二次創作小説(映像)※倉庫ログ

第73話 ジムバトル! カタカゲジム・リベンジⅣ ( No.135 )
日時: 2017/01/28 13:28
名前: パーセンター ◆AeB9sjffNs (ID: VYLquixn)
参照: フライゴンに立ち向かうヒノヤコマ。その身に、変化が——

軽快な動きで、ヒノヤコマは一気にフライゴンとの距離を詰めていく。
翼を振り下ろし、フライゴンへと叩きつける。
その、直前。

「ギガドレイン!」

フライゴンの長い尻尾が淡い光を帯び、触手のようにヒノヤコマに纏わりつく。
そのままヒノヤコマを締め上げ、体力を吸い取っていく。
「しまった……ヒノヤコマ!」
ギガドレイン自体は草技のため、ヒノヤコマにはあまり効かない。
だが重要なのはそこではなく、動きを拘束されてしまったということだ。
フライゴンの尻尾は強力、徐々に体力も蝕まれるため、そう簡単には抜け出せない。
「フライゴン、ドラゴンビート!」
フライゴンが巨大な翅を羽ばたかせると、砂が巻き上がると共に美しい歌声のような音波がヒノヤコマを襲う。
さらに、羽ばたきによって風が砂を乗せて巻き上がり、フライゴンの周囲に砂風の壁が発生する。
「フライゴン、投げ捨てろ」
締め上げられて体力を吸い取られ、ぐったりしたままのヒノヤコマを、フライゴンは尻尾を振り払って砂の風の中へと放り捨てる。
砂の風に投げ込まれ、ヒノヤコマは風に巻き込まれて大きく吹き飛ばされてしまう。
「ヒノヤコマ!?」
砂風を浴びて吹き飛ばされ、ヒノヤコマが岩場に激突する。
まだ起き上がろうとしているが、大ダメージに変わりはない。
「次でとどめだな。フライゴン、ドラゴンビート!」
フライゴンが巨大な翅を羽ばたかせ、歌声の如く美しい音波と共に衝撃波を飛ばす。
美しくかつ勇ましい歌姫の歌声が、ヒノヤコマへ迫る。
その刹那。

轟音、そして爆発。
ヒノヤコマの体が、炎に包まれた。

「えっ……!?」
「なに……?」
ハルだけでなく、カガチも驚きの表情を見せる。
炎に包まれ、その中でヒノヤコマは青く激しい光に覆われ、その姿を変えていく。
体は一回り大きくなり、空を駆ける翼はさらに大きく、頑丈にその形を変えていく。
姿を変えたヒノヤコマが、翼を大きく広げる。
気高く力強い啼き声と共に、炎の中から紅蓮の鳥ポケモンが飛翔する。

『information
 ファイアロー 烈火ポケモン
 飛行速度は実に時速500キロ。
 激しい戦闘の時には全身の羽毛
 の隙間から火の粉を吹き出す。』

「ヒノヤコマ……いや、ファイアロー! 進化してくれたんだね!」
感激するハルの言葉に応え、ファイアローは再び力強く啼く。
図鑑を確認すれば、新しい強力な技を覚えている。
「ここで進化とは……いいだろう。その力、俺に見せてみろ」
「望むところです! ファイアロー、ニトロチャージ!」
ファイアローが紅蓮の炎に包まれ、突撃していく。
「フライゴン、防御だ」
対するフライゴンは羽ばたいて砂を巻き上げようとする。
だがそれよりも早く、ファイアローはフライゴンの懐まで一気に潜り込み、フライゴンを突き飛ばしていた。
「すごい……速い!」
「っ……フライゴン、ドラゴンビート!」
突き飛ばされたフライゴンは巨大な翅を羽ばたかせ、美しい歌声のような音波を放射する。
「正面、突破だ! ファイアロー、ブレイブバード!」
ファイアローの体が、青い炎の如き激しいオーラに包まれる。
翼を広げて猛スピードで低空飛行、音波をぶち抜いて突き進み、ファイアローの捨て身の一撃がフライゴンを貫いた。
甲高い悲鳴をあげ、フライゴンが吹き飛ばされる。
地面に落ちた時には、既にフライゴンは戦闘不能になっていた。
「フライゴン、戻れ」
倒れたフライゴンをボールへ戻すと、カガチは最後のボールを取り出す。
見覚えのあるボールだった。繰り出されるより前に、ハルにはカガチの最後の一手に何が出てくるか分かった。
そして、
「その顔は、分かっている顔だな。その通り、俺の最後のポケモンはこいつだ」
ハルの予想通り、カガチの手にしたボールから、あのポケモンが現れる。

「出番だ、バクーダ!」

カガチの最後のポケモンは、前回の戦いでハルを敗北に追い込んだあのバクーダだ。
「来たな、バクーダ……やっぱりこいつが一番強かったのか」
一週間前にはワルビルとメガルカリオを瞬く間に戦闘不能に追い込んだ強敵。
だが、今のハルは一週間前とは違う。今度こそ、勝ってみせる。
「ファイアロー、行くよ! ブレイブバード!」
ブレイブバードが啼き声を上げると、再びその体を激しい青のオーラが覆う。
そのままミサイルのように、ファイアローは超高速でバクーダへと突っ込んでいく。
「バクーダ、火炎放射!」
対するバクーダは背中の火口から上空に灼熱の業火を打ち上げる。
その後、バクーダはファイアローの突貫をまともに受け、痛みを表情に表す。
だが、攻撃を終えたファイアローへ、上空から炎の雨が襲い来る。
「ファイアロー、アクロバットだ! 全弾回避!」
空中を舞い踊るように飛び回り、ファイアローは炎の雨を次々と躱していく。
躱しながらバクーダとの距離を詰め、翼を思い切り振り下ろす。
だが。
「バクーダ、ダイヤブラスト!」
その直後、バクーダの周囲の空気が突如爆発を起こし、青白く煌めく爆風が迸る。
「しまった……ファイアロー!」
ダイヤブラストは岩タイプの技。炎と飛行タイプを併せ持つファイアローには二重に効果抜群であり、さすがに耐え切ることはできず、地に落ちて戦闘不能となってしまう。
「ファイアロー、よく頑張ってくれた。フライゴンを突破できたのは君のおかげだよ」
ハルは倒れたファイアローを労い、その嘴を撫でる。
「大丈夫。後は僕とルカリオに任せておいて」
ファイアローを戻すと、ハルは最後の一つとなったボールを手に取る。
「君で最後だ。出てきて、ルカリオ!」
ハルの最後のポケモンは、勿論エースのルカリオ。最初にメガシンカを遂げてそのまま、メガルカリオの姿だ。
「ルカリオ、今こそリベンジを果たす時だよ。一緒に、このバクーダを倒そう」
ハルの言葉に、ルカリオは静かに頷き、両手から青い波導を生み出す。気合は十分だ。
「さあ、一週間で本当にお前が正しい方向に変わったのであれば、このバクーダにその成果を叩き込んでみろ。一週間前の実力に加えてただの付け焼き刃程度では、到底このバクーダを倒すには至らんぞ」
「望むところです! ルカリオ、行くぞ!」
ハルの力強い返事に合わせ、ルカリオも右腕をバクーダに向けて突き出す。
「波導弾!」
ルカリオの右掌から、青い波導が噴き出す。
その波導を凝縮させて念弾を作り上げ、バクーダへ向けて一直線に放出する。
「バクーダ、火炎放射!」
バクーダは大きく息を吸い込み、灼熱の炎を噴き出す。
波導の念弾と灼熱の炎が激突。だが次第に波導の念弾が炎を押して突き進み、遂には炎を貫き、バクーダの額へと直撃した。
「……なるほど。特訓の成果は本物、ということか」
それを見てカガチは呟く。そしてほんの少し、ほんの少しだけ、僅かな笑みを浮かべる。
「その実力があるならば、俺とこいつも手加減無しで大丈夫だろう」
なにやら意味ありげな様子で語るカガチ。
「一週間前に言ったな。メガシンカとは強大かつ単純な力。ポケモンとの間に絆があれば扱えると。だがその真の力は、それを正しく理解していなければ発揮されない」
「……まさか」
瞬間的に。
この後何が起こるかが、ハルには分かってしまう。
「そのまさかだ。メガシンカの力、扱えるのはお前とお前のポケモンだけじゃあない。それを見せてやろう」
そう言って、カガチは外れていたコートの一番上のボタンを締める。
いや、違う。ボタンの代わりに付けられているものは、紛れもなくキーストーンだった。

「貴様の目の前にそびえ立つ、高い壁となろう! バクーダ、メガシンカ!」

体毛に隠れていたバクーダの前脚のメガストーンが、カガチのキーストーンに反応し、七色の光を放つ。
二つの光の束が繋がって一つの大きな光となり、バクーダを包み込む。
光の中で、バクーダはその姿形を変えていく。
背中の二つのコブは一体化し、活火山のような形へと変わる。
体を守る体毛はさらに長さを増し、足元まで覆ってしまう。
額に黒い模様を刻み、バクーダがメガシンカを遂げる。
大地を揺るがす咆哮と共に、背中の火山が噴火し、辺りに爆炎を撒き散らした。
「これが……メガバクーダ……!」
バクーダのメガシンカした姿、メガバクーダ。扱える炎の規模は、量、強さとも大幅にパワーアップしている。
メガルカリオ対メガバクーダ。メガシンカポケモン同士の最終戦の火蓋が、切って落とされた。