二次創作小説(映像)※倉庫ログ
- 第114話 復旧 ( No.190 )
- 日時: 2017/06/17 09:25
- 名前: パーセンター ◆AeB9sjffNs (ID: VYLquixn)
唐突に。
建物全体に、警報のような音が鳴り響く。
「っ!?」
パイモンが驚いたような表情を浮かべたということは、ゴエティアの仕業ではないようだ。
「これは……イザヨイシティのセキュリティ警報だ」
唯一冷静でいたのは、スピアーに毒針を撃ち込まれる直前の社長だった。
「セキュリティ!? そんなバカな、だってここのシステムはアモちゃんが——」
先程までの余裕を失い、途端に慌てた様子になるパイモン
その時。
『よくもやってくれたわネ、ゴエティアサン』
部屋のスピーカーから、機械を通したような女性の声が響く。
「その声は……マキナさん!」
『ご迷惑をお掛けしたわネ、社長サン。たった今、この街のシステム「マキナシステム」が復旧したわヨ』
社長とのやり取りを聞く限り、恐らくこの声の主は最初に話題に出てきた、ジムリーダーのマキナだろう。
「な……バカな、あり得ない! ちょっと待って——もしもし、アモちゃん!?」
慌ててパイモンは小型の通信機を取り出す。
「アモちゃん、どういうこと!? アクセス権限取り返されてるよ!?」
『かたじけない……完璧に掌握したはずなのですが、たった今権限を奪い返され……ダメです、取り返せませんな……! 早く逃げた方がよろしいかと!』
「嘘だろ……アモちゃんのハッキングを、どうやって!」
『パイモン、って言ったかしら? 面白い焦りようネ。カメラのシステムも取り返したから、そっちの状況、筒抜けヨ』
パイモンの様子が見えているようで、スピーカーからせせら笑うような声が流れる。
『こっちにも協力者が来てくれてネ、私のシステムへのドッキングを切り離してくれたのヨ。助かったワ、彼がいてくれて。パイモンサン、貴方たちもう少し有能な見張りを使った方がいいんじゃないかしら?』
「くそっ、だから本当はベリちゃんを見張りに使いたかったのに……協力者? 一体誰が! ノワキのやつらか!」
ハルとジゼもそう考えていた。
しかし、予想は外れた。
『ハル君、久しぶり。パイモン、お前もね。今回はオレの勝ちだぜ』
スピーカーから聞こえて来た声。その声の主は、
「スグリ君! どうしてここに?」
『詳しいことは後で話す。今はそいつらを捕まえるのが先だ』
『そうネ。さて、パイモンサン、この街に電磁バリアを仕掛けたワ。貴方のお仲間もまだここから逃げられていない。捕まるのも時間の問題ネ。ところでよそ見していていいのかしら? 社長サン、逃げちゃったワヨ?』
「っ!」
パイモンが振り向けば、既に社長はハルとジゼが助け出していた。
「メタグロスは傷ついてる……しょうがない、バルジーナ!」
どうにか逃走するしかないと踏んだらしく、パイモンはスピアーとダメージを負っているメタグロスをボールに戻し、骨で着飾ったハゲワシのようなポケモンを出す。
『information
バルジーナ 骨鷲ポケモン
大空を飛び回って地上を観察し
獲物を捕まえて巣まで連れ去る。
捕食した獲物の骨で体を着飾る。』
バルジーナの背中に飛び乗り、パイモンは叫ぶ。
「バルジーナ、ガラスを破って、逃げるんだ! 早く!」
主の焦りを察してか、バルジーナは慌てて飛び立つと、強引に窓ガラスをぶち抜き、飛び去っていった。
「逃げたか……!」
『心配無用ヨ。この街にはセキュリティロボットがいる。バリアで足止めを食らってる間に、対空用ロボットが全員捕まえてしまうワ』
「っ、どこへ行きやがった! 出て来いよ!」
メイゲツたちと交戦していたはずのロノウェだが、突然鳴り響いた警報に反応していた隙に、メイゲツを中心とした部隊は唐突にどこかへ消えてしまった。
「くそっ、どこだ! ビビってんじゃねえぞ!」
怒鳴りながら街の中を歩き回るロノウェだが、そこで異変を感じる。
「っ……?」
体に軽い痺れを感じた。例えるならば、ドアノブに手を掛けた時にその手へ静電気が走ったような。
「何だ?」
何気なくロノウェが空を見上げる。
そこには。
街全体を囲むように、ドーム状に電磁バリアが張られていた。
「……は?」
何が起こっているか分からず、呆然とするロノウェ。
そこへ、
「ロノ! 早く逃げるわよ!」
アーケオスに掴まったアスタロトとパラレルが、ロノウェの元に降りてくる。
「逃げる……? どういうことだ」
「あれ見て分かんないの!? 街のセキュリティが復活したの! 今パイモンがアモちゃんに電磁バリアの解除をお願いしてる! ここから逃げないと私たちは捕まっちゃうの! 分かったら掴まって! 急いで!」
「何だと!?」
ようやく事態を把握したようで、ロノウェは差し出されたアスタロトの手を握る。
三人をぶら下げたアーケオスは、何とか飛び立ち、パイモンと合流する。
「アモちゃん! 解除はまだ!?」
『もう少しですぞ! しかしマキナシステムの干渉が強い……恐らく解除は一瞬、それを逃したらもう打つ手はない! 確実に脱出するのですぞ!』
「分かってる! 早く!」
殆ど怒鳴るような口調で、パイモンは通信機に向かって叫ぶ。
背後からは、無数のロボットが浮かび上がり、ゴエティア一行に迫ってくる。
『3、2、1……今です!』
「バルジーナ!」
「アーケオス!」
アモンのカウントダウンの直後、電磁バリアが一瞬消えた。
その隙を突き、一人を乗せたバルジーナと三人をぶら下げたアーケオスが全速力で飛翔する。
すぐに電磁バリアは復活したが、その時には間一髪、ゴエティア一行はバリアの外へ逃げ出していた。
『どうにか、逃げられたようですな。では、また後ほど』
「危なかったよ……アモちゃん、助かった」
通信を切り、パイモンはアスタロトに掴まれているロノウェの方を向く。
「ロノ、後で説教ね。街の中ちゃんと見張っててくれたら、こんなことにはならなかったんだから」
「っ……済まねえ」
そしてアスタロトもアスタロトで、
「それにしても、あのガキ共……マジで覚えておきなさいよ」
いつもの口調はどこへやら、苛立ちを浮かべながら呟く。
とりあえずは何とか危機を脱し、ゴエティアの四人は逃げるように飛び去っていった。
その後警報は止み、電磁バリアも消えた。
魔神卿たちと用心棒には逃げられたものの、街に残っていた下っ端たちは全員逮捕された。
ハルとジゼはシステム復活によって稼働した移動床に乗り、ポケモンセンターでスグリと合流した。
「お前がスグリか。俺はジゼ、最近旅に出たトレーナーだ。よろしくな」
「へえ、それじゃあオレのライバルが一人増えることになるのかな。オレはスグリ、ハル君の友達だよ。よろしくね、ジゼ君」
初対面の二人が、簡単に挨拶を交わす。
「久しぶりだね、スグリ君。それにしても、どこに潜んでたの?」
「あぁ、実はオレ、隣のユウナギシティってとこにいてね。そこのジムに挑もうと思ったんだけど、バッジを7個持ってないと受け付けないって言われてさ。そこでここのジムに挑戦しようとジムに向かってる途中で街全体が停止、大量のゴエティアが攻め込んで来てね。しばらく木の上に隠れて様子を見てたら、近くで爆発が起きて見張りの人数が減ったから、その隙にジムに向かってジムリーダーのマキナさんを助け出したってわけ。マキナさん、本人の前じゃ言えないけど割と変人っていうか、結構面白い人だよ。とにかく、一緒にジムに来てよ。ゴエティアと戦ってくれた二人に、お礼が言いたいらしいよ」
「分かった。ちょっと待っててね」
ハルとジゼはポケモンを回復させると、スグリに連れられ、移動床に乗ってジムへと向かう。