二次創作小説(映像)※倉庫ログ
- 第107話 紫水 ( No.183 )
- 日時: 2017/06/07 08:29
- 名前: パーセンター ◆AeB9sjffNs (ID: VYLquixn)
「こっちも始めるわよ。害せ、ベトベトン!」
アスタロトが繰り出すのは、全身が毒々しい紫色のヘドロで出来たポケモン。
『information
ベトベトン ヘドロポケモン
湿地帯に生息するが時には餌となる
ゴミを求めて街に現れることがある。
体の成分はどんな草木も枯らす猛毒。』
考えるまでもなく、見た目通りに毒タイプのポケモン。
「それじゃ……出て来い、レパルダス!」
対するジゼの一番手は、紫の美しい毛並みを持つスマートな猫のようなポケモン。悪タイプのレパルダスだ。
「行くわよ! ベトベトン……っ?」
アスタロトが指示を出そうとしたところで、唐突に部屋全体に砂嵐が吹き始める。
戦っているハルの方にジゼが目をやると、パラレルという少年のものと思われる泥人形のようなポケモンが、砂嵐を起こしていた。
「っ、パラレルのやつ、余計なことしてくれる……まぁいいわ。ベトベトン、気合玉!」
ベトベトンが口を大きく開き、体内の力を口内の一点へ溜め込む。
「レパルダス、辻斬り!」
しかしその気合の念弾を放出するより早く、レパルダスはベトベトンとの距離を詰め、鋭い爪でベトベトンを斬り払う。
「随分と速いのね……ベトベトン、火炎放射!」
「今まで厳しく鍛えられて来たからな! レパルダス、躱してシャドーボール!」
ベトベトンが大きく息を吸い込み、灼熱の炎を噴き出すが、レパルダスは軽やかに炎を躱してみせると、黒い影の弾をベトベトンの頭部へ撃ち込む。
「辻斬りだ!」
影の弾が直撃し動きを止めるベトベトンへ、さらにレパルダスは目にも留まらぬ斬撃を浴びせる。
「引き剥がしなさいベトベトン! ヘドロウェーブ!」
ベトベトンの体の下から周囲へ猛毒の液体が広がる。
だが一定の範囲まで広がったところで、突如ベトベトンを囲むように紫の水柱が噴き出す。
「っ……レパルダス!」
最初の波を跳躍して躱していたレパルダスだが、それゆえに水柱を躱すことができずに吹き飛ばされてしまう。
「燃やしなさい! ベトベトン、火炎放射!」
大きく息を吸い、吹き飛ぶレパルダスへ向けて、ベトベトンは灼熱の業火を噴き出す。
「チッ……レパルダス、影分身!」
対して、起き上がったレパルダスが周囲に無数の分身を作り出す。
ベトベトンの吐いた炎はレパルダスの分身の一つを打ち消すだけに終わり、直後、ベトベトンの周囲を無数のレパルダスが囲む。
「ぜーんぶ打ち消しちゃいなさい! ベトベトン、ヘドロウェーブ!」
ベトベトンの体から紫水が漏れ出し、その周囲一帯に紫の水柱が噴き出す。
レパルダスが作った分身たちは、全て打ち消されてしまう。
しかし、
「今だぜレパルダス! アイアンテール!」
紫水が消えたその瞬間、本体のレパルダスがベトベトンへと飛び掛かり、長く伸びた尻尾を鋼の如く硬化させ、ベトベトンの脳天に尻尾を叩きつける。
「気合玉!」
「させねえぜ。燕返し!」
大きく口を開いたベトベトンが、口内に身体中の気を溜め込む。
だがやはりそれを放つより早くレパルダスの鋭い爪に切り裂かれ、攻撃を中断されてしまう。
さらにレパルダスは後ろに跳躍し、反撃を避けるためにすぐさま距離を取る。
しかし。
「ベトベトン、岩石封じ!」
レパルダスが着地するその寸前、ベトベトンがヘドロの腕で地面を叩く。
地面に足を付けたその瞬間、レパルダスの足元から岩が飛び出し、その動きを封じてしまう。
「なにっ……!?」
「やっちゃえ! ベトベトン、気合玉!」
岩で動きを封じられたその隙。それを見逃すはずもなく、ベトベトンの口から渾身の念弾が放出される。
スピードが持ち味のレパルダスだが、攻撃力は飛び抜けて高いわけではない。自身を拘束する岩を打ち破ることができず、念弾が岩ごと破壊し、レパルダスを捉え、その身を吹き飛ばした。
格闘技の気合玉は悪タイプのレパルダスに効果抜群。耐久力も低いレパルダスには、かなりのダメージだろう。
「攻撃攻撃ぃ! ベトベトン、火炎放射!」
さらにベトベトンは口から灼熱の業火を発射して追撃を仕掛ける。
「っ、レパルダス、躱してシャドーボール!」
立ち上がったレパルダスは身軽な動きで炎を躱すと、黒い影の弾を放ち反撃する。
「もう隠す必要もないわね。ベトベトン、岩石封じ!」
右手を床へと叩きつけ、ベトベトンは自身の目の前に岩を出現させ、シャドーボールを防ぐと、
「ヘドロウェーブ!」
体から紫水を流し、周囲に紫の水柱を噴射する。
「躱せレパルダス! 辻斬りだ!」
素早く飛び退いて水柱を躱し、さらにレパルダスは地を蹴って飛び出すと、鋭い爪を構えてベトベトンに斬りかかる。
「ちょこまかと小賢しい……! ベトベトン、岩石封じ!」
切り裂かれたベトベトンは体勢をすぐに立て直すと、駄々を起こしたように連続で床を殴る。
ベトベトンの拳の振動に呼応し、レパルダスの足元から次々と岩が飛び出し、その動きを止めようとする。
レパルダスも砂嵐を気にせず素早く周囲を駆け回り、床から出現する岩を躱し続ける。
「アイアンテール!」
ベトベトンの背後に回り、レパルダスは上空から尻尾を硬化させ、ベトベトンの後頭部へと尻尾を振り下ろす。
だが、
「後ろ、斜め上! ベトベトン、捕まえなさい!」
ベトベトンのヘドロの体から大きな手が伸び、レパルダスの尻尾を掴む。
「っ!」
「一丁上がりっと! 気合玉!」
尻尾を掴んで宙吊りにしているレパルダスを放り投げ、さらにベトベトンは渾身の気合を込めた念弾を吐き出す。
天井に叩きつけられたレパルダスは間髪入れず、気合玉の追撃を受ける。
念弾を撃ち込まれて床に落ち、レパルダスは戦闘不能となってしまった。
「くそっ……レパルダス、よくやった。休んでろ」
ジゼはレパルダスの頭を撫で、ボールへと戻す。
「あはは! 大したことないわね! 腕を磨いて出直してきたら? それとも怖気付いて、出直すこともできなくなっちゃうかにゃーん?」
猫撫で声でアスタロトがせせら笑う。
対して、
「さあ、準備は整った。勝負はここからだぜ」
アスタロトのことなど見えていないかのように、ジゼは次のボールの中のポケモンに語りかける。
一体目を先取されたとは思えない程に自信に満ちた笑みを浮かべ、手にしたモンスターボールを突き出す。
「紅蓮の炎で勝利を導け! リザードン!」
灼熱の炎と共に咆哮が轟き、炎を司る龍がボールから現れる。
「ふうん、二番手はリザードンか。岩石封じが上手く刺さるわね。ベトベトン、まずは火炎放射!」
不敵に笑うアスタロトの指示に応じ、ベトベトンは大きく口を開き、炎を吐き出す。
対して、
「町を荒らしたクソ共に、報いを受けさせてやれ! リザードン、火炎放射!」
リザードンが大きく息を吸い込み、咆哮と共に紅蓮の業火を噴き出す。
両者の放った炎がぶつかり合うが、競り合うこともなくリザードンの炎がベトベトンの炎を貫き、ヘドロの身を焼き焦がす。
「っ!? ベトベトン!」
「討ち取れ! ドラゴンクロー!」
灼熱の炎を浴びてよろめくベトベトンへ、さらにリザードンは腕に凄まじい龍の力を纏わせ、ベトベトンを叩き斬る。
ベトベトンは吹き飛ばされ、地面に落ちて戦闘不能となってしまう。
「……あらぁ? やられちゃったじゃん。ベトベトン、休んでなさい」
特に余裕を崩すこともなくアスタロトはベトベトンをボールへ戻すと、
「それじゃ、次はこの子かしら」
舌舐めずりし、次のボールを手に取る。