二次創作小説(映像)※倉庫ログ
- Re: 【東方万華鏡】 この幻想郷で生き延びることを決めた ( No.9 )
- 日時: 2017/03/11 20:29
- 名前: garba (ID: lStzZ.qK)
『ピッ、ピッ、ピッ、…』
永遠亭のベッドは、カーテンで仕切られていて、それぞれに器具が付いている。
不規則なような、規則性があるような、機械音が、静かな永遠亭にリズムのようにして流れる。
「フラン…!?」
「誰だ…?知り合いか?霊夢。」
驚いた顔をして診察室のベッドに寝ている金髪の女。
瞳を静かに閉じて、静かな診察室に寝息が聞こえる。
「フラン…何があったの?」
少し落ち着いて、霊夢が永林に聞いた。
「ええ。支配の計画がジリジリ進んでるわよ…。まずはフランに回ったみたい。」
「フランが…?」
「まあ、だいぶ回復してきてるし、回復したらまた紅魔館で暴れまくってるわ。」
「それはそれで怖いけど…まあ、例の件、分かった?」
例の件とは、俺の能力のこと。
あまり外部には漏らしてはいけないため、そう言っている。
「ええ。大体わかったわ、…でも、また大分扱いの難しい能力ができたわよ…」
「その件は大丈夫です。霊夢からみっちり厳しく修行を…ってうお!?」
普段から霊夢の厳しい修行に耐えているのだから、扱いが難しくても大丈夫。
そう言おうと思ったけど、霊夢には誤解された。
「余計な事…言わないでね?」
「そう言いつつ…俺の頭…掴むな…」
「はいはい。喧嘩はおしまい。まあ、霊夢がきちんと教育してくれてるんなら、安心ね。」
「教育って…」
「まあ、本題に入るわ。この能力は、『重力を操る程度の能力』。あらゆる物、人体の重心を操る事ができ、その重心をほんの僅かな力で押せば、相手を吹っ飛ばす事ができる。こう聞けば中々かっこいい能力だけど、それなりに扱いが難しいわ。まあ、炎もほぼマスターしてるんなら安心だけども…」
「まだ…あんまりイメージが掴めてないので…」
俺が不安そうにそうため息まじりにそう言った。
「当たり前よ。急に出来たんだからね。」
『パカッ。』
そう言いながら、永林は黒い布に包まれた瓶を開ける。
……なんか嫌な予感がするんだけど?
『キィーッ!』
その瓶から出た『虫』は、勢い良く、羽を開いて鳴き声を出す。
「可愛い…」
「うわあああああっ!」
霊夢の可愛いと思う感情に理解出来ず、俺は虫が苦手だという事を伝えようとすると、虫がすぐ目の前にいた。
「やめろおおおおっ!!」
そう手を振りかざしたら、ほんの僅かな手応えを感じた。
指先にぶつかって、ピクリとも動かない力なのに、虫は羽をしまって壁の方向へ飛んでいく。
『メリッ』
壁に何かがめり込むような音が少しだけ診察室に響き渡り、そして虫はもう動かない
「………?!、死んだ…のか!?」
ほんの少しの手応え、そして、指先だけに触れただけなのに、こんなにも吹っ飛んだ事。矛盾している気がして、不思議というよりは、驚いた。
「これが重力を操る程度の能力。今ので大分感覚はつかめたと思うけど…」
人差し指で触れた瞬間、普段ではありえないほど手応えを感じる。全力で拳を振ったような手応えで、かつ、力を入れずに。
永林曰く、あまり力を入れない事と、重力を正確に操る事がコツらしい。
その瞬間、窓から、活気のいい声が聞こえて、その次には、その声に従うようにしている人影が見える。
「何よ何よ…」
俺より先に異変に気付いていた霊夢が窓を開けて覗く。
「これは…」
霊夢の今までにない驚いた声に、動揺する。
「何だ…霊夢。」
「皆んな!隠れて!」
霊夢の驚いた声に動揺しつつ、霊夢の言うように机の下に隠れる。
その瞬間、破裂音がして、音、そして状況から察した。
「誰かが攻め込んできた。」
「ここを徹底的に探せ!いるはずだ!」
その野太い声が永遠亭の中に響いて、床に革靴のようなものが当たって、独特の音を出す。
「ん…?」
そう、不思議そうに見たのは、ベッドで寝ているフランだった。
「丁度いい…」
『ガチャ』
男はフランに向かって銃口を向ける。
霊夢の顔を見ようとしたけれど、霊夢はいない。
「ん…?っ!?お前は!?」
男は霊夢を見て一歩引き下がる。銃口を向けたまま、照準を合わせている。
その隙にもう一人の男が霊夢に気付いた。
「いたぞ!」
そう言った瞬間、霊夢に銃弾が一斉に放たれる。
目で追っても追いつけず、ただ、霊夢を探す。
「霊符!夢想封印!」
いつもの霊夢より、気迫ある声が聞こえて、少し安心する。
弾幕が息を呑む間に銃弾を弾いて、男たちを飲み込む。
「グッ…!」
ほんの少しだけ銃弾がかすって、霊夢の巫女服に血が滲む。
もう一人、ラスボス臭を漂わせている男がいるのに。
「やってくれたな…」
男は腰からピストルを取り出し、目で追いつかぬ間に霊夢に発砲する。
銃弾が当たって集中力を切らした霊夢は銃弾に直撃する。
「クッ…!【霊符…!】」
「やめろ!霊夢!」
俺はスペルカードを使おうとしている霊夢に立ち塞がるようにし、スペルを使うのを封じた。
「霊夢!そんな腕でまともに弾幕の照準を定められるか!ここは俺に任せろ!」
霊夢の腕では弾幕をまともに打てないと思い、必死に訴える。
「俺に任せろ?……言ってくれるぜ…威勢はいいがな…カッコつけても強さは変わらねえよ!」
『バッ!』
男は低空飛行をする様に俺と間合いを詰めてくる。
「やってくれたのは…」
『グキッ!』
男はあっという間に俺に間合いを詰めて、顎の骨を砕かれた様な激痛が走る。
「お前だろお!」
俺は男にカウンターを決める。
男は少し痛みの顔を見せた後、不気味な笑みを零した。
「【雷術!光殺魔!】」
「グッ…!!?」
俺の腹部に痺れた感覚が波のように押し付ける。
喉から鉄のような味がして、直ぐさま吐き出す。
『吐血』だった。
「っ…!【炎符!炎螺旋舞!】」
そう言った瞬間、俺の周りを炎が舞う。風圧のような物が俺の前髪を押し上げ、風に身を任せて、追い討ちをかける。
「【炎符!火拳!!】」
「っ!?」
相手は突然スペルカードを発動されたことに混乱し、炎に直撃する。
『ガラッ…』
相手は吹き飛ばされ、石壁に背中をぶつけ、壁の欠片がタイルの溝に落ちる。
「ッソ…!まだまだぁ!」
そんな威勢のいい声を上げたとき、相手の目の前には誰もいなかったであろう。
ーーーー既に、背後にいたのだから。
「ーーっ…!?」
「っあああああああ!!」
濁音混じりに怒りを拳に込めて、相手の顔面を殴る。
その反動で自分も腕から血が出て、なんとか立った姿勢を保つ。
「……」
「死んだ…のか」
相手が黙り、動かなくなったのを見て死んだのを悟る。
「…!!霊夢が!」
それと同じように霊夢も動かなくなっていて、次第に焦りを感じる。
「早く永遠亭に!…って、ここが永遠亭…!」
治療法も失った今、本当に霊夢が死んでしまう。そんな不吉なことが頭を過る。
「ックソ!霊夢!生きててくれよ!」
ただ、そう願ってみることしかできない自分を恨んだ。