二次創作小説(映像)※倉庫ログ
- 第91話 奇襲 ( No.160 )
- 日時: 2017/04/27 18:09
- 名前: パーセンター ◆AeB9sjffNs (ID: mvR3Twya)
- 参照: 奪われたものを取り返すべく、ヴァレンと戦うハル。しかし……
急降下を仕掛けるケンホロウの蹴りと、ルカリオの波導を纏った右手が激突する。
火花を散らしながら、激しく拮抗するが、
「ルカリオ! 吹っ飛ばせ!」
渾身の力を込め、ルカリオは右手を力一杯振り上げる。
均衡が崩れ、ルカリオの力に遂に押し負け、ケンホロウは吹き飛ばされる。
「なにっ……!?」
「ルカリオ、波導弾!」
大きく吹き飛んだケンホロウを狙って、ルカリオは両手を構え、掌から青い波導の念弾を放出した。
波導の念弾は正確にケンホロウを捉え、青い波導が炸裂し、ケンホロウを地面へと撃墜した。
「っ、ケンホロウ!」
砂煙が晴れると、既にケンホロウは戦闘不能になっていた。
「……! け、ケンホロウ、戦闘不能です!」
驚きを隠せない様子で、審判の少女ネルはケンホロウの敗北を告げる。
つまり、ハルの勝利だ。
「やるではないか……私の相棒であるケンホロウを倒すとはな。ケンホロウ、戻れ」
悔しげな表情を浮かべながらもハルを賞賛し、ヴァレンはケンホロウをボールに戻す。
「さて、どうだったメイゲツ。この少年は」
「フン、お前なら分かってるはずだ。聞くまでもねえだろ」
ヴァレンは引き下がり、代わりにメイゲツが再び進み出る。
「お前、強えんだな。まさか、うちのヴァレンに勝つとは思ってなかったぜ」
「さあ、約束です。僕の図鑑とターミナルを、返してください」
「分かってるよ。だがそう焦るな。話くらいは聞いていけ」
急かすハルを黙らせ、メイゲツは話を続ける。
「俺が見てたのは、お前の強さじゃねえ。お前のポケモンの戦いだ。人間は嘘をつく生き物だ、善人のフリして人を陥れる極悪人だっている」
だが、とメイゲツは続け、
「トレーナーがどれだけ嘘をつこうが、ポケモンは嘘をつかねえ。悪人に育てられりゃ、そのポケモンには悪人が育てたような動きになる。当然だわな。そんで、お前のルカリオだが、一目見てすぐに分かった。どう見ても悪人が育てたポケモンじゃねえ。お前を信頼して動き、お前からの信頼に応える。深い絆があって初めて成せる技だ。今だから言うが、例えお前が負けても、あの機械はお前に返すつもりだった」
そこまで言うと、メイゲツは後ろを振り返る。
「ジゼ」
「は、はい!」
「その機械を、こいつに返してやれ」
「っ……分かりました」
緑の髪の少年、ジゼが、図鑑とターミナルを持って進み出てくる。
「……悪かったな。これは返すよ」
ばつが悪そうな顔をしながらも、ジゼは素直に頭を下げた。
奪った二つの機械を、ハルの元へと返す。
「ううん。返してくれて、ありがとう」
ハルは笑顔で図鑑とターミナルを受け取り、元の場所に仕舞った。
「ジゼはお前を悪意のある侵入者と勘違いしたんだ。俺たちに危害を加えない奴には、俺たちも危害は加えねえ。だがここにあるゴミの山、こいつらは俺たちのモンだ。人の住む町に勝手にゴミを捨てといて、お宝が眠ってるんで奪いに来ましたなんて、そんな馬鹿な話あるかってこったな」
そう語るメイゲツの口調は、とても無法者とは思えない真剣味を帯びていた。
そしてメイゲツは薬を取り出し、丁寧にルカリオを回復させる。
「さ、もう行きな。ここはお前みたいな輝いてる人間がいるには不釣り合いな場所だ。今度は道を間違えるんじゃねえぞ」
「はい、気をつけます」
しかし、今だにハルはどこで道を間違えたのか分からない。
ひとまずカタカゲシティに戻って、一旦出直そうか、などと考え、ハルは振り返ってトンネルへと足を運ぼうとする。
その瞬間。
ズドォン!! と。
ハルの行く手をふさぐ形で、炎の弾が地面へと直撃した。
「うわっ!?」
「何だ!?」
ハルは揺れに足を崩して尻餅をつき、メイゲツたちは慌てて空を見上げる。
すると、
「タイミングが悪りぃな、お前。こんな時にここに来るなんてよ」
「貴方はキーストーンを持っている。残念ながら逃すわけには行きません」
一組の男女が、それぞれのポケモンに掴まり、空からゆっくりと降りてくる。
純白の修道服を着た女に、赤黒いスーツ風の服を身に纏った男。
「お前ら……!」
どちらもハルが見たことのある者だ。魔神卿ヴィネーに、魔神卿ベリアル。
ヴィネーはシンボラーの念力を受け、ベリアルは三つの頭を持つ黒いドラゴンポケモンの足に掴まっている。
『information
サザンドラ 凶暴ポケモン
休むことなく空を飛び続ける。
目に入った生き物は全て敵と判断し
襲い掛かって三つの頭で喰らう。』
サザンドラ、アジトで見たジヘッドの進化系だ。
「……何だお前ら。何者だ」
騒然とするノワキタウンの住人たちを黙らせ、メイゲツが先頭に立つ。
「貴方がこの町のリーダー、メイゲツですね。私たちは『ゴエティア』の魔神卿です。早速ですが、覚悟していただきます」
魔神卿の二人組が地面に着地、ヴィネーがそう告げる。
「ゴエティア! この町に何の用だ!」
ハルもメイゲツの横に並び、魔神卿に対峙する。
「なに、今回は完全に俺たちの私用でな」
ハルの言葉に答えたのは、ベリアルだ。
「この町にキーストーンがあることを、俺とヴィネーが同時期に突き止めてよ。さてどっちが貰おうかとなったわけだが、ま、折角だから二人で勝負。負けた方が勝った方に一杯奢るのさ」
「そんな遊び感覚で、人の物を奪いに来たのか……!」
「ハッ、当たり前だろ。だって——」
ベリアルはそこで一拍置き、
「——俺たちは、悪党だからな」
その言葉と同時に、どこからともなく無数の黒装束の人間たちが現れる。
「……チッ。ハル、お前はこの町の行く末とは関係ねえ存在だ。上手く隙を見つけて、早く逃げろ」
ハルにそれだけ告げ、返事を待たずにメイゲツは振り返る。
「ヴァレン、お前はエースをやられてる。だから指揮を執って、全員で周りの黒いザコ共を蹴散らせ」
「了解した……だがメイゲツ、お前は」
「決まってんだろ」
ヴァレンからの言葉に、メイゲツは苛立ちを込めて即答した。
「こいつらは、俺一人で片付ける」
メイゲツの放つ気が、殺意にも似たものに変わっていくのをハルは明確に感じていた。
「ほぉ、こいつぁすげえな。ヴィネー、やるぜ」
「ええ。我らに仇なす愚かな異教徒を葬り去るのも、また一興ですね」
さらにそんなメイゲツの様子を見た上で、なお不敵な笑みを浮かべる人間が二人。
そして。
「……メイゲツさん。僕も戦います」
ボールを取り出し、ハルもゆっくりと進み出る。
「この間から、こいつらの悪事には苛立ってるんです。目の前に現れた敵、放っちゃおけません」
「好きにしろ。だが何かあっても自己責任だぞ。いいな」
「もちろんです」
メイゲツに並び、ハルもボールを構える。
「どうするよ、ヴィネー。俺としては協力しても二手に分かれてもいいが」
「そうですね。ダブルバトルも面白そうではありますが……今回は私たちの勝負で来てますからね。個々で戦いましょう。私は黒い人を」
「そんじゃ、俺はこのガキだな」
既に周りではノワキの住人と黒装束の下っ端たちが戦いを始めている。
対戦カードが決まった。メイゲツ対ヴィネー、ハル対ベリアル。