二次創作小説(映像)※倉庫ログ
- 第87話 トンネル ( No.152 )
- 日時: 2017/02/11 14:26
- 名前: パーセンター ◆AeB9sjffNs (ID: VYLquixn)
『続いてのニュースです。今日未明、カタカゲシティ郊外にて、誘拐の容疑で指名手配を受けていたハーメルン・サーカスの団長、グリム氏が、遺体で発見されました』
「えっ……!?」
ポケモンセンターの宿舎で目を覚まし、ターミナルでニュースを確認していたハルの耳に飛び込んできたのは、グリム団長の死亡を知らせるニュースだった。
『遺体には刃物で斬りつけられたような大きな傷跡があり、警察は殺人事件と見て、捜査を進めています……』
しかも、殺人。
昨日の大量誘拐でのミスによって用済みと判断され、ダンタリオンに処分されたのだろうか。
グリムも同情の余地もない悪人であるのは間違いないが、ディントスの時といい、こうも簡単に部下を切り捨てるゴエティアに対してはやり切れない怒りが浮かぶ。
それと同時に、
(やっぱり危険な組織だな、ゴエティア。今後関わるなら、一層用心しないと)
自分はパイモンのお気に入りか何からしいので、今のところは命を奪われることはないかもしれない。
だがそうでない人となれば話は別だ。邪魔する者には容赦しないのが、ゴエティア。
——ぼくは確かにハル君、君に期待してはいるけど、逆に言えばそれだけ。君のお友達にはなんの興味もないんだからね?
いつかのパイモンの台詞が、頭の中に蘇る。
ゴエティアの危険性を改めて認識しつつも、
(まぁ、そんなことを考えていても仕方ない。今は、僕がやることを考えよう)
気持ちを切り替え、ハルは次の街を目指す。
次なる目的地は、イザヨイシティだ。
次の街に向けて、ハルはカタカゲシティからイザヨイシティへと続くマデルトンネルを進んでいた。
イザヨイシティ方面はもう完成しているトンネルであるため、昨日掘り進めていた道と違い、きちんと舗装されており、薄暗くはあるものの周囲を見渡せる程度に照明が付けられている。
あまり明るくしていないのは、生息する野生のポケモンへの配慮だ。
「なになに……イザヨイシティはマデル地方における科学技術の最先端を突き詰めた街。街のあらゆるところに、最新の科学技術が使用されている……近未来的な街なのかなぁ」
今ハルが情報を検索しているこのアルス・ターミナルを製作した会社、アルスエンタープライズの本社の所在地もイザヨイシティにあるという。
さらに、少し先の出来事にはなるが、この街で大規模なポケモンバトルが開かれるらしい。
その規模、まさにポケモンリーグマデル大会の次に大きな大会。優勝の商品は賞金、それから何と、ポケモンリーグ予選のシード権だ。
「うん、ちゃんとジムもあるみたいだね。イザヨイシティに早めに着けたら、ジムに挑もう」
予定を立てながら、ハルは薄暗いトンネルの中を進んでいく。
しばらく進むと、分かれ道へと差し掛かった。
どっちに進むべきか迷うことになるかと思ったが、その疑問はすぐに晴れた。立て札が置いてある。
「えーっと……この先、ノワキタウン。関係者以外の立ち入りを禁ず、か」
道のど真ん中に置かれた立て札には、そう書かれていた。
昨日の特訓(トンネル掘り)中にカガチから聞いた話によると、ノワキタウンは粗大ゴミの捨て場として使われている、所謂無法地帯とのことだ。
一応ジムリーダーもいるらしいが、無法な町の治安維持を目的としたもので、今は形式的なものに過ぎないらしい。
マデル地方にはジムが八箇所しかないわけではないので、わざわざそんな無法地帯へと赴く物好きはそうそういないし、ハルもそんな物好きではない。
「まぁ、普通にイザヨイシティを目指そう」
そう独り言を呟き、立て札の立っていない道に進んで行こうとしたところで、
「邪魔だ! どけ!」
三人ほどの黒装束の男たちが通路から飛び出してきた。
ハルは突き飛ばされ、尻餅をついてしまう。
「痛たた……なんだ?」
お尻をさすりながらハルは立ち上がる。
よく見れば、黒装束はゴエティアの下っ端たちだ。
「……! ゴエティア……ここで何をやってたんだ!」
「げっ、お前、俺たちのこと知ってるのかよ」
思わずハルは身構えるが、男たちからは戦意を感じない。
「悪いが、俺たちは今お前のようなお子様に構っている暇はないんだ。俺たちが縄張りをちょいと荒らしてやったせいで、ここを住処にしてるポケモンが暴れ出しちまったもんでな。逃げるところなのさ」
「そういうこと。ま、イザヨイシティへ向かうにはそこを越えていくしかないがな」
それだけ告げると、男たちは立て札の立てられた通路の奥へと逃げて行ってしまった。
「何だったんだ?」
追いかけたい気持ちもあるが、無法者の町の中へ飛び込んでいくのも気が引ける。
何より、こんな薄暗いトンネルの中で追い掛けたとしても、すぐに見失ってしまうだろう。
「……ま、いっか。気にしないで進もう」
しばらく考えた結果、ハルは下っ端たちのことは気にせず、目的地へと足を進めることにした。
道が険しくなってきた。
照明は設置されているのだが、ところどころ電池が切れているらしく点灯しておらず、道もごつごつした石が目立つようになってきた。
薄暗い通路の中を、黙々とハルは進んでいく。
その時だった。
ズガァン! と。
トンネルの壁が破壊され、何者かが姿を現わす。
「な、何だ!?」
後ずさりし、身構えるハル。
襲撃者の正体はポケモンだった。恐らく野生のポケモンだろう。
赤い爪を持つ、緑色の小型の怪獣のような風貌のポケモン。口からは長い牙が突き出している。
『information
オノンド 顎斧ポケモン
口から突き出た牙は大岩を砕く
ほどの破壊力。非常に頑丈な反面
折れてしまうともう生え替わらない。』
ドラゴンタイプのポケモン、オノンド。牙を剥いて威嚇しており、相当興奮している様子だ。
「もしかして……さっきあいつらが言ってたのって……」
恐らくは、このオノンドのことだろう。この場所を住処としていたところ、下っ端たちに縄張りを荒らされて気が立っているのだろう。
「倒さないと進めないか……あんまり気が進まないけど、エーフィ、ここは頼んだよ」
戦闘は避けては通れないと判断し、ハルはエーフィを繰り出す。