二次創作小説(映像)※倉庫ログ
- 第113話 実力差 ( No.189 )
- 日時: 2017/06/16 08:10
- 名前: パーセンター ◆AeB9sjffNs (ID: vJF2azik)
王冠に隠されたキーストーンに手を触れ、キーストーンが光を放つ。
しかし、
「……なんちゃってね」
思わず後ずさりしていたハルに対し、パイモンはからかうように舌を出して笑う。
「実はパイモンさん、メガストーン持ってないんだよ。正直面倒だよね、キーストーンと比べてメガストーンはポケモンによって違うから持ってる人が少ない、つまりなかなか人から奪えないんだよね。あ、そうだ。せっかくだからいいこと教えてあげよっか」
何か閃いたようにパイモンは表情を変え、
「フェルム地方って知ってるかな。ポケモンバトルが盛んな地方なんだけどね、あそこには共鳴石っていうおっきな岩があるんだ。あそこのトレーナーは共鳴石を削った石を組み込んだアイテムを使って、手持ちポケモンに一時的に特殊な力を与えることが出来てね。そこの人たちは共鳴バーストって呼んでるみたいだけど……まぁとにかく、共鳴バーストしたポケモンは一時的に強力な力を得られる。そしてね、メガシンカを使えるポケモンが共鳴バーストの力を得ると、メガシンカするんだよ」
「……どういうこと?」
「分かんないかぁ。キーストーンやメガストーンは、その共鳴石から作られている可能性が高いんだよね。つまり、この仮定が正しければ、ぼくたちの科学力を持ってすればキーストーンやメガストーンを作り出すことができる。アゾットって国では強制的にポケモンをメガシンカさせる機械を作ってたらしいけど、それよりも手軽に、そしてポケモンの力を最大まで引き出す正しいメガシンカが出来るんだ」
まぁまだ実験途中だし上手くいくか分かんないけどね、とパイモンは締め括る。
「先日アモちゃん率いる部隊がフェルム地方に潜入、共鳴石の一部を……っと、喋りすぎたかな。さ、バトルを続けよう」
相変わらず薄ら笑いを浮かべたまま、パイモンはバトルへと戻る。
「メタグロス、雷パンチ!」
四本の脚を折り畳み、メタグロスが念力で宙に浮かび上がる。
そのまま前脚に電撃を纏わせ、ルカリオへと突撃する。
「電気技なら……ボーンラッシュ!」
ルカリオの右手が波導を纏い、長い骨を形作る。
突っ込んでくるメタグロスに対し、骨のロッドを振るうが、
「読み通りだよ? 冷凍パンチ!」
前脚を纏う電気は掻き消え、代わりに後ろの二本足に凍える冷気が宿る。
そのままメタグロスは回転し、後ろ蹴りで波導の骨をへし折り、ルカリオを蹴り飛ばした。
「メタルブラスト!」
四本脚を伸ばして床に立ち、メタグロスはX字のフレームから鋼エネルギーの砲撃を発射する。
「っ、ルカリオ、威力を弱めて! 龍の波導!」
起き上がったルカリオは両手を突き出し、輝く龍を模した波導を放つ。
鋼のエネルギーと輝く龍が激突するが、少しずつ鋼の砲撃が龍の波導を押していく。
「っ……ルカリオ! 波導を、床に!」
咄嗟にルカリオは両手を地面に向け、波導を床へと放って飛び上がり、間一髪で鋼の砲撃を回避した。
「サイコバレット!」
宙へ飛び上がったルカリオに対し、メタグロスはX字のフレームから念力を生み出す。
その念力を実体化させて無数の小型念弾へと変え、マシンガンのように一斉に発射する。
「ルカリオ、ボーンラッシュ!」
ルカリオが骨のロッドを手にし、それを振り回して無数の念弾を迎え撃つ。
だが念弾の一つ一つがかなりの威力を持ち、ルカリオの持つ骨のロッドは次第にヒビが入り、遂には打ち破られて残りの念弾を浴びてしまう。
「ルカリオ! くっ、強い……!」
メガシンカしたルカリオの火力を上回る攻撃力を持つメタグロス。それに加えて防御力、知能指数も高水準。先程のスターミーより明らかに強い。恐らく、パイモンのエースポケモンなのだろう。
「さあさあ、ハル君の力はそんなもんじゃないでしょ? メタグロス、冷凍パンチ!」
前脚に凍える冷気を纏わせ、メタグロスは四肢を折り畳んで宙に浮かび上がり、突撃を仕掛ける。
「ルカリオ、ギリギリまで引きつけて」
両手の波導を高め、ルカリオは目を閉じてその場に佇む。
メタグロスが一気に距離を詰め、冷気を纏った前脚を振り上げる。
「今だルカリオ! 発勁!」
波導の力でメタグロスの位置をずっと確認していたルカリオが、カッと目を見開く。
「予想通りだよ。メタグロス、雷パンチ!」
振り上げた腕をそのまま折り畳み、メタグロスは急に軌道を変えてルカリオのすぐ横を通過し、背後から電気を纏った前脚を突き出す。
「こっちもね! ルカリオ!」
しかしルカリオは攻撃を仕掛けていなかった。
メタグロスがフェイントを仕掛けてくることを予想し、ルカリオはその場で跳躍してメタグロスの突き出した、電撃を纏った脚を躱す。
そのままメタグロスの背中に向けて、青い炎の如き波導を纏った右手を叩きつけた。
「ボーンラッシュ!」
体勢が崩れて地面に落ちたメタグロスへ、ルカリオはさらに右手を纏う波導を長い骨の形に変え、メタグロスへと骨のロッドを叩き込む。
地面技のボーンラッシュは、鋼タイプのメタグロスには効果抜群だ。
「そうこなくっちゃね。メタグロス、サイコバレット!」
骨のロッドを叩きつけたルカリオは素早く距離を取ったが、メタグロスはそれを予測していたようで、ルカリオが飛び退いた方向へ正確に無数の実体化させた念力の弾を発射する。
慌てて念弾を躱そうとするルカリオだが、何発かがルカリオを撃ち抜いてダメージを与える。
「その調子だよ。メタグロス、メタルブラスト!」
念弾を撃ち込まれて体勢を崩すルカリオへ、メタグロスはフレームから強大な鋼エネルギーの砲撃を放つ。
「っ、ルカリオ、躱して!」
何とかルカリオは横っ飛びし、鋼の砲撃を躱すが、
「雷パンチ!」
メタグロスは四肢を折り畳み、前脚に電撃を纏って突撃する。
一気にルカリオとの距離を詰め、今度こそ電撃を込めた前脚でルカリオを蹴り飛ばした。
「………まだだ。まだ終われない! ルカリオ、発勁!」
それでもまだ、ルカリオは起き上がる。
直後、ルカリオの右手を纏う波導が爆発的に展開された。
右腕全体を覆うほどに強大な青い炎の如き波導を携え、ルカリオは力を振り絞り、渾身の力を込めてメタグロスへと向かっていく。
だが。
「最後は正面突破か。嫌いじゃないよ、そういうの」
だけど、とパイモンは言葉を続ける。
「メタグロス、サイコバレット!」
メタグロスが顔面のX字のフレームに念力を纏わせ、その念力を実体化させる。
実体化した念力は無数の小型の念弾を形作り、マシンガンのように一斉に発射される。
渾身の力で突き進んでくるルカリオへ、容赦なく無数の念弾が放たれ、ルカリオを貫いた。
蜂の巣にされたルカリオの右手から、青い波導が消え、床へと倒れる。
「ルカリオ……!」
床に倒れ伏したルカリオの体を光が包み、その姿をメガシンカ前の元の姿に戻す。
つまり。
それは、ルカリオの戦闘不能を意味していた。
「ま、こんなところかな。ハル君、確かに強いけど、ぼくにはまだまだ及ばないってことだね」
ルカリオを戻したハルへ、パイモンはそんな言葉を投げかける。
「でも頑張った方だと思うよ? スターミーを倒し、メタグロスにも傷を負わせた。とりあえず及第点には達してる、ってとこかな」
さて、とパイモンは言葉を続け、
「残念だけどぼくは君たちを手に掛けられない。君たちは救世主の資格がある、今ここで手を掛けると面倒なことになるんでね。だから」
そこまで言って、パイモンは部屋の奥でスピアーに見張られている社長の方に目を向ける。
「計画変更、こっちを人質に使うよ。ここでぐだぐだやってても仕方ない。社長を連れ去って、どんな手段を使ってでもターミナルの権限を手に入れる。力で従わせる、催眠術で操る……方法はいくらでもあるしね。そしてターミナルがゴエティアの手に分かったことが世間に知られたら、社長を殺す。それを君たちとここの社員全員に伝える。完璧だよね、ぼくの作戦」
「っ……!」
ハルが歯噛みするが、圧倒的な実力で叩きのめされている以上、食い止めることは出来ない。
「くそっ……このまま見逃すしかねえのかよ……!」
ジゼも悔しそうな声を上げるが、こちらも攻撃には出られない。自分より強いハルが負けた、その事実があるからだ。
「そうだよ? スピアー、ここにはもう用はない。社長を気絶させて、連れていくよ。社長さん、動かないでねー。身動きしたら本気で刺すから」
パイモンの指示を受け、社長の背後についていたスピアーが毒針を構える。
だが、その時。
ビーーーーーーー!!! と。
唐突に、建物全体に警報のような耳障りな音が鳴り響く。