二次創作小説(映像)※倉庫ログ
- 第49話 リベンジ ( No.103 )
- 日時: 2016/12/27 19:42
- 名前: パーセンター ◆AeB9sjffNs (ID: VYLquixn)
- 参照: いよいよ準決勝開始。ハルの相手は、強敵ミオ!
「さあ、間も無く準決勝が開始されます! ということで、その前に!」
今大会司会の女性アナウンサーは、実況のスペースからマイクを持ってフィールドに降りてきている。
「優勝まではもう少し! 見事準決勝まで勝ち上がってきた、四人の選手に! ここからの意気込みを聞いていきたいと思います!」
アナウンサーの言葉に続けて、観客席全体から歓声が飛ぶ。
「それでは……まずはハル選手から! 一言お願いします!」
アナウンサーからマイクを手渡される。
緊張は、吹っ切れた。
「残ってる人たちは、僕よりも強い人たちばかりです。だけど、ここまで来たからには、優勝目指して、全力で戦い抜きます!」
ハルの力強い言葉を受け、会場がどっと湧き上がる。
「はい! 準決勝、決勝に向けて、強い心意気を示してくれました! それでは!」
ハルからマイクを受け取り、次にマイクを渡されるのは、
「次はミオ選手!お願いします!」
相変わらずぼーっとした感じのミオが、マイクを受け取る。
「えーっとぉ、優勝したら、カビゴンと一緒に美味しいものを一杯食べに行きます」
いかにもミオのキャラらしいコメントに、会場からは笑いも混じった歓声が響く。
「さて、それでは次は、ロー選手! お願いします!」
ローがマイクを受け取ろうとしないので、アナウンサーはマイクを仮面の口元に向けるが、
「……」
「あ、あの、ロー選手。何か一言……」
「……」
しばらく続く沈黙。やがて、
「……はぁい! ロー選手は、とっても無口な方でした!」
遂に諦めたらしく、女性アナウンサーは勝手に自分で締めくくってしまう。
「さあ、それでは最後に、スグリ選手! お願いします!」
咄嗟のアドリブでどうにか会場の盛り上がりを保ちつつ、四人目、スグリにマイクが手渡される。
「誰と当たってもやることは変わらないんですけどね。戦って勝つだけ。オレとオレのポケモンなら、それができる! 勝ちます!」
スグリの言葉で、少し下がっていた会場のテンションは再び大きく上がる。
「自信満々のコメント、ありがとうございます! さあ、それではいよいよ、準決勝を開始します! 最初の対戦カードは、ハル選手対ミオ選手! ここからは、三対三のバトルになります! 果たして、どんなバトルを見せてくれるのでしょうか!」
いよいよ準決勝。ハルの相手は、以前敗れたミオだ。
年の割に強力なポケモンを使うトレーナー。得ている情報はカビゴンのみ。しかし、そのカビゴンの情報はしっかり仕入れておいた。
「さすがハル君、ここまで上がってくると思ってたよぅ」
「ミオもね。僕もどこかで当たるとは思ってた。この間のリベンジを果たさせてもらうよ」
「それができるなら、ねぇ」
ハルとミオは同時にボールを取り出す。
『それでは、準決勝第一試合、スタートです!』
実況席に戻った女性アナウンサーの声を引き金に、二人は同時にポケモンを繰り出す。
「出てきて、ワルビル!」
「頼んだよぅ、ペンドラー」
ハルの先発はワルビル。
対するミオのポケモンは、カビゴンではなかった。鎌首をもたげた、巨大なムカデのようなポケモンだ。
『information
ペンドラー メガムカデポケモン
巨体の割に素早い動きで獲物を
狙う。首の爪て獲物の動きを封じ
頭の角を突き刺してとどめを刺す。』
虫と毒タイプを併せ持つポケモンだ。一応ワルビルからは打点として燕返しがあるが、
(でも相手の虫技はワルビルの弱点だな……気をつけなきゃ)
ペンドラー自体好戦的なポケモンでもあり、恐らくミオは虫技で積極的に攻めてくるだろう。
と。そう、ハルは考えていたのだが。
ミオの初動は、違った。
「ペンドラー、毒菱」
ペンドラーが、ワルビルの足元へと毒を含んだ撒菱を仕掛けた。
「えっ……?」
「さあ、ペンドラー、メガホーンだぁ」
困惑するハルをよそに、ペンドラーは頭をさげると角を構え、全力の突撃を繰り出してくる。
「っ、ワルビル、躱して燕返し!」
ワルビルは横っ飛びでペンドラーの突進を躱すと、白く輝く腕を構えて斬りかかる。
「ペンドラー、メガホーンで防御」
向かってくるワルビルに対し、ペンドラーは角を横薙ぎに振り払い、ワルビルの攻撃を迎え撃つ。
本来は角で突き飛ばす技なのを防御に使ったためか、威力は思ったほど高くなく、追撃は来ない。
「さっきの技は……?」
ハルは素早く図鑑を取り出し、最初の技について調べる。
「毒菱……浮いていない交代したポケモンを、毒状態にするだって……?」
つまり、これでハルは安易にポケモンを交代させる事ができなくなった。
さらにそれだけでなく、エーフィを出しづらくなった。いくらマジックミラーがあっても、毒菱は跳ね返せない。
「続けるよぅ、ペンドラー、ベノムショック」
続けてペンドラーは特殊な毒液をワルビルへと放つ。
「ワルビル、弾け! シャドークロー!」
両腕に影の爪を纏い、両手を振り抜き、ワルビルは毒の液体を弾く。
「ちなみにベノムショックは毒状態のポケモンに威力が増す技だよぅ。この技自体も毒にすることがあるから、気をつけてねえ」
ミオは力の抜けた笑顔でそう語る。
「それじゃ、まだまだ行くよぅ。ペンドラー、メガホーン!」
思い切り角を突き出し、再びペンドラーは勢いよく突進を仕掛ける。
「ワルビル、穴を掘る!」
対して、ワルビルは素早くフィールドに穴を掘り、地面に潜る。
ペンドラーの突撃を潜って躱し、地中から忍び寄り、その足元から飛び出し、ペンドラーを殴り飛ばした。
「やるねぇ。それじゃあ、次はこうかなぁ」
ペンドラーが起き上がったのを確認すると、ミオは次の手に出る。
「ペンドラー、バトンタッチ」
次の瞬間、ペンドラーはミオの構えたボールへと戻っていく。
「えっ?」
「それじゃあ頼んだよぅ、トゲチック」
戸惑うハルのことは気にせず、ミオは次のポケモンを繰り出す。
卵の形をした体に首と短い手足、そして天使のような小さな翼が生えたようなポケモンだ。
『information
トゲチック 幸せポケモン
純粋な心を持つ者の前にだけ
姿を現すポケモン。幸運を
運んでくると言われている。』
「トゲチック……タイプはフェアリーと飛行。これはちょっときついな……」
苦い顔をするハル。理由は単純、ワルビルのタイプ一致の主力技の通りが悪いからだ。
本来ならハルも交代に合わせてポケモンを交代していきたい場面、なのだが、
「……なるほど、そのための毒菱か」
その交代を躊躇わせるのが、毒菱の存在だ。
交代際に毒菱を踏むと、そのポケモンは毒を受けてしまう。
ここで飛んでいるヒノヤコマを出すとしても、その後に出すワルビルは確実に毒を受ける。
さらに、毒を受けるとまずいことはもう一つある。
(確か、あのペンドラーのベノムショックは毒を受けたポケモンに対して威力が上がる。出来れば、ワルビルに毒は与えたくない)
敢えてミオがベノムショックの説明をしたのも、ここでハルの交代を躊躇わせるためだろう。有利な対面を作って、一体ずつ相手を倒していくつもりか。
「……ワルビル、相性の悪い相手だけど、ここは頑張って。君に毒を受けさせたくはないし、頼んだよ」
ハルの言葉に、ワルビルは任せろと言わんばかりに大きく吼える。
「……よし! ワルビル、シャドークロー!」
ワルビルが両手に影の爪を纏わせ、トゲチックへと飛びかかる。
しかし、
「トゲチック、躱してエアスラッシュ」
見た目に反して素早い動きでトゲチックはワルビルの爪を躱すと、小さい羽をぱたぱたと羽ばたかせて空気の刃を飛ばし、ワルビルを切り裂く。
「っ、速い……!」
「バトンタッチは、ただ交代するだけじゃない。交代前のポケモンの能力変化を引き継ぐんだよぅ」
ミオが再び説明を始める。
「能力変化……? だとしても、さっきのペンドラーは能力変化の技なんて……」
「うんうん、技は使ってないよぅ。だけど」
ハルの疑問に対し、ミオはどことなく得意げな表情で言葉を続ける。
「僕のペンドラーの特性は加速。そんな動きは見せなかったけど、時間が経つにつれて素早さが上がっていくんだぁ。それを引き継いだから、今のトゲチックは素早さが上がってるんだよぅ」
分かっていたことだが、ミオの強さはカビゴンだけではなかった。
二重三重に織り交ぜたミオの戦術が、あらゆる角度からハルを迎え撃つ。