二次創作小説(映像)※倉庫ログ

第102話 送別 ( No.177 )
日時: 2017/06/01 14:03
名前: パーセンター ◆AeB9sjffNs (ID: t4HkD1GO)

「……ハッ。やるじゃねえか、ハル。見事な腕前だな」
やり切った、そんな風にメイゲツが息を吐き、アブソルをボールへと戻す。
同時に、ルカリオの体を七色の光が包み、元の姿へと戻す。
「ジム戦は久々だったが、腕が鈍ってたわけじゃねえ。いいバトルだったぜ」
「ありがとうございます。メイゲツさんもとても強かったです。僕もルカリオも、ギリギリでした」
ハルの言葉を聞き、メイゲツはニヤリと笑う。
「そりゃ嬉しいねえ。さて、形式的とはいえど俺もちゃんとしたジムリーダーだ。つまり、俺に勝ったってことは……ヴァレン。あれを」
メイゲツが後ろを向いてそう言うと、ヴァレンが頷き、小さな箱を持ってくる。
その箱を受け取り、メイゲツは箱の中からバッジを取り出す。白いアルファベットのDの文字を、黒い悪魔の片翼で覆ったような形のバッジだ。
「こいつぁノワキジム制覇の証、デーモンバッジ。お前のバッジケースに飾っときな」
「はい、ありがとうございます!」
無法者の頭領、メイゲツに見事勝利し、ハルのバッジケースに六つ目のバッジが填め込まれた。
「あの、メイゲツさん」
と、そこで。
メイゲツに声を掛けたのは、緑髪の少年、ジゼ。
「あん? どうした、ジゼ」
「えっと、お願いがあるんです」
メイゲツから見たその時のジゼの目は、いつになく真剣に見えた。
「何だ? とりあえず言ってみろ」
「ハルとメイゲツさんのバトル。あんなに熱いバトルは初めて見ました。あんまり上手く言い表せないけど、本当にすごいっていうか、かっこいいっていうか……俺も、あれくらいすごいバトルが出来るようになりたいんです」
だから、とジゼは言葉を続け、

「俺も、ハルみたいになりたい。そのために、マデル地方の旅をしたい。この町を出て、旅に出させてください」

真剣な眼差しと口調で、はっきりとそう言った。
「……フッ」
ジゼの言葉を聞いたメイゲツは、小さく息を吐く。
「まさかジゼ、お前の口からそんな言葉が出てくるとはな。成長したじゃねえか」
微かに笑いながら、メイゲツは耳のピアスに手を触れる。
「……お前が自分の強い意志でそう言うなら、俺にはそれを邪魔する権利はねえ。分かった。この町を出て、広い世界を見てこい」
「……! メイゲツさん、ありがとうございます……!」
「それと」
触れられたピアスは左右に割れ、キーストーンが飛び出す。
そのキーストーンを外し、メイゲツはキーストーンをジゼへ差し出した。
「この町を代表して、俺からの選別だ。受け取れ」
「えっ……!? でも、これはメイゲツさんのメガシンカに……」
「言っただろ。俺にとっては、メガシンカよりも仲間の方が大切だ。その仲間が旅立とうってんなら、俺たちは全力で応援するぜ。このキーストーンは、離れていても仲間だと言うその証だ。受け取りな」
「……はい。ありがとうございます!」
一歩進み出て、ジゼはメイゲツから仲間の証、キーストーンを受け取った。
「ま、それでも俺がメガシンカを使えなくなることが気になるってんなら、旅の中で新しいキーストーンを見つけてこいよ」
冗談めかしくメイゲツは笑うと、
「俺の記憶が正しけりゃ、リザードンはメガシンカすることができるポケモンだ。そのキーストーンを持って、サオヒメシティのエボルヴタワーってとこを訪ねな。あそこの爺さんはメガシンカを研究してる。ついでに俺の名前を出せば、トレーナーカード、バッジケースも貰えるはずだ。メガストーンはただでは貰えないだろうがな」
メイゲツが言う爺さんとは、恐らくアリスの父親、リデルのことだろう。
「ポケモン図鑑は確か余り物があったから、後でそれも渡そう。そんじゃ、ジゼの旅立ちを記念して、今日は盛大に祝ってやんねえとな。送別会ってやつだ!」
メイゲツが叫ぶと、ノワキタウンの住人たちも歓声をあげる。
「おい、ハル」
「え? あ、はい」
急に話を振られたハルは慌てて返事を返す。
「ジゼはお前に憧れて旅に出たいって言ってるんだ。当然、お前も参加するよなぁ?」
「ぼ、僕なんかでよければ、是非……」
「何を縮こまってんだ。お前はこの町のために共闘してくれた俺たちの仲間だ。他所の人間は基本信頼しねえが、お前なら話は別だぜ」
そんなこんなで。
ノワキタウンの少年、ジゼが旅立つことになり、その日の夜はノワキタウンの住人全員で派手にパーティーが行われた。


そして次の日の朝。
「いよいよだな、ジゼ」
「はい、メイゲツさん」
町の出入り口となるトンネルの前にハルとジゼが立ち、メイゲツを中心とした町の住人が大勢で見送りに来た。
「ま、派手に送別会をやったとはいえ、ここはいつでもお前のホームだ。辛いことや困ったことがあったら、いつでも帰って来な」
「そうだ。離れていても、私たちの仲間ということは変わらない」
「大変なことも多いと思うけど、頑張ってね、ジゼ君」
メイゲツに続いてヴァレンやネルも激励し、他の町の者たちも、頑張れよ、などと言葉を掛ける。
「そんで、ハル。お前には色々と迷惑かけたな。済まなかった」
次にメイゲツはハルの方を向き、素直に頭を下げた。
「いいえ。そのお陰で、皆さんと仲良くなれましたし」
「そう言ってくれると、助かるぜ。お前も何か困ったことがあったら俺たちを頼ってくれてもいいんだぜ。お前ならいつでも大歓迎だ」
「はい! メイゲツさんも、ジム戦ありがとうございました!」
ハルの言葉を聞いてメイゲツはフッと笑うと、
「ジゼ、とりあえずまずはハルと一緒にイザヨイシティに行きな。あそこはマデル地方の最先端を行く街だ。そこで情報を色々得て、そこからは自分の行きたい街に行くといい」
そこでメイゲツは一拍起き、
「それじゃ、暫くさよならだ。行ってきな」
「はい! 皆さんも、お元気で!」
メイゲツたちに見送られ、ハルとジゼは次なる街、イザヨイシティを目指す。
……だが。
「メイゲツさん! ちょっと待ってください!」
ふと後ろの方から、そんな声が聞こえた。住人の中の誰かだろう。
「あぁん? どうしたんだよ、このいい時によ」
そう言いながらメイゲツは後ろを振り向く。人混みを掻き分け、背の高い男が走って来た。
「た、たった今、ニュースを確認したんですが……これを、見てください」
そう言いながら、その男は携帯の画面をメイゲツへと見せる。
そして、こう言った。

「イザヨイシティが、ゴエティアを名乗る組織に乗っ取られたそうです……!」