二次創作小説(映像)※倉庫ログ

第64話 カタカゲシティ ( No.122 )
日時: 2017/01/16 20:54
名前: パーセンター ◆AeB9sjffNs (ID: J/brDdUE)
参照: ハダレタウンを出発し、ハルは次の街へ。

明くる日の朝早く、ハルはハダレタウンを出発した。
次の目的地、カタカゲシティまではそこそこ距離があるため、朝早くから出発することにしたのだ。
とはいえ、道自体は舗装された平坦な道路なので、かつての山道よりはずっと楽。
すれ違うトレーナーたちと時々バトルもしながら、ハルは道をまっすぐに歩んでいく。



カタカゲシティ。
赤いレンガの家や倉庫が立ち並ぶ、どちらかといえばレトロな雰囲気の街並みだ。
また街中には商店街が発達しており、なかなかの都会として日々賑わっている。調べた通り、この街にはジムも存在している。
無数の赤レンガの倉庫は全て財団によって管理されているらしく、ここのジムリーダーはその財団の代表も務めているらしい。
また、街の郊外には巨大も巨大なテントの骨組みが張り巡らされている。
「なんだろ、あれ……」
ハルがターミナルで情報にアクセスすると、近々、このカタカゲシティでハーメルン・サーカスというサーカス団による公演があるらしい。
とりあえずまずはポケモンセンターに向かい、情報収集を始めようとしたところで、
「お兄はん、ちょいとよろしいか?」
後ろから、そんな声が聞こえた。
近くにハルの他にお兄はんらしき人はいなかったため、ハルは自分のことだろうと思い、振り向く。
ピエロが着るようなぶかぶかの緑の衣装に身を包んだ男だ。髪も緑色でやや長め、毛先はカールが掛かっている。
衣服の首元と手袋にはフリルが付けられ、目の下や頬には紫色で雫や星の模様がペイントされている。
「僕ですか?」
「せやせや、お兄はんや。お兄はん、旅のトレーナーやろ?」
ハルが返事を返すと、その男性は訛った喋り方でさらに質問を続けてくる。
「はい、そうですけど」
「そりゃあよかった。おっと、自己紹介が遅れましたな。私はルンペル。ハーメルン・サーカスの団員なんですわ」
その男性はルンペルと名乗る。見た目で分かってはいたが、やはりサーカス団員のようだ。
「サーカスの団員さんが、僕に何か用ですか?」
「そんな大層な用事やあらへん。なに、旅のトレーナーさんに、このチケットを差し上げたろう思いましてなあ」
そう言って、ルンペルと名乗った男性は一枚のチケットをハルに手渡す。
「これは……?」
「二週間後に開催される、私らハーメルン・サーカスの公演。そのチケットや。本来は有料やねんけど、特・別・大・サービスで、先着十名に無料で招待しようっちゅーわけやな」
疑問を浮かべるハルに対し、ルンペルは大袈裟に両腕を広げて説明する。
「え……いいんですか?」
「ええんよええんよ。元々私らは他の地方から進出してきたサーカス団、マデル地方ではまだまだ無名。ぎょうさんの人に私らのサーカス見てもらうためなら、これっくらいお安い御用や」
せやけど、とルンペルは続け、
「その代わりに一つだけ頼まれてくれへん? お兄はんの友人、知り合い、親戚の皆はん……まあ誰にでもええねんけどね、私らのサーカス開催を広めたってほしいんや。さっき言うた通り、私らはここでは無名。今回の公演はこっちじゃ最初の公演なんや、絶対成功させたい」
「……分かりました。友達はそんなに多くないですけど、声を掛けてみますね」
「おおきに。ほなそーゆーことで、頼んだでー」
チケットを受け取るハルに対し、ルンペルは柔和な笑顔を浮かべ、去っていく。
「サーカスか。まぁ他に予定がなかったら、行ってみることにしようかな……」
チケットをバッグの中に仕舞い、ハルはポケモンセンターを目指す。



パンフレットを読んだり、旅のトレーナーたちと軽く話して情報を得た後(少しだけサーカスの話もしておいた)、ハルはカタカゲジムを目指す。
今までは若いジムリーダーばかりだったが、ここのジムリーダーはなかなかのベテラントレーナーだそうだ。使用するポケモンは岩や地面タイプ。
「ベテランのジムリーダーか、強い相手には間違いないよね……だけど僕にはメガシンカがある。絶対に勝つぞ」
ターミナルに表示される地図を頼りに進み、ハルはジムと思われる場所に辿り着く。
街並みに合わせて赤レンガで造られているが、他の家や倉庫と比べてより大きな建物だ。
入り口の扉の上にはジムのマークがあるし、ここで間違いないだろう。
そして、着いたと同時に、
「あっ、ハルじゃん。来てたの?」
「あれ、サヤナもここに?」
丁度、ジムからサヤナが出てきた。ハダレタウンで一旦別れたのだが、どうも行き先は同じだったようだ。
「ここから出てきたってことは、ジムに挑戦してたってことだよね」
「そうだよ。にひひー、めでたく五個目のジムバッジ、ゲットだよ!」
そう言ってサヤナは満面の笑みと共にバッジケースを取り出す。填め込まれている五つのバッジのうち、三つはハルが持っているバッジだった。
「ハルもここに来たってことは今から挑戦だよね。ここのジムリーダーさんちょっと怖いし、すっごい強かったよ。まぁ私でも勝てたし、ハルならきっと勝てると思うけどね。じゃあ私ポケモンセンターで待ってるから、結果報告待ってるね」
サヤナは手を振り、先に戻っていった。
怖い人と言われて少し緊張するが、やることはポケモンバトル。気持ちを切り替え、ハルは扉をくぐる。
「失礼します」
ジムの内部は広いが、造りは至って普通のジムだ。
中央にバトルフィールドがあり、観客席もある。このジムは、岩場のフィールドのようだ。
そして、
「何だ、また挑戦者か。今日は客が多いな」
フィールドの向こう側に立つのは、かなり背の高い男性だ。
歳は三十代後半から四十代前半といったところか。テンガロンハットを被り、白いシャツの上から丈の長い青いコートを羽織っている。表情はどことなくしかめっ面で無愛想だ。
「さっきまでジム戦をしてたんだ。ポケモンを回復させる。ちょっと待ってろ」
その男はそれだけ告げると、ハルの返事を待たずに一旦奥の部屋へと引っ込んでしまう。
しばらくして回復を終えたのか、再び奥の部屋から男が現れる。
「ジムの挑戦者だな。俺の名はカガチ。お前は」
「あ、ハルです……」
威圧的なカガチの雰囲気に既に圧倒されている気がするが、とにかくハルは自己紹介する。
「ハル……? それにその腕輪。なるほど、サオヒメのアリスがメガシンカを継承した話は聞いていたが、お前がそのトレーナーか」
どうやら、カガチはハルがメガシンカを使用することを知っているようだ。
「メガシンカの力は強大かつ単純だ。ポケモンとの間に絆があれば扱える。だがそれを正しく理解、使用しなければ、本当の力は発揮できん。お前にそれが理解できているか、このジム戦で俺が見極めてやろう」
さて、とカガチは言葉を続け、
「使用ポケモンは三体。ポケモンの交代は挑戦者のみ可能。いいな」
ジムのルールを軽く説明すると、モンスターボールを取り出す。
ルール自体は単純だ。先に三体倒せば勝ち。
「はい、よろしくお願いします」
五個目のバッジを賭けた、ハルのジム戦が始まる。

『information
 ジムリーダー カガチ
 専門:地面タイプ
 異名:荒ぶる大地の王(グランドキング)
 兼業:赤煉瓦財団代表』