二次創作小説(映像)※倉庫ログ
- 第60話 大男 ( No.118 )
- 日時: 2017/01/15 14:55
- 名前: パーセンター ◆AeB9sjffNs (ID: VYLquixn)
- 参照: ゴエティアのアジトに忍び込む三人。そこで彼らを待ち受けるのは——
アリスがポケモンセンターに到着する、その少し前。
「ヴィネーんとこのあの教皇気取り、結局捕まったんだってな」
薄暗い部屋の中に、男の声が響く。
「そそ。事前にぼくが前もって忠告しておいたのにね。まぁヴィ姐はまだいくつもプランを持ってるらしいし、王への供物も手に入れたみたいだし、別にいいんだけど」
「ヴィネーに関してなら心配ねえよ。あいつはなかなかの切れ者だ。教皇の失敗なんて想定内だろ」
少年の言葉に、男はそう吐き捨てる。
「そうだ、ぼくはそろそろここを出るけど、一つ言っておくことがあるんだ」
「あぁ?」
「ヴィ姐の話によると、あの教皇にここの拠点の存在を知られちゃったかもしれないって。多分ヴィ姐を恐れて口は割らないと思うけど、万が一のことがあるかもしれないから、早めに撤退した方がいいかもね」
「……チッ、マジかよ。前の拠点が気に入らなくて作り直してようやく完成した拠点だぞ。ついてねえな、つかヴィネーはなんであの教皇を処分してねえんだ」
「そのことに関してはぼくも聞いたんだけどねえ、タイミングを逃したんだって。教皇からキーストーンを受け取ったら処分する予定だったって。まぁその前にとっ捕まったから、仕方ないね」
ニヤニヤしながら少年はそう語る。
男は顔に浮かぶ苛立ちを隠そうともせず、
「ってことは、サオヒメのジムリーダー、それからお前のお気に入りにも知られてるかもってことか。チッ、面倒くせえ。外敵をぶっ殺して解決ってわけにいかねえのは最高に面倒くせえよ」
「おぉこっわ。流石、ゴエティアの中でも直接戦闘を専門とするだけあるねぇ」
「悪いが手加減はできねえぞ。救世主も大事だが、最優先は王の目的よりも組織の維持だ。組織の危機を感じればお前のお気に入りだろうと容赦なくぶっ殺す。いいな」
「……そういう言い方は気に食わないね。救世主より魔神卿の方が代わりを探すのは楽だってことは分かってるよね、ダンみたいなバカじゃないんなら」
「どのみち組織がなくなれば王の目的は達成できねえ。それよりは危険な芽を潰し、何年かかってもゆっくりと王の目的を達成させるのが合理的ってもんじゃねえのか。それとも何か? お前が俺を殺すのか?」
「王はそれを待ってくれるほど気の長いお方じゃないよ。つーかそこまでいうならやってやろうか? 例え戦闘専門だからって、ぼくに勝てるの?」
「魔神卿の代わりはいくらでもいるんだよな? ハッ、俺とお前、内輪喧嘩で死体が二つだ! 何とも面白えじゃねえか——」
「やめなされ」
闇の奥から声が響く。
2メートルを超えるほどの大きな影が、部屋に現れた。
「二人ともゴエティアの貴重な戦力です。私からすれば、二人のうち片方でも失うのは惜しい」
大男は少年を片手で掴み、男を制し、喧嘩を仲裁する。
「私に任せていただこう。二人は先に撤退の準備を。この私なら、この組織の危機を最低限に抑え、かつ御主のお気に入りを傷つけずに問題を解決できる。それで、よろしいですかな」
「……っ、わかった」
「そこまで言うならここはお前に任せる。俺は先に撤退するぜ」
大男に制されて頭を冷やし、二人は撤退の準備を始める。
そこで、
「ああ、そうだ。お詫びに一人護衛をつけておくよ。最近雇った用心棒をね。それと」
少年がニヤリと笑い、男を呼び止める。
「なんだ」
「逃走用のポケモンを貸してあげるよ。空飛べるポケモン持ってないでしょ」
そう言って、少年は男に一つのモンスターボールを手渡す。
「罠じゃねえだろうな。お前ならやりかねん」
「ついさっき怒られた手前そんなことするわけないっしょ。用心棒と合わせて喧嘩したお詫びだよ」
「ほう。んじゃ、ありがたく使わせてもらうぜ」
「いいっていいって。そんじゃ、ぼくは先に帰るよ。ばいばーい」
少年がボールを取り出し、その中からは骨で着飾った鷲のようなポケモンが現れる。
少年はそのポケモンに飛び乗ると、先に拠点を出て行った。
「それじゃあ、頼んだぜ。俺は先に撤退の準備をしておく」
「ええ。ここは私に任せておきなされ」
大男に言葉をかけ、残った男もまた、部屋を去っていく。
「それじゃ、突入よ」
アリスとハル、ミオの三人が、ゴエティアのアジトへと潜入する。
入り口は薄暗いが、少し進むとすぐに明るい広間に辿り着く。
通路は一つ。進むべき道はそこだけだ。
常に周囲を警戒しながら、三人は通路を進んでいく。
だが、
「侵入者だ!」
「怪しいやつめ!」
通路を塞ぐような、挟み撃ちの形で、無数の黒装束の集団が姿を現す。
「早速来たわね。怪しいのはどっちって話よ。ハル君、ミオ君。後ろをやって。前は私一人で片付ける」
そう言って、アリスはライボルトを繰り出す。
「了解です!」
「任せてください」
ハルとミオもそれぞれルカリオ、カビゴンを繰り出し、下っ端たちを相手取る。
それを見た下っ端たちもボールを取り出し、それぞれのポケモンを繰り出すが、
「ライボルト、サンダーブラスト!」
「ルカリオ、ボーンラッシュ!」
「カビゴン、シャドーボール」
ライボルトが電撃の衝撃波を解き放ち、ルカリオが骨の形のロッドを振り回し、カビゴンがいくつもの影の弾を撃ち出し。
下っ端のポケモンたちは、瞬く間に薙ぎ払われた。
下っ端の中には、ポケモンすら出す暇もなく吹き飛ばされた者もいた。
「造作もない。下っ端なんてこんなもんよ。さっさと魔神卿クラスを出してちょうだい」
倒れた下っ端たちの山を乗り越え、アリスたちはさらに奥へと進んでいく。
「……おかしい」
通路を進んでいくうちに、ふとアリスが呟く。
「え?」
「一本道すぎる……まるで誘われてるみたい」
そう言われて、ハルは通路を見渡す。
よく見ると、通路の中には固く閉ざされた扉があり、確かにハルたちを誘導しているようにも見える。
「とはいえ、進むしかないですよねぇ」
「……そうね」
閉ざされている扉をどうこうしても仕方がないため、とにかく進むしかない。
時々数人の下っ端と遭遇するも軽く蹴散らしつつ、アリスたち三人はやがて大きな部屋へと辿り着く。
ここでも何人かの下っ端が現れるが、速攻で撃破。
「さあ、次に進むわよ」
「はい!」
そして、アリスたち三人が部屋の扉に向かおうとしたところで。
「よくぞ参られた。我らゴエティア、総力を持って歓迎致しましょうぞ」
その扉が開き、一人の男が姿を現わす。
「……!」
「なんだ、こいつ……」
まずハルたちが圧倒されたのは、何よりその男の容姿。
ものすごく大きい。2メートルを軽く超えている。
そしてその巨体に違わず、筋骨隆々とした体を持つ。白衣を着ているが、上半身はその下に何も着ていないようで、頑強な筋肉が剥き出しだ。
またその顔も随分と特徴的だ。丸い目が大きく、青い髪の毛はオールバックにしており、口もそこまで大きくなく、例えるならばフクロウのような顔をしている。
「誰。名を名乗りなさい」
「そう慌てなさるな。私から声をかけたのだ、自分から名乗るくらいの礼儀は持ち合わせておりますぞ」
かなり野太い声で、ゆっくりとその大男は口を開く。
「私は御察しの通りゴエティア七魔卿の一人、魔神卿アモン。ゴエティア内では後方支援、研究や電脳戦を担当させていただいております」
その男は丁寧に自らの名をアモンと名乗った。やはり、この大男も魔神卿のようだ。
しかし、それにしても。
「……そのガタイで、研究員とはね」
「てっきりガチガチの戦闘員が来たかと思いましたよ」
「この人がパソコンを使ってるところ、想像できないね」
三人の思考は完全に一致していた。
「ほほほ、失礼な。私はこう見えても研究者長。ゴエティアでは参謀を務めさせていただいておりますぞ。パイモンからは頭が固いと言われますがな」
三人の言葉に、アモンは冗談めかしく笑う。
「さて、ここで私が三人まとめて相手取ってもよろしいのですが、生憎我がゴエティアにもう一人、あなた方との戦闘を望む者がおります。さあ、おいでなさい」
アモンがそう呼ぶと、扉の奥からもう一つ、人影が現れる。
人影の正体は少年だった。黒い髪は肩くらいまで伸ばしており、男にしては長め。身長もそこそこ高く、白いシャツの上から真っ黒な丈の長いコートを羽織っている。
不機嫌そうな表情を浮かべており、その目つきも悪く鋭い。
「さて、自己紹介を」
アモンに促され、その少年は口を開く。
「俺の名はパラレル。強さだけを求めて生きる者だ。今は魔神卿パイモンに雇われた用心棒だがな」
ぶっきらぼうに少年は自身の名を名乗り、
「……お前がハルだな」
いきなりハルを睨み、そう呟く。
「え? あ、そうだけど……」
突然指名され、目つきの悪い目で睨まれ、少し後ずさりするハル。
「そうか。それなら話が早い」
パラレルはさらにそう呟き、突然、ハルを指差した。
「ハル! お前に、一対一のバトルを申し込む!」