二次創作小説(映像)※倉庫ログ
- 第97話 ジムバトル!ノワキジムⅠ ( No.168 )
- 日時: 2017/05/13 10:32
- 名前: パーセンター ◆AeB9sjffNs (ID: VYLquixn)
「そう言えばハル、お前は旅のトレーナーだったよな」
ポケモンセンターに戻り、ハルがポケモンたちを休ませていた時、メイゲツはそう聞いてきた。
「はい。各地の街を巡って、ジムリーダーと戦ってます」
「なるほど。なら、いいことを教えてやるよ」
ハルの返答を聞き、メイゲツはニヤリと笑うと、
「実はな。この町にもジムリーダーがいる。最早形式的なものになっちまってるが、一応まだポケモンリーグ本部公認のジムだ。勝てばバッジが貰えるし、ちゃんとポケモンリーグ出場のためにも使えるぜ」
ハルもその話自体は聞いていたのだが、あまり信じてはいなかった。だが、ここの住人であるメイゲツがそう言っているということは、本当に公認のジムリーダーが存在するのだろう。
「話には聞いたことありましたけど、本当にいるんですね」
「ああ。つーか」
メイゲツはそこで一拍起き、
「ノワキタウンのジムリーダーは、俺なんだがな」
『information
ジムリーダー メイゲツ
専門:悪タイプ
異名:無法なる頭領(アウトローヘッド)
前職:SP』
「ええっ、そうだったんですか!?」
最初は驚くハルだったが、しかし言われてみれば納得だ。
高いカリスマ性を持ち、無法の町を一人で取り仕切るメイゲツの立場は、それこそジムリーダーでもなければ不可能だろう。
「じゃあ、明日にでも挑んでもいいですか?」
「おうよ、構わんぜ。だがさっきも言った通り最早形式的な存在だから、ジムの建物はねえ。明日、ヴァレンと戦ったあの広場に来な。今日はゆっくり休め」
「はい、ありがとうございます!」
話は決まった。
今日は疲れをとって、明日はメイゲツとのジム戦だ。
そして。
「おはようございます、メイゲツさん、町の皆さん」
「おうよ。昨日は世話になったな。疲れは取れたか」
「はい。万全ですよ」
ノワキタウンの広場に向かい合う形で立つのは、ハルとメイゲツ。
この町でジム戦が行われること自体久々なのだろう、住人たちも見物に来ている。
「そうでなくっちゃな。形式的とはいえ俺も一応ジムリーダーだ、手加減はしねえぞ」
「ええ、勿論です」
ハルの力強い返事を聞いてメイゲツはフッと笑い、
「ネル。審判を頼むぞ」
青い髪の少女、ネルに審判を任せる。
「あ……はい。それでは、ジムリーダー、メイゲツと、チャレンジャー、ハルのジム戦を行います。えっと、使用ポケモンは四体。どちらかのポケモンが全て戦闘不能になった時点で試合終了です。ポケモンの交代は、チャレンジャーのみが認められます」
細々としたネルの声に合わせ、メイゲツがボールを取り出す。
「そんじゃ、まずは俺からポケモンを出すかな。出てきな、ヤミラミ!」
メイゲツが一番手として繰り出したのは、濃い紫色の体を持つ、瞳が宝石で出来ている小人のようなポケモン。
『information
ヤミラミ 暗闇ポケモン
宝石を探し掘り出すのが得意。
しかし掘り出した宝石を食べて
しまうので採集には向かない。』
メイゲツの初手はヤミラミ。小柄なポケモンだが悪とゴーストタイプを併せ持ち、弱点が非常に少ない。
(ヤミラミの弱点は、悪・ゴーストだから……フェアリー技か)
フェアリー技ならエーフィが覚えているが、
(流石にエーフィを出すわけにはいかないし……仕方ない。元々の火力で勝負だ)
エスパータイプのエーフィは、悪タイプもゴーストタイプも苦手。
代わりにハルが一番手に選んだのは、
「ワルビル、頼んだよ!」
接近戦を得意とする物理アタッカー、ワルビルだ。こちらも悪タイプを持っているため、ヤミラミのメインとなる技を抑えられる。
「悪タイプのエキスパートたる俺に悪タイプで来るとはな。なかなか面白えじゃねえか。それじゃ始めるぜ! ヤミラミ、シャドーパンチ!」
先手を取ったのはメイゲツ。
ヤミラミが拳を構え、ゆっくりと腕を引く。
「遅いですよ! ワルビル、噛み砕く!」
しかし、ヤミラミの挙動はお世辞にも早いとは言い難い。ワルビルはその間にヤミラミとの距離を大きく詰め、拳が突き出されるよりも早く大口を開き、ヤミラミへ噛み付く。
だが、
「それはどうかな?」
メイゲツがそう返した直後。
突如、ワルビルの頬を狙って虚空から拳の形をした黒い影が飛び出し、ワルビルを殴り飛ばした。
「えっ……!?」
「シャドーパンチは必中技。相手がどこにいようが、必ずパンチが当たる位置から拳が出現する。ヤミラミの拳からは逃げられねえぜ」
不意の打撃を受けたワルビルだが、すぐに起き上がり、体勢を立て直す。効果今ひとつなのも幸いで、ダメージはそこまで大きくはなさそうだ。
「だったらワルビル、こっちも必中技だ! 燕返し!」
剣の刀身のように両腕を白く輝かせ、ワルビルが地を蹴って飛び出す。
「だったらヤミラミ、ダークロアー!」
だがそれよりも早く、ヤミラミが口を開き、耳をつんざく金切り声のような音波を放つ。
音波自体もそこまで威力は高くなく、ワルビルは音波を打ち破って進むが、
「シャドーパンチ!」
その音波を打ち破る余計な時間が生まれたことで、ヤミラミの防御が間に合ってしまう。
ワルビルが立て続けに腕を振り抜くが、全て虚空から出現する影の拳に阻まれ、ヤミラミ本体にワルビルの腕が届かない。
「これも教えてやるよ。ダークロアーは先制技だ。動きの遅いヤミラミでも、これがあれば相手より先に動いて相手に隙を作れる。ヤミラミ、お次は鬼火だ!」
「っ、火傷はまずい……! ワルビル、躱して! 穴を掘る!」
ヤミラミが周囲に青白い炎を浮かべたのを見て、咄嗟にハルは指示を出す。
慌ててワルビルは地中に潜るが、鬼火のスピードはかなり速かった。もう少し指示が遅れていたら、鬼火を受けて火傷を負ってしまっていただろう。
(だけど、このヤミラミは何だ……? 動きに緩急がありすぎる。そもそも、ヤミラミってそんなに早いポケモンじゃ……ってことは)
咄嗟にハルはポケモン図鑑を取り出し、ヤミラミの情報を出す。
「……これか! 特性、悪戯心!」
「そういうことさ。悪戯心の特性を持つポケモンは、変化技のスピードが速くなる」
ゴーストタイプを持つヤミラミは能力こそ控え目だが、補助系の技に秀でている。そんなヤミラミにはぴったりの技だろう。
「さあ、まだ始まったばっかりだぜ。ヤミラミ、シャドーパンチ!」
「だったらワルビル、穴を掘る!」
ヤミラミが拳を振りかぶると同時、ワルビルは穴を掘って地中へと身を隠す。
例え必中技といえとも地中には届かず、影の拳はワルビルを捉えられずに消えてしまい、
「そこだ、ワルビル!」
直後、ヤミラミの足元からワルビルが飛び出し、ヤミラミを殴り飛ばす。
「いいぞワルビル! 続けてシャドークロー!」
ワルビルが腕に黒い影の爪を纏わせるが、
「させねえよ。ヤミラミ、ダークロアー!」
宙を舞うヤミラミがワルビルの方を向き、金切り声と共に音波を放つ。
速攻の音波でワルビルを押し戻し、
「鬼火だ!」
青白い火の玉を浮かべ、炎の弾丸のようにワルビルへと向かわせる。
「っ、ワルビル、シャドークローで防御!」
腕を纏っていた影の爪を振り、ワルビルは火の玉を防ぎ切る。
(うーん、やっぱりヤミラミとの相性が悪いな……動きがトリッキーだし、厄介な鬼火もある。ワルビルには火傷を負わせたくないし……)
「ワルビル、ごめんよ。一旦戻って」
その手で倒したいのか、ワルビルは不服そうに唸るが、それでもハルの指示に応え、ボールへと戻る。
「大丈夫、後でまた活躍してもらうからね。それじゃ次は君の出番だ、ファイアロー!」
代わりにハルが繰り出したのはファイアロー。炎タイプなので、鬼火が効かない。
「ファイアロー、相手はトリッキーな動きが得意みたいだ。行動も読みづらいけど、惑わされないように気をつけて」
ハルの言葉に頷き、ファイアローは力強く啼くと、ヤミラミの方を向く。
「なるほど、炎タイプで来たか。それじゃあ、お前の次の戦い方を見せてもらうぜ」
メイゲツの言葉と共にヤミラミは宝石の瞳を煌めかせ、ケタケタと笑う。