二次創作小説(映像)※倉庫ログ

第112話 奪還戦 ( No.188 )
日時: 2017/06/15 11:23
名前: パーセンター ◆AeB9sjffNs (ID: VYLquixn)

アルスエンタープライズ本社13階、社長室。
そこで対峙するは、少年ハル、そして魔神卿パイモン。
「スターミー、ハイドロポンプ!」
牽制射撃やカウンターに徹していたスターミーが、いきなり全力の攻撃を仕掛けて来る。
星型の一角を手のように振るい、その先端に水を溜め込み、高圧の大量の水を発射する。
「っ! オノンド、躱して!」
今まで見た水技の中でも、トップクラスの威力。
何とかオノンドは水流を躱すが、それで精一杯だった。
「さすがに強い……だけど、負けられないよ! オノンド、ドラゴンクロー!」
水流を躱したオノンドは鋭い爪に蒼い龍の力を纏わせ、スターミーへと向かっていく。
「スターミー、躱して冷凍ビーム!」
スターミーは高速回転しながら横滑りし、振り下ろされるオノンドの爪を躱してその背後へと回り込む。
「オノンド、炎の牙!」
赤いコアから冷気が放出されると同時に、オノンドは牙に炎を纏わせて冷気の光線を迎え撃つ。
炎で冷気を打ち消そうとするも、有利なタイプ相性の技ですらオノンドが少し押されてしまう。
「十万ボルト!」
スターミーの赤いコアが電気を溜め込み、黄色く輝く。
溜め込んだ黄金の光を一気に放出するように、高電圧の強力な電撃が放出される。
「躱してシザークロス!」
電撃は強力だが、ハイドロポンプほどの勢いはない。
一直線に放たれる電撃を躱し、オノンドは勢いよく飛び出すと、長い牙を二度振るい、スターミーを切り裂いた。
「捕まえちゃって! スターミー、サイコキネシス!」
しかしその直後、スターミーが赤いコアから強い念力を放出する。
念力はオノンドに掛けられ、強力な念力によって動きが拘束されてしまう。
「っ、しまった……オノンド——」
「もらいぃ! スターミー、冷凍ビーム!」
ハルが指示を出すよりも早くパイモンの声が響き、スターミーがコアを白く輝かせ、冷気の光線を発射する。
凍える冷気がオノンドを捉え、地面に叩き落としてその身を氷漬けにしてしまう。
「決めちゃおうか。ハイドロポンプ!」
氷の中に封じられたオノンドへ、スターミーが超高圧の水流を放つ。
氷を容易く砕き、オノンドを水柱に飲み込んで吹き飛ばし、壁へと叩きつけた。
「オノンド!?」
水が消えれば、びしょ濡れになったオノンドは既に戦闘不能となっていた。
「っ……オノンド、お疲れ様。休んでて」
オノンドをボールに戻したハルは、スターミーの方へと目線を向ける。
(なんてパワーだ……ベリアルのヘルガーでさえ、こんなに強くは……)
以前戦った他の魔神卿と比べても、パイモンは強い。戦闘専門を名乗るベリアルと比較しても、だ。
「こうなったら、君しかいない。出てきて、ルカリオ!」
二番手にハルが繰り出すのは、やはりエースのルカリオ。
「だよね、そう来るとは思ってたよ。ちょうどいいや、メガシンカを使えるハル君のその力、ぼくも見てみたいと思ってたんだ」
「だったら、今から見せてやる。ルカリオ、行くよ!」
ハルの言葉に頷き、ルカリオはメガストーンの腕輪をつけた右腕を掲げる。
「僕と君の、絆の力に応えて! ルカリオ、メガシンカ!」
ハルのキーストーンと、ルカリオのメガストーンが反応し、光が両者を繋ぐ。
七色の光を纏い、メガシンカエネルギーと波導が体内を駆け巡り、ルカリオはメガシンカを遂げる。
「ルカリオ、ボーンラッシュ!」
ルカリオの右手に青い波導が宿り、形を変えて長い骨を形作る。
骨のロッドを手にして、地を蹴って飛び出し、スターミーとの距離を一気に詰める。
「スターミー、ハイドロポンプ!」
星型の一角を手のように振るい、スターミーは高圧の水流を放射する。
「ルカリオ、躱して! ジャンプだ!」
大きく跳躍し、ルカリオは水柱を躱すと、上空から骨のロッドをスターミーへと叩きつける。
「スターミー、十万ボルト!」
中央のコアに電撃を溜め込み、スターミーは高速回転を始める。
ルカリオの周囲を駆け回りながら、黄色く輝くコアから電撃を発射する。
「ルカリオ、もう一度ボーンラッシュ!」
右手に持ったままの骨のロッドを振り回し、ルカリオは電撃を防ぐ。
「冷凍ビーム!」
「波導弾!」
冷気の光線を放つスターミーに対し、ルカリオは骨のロッドを青い波導の念弾に変えて放出する。
双方の技が競り合い、その末に氷が砕けるように光線が散り、念弾がスターミーのコアへと直撃した。
「へえ、やるじゃん? スターミー、サイコキネシス!」
強い念力を操り、スターミーは念力の波を放射する。
「ルカリオ、躱して!」
目に見えない念力の波を、ルカリオは波導の力で読み取り、念力を躱す。
「撃ち落とせ! ハイドロポンプ!」
宙に飛び上がったルカリオへ、スターミーは高圧の大量の水を発射する。
「ルカリオ、発勁!」
右手に炎の如き波導を纏わせ、ルカリオは水柱へ右手を叩きつける。
再び両者が競り合うも、今度はその末にルカリオが押し戻された。
「十万ボルト!」
スターミーが中央のコアに電気を溜め込み、そのコアが黄色に輝く。
「ボーンラッシュ!」
対するルカリオが右手に骨のロッドを構え、駆け出す。
放たれる電撃を骨のロッドで防ぎ、
「龍の波導!」
長い骨は龍の頭へと形を変え、輝く龍となって突き進む。
龍が直撃して波導が爆発し、スターミーが吹き飛ばされる。
二度バウンドしつつ床を転がり、スターミーは戦闘不能となった。
「あっれぇ、やられちゃったかぁ。しくじったしくじった、スターミー、戻って」
スターミーをボールに戻すパイモンの表情に焦りはない。寧ろ、バトルを楽しむように薄ら笑いを浮かべている。
「流石だねえ。ジムリーダーからメガシンカを継承されただけのことはあるね」
それじゃ、とパイモンは懐から次のボールを取り出す。
「やっちゃえ、メタグロス!」
現れたのは、巨大な鋼のボディに四つの頑丈な鉄の脚を持つポケモン。顔にはX字のフレームが装着されている。

『information
 メタグロス 鉄脚ポケモン
 四つの脳でスーパーコンピュータ
 を上回る知能指数を叩き出す。
 相手の動きを先読みして戦う。』

以前からパイモンが使っていたメタング、その進化系だ。
かなりの重量なのか、脚を踏み出すだけで硬い爪が床に食い込み、軽く部屋が揺れる。
「さあ、掛かっておいでよ」
パイモンは突き立てた人差し指を動かし、ハルを挑発する。
「かなり強そうな相手だけど……やるしかないよね。ルカリオ、波導弾!」
右手を突き出し、ルカリオは掌から青い波導の念弾を発射する。
「メタグロス、サイコバレット!」
メタグロスの顔面のX字のフレームが光り、念力が放出される。
その念力は実体化して無数の小さな念弾を作り上げ、マシンガンのようにその念力の弾が撃ち出される。
波導の弾は蜂の巣にされて破壊され、残った念力の弾がルカリオへ襲い掛かる。
「っ、ルカリオ、躱して!」
素早い動きでルカリオは残った念力の弾を次々と躱していくが、
「メタグロス、よーく狙って。メタルブラスト!」
メタグロスがX字のフレームから鋼エネルギーを砲撃する。
ルカリオの避け方を予測していたのか、素早いルカリオの動きを的確に捉え、強大な鋼エネルギーがルカリオを吹き飛ばした。
「図鑑に書いてあったでしょ? メタグロスは四つの脳を使った圧倒的な知能によって相手の動きを分析できる。ルカリオも波導によって相手の動きを分析するのが得意なポケモンだけど、ぼくのメタグロスはそれ以上だよ」
さらに、とパイモンは続け、

「知ってるかな。メタグロスってポケモンはね、メガシンカが出来るんだ」

ぞわり、と。
ハルの背筋に、冷たいものが走る。
「ダンやアスたんを見てるんなら、知ってるよね。魔神卿たちはメガシンカの力を求めている。まだ石を持ってないやつもいれば、持ってるやつもいるけどね。ちなみに——」
不敵な笑いを浮かべながら、パイモンは被っている王冠の中央に填められた赤い宝石を指で叩く。
宝石が外れ、その中からは輝く丸い石が露わになる。
「——ぼくは、持ってる側の人間だよ」
赤い宝石より強い輝きを放つその石は、紛れもなくキーストーンだった。
「覚悟はいいかな、ハル君? 君とぼくの実力の差ってものを、見せてあげよう」