二次創作小説(映像)※倉庫ログ
- Chapter00 〜ようこそ、絶望合宿〜 ( No.3 )
- 日時: 2016/09/23 01:29
- 名前: 紫苑 ◆VRhWN8LWD6 (ID: xRhmB4K7)
—————う、うぅ……。
——————頭が痛い……。
——————そもそもおれは何をしてるんだ?
——————そうだ、そうだよ。確か、自主練の後着替えようって更衣室の扉のドアノブに手をかけたんじゃないか。
——————でも、ドアを開こうとしたら急にめまいがして……。
——————身体が重い。けど、とりあえず起きなきゃ……。
やけに気だるい身体を起こしてみると、そこに広がっていたのは異様な光景だった。
教室には何故かおれだけがいる。いや、そもそもおれが教室にいることがおかしい。おれは確かにさっきまで体育館にいて、更衣室へ入ろうとしていたんだから。
とりあえず周りを見回してみる。……すると、早速『普通じゃない』ものを見つけた。
「なんだよこれ?!」
窓側の席の向こう。窓がなければならないその場所に、何故か鉄板が打ち付けられていた。明かりが赤色なのだろうか、教室も全体的に赤みがかかったように見える。
「……ここは、教室なのか?」
自分で口にし、改めて周りを確認する。確かにそこは教室であったが、やっぱり異様な雰囲気が漂っている。———なんというか、『夢の世界に来てしまった』ような、そんな感じが胸の中をざわついていた。
……ふと、手のひらが何かに触れる。気になって机の方を見てみると、そこには1枚の紙切れが置いてあった。そこには『希望合宿 パンフレット』という汚い文字が並んでいる。
「希望合宿…?パンフレット…?」
不思議に思ったおれは、考えるより先にパンフレットの中身を見てみる。
そこにはパンフレットらしい……のかは分からないけど、乱雑に書かれたスケジュール、そしてまるで子供が描いた落書きのような建物の絵が載っていた。
……正直おれの字よりも汚いと思った。お、おれはちゃんと人に見えるくらいは綺麗な文字書けるんだからな!
それは置いといて。おれをこんなところに連れてきて、こんなふざけた落書きまで置いて……。犯人は一体何がしたいんだ。
「ふざけてるのかな…」
そう呟いて真正面にかけられた時計をふと見る。
時計は『午前8時』を指していた。
午前、8時……?
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
『8時にはミーティング始めるぞ!みんな、遅れないようにしろよ!』
『遅れたら罰として森然高校の校庭10周だべ!』
『いや、それはきつすぎなんじゃ…』
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「……やっべ集合時間遅れる!!!」
なぜそう思ったのかは分からないけど、ここは教室なのだから『森然高校』だって思い込んでしまったのかもしれない。
バレーのミーティングの時間を思い出し、パンフレットを持って慌てて教室を飛び出す。
「急がなきゃ校庭10周だ……!!!」
校庭10周、おれにとっちゃ余裕だけどさ。
影山が間に合っておれだけ間に合わないとかカッコ悪いだろ!!そう思って急いで体育館への道をひた走る。
———刹那。
ドサッ
「いてっ……。何すんだボゲェ!!」
「す、すみません!大丈夫ですか?!」
誰かとぶつかってしまったようだ。おれは咄嗟にこけてしまった人に手を差し伸べる。
すると、その人はおれの顔を見るなり不機嫌な顔になってこう言った。
「お前もいたのか」
「影山!!」
ぶつかったのは影山だった。なんでよりによってこいつなんだよ……!
湧き上がる悔しさを胸に抑え込み、差し伸べた手をひっこめる。影山はおれの行動にむっとしつつも自分で立ち上がった。
……それにしても、影山もここに連れてこられてるのか?———なら、ここがどこか分かるかもしれないな。
そう思ったおれは咄嗟にそのことを聞いてみる。
「なぁ影山、ここがどこだか知らない?」
「知らねぇ」
案の定この答えだった。期待したおれが馬鹿だった。
影山も分からないってことは……まさか本当に知らない場所に連れてこられたってことなのか……?もしかして、ゆう、かい……?!
次々に頭に湧き出てくる可能性を浮かべ不安になるおれを尻目に、影山はおれに向かってこう言う。
「みんな集まってる。さっさと行くぞ」
「みんな?」
「いいからついて来いボゲェ」
みんな、?ここにいるのはおれと影山だけじゃないのか……?
混乱はさらに深まるけれど、ここは影山の言葉に従った方がいいかもしれない。もしかしたら知ってる人もいるかもしれないしな。
おれは黙ってこいつについて行くことにした。
———しばらくして。異様な空間の前で、影山はおれの方を振り向いてこう述べてきた。
「着いたぞ」
おれの目の前では、どこかで見たことのある14人の少年がおれ達を見つめていた。
- Chapter00 〜ようこそ、絶望合宿〜 ( No.4 )
- 日時: 2016/09/25 20:47
- 名前: 紫苑 ◆VRhWN8LWD6 (ID: L/on88L2)
広い空間と言えないその場所には、おれの知っている14人の少年がいた。
何でこの14人なんだろうと一瞬疑問を浮かべたが、そんなくだらないことはどうでもいいと思考をかき消す。ええと、さらっと見てみると……キャプテンに大王様、トサカヘッドやミミズクヘッド……更にはあの『2m』の姿もあった。
そもそも、なんでみんな一緒の場所にいるんだ?しばらく考えていると、栗色の髪の爽やかそうな青年———『及川徹』さんがおれに向かって話しかけてきた。
「あ〜らら〜。見慣れた顔がもう一人やって来た」
「大王様がいる?!」
「俺だけじゃないよー。君たちのキャプテン君を皮切りに、俺の見たことない連中も一緒に集まってるみたいだよ」
「日向!お前もここにいたのか、大丈夫だったか?」
「キャプテン!はい、おれは大丈夫です!」
「なんか飛雄ちゃんとぶつかったような雰囲気を感じるんだよね及川さん。もしかしなくても痛かったでしょ?」
「はい、すっごく痛かったです!!」
「そこは否定しろ日向ボゲェ!!!」
「ハイハイ、喧嘩はそこまで」
おれ達に気付いたのか、数人がおれ達のほうに駆け寄って話しかけてくる。
……一応、ここに集められている人達を確認しておこう。試合とかで会ったことがあるとはいえ、話したことのない奴もいそうだし。
そう思って、おれは一面をぐるりと見回す。
「及川さん、さっきの言葉訂正してください。あいつが俺にぶつかって来たんです」
「嫌だねバーカバーカあっかんべーだ!チビちゃんがぶつかったとしても全面的に飛雄が悪いんだよやーいやーい!!」
「後輩相手に何ムキになってんだみっともねぇぞクソ川」
おれ達のチームで正セッターをやっている『影山飛雄』。
青葉城西のキャプテンで、選手の力を100%引き出すセッターである大王様こと『及川徹』さん。
その及川さんの幼馴染で、青葉城西のエースでもある『岩泉一』さん。
「旭さん、ここどこなんでしょうね?如何にも『電車に轢かれて目覚めたら謎の宇宙人と戦っていた』って感じがするっす!」
「えっそれを俺達がやるかもしれないの…?宇宙人とはいえ仲良くなれるかもしれないのに…。戦うのは怖いから嫌だ」
「異常な空間だからあり得なくはないと思うけど友好的な宇宙人なんていないと思うぞ、西谷…。あと東峰さんも乗らないでください」
「なんだヒゲチョコ、お前宇宙人にでもなるのか?現実を見ろそんなものはいないぞ」
「ゴメンナサイ」
烏野の守護神こと、コートの後ろを守るリベロである『西谷夕』さん。
来年にはキャプテンの座は彼が引き継ぐはず…な、2年のドン『縁下力』さん。
烏野のキャプテンで、みんなを支える大黒柱『澤村大地』さん。
ワイルドだけど気は弱い、でも立派な烏野のエース『東峰旭』さん。
「あかーしなんかここ怖い!!早く安全な場所行こうぜ?!」
「見知らぬ場所に安全もなにもないでしょう。それにあんた一人じゃないんだから下手に動かない方が身のためですよ」
「分厚い扉に薄暗い室内……。ま、出たい気持ちは分かるわ。でもこういう時こそ集団行動って大事じゃねェかな?」
「黒尾にしてはまともなこと言ってるな。木兎のこともっと煽るかと思ってた」
「夜っ久んは俺のことどういう目で見てるワケ?」
東京の強豪校である梟谷学園高校のキャプテンで、5本指のスパイカーに数えられている『木兎光太郎』さん。
梟谷学園高校の正セッターで、木兎さんの右腕の『赤葦京治』さん。
繋ぐレシーブが特徴の音駒高校でキャプテンをやっている『黒尾鉄朗』さん。
その音駒高校バレー部の『守備の要』を担っている『夜久衛輔』さん。
「アレアレ、若利くんよりデカイ人いるね!何?1年?」
「……ウス」
「ここがどこだか分からない以上、下手に動くのは危険だな」
「…………(コクコク)」
「皆真面目だネー!!こういう時こそテンション上げて辛気臭い空気吹っ飛ばすのがセオリーって奴じゃない?え?違う?若利くん何?黙ってろ?うん、じゃあ黙ってる」
宮城の強豪『白鳥沢学園』でブロッカーを務めている『天童覚』さん。
見たことはないけど……えーっと、確か『角川学園高校』ってところのスパイカーで、2mの巨体が特徴な『百沢雄大』。
3本指のスパイカーで、『白鳥沢学園』のスーパーエースな『牛島若利』さん。
無口だけどブロックは凄い!『伊達工業高校』の3枚ブロックの一人『青根高伸』さん。
———これで全員、かな?
おれが辺りを見回していると、ふと影山がおれに話しかけてくる。
「なんだ。みんな身長高いから羨ましがってんのか」
「ちげーよ!!誰がいるのか確認してただけ!!」
「身長伸ばしたいならぐんぐんヨーグル飲めボゲェ」
「だから違うって言ってるだろ?!」
見当違いのことを言われて言い返してしまったが、不安な気持ちは少しだけおさまったみたいだ。
あいつ、無自覚にこういうことしてくるからな……。普段なら迷惑だけど、今はありがたく思っておくことにしよう。
- Chapter00 〜ようこそ、絶望合宿〜 ( No.5 )
- 日時: 2016/09/26 00:30
- 名前: 紫苑 ◆VRhWN8LWD6 (ID: lFtbIZgG)
「そういや、日向はどうやってここまで来たんだ?」
夜久さんの声ではっと我に返る。
どうやってここまで来たか?えーと、それは……
「バレーの自主練が終わって、更衣室の扉を開こうとしたら急に眩暈がして…。気付いたらここの近くの教室でうつ伏せになっていたんです」
「えっ?!オレも一緒なんだけど!!」
木兎さんが驚いた顔でおれを見る。
すると、各々が自分も同じだと言い始めた。みんなが同じ状況、一体どういうことなんだ…?
「ここにいる全員が揃って気を失って、見知らぬ教室で目覚めた…。そもそも、ここがどこなのかも見当つかねぇしな」
「ここ…どこなんだろう…」
「ウーーーン、どっかで見た記憶はある気がするんだけど……。悪ィ、思い出せねぇや。でも教室とかあったし、『学校』らしき建物だってことは分かりそうだよな」
全員がおれと同じことを経験している…。何か、おかしいな。
考えていると、不意に天童さんが声を荒げた。
「あれれ?俺の私物ないよ〜?」
「天童、ちゃんと探したのか?」
「というか、目覚めた時から私物どころかカバンすらなかったんだよネ。ジャンプの最新刊まだ読んでないから読みたかったのに…」
「部室にジャンプなんて持ってきてるんですか?!」
「え、普通じゃん?」
「約束のネバーランドの最新話見せて!!!早く!!!俺気になってるんだから!!!」
「だからねぇつってんだろクソ川」
「……そういや、俺の私物もないですね」
「みんなの持ち物もそうなんですか?」
「どうやらそうみたいだなー。俺の替えのTシャツも綺麗さっぱり無くなってやがった」
そういえば、とおれも起きた状況を思い出す。
確かに周りには何もなかった。おれのスポーツバッグも、Tシャツも制服も、学校のカバンも綺麗さっぱり無くなっていた。
「それに、ここが『学校らしき場所』だってわかったとして、この変な扉はなんなんだ?普通の学校にはこんなものないよな」
「外に出て場所を確認しようとも、ここの扉無駄に頑丈で開きませんでしたね」
「オレとウシワカと東峰君が力合わせて開けようとしても駄目だったんだから駄目だ!!!」
「…………(俯き)」
「…誰かの犯罪に巻き込まれたのかも」
「人聞きの悪いこというなよ…。だが、どうして俺達だけ集められる必要があるんだろう」
「何かのイベントならもっと人がごった返してるはずだし、そもそもこんな不気味な場所でやらないからな」
「誰がこんなことしやがった?!」
各々が混乱を募らせていた、まさにその時だった。
ピーンポーンパーンポーン……
『あーっ、あーっ、マイクテスっ、マイクテスっ』
「何だ?!」
おれは突如鳴ったチャイムに周囲を見回した。
すると、隅にかけられている不自然なモニターが光っているのが分かった。
影になって姿は見えないが、動物のようなシルエットが映っているのが分かった。恐らく、声もそこから流れているのだろう。
それは場違いなほど、能天気な声…。
おれはその声に強烈な不快感を抱いていた。
『大丈夫?聞こえる?えーっ、ではでは……。
栄誉ある排球部員の皆さん。今から『希望合宿』の開会式を執り行いたいと思いますので、至急体育館までお集まりください。みんな、体育館の場所は分かるよね?書いてあるからちゃんと間違えずに来てね!
それじゃ、待ってるよ〜!』
ぷつり。
音声が切れた。
みんなの方を振り向いてみると、そこにいる誰しもが困惑した面立ちだった。
「何だよ、今の声?」
「体育館……って、言ってたな」
「行くの?罠かもしれないヨ?」
「それでも行ってみるしかねェだろ。もしかしたら俺達をここに集めた張本人が出てくるかもしれねェからな!」
「なんで西谷はそう単純なんだよ…」
それぞれ、バラバラに体育館へと足取りを進めていく。
……おれはというと、さっきの放送の声を気にしていた。声からの『嫌な予感』が未だに頭から離れないのだ。実は関係者のドッキリで、体育館に入ったら種明かしをしてくれる……なんてオチも考えてみたが、どうも違和感だけが残る。
そんなことを考えているうちに、『体育館』とプレートが付けられた扉の前までやって来た。
「ここ…だよな」
「中に何があるか分からないからな。俺が先に行って危険がないか見ておこう」
「キャプテン君ここに来てまでリーダーシップ張ってるのー?別にいいけどさ、中に入ったらいきなりキャプテン君がグッサリ刺されて死ぬとか及川さん嫌だからね?
というわけで俺も先に入りまーす!」
「不吉な妄想するなよ全く…」
キャプテン、大王様、岩泉さんが扉を開けて中に入っていく。
続いて『オレもカッコいいところ見せたい!!』と木兎さんも続く。
呆れながらその後に赤葦さんが続き、ウシワカと天童さんは何も言わずにスタスタ入ってしまった。
「…ねぇ、少し気になったんだけど」
「どうしたんですか、夜久さん?」
「あの放送では『希望合宿』って言ってたよな。それって…俺達が目覚めた時に目の前にあったあのパンフレットの表紙の文字と一致してないか?って思ってさ」
「確かに一致してたね。もしかしたら本当に身内のイベントなのかも…」
「それを確かめる為にも体育館に入らなきゃ駄目なんでしょ?ほらほら、早くいきますよ旭さん!」
「うわわ、押さないでよ西谷…」
「んじゃ俺もお先〜」
そろそろと体育館への入っていく面々を横目に、おれはしばしその場を動けずにいた。
確かにあの放送では『希望合宿の開会式』という言葉が述べられていた。あの乱雑に書かれたパンフレットにも同じ文字が載ってたし、もしかしたら……ということも考えてしまう。
だけど……妙におかしいのだ。納得しつつも、本能で『納得してはいけない』と思ってしまい、一歩を踏み出せなかった。
そう考えていたのはおれだけではなかったらしい。
「本当に大丈夫なのかな…」
「あの放送、怪しいな」
影山、夜久さん、青根さん、百沢、縁下さん、そしておれがその場に残っていた。
「だけど…ここで立ち止まってたってなにも始まらないし…主催者は俺達を体育館へ呼んだんだろ?
…行くべきだと思う」
「そう…だよな…」
確かにそうだ。百沢の言うとおりだ。
この先にどんな危険が待っているかは分からない。けど、行かなければならない。
手掛かりのない今は、進むしかないのだ。
「……行くぞ」
おれ達は勇気を振り絞って、体育館の扉を開いた。
それぞれの顔を見てみると、みんな不安らしい。あの放送から沈黙を保っている。
それも無理ないとは思う。おれだってあの放送を聞いて不安だらけなんだから…。
おれは胸に残った不安と違和感を奥にしまい、みんなのいるところまで歩いて行ったのだった。