二次創作小説(映像)※倉庫ログ

第85話 奈落 ( No.148 )
日時: 2017/02/08 15:19
名前: パーセンター ◆AeB9sjffNs (ID: VYLquixn)

『information
 ゲンガー シャドーポケモン
 獲物となる人やポケモンの影に
 潜り込み隙を窺って魂を喰らう。
 一度狙われれば逃れる術はない。』

ゴーストの進化系となるポケモン。タイプは変わらずゴーストと毒。
揺らめくガス状の体を持つゴーストとは違い手足が存在し、はっきりとした容姿を保っている。
「あのゴーストが進化したのか……いや、まだゾロアークの可能性もある。ファイアロー、申し訳ないけど、頼むよ」
体を痺れさせながらも、ファイアローは頷き、勇ましく啼く。
「ファイアロー、ブレイブバード!」
ファイアローが激しく燃え上がるオーラにその身を包み、翼を折りたたみ渾身の突撃を仕掛ける。
しかし、
「ゲンガー、ヘドロウェーブ!」
ゲンガーを中心として、その周囲に毒液が勢いよく溢れ出す。
捨て身でまっすぐに突っ込んでいったファイアローの攻撃力を持ってしても突き進むことができず、ファイアローは毒液の波に飲み込まれ、押し流されてしまう。
「っ、ファイアロー!」
倒れた木々を溶かし腐らせ、毒液が流れ去っていく。
ヘドロウェーブが途絶えた後には、ファイアローが戦闘不能となって倒れていた。
「くっ……ファイアロー、よく頑張ってくれたね。ゆっくり休んで」
ハルはファイアローを労い、ボールへと戻す。
(それにしても、ファイアローのブレイブバードを正面から打ち破るなんて。あのゲンガー、相当な火力の持ち主だ)
先ほどの口ぶりからしても、恐らくこのゲンガーがダンタリオンの切り札なのだろう。
「だけど、やるしかない! 次は君だ、ワルビル! 頼んだよ!」
ハルの二番手のポケモンはワルビル。悪技と地面技、主力技の両方で弱点を突ける。
「タイプ相性如きで儂のゲンガーに勝てると思ってんのか? ゲンガー、気合玉!」
ゲンガーが体内の気を一点に集めて、気合の念弾を作り出す。
「ワルビル、穴を掘る!」
ゲンガーが気合玉を放つと同時、ワルビルは素早く地面に潜り、地中へと身を隠す。
「ゲンガー、出て来た瞬間に気合玉です」
ゲンガーの右手に、再び気合の念弾が作り上げられる。
そのままゲンガーは辺りを見渡し、ワルビルの気配を探る。
「今だワルビル! 燕返し!」
ゲンガーが向いた方向と真後ろから、ワルビルが飛び出す。
刀身のように白く輝かせた腕を振るい、ゲンガーへと叩きつける。
「ゲンガー、後ろだ!」
対するゲンガーは素早く振り向き、手にした気合玉を直接叩きつける。
飛行タイプの技なので相性は不利のはずなのだが、競り合った末に吹き飛ばされたのはワルビルだった。
「押し流せ。ゲンガー、ヘドロウェーブ!」
「っ、ワルビル、躱して噛み砕く!」
裂けた口を大きく開き、ゲンガーは毒液の波を周囲に放つ。
対するワルビルは大きく跳躍して毒液を躱すと、そのままゲンガーに飛びかかり、頑丈な牙をゲンガーの体に食い込ませた。
ゲンガーを捕らえたままその首を大きく振り、ゲンガーを投げ飛ばす。
「ワルビル、一旦離れて。深追いは危険だ」
さらに攻撃を仕掛ける体勢に入るワルビルだが、ハルはワルビルを一旦退かせる。
「おや、なかなかやりますね。突っ込んできたら、返しの攻撃で吹っ飛ばしてやろうと思ってたんだがな」
ダンタリオンとゲンガーは同時に不気味に笑うと、
「ゲンガー、シャドーボール!」
ゲンガーの構えた両手に黒い影が宿り、黒い影の弾となって放出される。
「ワルビル、シャドークロー!」
影の弾を躱して、ワルビルは両腕に影の爪を纏わせ、ゲンガーへと飛びかかる。
「ゲンガー、躱すな。ヘドロウェーブ!」
ワルビルの影の爪に引き裂かれたゲンガーは、動きを止めなかった。
周囲に毒液の波を放出し、攻撃直後のワルビルを紫水の波に押し流した。
「しまった……ワルビル!」
「終わりじゃ! ゲンガー、気合玉!」
毒液に流されるワルビルに向けて、ゲンガーは身体中の気を溜め込んだ気合の念弾を撃ち出す。
起き上がったばかりのワルビルの額へと気合玉が直撃。効果抜群の一撃にワルビルは吹き飛ばされ、そのまま戦闘不能にまで追いやられてしまった。
「つ……強い! ワルビル、お疲れ様。よく頑張ったね」
ワルビルをボールへと戻すと、ハルは次のボールを手に取る。
(エーフィではだめだ。シャドーボールを受けてしまうと致命傷になってしまう)
ルカリオもルカリオで気合玉を受けてしまうのだが、ここはやはりルカリオしかない。
「こうなったら君の力を借りるしかない。頼んだよ、ルカリオ!」
悩んだ末にハルの選んだポケモンはルカリオ。
格闘技は効かないが、ボーンラッシュとサイコパンチはどちらも効果抜群。
「ルカリオ、相手は強敵だ。全力でかかるよ!」
ハルの言葉にルカリオは頷く。準備は出来ている。
「君と僕の、絆の力に応えて! ルカリオ、メガシンカ!」
ハルの持つキーストーンと、ルカリオのメガストーンが反応する。
七色の光に包まれ、咆哮と共にルカリオはメガシンカを遂げる。
「ゲンガー、気合玉!」
「ルカリオ、波導弾!」
ゲンガーが気合を溜め込んだ光の弾を放ち、ルカリオは右掌から青い波導の念弾を撃ち出す。
二者の放つ念弾が激突し、爆発を起こす。威力は互角だ。
「ルカリオ、ボーンラッシュ!」
爆煙の中を突っ切り、ルカリオは波導を長い骨の形に変え、ゲンガーへと突き出す。
「ゲンガー、シャドーボール!」
ゲンガーが黒い影の弾を放つが、ルカリオは骨のロッドの一振りでそれを弾き飛ばし、もう一振りしてゲンガーを殴り飛ばす。
地面技のボーンラッシュは、ゲンガーに効果抜群だ。
しかし、
「ほう、さすがはメガシンカの力です。貴方がメガシンカを使うなら、俺様もそろそろ本気を見せようか」
それを見た上でなお、ダンタリオンとゲンガーは不気味な笑みを浮かべる。
「本気……?」
本気。
その言葉に嫌な気配を感じ、ハルは聞き返す。
「ええ。まあ、口で説明するより実際に見せた方がいいじゃろう」
そう言うと、ダンタリオンは手馴れた様子で黒い杖をくるくると回す。
やがてその杖を握り、先端をハルへと突き付ける。
「なっ……!? それは……!?」
それを見たハルが、驚愕の表情を浮かべる。
黒い杖のその先にあったもの。それは。

「終わらない深淵を与えよう! ゲンガー、メガシンカ!」

杖の先に填め込まれていたのは、紛れもなくキーストーンだった。
ゲンガーが舌を出すと、その舌の先にピアスのようにメガストーンが付けられていた。
ダンタリオンのキーストーンから七色の光が飛び出し、ゲンガーのメガストーンの光と繋がる。
七色の光に包まれ、ゲンガーがその姿を変えていく。
背中や腕、そして尻尾は一気に刺々しくなり、真紅の瞳からは怪しい光を放っている。
下半身は異次元に潜っているのか、足は見えない。
そして。
より禍々しい姿となったゲンガーの額が不気味に蠢き、爛々と輝く黄色い三つ目の眼が現れた。
「メガシンカ——メガゲンガー」
暗き闇をその身に纏い、ゲンガーがメガシンカを遂げる。
「っ……メガゲンガー、だって……?」
今までハルが見たポケモンの中でも、かなり異質で異形なポケモンだ。
その歪な容姿からは、ただならぬ禍々しさを感じる。
「さあ、勝負はここからです。もっとも、最早勝負にならないかもしれぬがの」
ダンタリオンとゲンガーの邪悪な笑みが、ハルの瞳に焼きつく。