二次創作小説(映像)※倉庫ログ
- 第76話 開通作業 ( No.139 )
- 日時: 2017/01/30 22:32
- 名前: パーセンター ◆AeB9sjffNs (ID: VYLquixn)
- 参照: カガチとの合同特訓。その内容とは?
「ポリゴン2、冷凍ビーム!」
「なら、ワルビル、躱して噛み砕く!」
『information
ポリゴン2 バーチャルポケモン
最高性能の人工知能を組み込んで
作り出されたポケモン。プログラム
されていない動作を行うことも。』
エストレのポケモン、赤と青の色のアヒルを模した人工ポケモン、ポリゴン2が、凍える冷気の光線を放ってワルビルを攻撃する。
対するワルビルは間一髪で光線を躱すと、大顎を開いてポリゴン2へ襲い掛かる。
今日はサーカスの日の前日、今はそろそろ日が暮れる頃。街は一通り見て回ったので、今日は三人でポケモンバトルをやっているのだ。今はエストレ対ハル。
ワルビルの頑丈な牙がポリゴン2の体に食い込むも、ポリゴン2は全く表情を変えず、
「シグナルビーム!」
目から激しく点滅する光線を放ち、ワルビルを引き剥がすと、
「これでどうかしら? トライアタック!」
さらに周囲に赤、青、黄の三色の球体を作り上げ、そこからそれぞれ三色の光線を撃ち出す。
「ワルビル!」
効果抜群の一撃を受けていたワルビルは体勢を崩して躱すことができず、トライアタックの直撃を受けて戦闘不能になってしまった。
「ワルビル、お疲れ様。よく頑張ったよ」
ハルはワルビルの頭を撫で、ボールへと戻す。
「さすがはエストレさん。そのポリゴン2、強いですね……」
「ヒザカリ大会で貴方に負けてから、また鍛え直しましたからね。何回も負けてあげるほど優しくはなくてよ?」
ハルの言葉に、エストレは得意げな笑みを浮かべてそう返す。
ちなみに少し前にサヤナも戦っていたが、やっぱりエストレが勝った。
「さて、今日はこんなところかしら。ハル、貴方は明日カガチさんとの特訓があるのでしょう? 遅れてはダメよ」
「はい、頑張ります。エストレさんはサーカス楽しんできてくださいね。あとサヤナも」
「うん! にひひー、撮影オッケーだったらいっぱい写真撮ってきてあげる! ハルも頑張ってね、どんなんだったか話も聞かせてね!」
二人がサーカスに行くとなると自分が行けないのは少しばかり残念だが、後悔はしていない。
それに、
(滅多とないジムリーダーとの特訓だ。あのカガチさんの特訓だけあってなかなかにハードなものだろうけど、せっかくの機会だ、頑張ろう)
日は暮れ、そしてまた次の日がやって来る。
「それじゃ、頑張ってね」
「しっかり鍛えられてきなさい」
「うん。じゃ、二人も楽しんできて」
翌日、サヤナとエストレと別れ、ハルはカガチに指定された街の端の洞窟の前にやって来た。
「よし、来たか。それでは少し早いが、もう始めるぞ」
「はい。よろしくお願いします」
合流の時間より早く着いたはずだが、既にカガチが待っていた。
「よし。さて、特訓の内容だが……そこまで身構える必要はない。やることは簡単だ」
そう言いながら、カガチは手帳を取り出す。
「この洞窟は天然のものではない。人工の洞窟、言わばトンネルだな。通称マデルトンネル、この地方の街のいくつかを繋いでいる街だ。もっとも、今のところはこことノワキタウン、イザヨイシティの三つしか繋がっていないがな」
だから、とカガチは続け、
「もう一箇所。このトンネルを、ヒザカリタウンまで繋げたい。ヒザカリタウンは今、町興しを行っている。カタカゲとヒザカリが直接繋がれば、少しは足を運びやすくなるからな。とはいえ、トンネルは最近掘り始めたばかり」
「なるほど、そうなんですか……」
とは言ったものの、このトンネルが特訓と何か関係あるのだろうか。
などとハルが考えていると、
「そこでだ。お前とお前のポケモンたちにも、このトンネルを掘るのを手伝ってもらう」
「……はい?」
「たかがトンネル掘りだと侮るな。この辺の地下には大きな岩が埋まっていたり、地盤が硬いところがあったりと、何かと不便なんだ。そこを掘り進んでいくだけでも、充分な特訓の一環になるぞ」
確かにカガチの言うことは間違っていない。
ポケモンのパワーを鍛えるという意味では、トンネル掘りの作業はうってつけなのだろう。
などとハルが考えていると、
「おい、何をぼーっとしている」
突然、カガチから大きなシャベルを投げ渡された。
「……はい?」
「はい? じゃねえ。トンネルを掘るんだ。話は聞いていただろ」
「ええ、聞いてましたけど……」
「だったら始めるぞ。ついて来い」
「あ、はい!」
カガチの後を追って、ハルはトンネルの中へと入っていく。
ハルが追いつくと、カガチはサンドパンとサナギラスを繰り出し、ポケモンと共にシャベルを持ってトンネルを掘り始めていた。
つまり、
「これ、僕もやるってことですよね」
「当たり前だ。まさかとは思うが、ポケモンに任せきりなんて考えていたわけじゃないだろうな?」
「……い、いえいえ。勿論、僕もやりますよ。それじゃ出てきて、ルカリオ、ワルビル」
特訓の内容が予想と全く違ったが、やむを得ない。
カガチを真似てハルも二体ポケモンを繰り出し、トンネルを掘っていく。
サヤナとエストレがテントに着いた頃には、既に多くの人が並んでいた。
「わあ、まだ受付時間前なのに……」
「私たちだって受付時間前に来てるのよ。考えることはみんな同じ、それだけ人気のサーカス団ってことですわ」
チケットを取り出し、サヤナとエストレは列に並ぶ。
受付が始まり、列がぞろぞろと動き出した頃には、列は二人が来た時と比べてはるかに伸びていた。
「サヤナ、いいかしら。受付が終わったら、そこからはこの列は関係なくなる。つまり」
「つまり?」
「テントの中に入った瞬間から、戦争が始まるわよ。席取りの戦争が。私たちも乗り遅れは出来ませんわ。一気に最前席を確保しますわよ」
「分かった。最前席まで直行すればいいんだね」
二人が話している間にも列はどんどん進んでいく。
「ご来場、ありがとうございます! 楽しんでいってくださいね!」
女性団員のチケットもぎりを終えると、いよいよテントの中。
明らかに、今までと比べて客の歩く速さが違う。
「さあ、行くわよ!」
「うん!」
エストレとサヤナも乗り遅れまいと足を速め、人混みの中を突き進む。