二次創作小説(映像)※倉庫ログ

第55話 決勝 ( No.111 )
日時: 2017/01/06 08:45
名前: パーセンター ◆AeB9sjffNs (ID: rS2QK8cL)
参照: ハル対スグリ、事実上の決勝戦——

ハダレタウンポケモンセンター地下の交流所。
そのバトルフィールドに、二人のポケモントレーナーが立つ。
「大会に沿って、使用ポケモンは三匹。ポケモンの交代は自由。それでいいよね」
「うん。それじゃ、始めようか。決勝戦をね」
中止となったハダレ大会、決勝戦進出トレーナー。
ハルとスグリだ。
傍では、サヤナがじっとそのバトルを見守る。
「出て来い、オンバット!」
「出てきて、ワルビル!」
スグリの初手はオンバット、対するレオはワルビルを繰り出す。
(オンバットから来たか……ワルビルの地面技が当たらないけど、他の技は普通に通る。そんなに不利ってわけじゃないな)
「それじゃあオンバット、まずは龍の息吹!」
オンバットが息を吸い込み、龍の力を込めた強烈な息吹を放つ。
「ワルビル、躱してシャドークロー!」
吹き付ける息吹を躱し、ワルビルは両腕に影の爪を作り上げ、オンバットへと飛びかかる。
しかし、
「遅い遅い、鋼の翼!」
軽やかな動きで影の爪を躱すと、オンバットは翼を硬化させ、ワルビルの額へと翼を叩きつける。
「っ、ワルビル、燕返し!」
翼の一撃を受けたワルビルはすぐに体勢を整え、腕を刀身のように白く輝かせ、再びオンバットへと向かっていく。
「なるほど、必中技ね。それならオンバット、もう一度鋼の翼!」
ワルビルが立て続けに振り抜く腕を、オンバットは鋼の翼で次々と防いでいく。
「今だワルビル! 噛み砕く!」
だがこの次の動きはワルビルの方が早かった。
ワルビルは大顎を開き、オンバットの体に噛み付き、頑丈な牙を食い込ませる。
「まだまだ。オンバット、パルスビーム!」
ワルビルに噛み付かれながら、オンバットはスピーカーのような耳を震わせ、超音波と共に光の弾を放つ。
その光の弾は炸裂すると甲高いノイズを放ち、ワルビルを怯ませる。
「オンバット、アクロバット!」
牙の拘束が緩んだその隙にオンバットはワルビルの大顎から脱出し、ワルビルの背後に回ると、翼を叩きつける。
「オレのオンバットは火力が低いから、相手に捕まると面倒なことになる。そのためにこの技を覚えさせてるんだ」
翼を叩きつけられたワルビルは頭を振って立て直し、オンバットを睨み付ける。
「なるほどね……ワルビル、落ち着いて。冷静に行くよ」
ワルビルをなだめ、ハルは次の指示を出していく。
「よしワルビル、穴を掘る!」
ワルビルは素早く地面に穴を掘り、地中へと姿を隠す。
当然ながら飛行タイプのオンバットに地面技は効かない、つまり、
「地中から別の技で強襲を仕掛けてくるつもりかな。オンバット、気をつけて」
パタパタと飛ぶオンバットは、いつ飛び出してくるか分からないワルビルを警戒して周囲を見渡す。
「……今だ! シャドークロー!」
オンバットの目線を見定め、ワルビルはその死角から飛び出し、両手に纏った影の爪で切り掛かる。
だが。

「オンバット、躱して龍の息吹!」

ワルビルが飛び出してくるのが見えていなかったはずなのに、オンバットは正確にワルビルの影の爪を躱すと、すぐさま龍の力を帯びた息吹を吹き付ける。
「っ!? ワルビル、防いで!」
外したシャドークローをもう一度振り抜き、ワルビルは何とかオンバットの攻撃を防ぎ切った。
「忘れちゃってるかな。オンバットは超音波を自由に操る。人や他のポケモンには聞こえない超音波を放って、隠れたポケモンの場所を探しだせるんだよ」
そう言われてハルは思い出す。
シュンインシティでサヤナがポケモン泥棒に遭ったとき、このオンバットが超音波で犯人を探し当てていた。
「オンバット、鋼の翼!」
「ワルビル、燕返しで迎え撃って!」
翼を硬化させて飛び掛かってくるオンバットに対し、ワルビルは剣のように腕を振り抜き迎え撃つ。
腕をかいくぐるように接近するオンバットだが、必中攻撃の燕返しを躱すことはできず、腕を叩きつけられ吹き飛ばされてしまう。
「今だワルビル! 噛み砕く!」
「っ、やっぱダメか。オンバット、パルスビーム!」
大顎を開き、ワルビルはオンバットを追って牙を剥く。
対して、吹き飛ばされながらもオンバットは耳から超音波と共に光の弾を放つ。
ワルビルの口内に光の弾がぶつかり、炸裂して甲高いノイズを放ち、ワルビルの体勢を崩す。
「今だオンバット、アクロバット!」
一瞬にして進路を切り替え、オンバットはワルビルへと一気に迫り、翼を振り下ろす。
「っ、ワルビル、シャドークロー!」
立て直したワルビルは咄嗟に影の爪を振るいながら振り向き、どうにかオンバットの翼を防ぐ。
(っ、さすがスグリ君のポケモン、動きの切り替えが早い! まるで隙を見せてこないな……)
スグリのポケモンは素早いだけでなく、技と技、動きと動きの切り替えが非常に早い。
僅かな隙を正確に見定めていかなければ、ろくにダメージも与えられずに押し切られてしまう。
「ならやっぱり必中技で攻める! ワルビル、燕返し!」
両腕を刀身のように白く輝かせ、ワルビルは勢いよくオンバットへと向かっていく。
「なら動きを止める! オンバット、パルスビーム!」
しかし対するオンバットは超音波と共にワルビルのすぐ手前、床へと光の弾を放つ。
床に着弾した光の弾は炸裂し、甲高いノイズを放ち、再びワルビルの動きを止めてしまう。
「龍の息吹!」
すかさずオンバットは龍の力を込めた息吹を吹き付け、ワルビルを逆に吹き飛ばす。
「っ、ワルビル!」
「さあ休んでる暇はないよ。鋼の翼!」
さらにオンバットは翼を鋼の如く硬化させ、再びワルビルへと飛んでいく。
「迎え撃つ! ワルビル、燕返し!」
オンバットの鋼の翼に対し、ワルビルは両腕を一瞬で素早く振り下ろし、逆にオンバットを押し返す。
「まだまだ! オンバット、アクロバット!」
押し返されたオンバットはその勢いすら利用し、軽やかにワルビルの背後まで回り込む。
しかし。

「燕返し!」

両腕を床につけたまま、ワルビルは尻尾を刀身のように輝かせ、オンバットが翼を振り下ろすよりも早く尻尾を振り上げ、オンバットを打ち上げた。
「っ、やるじゃんか! オンバット、パルスビーム!」
予期せぬ反撃を食らっても、スグリは動じない。
オンバットも大きく打ち上げられながらも、すぐさま下を向き、超音波と共に放とうとするが、
「ワルビル、叫べ!」
それを見たワルビルは大きく口を開き、力一杯吼える。
何の技でもない、ただの咆哮。
しかし。
突然の轟音を受け、オンバットの放つ音波の波が崩れた。
「な……っ!?」
「今だワルビル! 噛み砕く!」
音の波を崩され、上手く音波を放てなかったオンバットへ、今度こそワルビルは大顎を開いて襲い掛かる。
オンバットに頑丈な牙を食い込ませ、大きく首を振り、そのまま地面へと投げ捨てた。
「っ、オンバット……!」
耐久力が低いのか、オンバットは床に叩きつけられた衝撃も重なり、戦闘不能になってしまった。
「オンバット、戻れ。よくやった」
少し悔しげな表情を浮かべ、スグリは倒れたオンバットをボールに戻す。
「やるじゃん、ハル君。このオレから先手を取るなんてさ」
「いやぁ、たまたまだよ。オンバットの超音波は精密なものだから、横から大きな音を入れればそれを崩せるんじゃないかって、ふと思っただけだよ」
「オレのオンバットにこんな弱点があったなんてね。おかげで特訓メニューが一つ増えた」
だけど、とスグリは続け、
「大会中、オレは気付いた。ハル君、君の手持ちには明確な弱点がある」
「弱点……?」
「ああ。そんなに難しいことじゃないさ。それを今から教えてあげるよ」
すぐにいつもの得意げな笑みを浮かべ、次のボールを取り出す。