二次創作小説(映像)※倉庫ログ
- 第95話 流れ ( No.166 )
- 日時: 2017/05/05 18:25
- 名前: パーセンター ◆AeB9sjffNs (ID: VYLquixn)
「キリキザン、こちらからも動きましょう。ヘビーブレード!」
メタルバーストを主軸として待ち一辺倒だったヴィネーのキリキザンが、自分から動き出す。
両腕を構えて突撃し、腕に備えた刃を勢いよく振り下ろす。
「ドラピオン、受け止めろ! ポイズンクロー!」
鋭い爪を備えた両腕で、ドラピオンはキリキザンの両腕をガッチリと受け止めると、
「投げ飛ばしてミサイル針!」
力尽くでキリキザンを投げ飛ばし、すぐさま無数の針の弾幕を発射する。
「キリキザン、纏めて薙ぎ払ってしまいなさい。ヘビーブレード!」
刃を備えた右腕を思い切り振り抜き、キリキザンは無数のミサイル針を纏めて弾き飛ばす。
ただしそれでも全てを薙ぎ払うことはできず、残った針がキリキザンの体に刺さる。
「この程度ならば痛くもありません。キリキザン、辻斬り!」
「ドラピオン! こっちも辻斬りだ!」
キリキザンが飛び出し、ドラピオンはどっしりと構えてそれを迎え撃ち、互いの刃がぶつかり合って火花を散らす。
「ヘビーブレード!」
だがその次の動きはキリキザンの方が早かった。
ドラピオンと拮抗する右腕の力を一切緩めないまま、キリキザンは左腕の刃を思い切り振るい、ドラピオンを横から叩き飛ばした。
「キリキザン、ストーンエッジ!」
さらにキリキザンは地面を叩きつけ、ドラピオンに向けて地面から多数の岩の柱を出現させる。
「っ、ドラピオン、叩き割れ! ポイズンクロー!」
毒を帯びた強靭な鋏を振り下ろし、ドラピオンは足元からそり立つ岩の柱を粉砕するが、
「キリキザン、辻斬り!」
その間にも攻撃の手を緩めないキリキザンが刃を構えてすぐさま追撃を掛けてくる。
「ドラピオン、躱して炎の牙だ!」
今度は正面から対抗せず、ドラピオンはキリキザンの振り抜く刃を躱すと、口を開いて牙に炎を灯し、キリキザンへと噛み付く。
鋼の体を焦がし、大きく首を振ってヴィネーの元へとキリキザンを投げ飛ばした。
「なるほど、炎技をお持ちですか。これは気をつけて戦わなければいけませんね」
鋼タイプのキリキザンに炎技は効果抜群。炎の牙はそこまで威力の高い技ではないが、ダメージは中々のようだ。
「ドラピオン、ミサイル針!」
「これで防いでみせましょう。キリキザン、ストーンエッジ!」
ドラピオンが無数の針の弾幕を放つが、対するキリキザンは腕を地面に叩きつけ、今度はキリキザンの目の前に尖った岩の柱を出現させる。
そびえ立つ岩の柱によって無数の針は全て止められてしまい、その後ろにいるキリキザンには届かない。
「キリキザン、辻斬り!」
跳躍してキリキザンは岩の柱の上に立ち、さらにそこから大きく飛び、落下の勢いをつけてドラピオンへと斬りかかる。
「ドラピオン、受け止めろ!」
対するドラピオンは両腕と尻尾の鋏を構え、その場から動かずにキリキザンを迎え撃つ。
三つの鋏でキリキザンの腕を受け止めると、
「投げ飛ばしてミサイル針!」
追撃がくる前に腕を振ってキリキザンを投げ飛ばし、すぐさま無数の針の弾幕を発射する。
宙を舞う状態でさすがに躱すことはできず、キリキザンは針の弾幕を浴びてしまう。
「ドラピオン、もう一度続けろ!」
地面に落ちたキリキザンへ、ドラピオンはさらに針を放ち続けるが、
「キリキザン、ストーンエッジで防ぎなさい」
キリキザンは素早く起き上がると、地面を叩きつけ、再びキリキザンの正面に岩の柱を出現させる。
無数の針は岩の柱に突き刺さるも、やはりその後ろにいるキリキザンを捉えられず、
「ヘビーブレード!」
直後、その岩を砕き、キリキザンが両腕の刃を構えて一気にドラピオンとの距離を詰め、渾身の力で両腕を振り下ろす。
切り裂くというよりも叩き割るような重い刃の一撃が、ドラピオンの脳天に直撃した。
「っ、ドラピオン! まだいけるか!」
ドラピオンは呻き、数歩よろめくも、大きく首を振って体勢を整え、メイゲツの言葉に頷く。
「おや、流石は防御力に優れたドラピオン。並のポケモンなら今の一撃で戦闘不能、もしくは致命傷にまで追い込むはずなんですが」
「俺様のドラピオンを甘く見てくれるなよ。火力こそアブソルに劣るが、耐久力は俺の手持ちの中で一番高い。特に物理方面にはな」
「なるほど。ではそのドラピオンを倒してしまえば、それ以上硬いポケモンは出てこない、ということでよろしいですね」
瞳に邪悪な光を浮かべ、ヴィネーは不敵に笑うと、
「でしたらそろそろ決めてしまいましょう。キリキザン、ストーンエッジ!」
両腕を地面に叩きつけ、地面からドラピオンへ向けて無数の岩の柱を出現させる。
「ドラピオン、撃ち砕け! ポイズンクロー!」
毒を帯びた両腕の鋏を地面へと勢いよく突き刺し、ドラピオンは足元からそり立つ岩の柱を粉砕する。
だが、
「今ですキリキザン! ヘビーブレード!」
ドラピオンの両腕が地面に深々と刺さったその瞬間、キリキザンが刃を備えた両腕を構えて飛び出す。
ドラピオンが地面から両腕を引き抜くが、既にキリキザンはドラピオンの眼前に迫り、両腕を振り上げる。
「仕方ねぇ! ドラピオン、尻尾で守れ!」
一刀両断の両腕が振り下ろされるその直前、ドラピオンの尻尾が伸び、キリキザンの両腕はドラピオンの尻尾に命中する形となる。
ダメージはかなり大きいが、それでも弱点となる頭部への被弾は避け、
「炎の牙!」
大口を開いて牙に炎を灯し、攻撃直後のキリキザンへ牙を食い込ませる。
その刹那だった。
「それを待っていたんです。キリキザン、メタルバースト!」
キリキザンの鋼の体が白く輝き、直後、そこから無数の銀色の光弾が放たれる。
「っ……! ドラピオン!」
光弾はドラピオンを貫き、吹き飛ばし、戦闘不能にまで追い込んでしまった。
ただ、
「さて、一丁あがりです……?」
炎の牙をギリギリ耐え抜いたはずのキリキザンもまた、数歩よろめいて地面に倒れてしまう。
キリキザンの体をよく見ると、火傷の跡があった。ドラピオンの最後の炎の牙の追加効果によって、火傷を負ってしまっていたのだ。
「相討ち上等。ドラピオン、よく頑張った。戻りな」
「不運でしたか……それでも十分仕事をしてくれましたね。キリキザン、ゆっくりお休みなさい」
互いにポケモンを戻したところで、
「さて、流れはどうやら、こっちにあるみたいだぜ」
唐突にメイゲツがそんなことを言い出す。
対するヴィネーは否定しない。表情を変えずに、真顔のままじっとメイゲツを見据える。
否定しないのは、ヴィネーも分かっているからだ。
つまり、
「俺はお前に勝てるかどうかまだ分からねえが、俺の仲間たちはお前の部下に苦戦の一つもしなかったみてえだな。俺たち全員でかかりゃ、さすがのお前でも勝てっこねえだろ」
ヴィネーが連れてきたゴエティアの下っ端たちは、ヴァレン率いるノワキタウンの住人たちに蹴散らされてしまったのだ。
ヴィネーとメイゲツの今のところの戦況は五分五分。だが、そこにメイゲツの仲間が加われば、その流れは一気にメイゲツに傾く。
「善人ならここでお前らを見逃すんだろうが、生憎俺はそんな善人じゃねえ。ここでくたばってもらうぜ。分かってんだろうな、俺らの縄張りを荒らしたんだ、その代償は大きいぞ」
怒気を含んだ言葉と共に、ヴィネーに少しずつ詰め寄るメイゲツ。
対して。
ヴィネーの表情は、終始変化しなかった。
「貴方達、何か勘違いしていませんか?」
怯えるどころか、焦る様子すら一つも見せず。
ヴィネーは、ただ淡々と言葉を続ける。
「追い込まれているのは私ではなく、貴方達なのですけれど」
「あ?」
怪訝な表情を浮かべるメイゲツを尻目に、クスリと笑い、ヴィネーは告げた。
新たなる、襲撃者の名を。
「出番です。ミョル、グング」
刹那。
最初に現れた下っ端たちの数をさらに上回る夥しい数の黒装束の群れが、ノワキタウンの住人を取り囲んだ。