二次創作小説(映像)※倉庫ログ

第110話 保護 ( No.186 )
日時: 2017/06/13 10:29
名前: パーセンター ◆AeB9sjffNs (ID: /uGlMfie)

ルカリオの右手とガブリアスの龍爪は、一歩も引かずに互角に渡り合った末、爆発を起こした。
爆煙で視界が塞がれ、互いの姿は見えない。
「ルカリオ、気をつけて。相手の位置を探っておこう」
ガブリアスの波導を読み取り、ルカリオは相手の位置を探る。
だが。
「今だ、ガブリアス!」
位置を探り当てた時には、もう遅い。
ルカリオの足元からガブリアスが強襲を仕掛け、ルカリオを吹き飛ばしたのだ。
「ルカリオ! っ、いつの間に……!」
「これで終わりだ。ガブリアス、ドラゴンクロー!」
雄叫びを上げて、ガブリアスは龍の力を纏った爪を構え、ルカリオを追う。
地面に落ちたルカリオへ、ガブリアスの龍爪が迫る。
しかし、
「まだだ……」
ハルには感じられた。ルカリオの体内で、さらに強くなる波導の力。
ルカリオの波導によってか、メガシンカによるシンクロか。ハルには、ルカリオの感情が分かった。
「ルカリオ、まだ終わらないよね! 立って!」
ハルの言葉がルカリオに届き、ルカリオの瞳がカッと見開く。
刹那。

ルカリオの掌から、龍の形をした輝く光線が発射された。

龍の光線の直撃を受けたガブリアスが、水平に吹き飛ばされる。
「なにっ……!? 龍の波導だと……!」
流石のパラレルでも想定外だったようで、驚愕を隠しきれない様子だ。
「ルカリオ……龍の波導を使えるようになったんだね!」
喜ぶハルに答え、ルカリオは静かに笑い、頷く。
そして龍の波導を受けたガブリアスは壁に叩きつけられ、戦闘不能となっていた。
「っ……最後の最後でひっくり返すとは。やはり絆の力、侮れない。以前と比べ、メガシンカもある程度使いこなせているようだしな」
ハルには聞こえない程度に小さい声でパラレルは呟き、ガブリアスを戻す。



リザードンの放った灼熱の業火が、クチートを焼き焦がしていく。
「切り裂け! リザードン、シャドークロー!」
爆煙に包まれたクチートを狙い、鋭い爪に暗い影を纏わせ、リザードンは一気に畳み掛ける。
だが。

「クチート、ストーンエッジ!」

炎を叩き込まれたクチートは倒れなかった。
顎を地面に叩きつけ、床から鋭く尖った岩の柱を突き出す。
「まずっ……」
ジゼが回避の指示を出そうとした時には、既に遅かった。
龍殺しの剣のように、岩の柱がリザードンを貫き、炎の龍を天井に叩きつけた。
「リザードン!?」
岩の柱が消えると、リザードンは力なく地面に落ちる。
最大の弱点である岩技を叩き込まれ、リザードンは戦闘不能となってしまっていた。



「さて、おしまいね。いいところまでは行ったんじゃないかしらん? でも、負けちゃったら意味ないわよねえ」
嘲るような笑みを浮かべ、アスタロトがクチートを引き連れたまま、ジゼに詰め寄る。
しかし、
「ルカリオ、ボーンラッシュ!」
直後、クチートは横から突然の襲撃を受け、骨のロッドを叩きつけられて吹き飛ばされた。
「えっ!?」
「ルカリオ、発勁!」
驚くアスタロトには目もくれず、ハルは指示を続け、ルカリオは青い炎の如き波導を纏った右手を叩きつけた。
残り体力が少なかったクチートはその二発の攻撃で力尽きて倒れ、メガシンカも解けて戦闘不能にされてしまう。
「なっ……クチート! ちょっと、何してくれてんの!?」
「仲間を守っただけだよ。ルカリオ、よくやった」
バトルが終わったと判断し、ルカリオのメガシンカも解ける。
「さあ、どうする? パラレルは僕が倒したよ。お前のエースのクチートも戦闘不能だ。僕たちの勝ちだよね」
「チッ……」
ハルに詰め寄られ、アスタロトはいかにも忌々しそうに小さく舌打ちするが、
「……おっと、いけないいけない。あのポケモン欲しかったけど、仕方ないわね。パラレル、撤収よ」
すぐに普段の猫撫で声に戻り、モンスターボールを取り出し、アーケオスを繰り出す。
「おい、逃がさねえぞ」
ジゼが一歩進むが、
「あら、いいの? 私とパラレルはあくまで時間稼ぎ。私たちを捕まえようとする間に、本命のパイモンが目的達成しちゃうかもよ? 上に進んで街を守った方がいいんじゃないかしらん?」
アスタロトは嘲るような笑みを浮かべたまま、そう返す。
「っ、どうするよ、ハル」
「ここでこいつらを見逃したくはない。けど、今は街を解放するのが先だよ。悔しいけど、上に進もう」
迷った末、ハルはイザヨイシティを優先する。
「それじゃ私たちは退散ね。パラレル、掴まりなさい」
アスタロトとパラレルがアーケオスの足を掴む。
直後、アーケオスは窓ガラスをぶち抜き、ビルから飛び去っていった。
「さあ、進むよ」
「あいつら、次に会ったら絶対取っ捕まえてやる」
とりあえず、アスタロトとパラレルは撃退した。
ハルとジゼがさらに上階へ進もうとしたところで、
「君たち、ちょっと待ってくれ」
不意に呼び止められた。
二人が振り向くと、声の主は数人の研究者たちの一人だった。
アスタロトに抵抗し、蹴散らされたのだろう。白衣は汚れて顔にも所々傷が目立つ。
「大丈夫ですか……?」
「ああ、我々は何とかな。しかし……保護していたポケモンたちはほとんど奪われてしまった。この研究は中止になるだろう」
座り込んだまま、研究者の一人は肩を落とす。
「ごめんなさい、僕たちがもう少し早く来ていれば……」
「助けに来てくれた君たちに、文句は言えない。それより、何かお礼をしないといけないね」
そう言って、その男は一つだけ残ったボールから、ポケモンを出す。アスタロトが自分のものにしようとしていたものだ。
背中に甲殻を纏った青い首長竜のようなポケモン。ヒレのような四肢を見る限り、水辺に生息するポケモンだろうか。

『information
 ラプラス 乗り物ポケモン
 高い知能を持ち人間が使う難しい
 言葉も理解できる。密漁により
 個体数が減少しているポケモン。』

水と氷タイプを持つ、ラプラスというポケモンのようだ。
「こいつは群れからはぐれ、弱っていたところを私たちが保護したんだ。人懐こいが賢くてな、悪い人間には決して懐かない。どのみちこの研究は中止になるし、そもそもこんな事件が起こってしまった以上、もうこの子を私たちが守る資格はない」
だから、とその男は続け、
「このラプラスを、君たちに託す。ここにいるより、君たちと一緒に行った方がラプラスも喜ぶはずだ。私たちの代わりにこの子を守り、広い世界を見せてあげてほしい」
そう言って、二人にボールを差し出した。
「……ハル、お前が受け取れ」
「え、いいの……? でも……」
「俺は無法者の町で生まれ育ってきた。悪人かどうかは分からないけど、善人じゃない。少なくともハル、お前に比べたらな」
「そんなことないよ。例え環境が悪くても——」
「それに」
ジゼはさらに続け、
「そいつを守るって意味なら、なおさらだ。俺はあの女に負け、お前は二人倒した。お前の方が適任だって、さっき証明されてんだ。そいつを守るには俺じゃ力不足だ」
「……分かった。じゃあ、そうするよ」
白衣の男からモンスターボールを受け取り、ハルはラプラスの前に立つ。
「ラプラス、僕と一緒に来てくれる?」
ラプラスは少し戸惑っていたようだが、やがてにっこりと笑い、頷く。
「……うん、分かったよ。それじゃ、これから君は僕の仲間だ」
ハルの言葉に答え、ラプラスはハルの持つモンスターボールに触れる。
その巨体がボールに吸い込まれる。一瞬だけ赤い光が点滅するが、すぐに止まった。
「それと、君たちにはこれも。少ないが、ポケモンの傷薬だ」
さらに男たちはハルとジゼへ傷薬を渡す。
「ありがとうございます。必ずこの街を解放します」
「さあハル、行くぞ。あまり時間がない」
「うん」
研究者たちに礼を言い、ポケモンを回復させ、二人はさらに上階へと進んでいく。