二次創作小説(映像)※倉庫ログ

第116話 ジムバトル! イザヨイジムⅠ ( No.192 )
日時: 2017/06/22 08:44
名前: パーセンター ◆AeB9sjffNs (ID: VYLquixn)

何試合かしてみたが、ラプラスの戦績はなかなか悪くない。
「よし、ラプラス。お疲れ様」
ラプラスの頭を撫で、ハルはラプラスへソクノの実をあげる。
「これなら、明日のジム戦でも活躍できるかもね。とりあえず、今日は疲れちゃった。部屋で休もうか」
ラプラスをボールに戻し、一階で回復させると、ハルはポケモンセンターの宿舎を借りて部屋に入る。
今日はゆっくり休んで、明日はジム戦だ。



「ハル! スグリ! 勝ったぜ!」
次の日。
朝早くからジムに挑戦しに行ったジゼが、バッジを掲げて帰って来た。
昨日話し合った結果、ジムの順番はジゼが一番目、ハルが二番目、スグリが最後となっていた。
「おおー、やるじゃん」
「やったね、ジゼ!」
ハルとスグリが、勝って帰って来たジゼを出迎える。
「それじゃ、次はハル君の番だね」
「うん。行ってくるよ」
ポケモンセンターを出て、ハルは街中を巡る移動床に乗り、ジムへと向かう。



「ここだね……」
昨日もきたガラス張りの建物、イザヨイジムに、ハルは足を踏み入れる。
いくつも扉がある細長い通路は、奥まで進むと、突き当たりに扉があった。
ドアの上に書かれた文字を見る限り、どうやら、ここがジムのようだ。
「お願いします」
ドアを開け、ハルは中に踏み込む。
壁も天井も、床までもが真っ白い、何とも異質な部屋だった。
時々ネオンが走るように薄い水色の不思議な模様が壁に移り、バトルフィールドも縁が光によってうっすらと照らされている。
そして。
「よく来たわネ、ハルサン。昨日はありがとう」
バトルフィールドの向こう側に立つのは、右半身を機械化させた、白衣の女性。ジムリーダーのマキナ。
「昨日からずっと、君たちと戦うのを楽しみにしていたワ。どんな戦い方を見せてくれるのか、期待しているわヨ」
「ええ。僕も昨日から楽しみにしていました。ジムバトル、よろしくお願いします!」
ハルの力強い言葉に、マキナはにっこりと微笑む。
マキナがパチンと指を鳴らすと、突然、右の壁にプロジェクターを写したように画面が現れる。
『それではこれより、ジムリーダー、マキナと、チャレンジャー、ハルのジム戦を始めます』
「ジムの審判を務める人工知能ヨ。私が作り出したノ」
突然壁から声が聞こえて驚くハルに、マキナが説明する。
『使用ポケモンは両者五体。どちらかのポケモンが全て戦闘不能になった時点で、試合終了となります。なお、ポケモンの交代は、チャレンジャーのみ認められます』
人工知能が流暢に言葉を話す。
『それでは、両者ポケモンを出してください』
「それじゃ、私からネ」
まずはマキナがボールを手に取り、最初のポケモンを繰り出す。
「おいで、クレッフィ」
マキナの一番手は、丸い顔に丸い目、鍵穴のような口を持つ、宙に浮いたポケモン。腕は頭から生えており、無数の鍵を持って鍵束のような容姿をしている。

『information
 クレッフィ 鍵束ポケモン
 様々な鍵を集める習性がある。
 基本穏やかだが民家に忍び込み
 鍵を盗む悪戯好きな個体もいる。』

鋼とフェアリータイプを持つ、非常に小柄なポケモンだ。
「どんなポケモンなのか予想出来ないけど……最初は君かな。頼んだよ、ファイアロー!」
ハルが初手に選んだのはファイアロー。鋼タイプに炎技で弱点を突ける。
「それじゃ始めるわヨ。クレッフィ、まずは電磁波」
まずクレッフィが先手を取って動き出す。
頭の角の先から、微弱な電気を発生させる。
しかし、
「!?」
その放たれる電磁波が、非常に早い。
躱す隙もなく、ファイアローは電磁波を浴びて麻痺状態を受けてしまう。
「これ……前にも似たようなことが……」
そこでハルは思い出す。
以前も補助技を高速で撃ってきたのは、メイゲツのヤミラミ。
そして、その時の異常なスピードの正体は、
「そのクレッフィ、特性は悪戯心……?」
「流石ネ、正解。クレッフィの特性は、補助技を先制で使える悪戯心ヨ」
厄介な特性、悪戯心。
どれだけ速く動いても、相手の補助技が先に発動するのはそれだけで厄介だ。
「仕方ない……スピードを上げてカバーだ! ファイアロー、ニトロチャージ!」
ファイアローが力強く啼き、全身を炎に包む。
そのままファイアローは勢いよく羽ばたき、クレッフィへと突撃を仕掛ける。
「クレッフィ、リフレクター」
対して、クレッフィが体の周りに透明な光り輝く箱のような壁を纏う。
直後、クレッフィは炎の突撃を受けて吹き飛ばされる。
「続けて鋼の翼!」
さらにファイアローは翼を鋼の如く硬化させ、再びクレッフィへと迫る。
「クレッフィ、光の壁」
次にクレッフィは先程とは違う色の光の壁を周囲に纏わせ、その直後に翼を叩きつけられ、地面に落ちる。
「畳み掛けるよ! ニトロチャージ!」
地面に落ちたクレッフィを狙い、ファイアローはさらに炎を纏って突撃する。
「クレッフィ、雨乞い」
地面に落ちたままのクレッフィが何かを唱える。
次の瞬間、炎の突撃がクレッフィを捉え、二度三度とバウンドして床を転がる。
そして。
「え……?」
立て続けに攻撃を受けたクレッフィは、早くも戦闘不能となってしまった。
「クレッフィ、お疲れ様。休んでてネ」
しかし何の焦りも見せず、マキナはクレッフィをボールへと戻す。
あまりにも拍子抜けだ。麻痺こそ受けたものの、ダメージを一切受けることなく、先手を取ってしまった。
「どうしたノ? 何を困った顔をしているノ?」
「いや……クレッフィが思ってたよりもずっと早く倒れたので……」
「私のクレッフィは耐久力が低いのヨ。でもやってほしいことはやってくれたし、充分なんだけどネ」
(やってほしいこと……?)
そう言えば、攻撃を受け続けながらクレッフィは何か補助技をいくつも使っていた。
だが、その正体が何かハルには分からない。
「それじゃ、次は……おいで、ジバコイル」
ハルが困惑している間に、マキナは二番手となるポケモンを繰り出す。

『information
 ジバコイル 磁場ポケモン
 コイルが三匹引き寄せあっていた
 レアコイルが進化し完全に連結。
 3つのユニットから強い磁力を出す。』

アリスも使っていた、レアコイルの進化系だ。図鑑の説明の通り、三匹のコイルが完全に連結した姿のポケモン。中央のコイルは特に大きくなり、頭からはアンテナのような突起が生え、その姿はUFOのようにも見える。タイプは変わらず、電気と鋼だ。
さらに、レアコイルが場に出た瞬間、ぽつぽつと水滴が降り始める。
「これって、雨……?」
ハルが天井を見上げれば、いつの間にやら黒い雨雲が天井全体を覆っていた。
「もしかして……これはクレッフィが最後に使った」
「そうヨ。雨乞いの技によって、フィールドに雨を降らせたノ」
「雨か……ファイアロー、ちょっときついよね……」
炎タイプであるファイアローには、雨天は辛いだろう。ハルとしても交代させたいところだが、
(でも、誰に交代する……?)
雨を一番活かせるのはラプラスだが、電気技が怖い。相性を考えるならワルビアルだが、ファイアローと同じく雨は苦手。エーフィ、オノンドも相性はよくないし、唯一完全有利なルカリオはまだとっておきたい。
そんなハルの様子に気付いてか、ファイアローはハルの方を振り返り、頷く。
「任せろ、ってことか。分かった。それじゃ、苦手な環境だろうけど、頼むよ」
降りしきる雨の中、ファイアローは羽ばたいて火花を撒き散らし、自身を鼓舞して啼く。