二次創作小説(映像)※倉庫ログ
- 第93話 反射 ( No.164 )
- 日時: 2017/05/02 10:10
- 名前: パーセンター ◆AeB9sjffNs (ID: VYLquixn)
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「さあシンボラー、行きますよ」
ヴィネーの言葉を受けて、背後に控えていた異形の鳥もどきポケモン、シンボラーが進み出る。
魔神卿ヴィネーに相対するのは、ノワキタウンのリーダー格の男、メイゲツ。
「アブソル、片付けろ」
対するメイゲツが繰り出したのは、額に黒い鎌を持つ白毛の獣ポケモン、悪タイプのアブソル。
「ふむふむ、エスパータイプには悪タイプ。なるほど、セオリー通りですね」
ヴィネーは一見すると柔和な、しかし確かに邪悪さを含んだ笑みを浮かべる。
「ですが勿論対策は完備していますよ。シンボラー、シルフウィンド!」
細い翼を羽ばたかせ、シンボラーは白く輝く風を吹かせる。
「フン、フェアリー技か……アブソル、ギガスパーク!」
アブソルの額に電気が溜まっていき、巨大な電撃の砲弾を作り上げる。
放出された電撃の砲弾は白く輝く風を突き破り、シンボラーへと直撃した。
「おや……シンボラー、大丈夫ですか?」
電撃の砲弾を受けたシンボラーは、痺れに堪え、体を震わせて体勢を整え、頷く。
「よしよし、偉いですよ。シンボラー、エナジーボール!」
シンボラーが自然の力を一点に集め、淡く輝く光の弾を放出する。
「アブソル、躱せ」
光の弾を身軽に躱し、アブソルは地を蹴って飛び出す。
「イビルスラッシュ!」
そのまま一気にシンボラーとの距離を詰め、瞬時に連続で鎌を振るい、シンボラーを切り裂く。
「シンボラー、シルフウィンド!」
だがシンボラーもただではやられない。翼を羽ばたかせて輝く風を吹き付け、アブソルを風に巻き込み、メイゲツの元まで押し戻した。
「次はこうです。シンボラー、冷凍ビーム!」
続けてシンボラーは不気味な単眼から白い冷気の光線を放射する。
「アブソル、躱せ」
シンボラーの放つ冷気の光線を跳躍して躱しつつ、
「スプラッシュ!」
額の黒い鎌に水を纏わせ、それをシンボラーへと叩きつける。
「シンボラー、躱してはいけません。そのまま冷凍ビームを」
冷気の光線を放ち続けるも、アブソルには当たらず、シンボラーは水を纏った刃に叩き飛ばされてしまう。
しかし、
「っ、アブソル!?」
着地したアブソルの体勢が、急に大きく崩れた。
メイゲツが驚きアブソルの足元を見ると、地面が綺麗に白く凍り付いていた。
「ふふっ、気づいていませんでしたね。シンボラー、シルフウィンド!」
素早く体勢を立て直し、シンボラーは白く輝く風を吹かせる。
凍った地面では踏ん張ることも躱すこともできず、アブソルは風に巻き込まれ、宙に吹き上げられてしまう。
「シンボラー、冷凍ビーム!」
「アブソル、溶かせ! 怒りの炎!」
宙に吹き上げられたアブソルへとシンボラーが白い冷気の光線を撃ち出す。
対して、アブソルの瞳が一瞬だけ赤く輝く。
怒りの感情を力に変え、アブソルは荒れ狂う灼熱の爆炎を噴射する。
「シンボラー、食い止めなさい。サイコキネシス!」
咄嗟にシンボラーは念力で炎を操る。
炎を完全に消すことは出来ないが、念力に防がれ、シンボラーに炎は届かない。
「裂け。アブソル、イビルスラッシュ!」
自らが放った炎の中をアブソルは駆け抜ける。
サイコキネシスが効かないのを利用し、炎と念力の壁を容易く突破、額の黒い鎌を瞬時に振るい、シンボラーを切り裂く。
「やりますね……メジャーな三タイプの大技に、主力となる悪タイプの技。さすがに一筋縄では行きませんか」
「あまり俺を甘く見てくれるなよ、悪党かぶれの三下が。悪党ってのはな、カタギの人間には手を出さねえんだよ」
笑みを浮かべもせず、メイゲツはヴィネーを睨むが、
「はい? だから何だというのでしょう?」
それに対して嘲るような笑みを浮かべ、ヴィネーはそう返す。
「そんなことくらい分かっていますよ。それとも、まさかとは思いますが、自分たちのことをカタギの人間だと言い張るつもりですか?」
「っ……てめぇ……」
「この場にいるカタギの人間は、横で戦ってる少年ハル君だけです。分かってますか? 善人かぶれの三下さん」
蔑むようにせせら笑うヴィネー。
「……容赦しねえぞ」
「ふふ、いいでしょう」
メイゲツとヴィネー、そして互いのポケモンが再び動き出す。
「アブソル、ギガスパーク!」
「シンボラー、躱してシルフウィンド!」
アブソルが大きく叫び、巨大な電撃の砲弾を放出するが、シンボラーはふわりと飛び上がって電撃の砲弾を躱すと、細い翼を羽ばたかせて白く輝く風を吹かせる。
「撃ち破れ。怒りの炎!」
アブソルが瞳を怒りに染め、荒れ狂う爆炎を吹き出す。
灼熱の爆炎が白い風を薙ぎ払い、シンボラーを荒れ狂う炎の中に飲み込んだ。
「イビルスラッシュ!」
炎に体を焼かれるシンボラーの横を、アブソルは一瞬で通り過ぎる。
すれ違いざまに額の黒鎌を振るい、シンボラーを切り裂いた。
「おや、シンボラー……」
地面に倒れたシンボラーは全く動かない。明らかに戦闘不能だ。
「おやおや、先手を取られてしまいましたか。シンボラー、お疲れ様でした。休んでいてください」
ヴィネーはシンボラーを労い、ボールへと戻す。
「まさか先手を取られてしまうとは。たかがゴミ捨て場の住人だと思って甘く見ていましたが、少しはやるようで」
「舐めんなよ。俺様はこのノワキタウンのリーダーだ。カタギの人間には手ぇ出さねえが、俺たちから何か奪おうってんなら容赦しねえ。出て行ってもらうぜ、この場所から、もしくは、この世からな」
「……ふっ」
そこでメイゲツは、確かに聞いた。
ヴィネーの笑った声を。何か笑いを堪えきれず、思わず吹き出してしまったような、そんな声を。
「残念ですが」
薄ら笑いを浮かべながら、ヴィネーは続ける。
「その程度では足りないんですよ。たかが無法地帯のリーダー如きでは……私たちゴエティアにはね」
不気味な笑い声と共に、ヴィネーは二つ目のボールを取り出す。
「それを今から教えて差し上げますよ。キリキザン、裁きを下しましょう」
ヴィネーの二番手となるポケモンが姿を現す。
身体の至る所に鋭い刃を持ち、赤い鎧を身に纏ったような人型のポケモンだ。
「鋼タイプなら都合がいい、焼き尽くしてやるよ。アブソル、怒りの炎!」
アブソルの額が真紅に光り、荒れ狂う灼熱の猛火がキリキザンへと撃ち込まれる。
炎は瞬く間にキリキザンを飲み込み、その鋼の体をじりじりと焦がしていく。
しかし。
「キリキザン、メタルバースト!」
炎の中から、アブソルに向けて無数の銀色の光が放出される。
躱す隙すら与えず、無数の銀の光弾がアブソルを貫いた。
「アブソル!? っ、メタルバーストだと……!」
「ふふっ、ご存知のようですね。でしたら説明は不要ということで」
メタルバーストは受けた技のダメージを大きくして相手にそのまま返す技だ。
鋼タイプを持つキリキザンには炎技は効果抜群、つまり、アブソルはその大ダメージをさらに上回るダメージを受け、そのまま戦闘不能にまで追い込まれてしまった。
「……チッ。アブソル、戻りな」
アブソルをボールに戻し、メイゲツはすぐさま二つ目のボールを手に取る。
「だったら……ドラピオン、出番だ」
メイゲツの二番手は巨大な紫色の蠍のようなポケモンだ。手や尻尾の先には、頑丈な爪が生えている。
「毒と悪タイプのドラピオンですか……こちらからは有効打はありませんが、毒技が効かない分、こちらとしては余裕がありますよ」
それに、とヴィネーは続け、
「私のキリキザンにはメタルバーストがある。これを攻略しない限り、貴方は私には勝てない」
「だったら、こいつを食らいやがれ! ドラピオン、ミサイル針!」
ドラピオンの両手の鋏が白く光り、無数の白い棘がミサイルの如く一斉に飛び出す。
「キリキザン、メタルバースト!」
次々と白い棘を突き刺されたキリキザンの体が輝き、無数の銀色の光弾がドラピオンを貫く。
しかし、
「無駄だぜ」
ドラピオンはまるで表情を変えず、すぐさま起き上がる。ほとんどダメージは受けていない様子だ。
「ミサイル針は大量の棘を突き刺す技だが、一発一発の威力はたかが知れている。メタルバーストが反射できるのは、針一発分のダメージだけ。痛くも痒くもねえぜ」
「なるほど、そのようですね。ただそれさえ分かってしまえば、こちらは別の戦法をとって攻めるだけ。大した脅威ではないですね」
メイゲツと彼の二番手、ドラピオンに対し、ヴィネーは相も変わらず不敵な笑みを浮かべ、キリキザンを従え対峙する。