていく。イーブイが不安そうにチカを見る。
やけどはポケモンの体力を著しく低下させる。そのせいかチカに敵意がないのを察したのかルカリオは脂汗の滲む顔で、チカを見上げるだけだった。先程まで動けたのが嘘のようだ。
「この薬、やけどなおしって言うの。使えば足の痛み、少しは楽になるわ。しみると思うけれど、少しの間よ。手当させて」
チカはしゃがみこんで、ルカリオにやけどなおしを見せる。そして、ルカリオを怖がらせないよう穏やかな声音で手当てさせて欲しい、とチカは頼み込んだ。助けたいと言うチカの気持ちが伝わったのか、ようやくルカリオの瞳から敵意が消えた。少し頷くと、やけどがある左足を持ち上げる。手当てに協力してくれるらしい。
チカはルカリオの左足の付け根部分を押さえると、やけどなおしを患部に噴射する。大きい傷でかなりしみるのだろう、ルカリオは悲鳴を上げた。
「ごめん、すぐ終わらせるから」
手早くやるのがルカリオのためだと思い、チカはやけどなおしを患部に再度かける。しみるはずだが、ルカリオは目をきつく閉じ痛みを堪えていた。やがてやけどなおしのボトルがなくなる頃には、ルカリオの足の腫れはひいていた。
ルカリオはすっと立ち上がり、元気に走ってみせる。やけどなおしが効いたらしい。
「あー待ってルカリオ。後、きずぐすりかけさせて。身体の傷にきくのよ。バトルのお詫びね」
今度はきずぐすり——紫のボトルに入った薬、こちらは戦いの傷などを治すもの、を手にしてチカはルカリオに近づく。ルカリオは大人しくきずぐすりをかけられ、やがて恭しく一礼してみせた。
『助かった。おかけで命拾いをした』
「え、これテレパシー?」
脳裏に直接話しかけられたような奇妙な感覚に、チカは戸惑う。ポケモンの中にはテレパシーと言って、脳裏に話しかけるようにして人の言葉で話すポケモンがいると学校で習ってはいた。が、体験するのは初めてなので驚いてしまう。
『ああ。私はこうしてテレパシーにて人に意志を伝える訓練を受けている。その、先程はいきなり攻撃してすまなかった』
ルカリオは深々と頭を下げ、謝罪してくる。
「やけどの痛みで見境なくなってたんでしょ? こっちこそ応戦してごめんなさいね」
「イーブ……」
肩のイーブイもすまなそうに鳴く。耳をしゅんと垂らし、頭を下げた。攻撃したことを反省しているらしい。
そんなチカとイーブイの気持ちが伝わったのか、ルカリオは安心したように顔を上げた。
『それもあるが、一番は……。そう、キミに頼みがあるのだが、聞いてもらえるか?』
「どうしたの?」
ルカリオの顔は真剣で、どこか焦っているように見えたチカ。ただならぬルカリオの様子を察知し、真顔となる。
『姫、いや私のトレーナーを救う手伝いをして欲しい』