二次創作小説(映像)※倉庫ログ

第94話 破砕 ( No.165 )
日時: 2017/05/04 14:48
名前: パーセンター ◆AeB9sjffNs (ID: VYLquixn)

紅蓮の牙を剥き、血走った目を見開かせ。
ヘルガーが体勢を崩すワルビルへと飛び掛かる。
「……一か八かだ! ワルビル、シャドークロー! ヘルガーの口を掴め!」
一瞬の判断。
ワルビルが右手に黒い影を纏わせ、影の爪でヘルガーの口を掴み、その口を塞いだ。
ヘルガーの牙を纏う炎の力は、口を塞がれたことによって力の行き場を無くし、ヘルガーの口内で爆発してしまう。
その結果。
「なにっ……!?」
口内で爆発が生じ、ヘルガーが大きく吹き飛ばされた。
「今だワルビル! 噛み砕く!」
吹き飛んだヘルガーを追い、ワルビルは大顎を開いてヘルガーへと襲い掛かる。
ヘルガーに頑丈な牙を食い込ませ、そのまま大きく首を振ってワルビルを投げ飛ばし、ヘルガーを地面へと叩きつけた。
「っ……ヘルガー!」
地面へ叩き落とされたヘルガーは、目を回して倒れていた。戦闘不能だ。
「ほー、やるじゃねえか。ヘルガー、戻って休めよ」
ヘルガーをボールへ戻したベリアルは、いくつかのボールを手に取り、それらを眺める。
「さてっと、次は誰で行くかねぇ。暴力に任せて押し潰しちまってもいいが、それは任務の時にいつでも出来るし……たまには戦闘を楽しむか」
やがて二番手が決まったらしく、ベリアルは一つを手に取り、残りのボールを仕舞うと、
「破砕を、ドリュウズ!」
頭部と両手を鋼の鎧で武装した、モグラのようなポケモンを繰り出した。

『information
 ドリュウズ 地底ポケモン
 頭部と腕を構えてドリルのように
 高速回転しながらの突撃が得意。
 分厚い鉄板を容易く貫く破壊力だ。』

鋼タイプと地面タイプを持つポケモン、ドリュウズ。
そこまで大柄なポケモンではなく、ハルよりも背丈は小さい。
しかし、
(あの鋼の角に鋭い爪。小さいけど、かなりの強敵だよ)
見ただけで分かる程の実力。そしてそれ以前に、ゴエティアの戦闘担当を名乗る男のポケモンが弱い訳がない。
「ワルビル、相手は小さいけど強敵だ。気をつけてかかるよ」
ハルの言葉を受けてワルビルは頷き、ドリュウズを睨む。
「今度は先手はやらねえぞ。こちらから向かわせてもらう! ドリュウズ、アイアンヘッド!」
鋼の角を突き出し、ドリュウズが地を蹴って飛び出す。
猛スピードでワルビルとの距離を詰めるドリュウズに対し、
「ワルビル、穴を掘る!」
ワルビルは素早く地面に穴を掘り、地中へと身を隠す。
だが、
「地下から攻撃か……だが甘い! 迎え撃てドリュウズ、ドリルライナー!」
両手と頭の角を構え、ドリュウズは高速回転しながら地面へと突っ込んでいく。
地面を揺らしながらドリルのように地中を掘り進み、姿を隠して忍び寄っていたワルビルに激突、そのまま地上へと弾き飛ばした。
「なっ……!」
「俺様のドリュウズに地中から攻撃なんざ百年早えよ。ドリュウズ、やっちまいな! シザークロス!」
吹き飛ぶワルビルを追い、ドリュウズが勢いよく跳躍する。
鋭い鋼の爪を交差させ、ワルビルを切り裂いた。
「ワルビル!?」
空中で斬撃を受けたワルビルは撃墜されて地面へと落ち、目を回して戦闘不能になってしまった。
「ワルビル、お疲れ様……。っ、なんて攻撃力だ……」
確かにヘルガーとの戦いでダメージは受けていたが、それでもワルビルはまだまだ戦える体力が残っていたはずだった。
それがたった二発で戦闘不能。やはりそこはゴエティア魔神卿のポケモンということか。
「次は……君の出番だ。頼んだよ、ファイアロー!」
ハルの次のポケモンはファイアロー。地面技と鋼技に加えて虫技のシザークロスも効きが悪く、こちらからは炎技を効果抜群で撃てる。とはいえドリュウズの攻撃力が圧倒的であるため、タイプ相性もあまり当てにならないが。
「チッ、ファイアローか……岩技を覚えさせておけばよかったぜ」
ファイアローを見てベリアルは露骨に嫌そうな顔をするが、
「うだうだ言っててもしゃあねえか。ドリュウズ、蹴散らせ。ぶち壊す!」
ファイアローをその瞳に捉え、ドリュウズが飛び出す。
渾身の力を込めて、ファイアローを貫かんと鋼の爪を突き出す。
「ファイアロー、躱してニトロチャージ!」
対してファイアローは軽やかな身のこなしでドリュウズの破壊の爪を躱すと、力強い啼き声と共に体に炎を纏い、ドリュウズへ突撃する。
「迎え撃てよドリュウズ、アイアンヘッド!」
鋼の角をさらに硬化させ、ドリュウズが頭突きを繰り出すが、
「ファイアロー、それも躱して!」
翼を羽ばたかせて僅かに浮上し、ファイアローはドリュウズの頭突きを躱すと、頭上からドリュウズに激突、攻撃と同時に追加効果で素早さを上げていく。
「逃がさん! ドリュウズ、シザークロス!」
だがドリュウズもその程度では怯みもせず、ベリアルの指示に即座に反応、地を蹴って跳躍し、ファイアローを追って両腕の爪を振るう。
恐るべき速度をもって追いつくや否や、両爪を振り下ろし、ファイアローを地面へと叩き落とした。
シザークロスは虫技、炎と飛行のファイアローにはあまり効かない。しかし、
「ぶち壊す!」
鋼の剛爪を振りかぶり、ドリュウズが急降下する。
大地を穿つ一撃と共に、ファイアローが大きく吹き飛ばされた。
「ファイアロー! っ、やっぱり火力がおかしい……」
何をどうしたらここまでの攻撃力に育て上げられるのだろうか。
何とかファイアローは耐えたが、間違いなく体力を半分以上は持っていかれた。
「ちっ、耐えるのかよ。並のポケモンなら一撃で沈めるのが俺のドリュウズなんだがな。やっぱり同じタイプの技じゃねえと無理か……」
一方のベリアルはこの一撃でもまだ満足できないようで、頭を掻きながら悪態を吐く。
「……まぁいいか。どうせ次の一撃をぶつけりゃそいつも戦闘不能。圧倒的な攻撃力の下に相手を粉砕する、それが俺様のドリュウズだ」
鋼の爪を鋭く光らせ、ベリアルの言葉と共に、ドリュウズはファイアローを見据えて両腕を構える。
ベリアルが追撃を仕掛けて来なかったのは、一撃で倒せるものだと思っていたからか、それとも、今は勝利よりも戦闘に重きを置いているからか。
「さぁ、行くぞ。ドリュウズ、アイアンヘッド!」
硬く鋭い鋼の角をさらに硬化させ、ドリュウズは地を蹴って飛び出し、ファイアローへと突撃を仕掛ける。
「パワーじゃ勝てない……ファイアロー、躱して!」
翼を羽ばたかせ、火花を散らしながらファイアローは急上昇、ドリュウズの頭突きを躱すと、
「ニトロチャージ!」
その身に炎を纏い、炎の勢いを受けてさらに加速しながらドリュウズへと迫っていく。
「ドリュウズ、弾き飛ばせ。ぶち壊す!」
背後から突っ込んで来るファイアローに対し、ドリュウズは振り返って腕を振りかぶる。
だがベリアルの予想以上にファイアローのスピードは速く、破砕の爪を突き出す前にドリュウズは炎の突撃を受けて突き飛ばされてしまう。
「ファイアロー、深追いはしないで。一旦戻るよ」
さらにスピードが上がるファイアローだが、ドリュウズの攻撃力を警戒し、ハルはそれ以上の追撃は指示しない。
「何だ、来ないのか? だったら次はこっちの番だぜ。ドリュウズ、潜れ! ドリルライナー!」
角と両腕を構えてドリルのように高速回転し、ドリュウズは地面へと突っ込み、地中へ身を潜める。
「だったらファイアロー、上昇だ」
ファイアローは翼を広げ、大きく飛翔する。
ドリュウズの攻撃が届かない空中から、様子を探る。
だが。

「ドリュウズ、ぶち壊す!」

ベリアルが指示を出した直後だった。
轟音と共に大地が割れ、無数の岩片が弾け飛び、ファイアローの翼へと刺さる。
僅かにだがファイアローの動きが鈍った、その刹那。
腕を突き出したドリュウズが地中から飛び出し、鋼の剛爪がファイアローを穿った。