二次創作小説(映像)※倉庫ログ
- 第100話 ジムバトル!ノワキジムⅣ ( No.175 )
- 日時: 2017/05/24 16:16
- 名前: パーセンター ◆AeB9sjffNs (ID: VYLquixn)
「ドラピオン、ミサイル針!」
両手の鋏と尻尾を伸ばし、ドラピオンは無数の針の弾幕を放つ。
普通であれば躱せる量ではないが、
「ワルビル、穴を掘る!」
対するワルビルは素早く地面に穴を掘り、地中へと身を隠して針を躱す。
そこから一気にドラピオンの足下まで接近、目の前から飛び出し、ドラピオンの顔に拳を叩き込む。
「やるじゃねえか。ポイズンクロー!」
だがドラピオンは体勢を崩すも、地に足をつけて吹き飛ばされることなく耐え切ると、両手の鋏に毒を纏わせ、腕を振り下ろす。
「だったらワルビル、シャドークロー!」
ワルビルも両腕に黒い影を纏わせて影の爪を作り出し、ドラピオンの爪を迎え撃つ。
お互いの両腕が激しく競り合うが、
「ドラピオン、捕らえろ!」
その次の動きはドラピオンの方が速かった。
ドラピオンの尻尾が伸び、ワルビルの胴体を挟み込んで拘束してしまう。
「しまった……ワルビル、抜け出せる!?」
ワルビルも両手でドラピオンの鋏を掴み、抜け出そうとする。
だが力自慢のワルビルのパワーを持ってしてもドラピオンの鋏から抜け出すことはできず、
「放り投げてミサイル針!」
空中へと放り投げられたワルビルは、無数の針をその身に叩き込まれてしまう。悪タイプのワルビルには効果抜群だ。
「ワルビル! 大丈夫!?」
地面に落ちたワルビルは、低く唸りながら起き上がり、ドラピオンを睨む。
「ワルビル、落ち着いて。勝てる手段は残ってる。熱くなりすぎちゃだめだよ」
昂ぶるワルビルをなだめつつ、ハルは思考を巡らせる。
(攻撃力はほぼ同じ、だけど相手の方が防御に厚い、しかも手数がこっちより多い。何せ手か三本あるようなものだからな……)
躱せない必中技でぶつかっても、受け止められてしまえば元も子もない。
「だったら……これが一番かな。ワルビル、穴を掘る!」
再びワルビルは地面に穴を掘り、地中へと身を潜める。
「隠れたか。ドラピオン、周りに気を配れ。どこから出てきても捕まえろ」
両腕と尻尾を展開させ、ドラピオンは周囲の様子を探る。
「……今だワルビル! 飛び出せ!」
ドラピオンが目を動かした瞬間、その死角からワルビルが飛び出すが、
「ドラピオン、斜め後方だ! 捕らえろ!」
すぐさま振り返ったドラピオンが尻尾を伸ばし、ワルビルの攻撃よりも早く尻尾の鋏でワルビルを拘束してしまう。
「想定内ですよ! ワルビル、噛み砕く!」
だがこれはまだハルの想定内だった。
捕まったままワルビルは大口を開き、牙をドラピオンの尻尾へと思い切り食い込ませる。
頑丈な顎の力に耐え切れず、尻尾の鋏の拘束が緩む。
「よし! 続けてシャドークロー!」
拘束を破り、ワルビルは腕に黒い影を纏わせる。
そのまま両手を振り抜き、鋭い影の爪でドラピオンを切り裂いた。
「燕返し!」
鋏の拘束はワルビルの牙で抜け出せる。そう判断したハルは、さらに追撃の指示を出す。
ワルビルも腕を刀のように白く輝かせ、ドラピオンへと突っ込んでいく。
「ドラピオン、受け止めろ! ポイズンクロー!」
対するドラピオンは鋏に毒を纏わせ、ワルビルの両腕を受け止める。
「噛み砕く!」
再びワルビルは大顎を開き、ドラピオンの腕に牙を突き立てようとする。
しかし。
「させねえ! ドラピオン、ミサイル針!」
ドラピオンが頭を屈め、尻尾を逆立てる。
尻尾の鋏の先がワルビルを向き、そこから大量の針が撃ち出される。
「っ、ワルビル!」
躱そうにも、ドラピオンに両腕を掴まれているために動くことができず、ワルビルは無数の針を叩き込まれる。
「ドラピオン、投げ飛ばせ!」
ワルビルを掴んで腕を振り、ドラピオンはハルの元へとワルビルを思い切り投げつける。
「そろそろとどめだ! ドラピオン、ポイズンクロー!」
地面に倒れるワルビルを視界に捉え、ドラピオンは両腕の鋏から毒を滴らせる。
「ワルビル! 大丈夫!?」
地面に落ちたワルビルは、腕を震わせて何とか立ち上がろうとする。
眼前には既に毒の鋏を構えたドラピオンがじりじりと迫り来る。
だが。
まだ、やれる。
ハルの期待に応えるべく、最後の力を振り絞り、ワルビルは吠えた。
その、刹那。
ワルビルの体が、膨大なエネルギーを込めた青い光に包まれる。
「ワルビル……!?」
「っ、マジかよ……!」
輝く青い光は、ワルビルに新たな力を与え、その姿を変化させていく。
やや細かった胴体はみるみるうちに太く頑強に変わっていき、それに伴って体つきも大きくなっていく。
光に包まれ、咆哮と共に、ワルビルは最終進化したその姿を解き放つ。
体を刻む黒い模様はそのままに、砂の色をしていた体は真紅に染まる。
自慢の顎もより大きく、力強く変化し、両手の爪も長く鋭く変化している。
『information
ワルビアル 威嚇ポケモン
砂漠の生態系の頂点に立つポケモン。
双眼鏡のように遠くのものを拡大
して見ることができる瞳を持つ。』
「ワルビアル……進化、したんだ!」
喜ぶハルの方を振り向き、ワルビアルはニヤリと笑う。
「……大したやつだ。この局面でポケモンを進化させちまうとはなぁ。メガシンカをあれほど使いこなせるのも頷ける」
メイゲツの脳裏に蘇るのは、ハルとヴァレンの試合。メガシンカを遂げた、ルカリオの姿。
ハルが図鑑で確認すると、ワルビアルは新しい技も覚えている。
「よし、ワルビアル! ここから仕切り直しだ、行くよ!」
ハルの言葉に合わせて、ワルビアルは雄叫びを上げる。
「ワルビアル、地震だ!」
大地を踏みつけ、ワルビアルは地面を揺らす。
周囲一帯に衝撃波を走らせ、ドラピオンを吹き飛ばした。
「っ、格段にパワーが上がってやがる……ドラピオン、ミサイル針!」
両腕と尻尾を構え、ドラピオンは無数の針の弾幕を飛ばすが、
「ワルビアル、ストーンエッジ!」
拳を大地に叩きつけ、ワルビアルは地面から多数の岩の柱を出現させる。
岩の柱によって大量の針は全て阻まれ、直後、ドラピオンの足元から岩の柱が飛び出し、ドラピオンを突き上げ、貫いた。
「っ、ドラピオン!」
地面に落ち、ドラピオンは再び起き上がろうとするもそこで力尽きて地に伏し、戦闘不能となった。
「まさか俺が先に最後の一体を見せることになるとはな。ドラピオン、戻りな」
ドラピオンをボールに戻すと、メイゲツはいよいよ最後となるボールを取り出す。
「こいつで終わりだ! 出てきな、アブソル!」
メイゲツの最後のポケモンは、純白の体毛を持つ獣型のポケモン。額には死神の鎌のような漆黒の角が備わっている。
『information
アブソル 災いポケモン
額の角で災いを察知すると山を降り
人に危機を知らせる。昔は災害を
呼ぶポケモンだと誤解されていた。』
悪タイプのみを持つポケモン、アブソルだ。
「最後はアブソルか……最後に出てくるってことは、恐らくメイゲツさんのエースだ。ワルビアル、気をつけて」
低く唸って相手を威嚇するワルビアルに対し、アブソルは一言も発さず、じっとワルビアルを見据える。
「ワルビアル、地震だ!」
大地を踏みつけ、ワルビアルは地面を揺らし、衝撃波を起こす。
対して。
「アブソル、スプラッシュ!」
アブソルはその場で跳躍し、衝撃波を躱すと、額の鎌に水を纏わせる。
そのまま一瞬のうちにワルビアルとの距離を詰め、鎌を叩きつけ、ワルビアルを吹き飛ばした。
「速い……っ! ワルビアル!?」
吹き飛ばされたワルビアルは地面に叩きつけられ、一撃で戦闘不能になってしまった。
「強い……ワルビアル、よく頑張ったね。お疲れ様」
ワルビアルの頭を撫でてボールに戻し、ハルも最後のボールを手に取る。
「これで最後だ。出てきて、ルカリオ!」
ハルの最後のポケモンは、エースのルカリオ。それだけで試合は決まらないが、タイプ相性も有利。
「ルカリオ、相手はジムリーダーの切り札だ。最初から本気でいくよ!」
ルカリオに呼びかけ、ハルはキーストーンを填め込んだ右手を掲げる。
「僕と君の、絆の力に応えて! ルカリオ、メガシンカ!」
ハルのキーストーンに反応し、ルカリオのメガストーンが光を放つ。
七色の光に包まれ、ルカリオの姿形が変化していく。
黒い模様を身体に刻み、咆哮と共にルカリオはメガシンカの力を解き放つ。
「何度見てもすげえもんだな。それじゃ、こっちも……!」
不敵な笑みを浮かべ、メイゲツは右耳のピアスを軽く弾く。
するとピアスが開き、その中からはキーストーンが現れる。
「やっぱり……そのアブソルも……」
「ご名答」
アブソルの右前脚の足首には、メガストーンの填められた足輪が付けられていた。
「純白なる悪の力を、我が手に! アブソル、メガシンカ!」
メイゲツのキーストーンと、アブソルのメガストーンが反応する。
七色の光が繋がり、アブソルを包み、その姿を変えていく。
黒い角や尻尾は悪魔の翼のように形状を変え、さらにメガシンカの力を受けて白い体毛が伸びてゆく。
体毛を翼のように逆立て、アブソルがメガシンカを遂げる。
純白の翼からは凄まじいオーラが迸り、見るもの全てを威圧する。
「これが、アブソルのメガシンカ……!」
アブソルのメガシンカした姿、メガアブソル。迸るオーラは、全ての穢れを払うようにアブソルの全身を覆う。
「さあ、どこからでもかかってきな」
「……望むところです!」
メガシンカを遂げた両者が、互いを見据えて対峙する。