二次創作小説(映像)※倉庫ログ

第79話 ピエロ ( No.142 )
日時: 2017/02/02 12:47
名前: パーセンター ◆AeB9sjffNs (ID: VYLquixn)

「私の相手は、お姉はんでええんやね?」
エストレを相手取るのは、緑のピエロ、ルンペル。
「ええ。速攻で吹き飛ばして差し上げますわ」
「おーおー、お姉はん元気やねえ。ほな、始めますか」
不敵に笑い、ルンペルが手にしたボールを投げる。
「こいつでどないや、パンプジン!」
ルンペルが繰り出すのは、カボチャのような胴体から細い体が生えたようなポケモン。髪のような部分から長い腕が生えている。

『information
 パンプジン カボチャポケモン
 何種類かのサイズが確認されて
 いる。細かい差異はあるが
 現在では四種類に分類される。』

「草とゴーストタイプのパンプジン……行きなさい、ハッサム!」
エストレが繰り出すのはエースのハッサム。
「行くわよ! ハッサム、燕返し!」
ハッサムが動き出す。
腕を刀身のように白く輝かせ、一気にパンプジンとの距離を詰めて必中の攻撃を繰り出す。
「パンプジン、ギガドレイン!」
だがハッサムの両腕がパンプジンの腕に掴まれ、食い止められてしまう。
さらにパンプジンの腕が淡い光を放ち、その光をハッサムへ侵食させ、体力を少しずつ吸い取る。
「ハッサム、吹き飛ばしなさい! メタルブラスト!」
体力を吸われるとはいえ、草技はハッサムにはあまり効かない。
両手の鋏を開き、そこからハッサムは鋼のエネルギーを放出し、パンプジンを引き剥がす。
しかし、
「残念。それじゃあかんのよ」
吹き飛ばされたパンプジンは、何食わぬ顔で戻ってくる。
「私のパンプジンは特大サイズ。物理攻撃は効かへんなぁ」
図鑑説明にもある通り、パンプジンというポケモンは四種類のサイズがあり、それぞれ優れた能力が違ってくる。
その中でもルンペルの持つ個体は特大サイズ。四種類の中で動きは一番遅いものの、最も耐久に、特に物理耐久に優れたサイズだ。
「だったらこうよ。ハッサム、剣の舞!」
ハッサムはその場で、剣のように鋭く激しく舞い踊る。
猛々しい舞によって、攻撃力を一気に引き上げる。
だが、
「それもあかんで。鬼火!」
それを見たパンプジンは不気味に揺らめく青白い火の玉をハッサムに向けて放つ。
咄嗟に炎を躱そうとするも、火の玉はしつこくハッサムを追尾し、ついにはハッサムに命中、その赤い鋼の体に火傷を負わせる。
「ッ……火傷状態……!」
「せや。お姉はんほどのトレーナーやったら、この状況がどんだけ面倒なことか、分かるやろなぁ?」
状態異常、火傷。
毒のようにじわじわとダメージを受け続けるだけでなく、攻撃力が大きく下げられる。
つまり、一度の剣の舞が意味を成さなくなったということだ。
「だったらもう一度舞うわ! ハッサム、剣の——」
「そうはいかへん。パンプジン、火炎放射!」
ハッサムは再び剣の舞を舞おうとするが、パンプジンが下半身のカボチャの口を模した切れ目から灼熱の炎を吹き出す。
「まずいっ……ハッサム、躱して!」
剣の舞を中止し、ハッサムは跳躍、間一髪のところで炎を躱す。
「炎技を持っているのね……また厄介な……」
鋼と虫タイプを併せ持つハッサムの弱点は非常に少ないが、唯一残る弱点の炎には非常に弱い。
「休む暇あらへんで。パンプジン、シャドークロー!」
パンプジンは髪のような両手に黒い影の爪を纏わせる。
ゴーストポケモンらしく浮遊できるようで、パンプジンは宙に浮き上がると、影の爪を構えてハッサムへと向かっていく。
「ハッサム、燕返し!」
対して、ハッサムは両腕を白く輝かせ、パンプジンを迎え撃つ。
立て続けに振るわれる鋏の腕がパンプジンの影の爪と激突する。
連続で二者の腕がぶつかり合ううちに、パンプジンの腕を覆う影は削がれ、やがて隙を突いてハッサムの白く輝く右足がパンプジンを蹴り飛ばす。
「うーん、火傷があっても痛えもんは痛えなぁ……まぁ剣の舞で火傷の攻撃力低下が意味を成しとらんから、仕方あらへんのやけどね……もう一回積ませる隙は与えへんで」
そしてパンプジンが吹き飛ばされたのを見ても、ルンペルは不敵な笑みを浮かべるのみ。
蹴り飛ばされたパンプジンはすぐにルンペルの元へ戻り、ケラケラと笑う。
「ハッサム、アイアンヘッド!」
鋼の頭部をさらに硬化させ、ハッサムは飛び出し、頭突きを繰り出す。
「パンプジン受け止めい! シャドークロー!」
突っ込んでくるハッサムに対し、パンプジンは影の爪を纏わせた両腕を突き出す。
勢いを止めきれずにハッサムに押されるが、それでもパンプジンは吹き飛ばされず、地に足をつけて耐え切った。
「ギガドレイン!」
ハッサムを掴んだまま、パンプジンは淡い光をハッサムに侵食させ、再び体力を吸い取る。
「ハッサム、メタルブラスト!」
再びハッサムは鋏から鋼エネルギーを放出し、パンプジンを引き剥がすと、
「畳み掛けなさい! ハッサム、燕返し!」
地を蹴って飛び出し、宙を舞うパンプジンに腕を叩きつけ、地面へ叩き落とし、さらに、
「もう一度よ!」
パンプジンの首を狙い、鋏を開いて急降下を仕掛ける。
しかし、
「パンプジン、火炎放射!」
地面に倒れたままのパンプジンが、カボチャの口から灼熱の業火を噴射する。
一直線に急降下するハッサムが炎を躱す術はなく、ハッサムは鋏を突き出したまま炎の中に飛び込んでいく形となる。
落下の勢いもあってか、ハッサムは炎を突っ切り、パンプジンの首へと鋏を食い込ませる。
だがそのハッサムの体は黒く焦げ、かなり大きなダメージを受けている様子。炎を貫き、突っ切ったとは言え、ハッサム側もただでは済まなかったようだ。
「ハッサム、そのまま吹き飛ばしてしまいなさい! メタルブラスト!」
それでも、ここでハッサムはパンプジンを捕らえた。
鋏が銀色に光り、そこから鋼エネルギーが放出される。
「ギガドレイン!」
だがその前にパンプジンの両手が、ハッサムの腕を掴む。
赤い腕を引き離し、両腕で縛り上げ、鋏を塞いでしまう。
発射口がなくなり、鋼エネルギーは暴発し、逆にハッサムが吹き飛ばされてしまった。
「っ……! ハッサム、まだやれるかしら」
さすがエースポケモンと言ったところか、体の黒い煤を払いながら、まだハッサムは立ち上がる。
「あら、まだ立てるんか……今ので決まった思てんけど」
ルンペルがくすくすと笑うと、倒れていたパンプジンが起き上がり、再び宙に浮かび上がる。
(ただの一団員かと思ってたけど、意外に強いというか、しぶといですわね。サヤナ、そっちは大丈夫かしら……そっちにまで手を貸せる余裕は無さそうね)
目の前のピエロが思ったより強敵であることを再確認し、エストレとハッサムは感情を見せない緑の道化師を見据える。