二次創作小説(映像)※倉庫ログ

第84話 変装 ( No.147 )
日時: 2017/02/07 07:52
名前: パーセンター ◆AeB9sjffNs (ID: VYLquixn)

「毒牙を刻め、モルフォン!」
ハーメルン・サーカス最終演目、ハル対ダンタリオン。
そのダンタリオンが初めに繰り出すポケモンは、毒蛾ポケモンのモルフォンだが、
「えっ……? そのモルフォンは……」
ハルには、そのモルフォンに見覚えがあった。
しかし使っていたのはダンタリオンではない。バトル大会で何度か当たった、リオンという少女のものだ。
「覚えていましたね。ならばそろそろ、種を明かしてもいいじゃろう」
そんなハルの様子を見て、ダンタリオンは不気味な笑みを浮かべる。
「貴方と大会で当たった、リオン、ダリ。その二人の名は覚えているな?」
リオンは言わずもがな。ダリはヒザカリ大会の一回戦で当たった男性トレーナーだ。
「ああ、でもそれがどうしたって……」
ハルが怪訝な表情で尋ねると、ダンタリオンはさらに口元を吊り上げる。

「その二人だがな。二人とも私の変装です」

「……は?」
思わず、ハルは聞き返す。
「変装するときの名前には拘りがありましてね、必ず元の名前六文字から文字を取って名前をつけている。情報収集に利用していたのだが、そろそろ限界もあるし、この辺で明かしてしまおうと思ったものでな」
証拠を見せると言わんばかりに、ダンタリオンはモルフォンを一旦戻すと、別のボールを取り出す。
「夜を導け、ドンカラス!」
出てきたのはソフト帽のような形の頭部に、胸にはもっさりとした白い羽毛を膨らませたカラスのようなポケモン。

『information
 ドンカラス 大ボスポケモン
 低い声で鳴き声を上げるとすぐさま
 大量のヤミカラスの群れが集まる。
 夜を招く者とも言われている。』

進化して姿こそ変わってはいるが、明らかにダリの使っていたヤミカラスの進化系だ。
「ゴエティアの異常なほどの情報網は、お前の力だったのか……」
「まぁ私だけの力ってわけじゃねえけどな。特にアモンの情報網は俺様より遥かに上じゃ」
そう言いながら、ダンタリオンはすぐにドンカラスをボールへと戻すと、再びモルフォンを繰り出す。あくまでもバトルはモルフォンで行いたいようだ。
「やるしかない……頼んだよ、ファイアロー!」
ハルが繰り出すのはファイアロー。タイプ相性的に、モルフォンとの相性はいい。
「大会での実力を儂の力だとは思わないことだ。あの時は必ず一回戦で負けるために力を抑えていただけですからね。それでは行きますよ、モルフォン! ヘドロ爆弾!」
モルフォンが短い脚でヘドロの塊を抱えると、そこから無数のヘドロの弾が放出される。
「ファイアロー、躱してニトロチャージだ!」
ファイアローの体が、炎に覆われる。
次々とヘドロの弾を躱しながらモルフォンとの距離を詰め、炎の突撃を食らわせて突き飛ばす。
「ファイアロー、続けてアクロバット!」
さらにファイアローは軽快かつ不規則な動きでモルフォンへと飛びかかって行く。
しかし。

「モルフォン、バグノイズ!」

体勢を崩すモルフォンから、突如耳をつんざく甲高いノイズが放出された。
ノイズによって、ファイアローは動きを止められてしまい、
「サイコショット!」
モルフォンが放つサイコパワーの念弾を躱すことができずに、吹き飛ばされてしまう。
「俺のモルフォンの特性は色眼鏡。タイプ相性が今一つだろうと、それを一つ打ち消して攻撃を通せる。単なるタイプ相性では、私のモルフォンを止めることはできませんよ」
ダンタリオンがさっき言っていた通り、大会の時と比べても今回のモルフォンは明らかに強い。
「ちなみに儂の手持ちの中ではモルフォンは最弱。この子にすら勝てないようでは、ゴエティアに楯突くのは無謀も無謀だぜ」
「っ、何だって……?」
これで最弱。やはり魔神卿はつくづく恐ろしい。
しかし、勝てない相手ではなさそうだ。少なくとも以前カザカリ山道で戦った時よりはよっぽど手応えを感じる。
「負けて、たまるか! ファイアロー、ニトロチャージ!」
一度ニトロチャージを当てているため、スピードが上がっている。
元々高い素早さをさらに上げ、ファイアローは炎を纏って突撃していく。
「モルフォン、サイコショット!」
そのファイアローのスピードに対応し、モルフォンはサイコパワーを溜め込んだ念弾を放出する。
突撃を仕掛けるファイアローに念弾をぶつけ、ニトロチャージを相殺すると、
「ヘドロ爆弾!」
再びヘドロの塊を抱え、無数のヘドロの弾を発射する。
「だったらファイアロー、鋼の翼!」
対するファイアローは大きな翼を鋼の如く硬化させ、ヘドロの弾の中に突っ込んでいく。
毒タイプの技は鋼には効かない。鋼の翼でヘドロの弾を貫きながら、一直線にモルフォンを狙う。
「モルフォン、サイコショット!」
「ファイアロー、躱してアクロバット!」
モルフォンがサイコパワーの念弾を放つも、ファイアローは上昇してそれを躱し、上空から翼をモルフォンへと叩きつける。
「モルフォン、痺れ粉!」
だが翼を叩きつけられたモルフォンの大きな翅から、薄い色の鱗粉が放出される。
風に乗って飛ぶ鱗粉はファイアローに纏わりつき、ファイアローはその鱗粉を吸い込んでしまう。
直後、途端にファイアローの動きが鈍る。
「っ、麻痺を受けたか……ファイアロー、大丈夫?」
麻痺状態は素早さが大幅に低下し、さらに一定の確率で行動できなくなってしまう状態異常。ダメージ自体はないようで、ファイアローはハルの言葉に頷く。
「素早さを上げ直そう! ファイアロー、ニトロチャージ!」
翼を広げ、ファイアローは炎を体に纏い、突撃していく。
しかしその動きは先ほどよりも明らかに鈍っており、
「当たりませんな。モルフォン、躱してヘドロ爆弾!」
モルフォンは難なくひらりと突撃を躱し、ヘドロの塊を抱えて、無数のヘドロの弾を放つ。
「鋼の翼!」
鋼のように翼を硬化させ、ファイアローはヘドロの弾から身を守る。
「ならば、これでどうですか? モルフォン、バグノイズ!」
モルフォンが動きを止め、翅を激しく震わせ、耳をつんざく甲高いノイズを周囲全体に放射する。
しかし。

「今だ! ファイアロー、ブレイブバード!」

ファイアローの体が、燃える炎の如きオーラに包まれる。
そのままファイアローは翼を折りたたみ、全力で突貫する。
ノイズの壁を強引に打ち破り、守りを捨てたファイアローの渾身の一撃がモルフォンを貫き、大きく吹き飛ばす。
「ファイアロー、ニトロチャージ!」
さらにファイアローは炎を纏い、木の幹に激突したモルフォンを追って飛ぶ。
炎を纏ったファイアローがモルフォンに激突し、木の幹ごとさらにモルフォンを吹き飛ばした。
「……っ!?」
そちらを振り向くダンタリオン。
木の下敷きとなったモルフォンは、戦闘不能となって目を回していた。
「おやおや、やられてしまいましたか。モルフォン、戻りな」
悔しげというより、何故先手を取られたのか不思議そうな様子で、ダンタリオンはモルフォンをボールに戻す。
「なるほど。少しばかりは成長しているみてえだな」
モルフォンの入ったボールをしまうと、ダンタリオンはすぐさま次のボールを取り出した。
「それならば、そろそろこいつを使ってもいいじゃろう。王様の許可も出ていますしね」
真っ白な化粧という仮面の奥に素顔を隠す魔神卿、ダンタリオンが、次なるポケモンを繰り出す。

「奈落に落とせ、ゲンガー!」