二次創作小説(映像)※倉庫ログ
- 第48話 黒装束 ( No.102 )
- 日時: 2016/12/25 12:19
- 名前: パーセンター ◆AeB9sjffNs (ID: rS2QK8cL)
- 参照: サヤナの対戦相手となる、謎の選手の実力は——
『さあ、参りましょう! 二回戦第三試合目、ロー選手とサヤナ選手の対戦です!』
テンションの高いアナウンサーの声と会場の歓声を受け、二人の選手がフィールドに立つ。
サヤナの相手となるのは、白い不気味な仮面と黒いローブに身を包んだ正体不明の男、ロー。
『サヤナ選手は優勝こそないものの、出場した大会では必ず好成績を残す実力派! 対するロー選手はバッジの数以外経歴は一切不明! ミオ選手と同じく、ポケモンもここまで一匹しか使用しておりません! 準決勝に駒を進めるのはどちらか!? それでは、バトルスタートです!』
アナウンサーの声を引き金に、両選手は同時にポケモンを繰り出す。
「頼んだよ! ワカシャモ!」
「バクオング」
サヤナのポケモン、ワカシャモに対し、ローはやはり予選からずっと同じポケモン。
身体中に楽器のパイプのような穴を持つ、怪獣型ポケモンだ。
『information
バクオング 騒音ポケモン
大声の振動によって地面を揺らし
衝撃波で敵を吹き飛ばす。
遠吠えは10キロ先まで響き渡る。』
ノーマルタイプのポケモン、バクオング。それを読んで、サヤナは格闘タイプのワカシャモを出したのだろう。
「それじゃ行くよ! ワカシャモ、アクセルフレア!」
身体中に炎を纏い、ワカシャモは目にも留まらぬスピードで突っ込む。
一気にバクオングまで近づき、そのまま激突し、バクオングを突き飛ばした。
「ワカシャモ、火炎弾!」
さらにワカシャモは嘴を開き、無数の炎弾を放つ。
対して、
「バクオング、地震」
バクオングが身体中の穴から空気を吸い込み、爆音のような大声を発する。
空気の振動だけで炎の弾を掻き消し、さらにフィールド全体までも大きく揺らし、その衝撃でワカシャモを吹き飛ばした。
「ワカシャモ!? 大丈夫!?」
吹き飛ばされたワカシャモは地に手をつき、勢いよく起き上がり、勇ましく鳴く。
「よし、まだ行けるね! ワカシャモ、マグナムパンチ!」
ワカシャモが地を蹴って飛び出し、バクオングとの距離を詰めていく。
「バクオング、ハイパーボイス」
「ワカシャモ、躱して!」
バクオングが再び空気を吸い込み、大声と共に大音量の衝撃波を放つ。
だが今度はワカシャモは思い切り跳躍し、衝撃波を躱すと、上空からバクオングへと強烈な拳の一撃を叩き込んだ。
「一気に行くよワカシャモ! もう一度マグナムパンチ!」
さらにワカシャモは拳を握りしめ、一旦引っ込めた腕をもう一度思い切り突き出す。
それに対して、
「バクオング、噛み砕く」
ワカシャモが突き出した腕を、バクオングは歯で強引に受け止め、
「ハイパーボイス」
間髪入れずに口から大音量の音波と共に衝撃波を放ち、ワカシャモを大きく吹き飛ばした。
「気合玉」
さらにバクオングは大きく口を開く。
口内の一点に気合の力が集まり、気合の念弾がバクオングの口から放出された。
「来た……! ワカシャモ、受け止めて!」
回避が間に合わないと判断したのか、サヤナのその指示通り、どうにか立ち上がったワカシャモは両手を構え、正面から気合玉を受け止める。
ズザザザザザ! という音と共にワカシャモが大きく押し戻されるが、それでも地に足をつけて耐え切った。
そして。
「それを待ってたんだよ! ワカシャモ、オウム返し!」
刹那、ワカシャモの構えた両手に気合の念弾が作り上げられる。
返す刀で、ワカシャモは渾身の気合の念弾をバクオングへと投げつけた。
一直線に飛ぶ気合の念弾はバクオングの額へ直撃。格闘技の気合玉はノーマルタイプのバクオングへと効果抜群、その体勢を大きく崩した。
「今だよワカシャモ! マグナムパンチ!」
その隙を逃さずワカシャモは拳を構え、一気にバクオングへと向かっていく。
しかし。
「バクオング、地震」
バクオングが怒りの形相を浮かべて爆音の如き怒声を放つ。
爆音の衝撃波によってワカシャモの動きは止められ、さらにフィールド全体も大きく揺れ、地震に巻き込まれてワカシャモが吹き飛ばされる。
「ハイパーボイス」
バクオングがもう一度身体中の穴から空気を吸い込み、口から大音量の音波と共に衝撃波を放つ。
地震を受けたワカシャモを衝撃波に巻き込み、壁にまで飛ばして叩きつけた。
「あ……っ! ワカシャモ!?」
壁に叩きつけられたワカシャモはそのまま力なく床へと落ち、戦闘不能となった。
『決まったぁぁ! ロー選手、タイプ相性を覆し、またもバクオングで勝利! 謎の選手が謎に包まれたまま、準決勝へと駒を進めていきます!』
アナウンサーの叫びが試合終了を告げる。善戦していたサヤナとワカシャモだが、二回戦で敗北することとなった。
「……負けちゃったね。ワカシャモ、そんな顔しないで。よく頑張ったよ、お疲れ様」
サヤナは悔しそうに低い声で鳴くワカシャモを労い、その頭を撫で、ボールへと戻す。
ローは何も語らずバクオングをボールへと戻すと、そのままフィールドを去っていった。
「サヤナ、負けちゃったか……」
「さっきの子もそうだけど、バクオング一匹でここまで上がってきてるだけある。あのローってトレーナー、相当な腕前ね」
それにしても、とハルの隣でエストレは続け、
「あのスタイル、気にくわないわね。何の目的か知らないけど、わざわざ顔を隠してるあたりが特に。何かやましいことでもあるのかしら」
「運営が雇った悪役か何かですかね? 大会を盛り上げるために、みたいな……」
「それだとしたらこの配役は大失敗よ。不気味すぎて寧ろ盛り上がらないわ」
ローの正体がそろそろ気になってくるが、それは一先ず置いておく。
次の試合は二回戦最後の試合。スグリが登場する。
「オンバット、龍の息吹!」
二回戦、第四試合目。
スグリのポケモン、オンバットが、対戦相手の紫色の毒蛇のようなポケモンへ龍の力を帯びた息吹を放つ。
『information
アーボック コブラポケモン
腹に持つ顔の模様と不気味な
吐息の音で獲物を威圧する。
竦んだ獲物を長い体で捕らえる。』
「っ、アーボック、バインドファング!」
息吹を受けたアーボックは体を起こすと、毒牙を剥いてオンバットへと食らいつく。
「遅い遅い、躱してアクロバット!」
オンバットを狙ってアーボックが次々と噛み付きを仕掛けるも、オンバットはそれを易々と躱し、軽快な動きでアーボックの背後に回り込み、体当たりを仕掛ける。
「今だアーボック! 締め付ける!」
アーボックの長い胴体が動き、瞬く間にオンバットを囲む。
「遅いんだってば! 龍の息吹!」
だがそれよりも早く、オンバットはこちらを振り向いた瞬間のアーボックの額に龍の息吹を撃ち、アーボックの体勢を大きく崩す。
「これでとどめだ、オンバット、鋼の翼!」
オンバットが鋼の如く硬化させた翼をアーボックの脳天へと振り下ろす。
アーボックは甲高い悲鳴を上げ、フィールドに倒れてそのまま戦闘不能となった。
『決まりましたぁ! スグリ選手、激闘を見せてくれた一回戦とは打って変わり、終始余裕の戦いを見せつけ、二回戦も突破! そして、これで準決勝へ進む選手が全て決定しました!』
やはりスグリは勝ち上がってきた。体格に大きな差があるポケモン相手でも、余裕の勝利だ。
『それでは、一時間の休憩を挟んだ後、準決勝進出の選手に一言インタビューさせていただき、それから準決勝を行います!』
「……え? インタビュー?」
ここで素っ頓狂な声を上げたのは観客席のハルだ。
「にひひー、ハル、インタビューだって! ちゃんと上手く喋らなきゃダメだよ!」
しかもハルの隣に戻ってきているサヤナがプレッシャーを掛けてくる。
「や、やめてよサヤナ……インタビューなんてされたこともないんだから……」
「どうせ意気込みを聞かれるくらいですわ。そんなに緊張することでもないわよ」
少しだけ薄ら笑いを浮かべながら、エストレが口を開く。
「優勝したい、って気持ちを、会場全体に伝えてきなさい。それでいいのよ」
「……うぅ、緊張するなぁ」
緊張を抱えたまま、ハルはサヤナとエストレに背中を押され、控え室へと向かう。