二次創作小説(映像)※倉庫ログ
- 第58話 決着 ( No.114 )
- 日時: 2017/01/11 11:22
- 名前: パーセンター ◆AeB9sjffNs (ID: VYLquixn)
- 参照: 激突するルカリオとジュプトル。果たして、勝負の行方は——
爆発的な波導を纏ったメガルカリオの右手と、鋭く伸びたジュプトルの葉の刃が、正面からぶつかり合う。
両者一歩も引かずにせめぎ合い、ぶつかり合う力は行きどころをなくし、そして。
遂には、大爆発を起こす。
「ルカリオ!」
「ジュプトル!」
爆発と爆煙に巻き込まれ、二匹の姿は見えなくなる。
やがて少しずつ煙が晴れ、少しずつ視界が開けていく。
激闘を制したのは、どちらか。その答えは、すぐに明らかとなった。
「……負けかぁ」
やり切った、それでいてどこか悔しげな声で、スグリは呟く。
片膝をつき、何とかまだ意識を保つルカリオの目の前で、ジュプトルは全ての力を使い果たし、戦闘不能となっていた。
そしてバトルが終わり、それを見届けたルカリオのメガシンカが解けると、ハルとルカリオも、全身から力が抜けたように床へ座り込んでしまう。
「……勝った……の……?」
ぼーっとしたままのハルには、まだ状況が掴めていないようだったが、
「ハル、すっごーい! スグリ君に勝つなんて!」
駆け寄ってきたサヤナの言葉で、ようやく状況を理解する。
「勝った……勝ったんだ! 凄いや、ルカリオ! 僕たち、スグリ君に勝ったんだよ!」
駆け寄る気力が残っていないので、ハルは座り込んだままルカリオに言葉を掛ける。
何とか立ち上がったルカリオは振り向いて笑みを浮かべ、嬉しそうに吠え、ハルの元へ歩み寄る。
「お疲れ、ジュプトル。いつの間にか追い抜かれちゃったな。でもまた、すぐに抜き返そう」
スグリがそう言ってジュプトルの頭を撫でると、ジュプトルは悔しそうに唸る。
「いやぁ、やっぱメガシンカって凄いんだね。てゆーか、オレに勝ってそんなに嬉しい?」
「そりゃあそうだよ。スグリ君の強さは僕もサヤナもよく知ってる。そんな強いトレーナーに勝てたんだもの」
「ま、それもそうか。オレ強いし……今日は負けちゃったけどね」
スグリも負けた手前どこか調子が出ないようだが、
「だけど、次は勝つよ。正直ハル君に負けたのはめちゃくちゃ悔しいから、これをバネにしてここから先、オレはさらに強くなる。ハル君、その時にはまたバトルしようよ。今日のリベンジを果たすからね」
「うん。僕だって今日の結果だけに満足はしないよ。スグリ君が強くなるなら、僕だってもっと強くなる。こっちからもお願いするよ、またバトルしようね」
再戦を誓う、ハルとスグリ——
「ちょっと! 今回私だけ仲間はずれにされちゃったんだから、私とも約束だよ! 私ともまたバトルするの!」
「も、もちろんだよ。だから、そんなに怒んないで……」
——とサヤナ。
ハルは一日に二回もメガシンカを使いもうクタクタなので、今日ハダレタウンを出るサヤナとスグリと再会を約束し、今日はポケモンセンターに宿泊することにした。
明日になったら、次のジムリーダーが待つ街へと出発だ。
「……お願い、教えて。貴方の言葉以外に、場所を特定できる手段はないの」
サオヒメシティの警察署、取り調べ室。
数人の警察官が部屋の隅に立ち、取り調べを受けている男の前には、ジムリーダー、アリスと、その父親、リデルが座る。
「……」
そしてその目の前で無言を貫いているのは、元ディントス教教皇、ディントス。
今まで素直に取り調べに応じてきたディントスだが、ここに来て状況が一転。
ゴエティアのアジトを知っていると口走り、それ以降その場所を聞き出そうとするも、口を固く閉じてしまったのだ。
そのため、警察官に加え、急遽ジムリーダーであるアリスと、ディントスの友人であったリデルが呼ばれたわけだが、
「……手詰まりね。ねえ、なぜ奴らのアジトを教えてくれないの。言い方は悪いかもしれないけど、言ってしまえば貴方はもうゴエティアから捨てられた身。今さら奴らを庇う意味なんてないでしょう」
「……」
この有様である。頑なに口を開こうとしない。
「……もしかして」
ここで、アリスの隣に座るリデルが口を開く。
「ディントス、君はもしかして報復を恐れているのかい? アジトを教える、つまり奴らの情報を明け渡すことによって、奴らから報復を受けることを」
そこで初めて、ディントスの表情が変化する。
「……図星だね。君は昔から隠し事が下手だからね、顔を見ればすぐ分かるよ。ゴエティアの報復を恐れているんだろう」
「……貴様らは」
ようやく。
リデルの言葉を受けてか、ようやく、ディントスの口から言葉が出た。
「貴様らは、ゴエティアの真の恐ろしさを知らんのだ。奴らはまさに絶対王政。反逆者に対してはもちろん、過失によるミスを犯しただけの部下でも処分する冷酷な人間もいる。奴らからは逃げられない。一度奴らの傘下に入った以上、奴らを裏切ったが最後、例えどこまで逃げても必ず殺される。ジムリーダー、貴様なら分かるだろう。あの時私がヴィネーを攻撃すれば、奴は何のためらいもなく私を殺した。現に、そうしようとしていたのだからな」
そう言われてアリスは思い出す。教会に現れたヴィネーは、鋭い刃物を持つポケモン、キリキザンの入ったボールを隠し持っていた。
刃向かおうとした瞬間に、その首を切り落とそうとしていたのだろう。
しかし、
「……私たちの方こそ、甘く見ないでほしいわね」
そんなディントスの言葉を受けてなお、アリスはそう言い返す。
「私はメガシンカの正統なる継承者、そしてこの街のジムリーダーなのよ。それにこの街には父さんもいる。警察の方と全面的に協力して、ゴエティアが潰れるその瞬間まで、全力であんたを守ってあげるわ。ゴエティアなんぞに、屈指はしない」
「しかし……」
「ディントス、君の友人だった私のよしみで、一つ頼まれてくれないか」
まだ躊躇うディントスに、リデルがさらに言葉を掛ける。
「君が本当は真っ直ぐな人間だったということは、僕がよく知っている。どうか、あの頃の君に再び戻ってはくれないか。そして、奴らのことを教えてくれないか。そうすれば、僕とアリス、そして警察の人たちで、全力で君を守ろう。思い出すんだ、若かりし頃を。僕が今まで、一度でも君に嘘をついたことがあるかい?」
リデルの言葉を受け、ディントスは俯向く。
そして。
「分かった。貴様らを信じ、全てを話そう」
顔を上げ、ようやく、その固く閉ざした口が開かれる。
「私もちらと聞いただけだ。間違っていても保証はせんぞ。奴ら、ゴエティアのアジト。その場所は——」