二次創作小説(映像)※倉庫ログ
- 第120話 ジムバトル!イザヨイジムⅤ ( No.198 )
- 日時: 2017/11/30 20:56
- 名前: パーセンター ◆AeB9sjffNs (ID: taU2X.e0)
120
「ラプラス、フリーズドライ!」
床下から姿を現したアイアントへ、ラプラスは息を吸い、氷点下の凍える冷気を放つ。
「アイアント、躱してシザークロス」
白い床を這い回って冷気を躱しつつ、アイアントは徐々にラプラスとの距離を詰めていく。
「それなら、渦潮!」
ラプラスが甲高い声で鳴き、周囲に波を起こす。
渦の波はラプラスを中心として広がり、アイアントの行く手を阻む。
「ならばアイアント、アイアンヘッド」
「ラプラス、ハイドロポンプ!」
顎を打ち鳴らし、アイアントは硬い頭部を構え、波の中を突っ切ってラプラスは頭突きを仕掛ける。
対するラプラスは口から大量の水を噴射し、突撃するアイアントを迎え撃つ。
激しく競り合った末、
「シザークロス!」
「させるか! 渦潮だ!」
再び顎を開いてラプラスを切り裂こうとするアイアントに対し、ラプラスは自身を中心に波の渦を起こす。
顎を開いて襲い掛かろうとするアイアントを波が攫い、マキナの元まで押し流し、アイアントの猛攻を何とか凌ぎ切った。
「なかなかやるわネ。今までのポケモンたちと違って徹底攻撃を得意とする私のアイアントを相手に、互角に渡り合うとはネ」
マキナがラプラスを見据え、感心したようにそう言う。
前日何試合かしてハルも分かっている。攻撃力も備えているが、ラプラスの最大の特徴はハルの手持ちの中でもトップクラスとなる耐久力とスタミナだ。
水の上でなければあまり身軽には動けないものの、それを補って余りある耐久力を持ち、相手の攻撃を耐え切った上で反撃に出ることができる。
「ええ。このラプラスの耐久力は、侮れませんよ」
何発も攻撃を受けラプラスのダメージも決して小さくはないが、それでもまだ戦える。
「よし! ラプラス、ハイドロポンプ! 薙ぎ払って!」
ラプラスが口を開く。大きく首を振るい、鞭を振るうように大量の水を発射する。
「アイアント、躱してシザークロス」
飛び跳ね、這いずり、アイアントは水の柱を躱しながらラプラスへと接近していく。
「ラプラス、押し流して! 渦潮!」
ハイドロポンプが躱されたのを見て、すぐさまハルは次の指示を出す。
ラプラスは周囲へと渦の波を放出し、徐々に迫り来るアイアントを遠ざけようとする。
「アイアント、躱しなさい」
対してアイアントが素早く飛び退き、ラプラスを中心に渦巻く波から逃れる。
距離を取らせ、一旦立て直そうとするハル。
だが。
「馬鹿力」
飛び退いたアイアントが、地面を蹴って再びラプラスへと飛び出す。
「なっ!? ラプラス——」
慌ててハルが指示を出そうとしたが、既に遅い。
渾身の力を込めてアイアントがラプラスへ激突し、ラプラスの巨体を吹き飛ばした。
「っ、ラプラス!」
馬鹿力は格闘技。氷タイプを持つラプラスには、効果抜群。
「フフフ、切り札はここぞという時まで隠しておくものヨ。いくら耐久力に優れているといえど、今ラプラスは私のアイアント最強の技を効果抜群で受けた。もう一、二発ほど技を当てれば、そろそろ限界よネ」
ニヤリとマキナは笑い、
「アイアント、ストーンエッジ」
アイアントにとどめの一撃を指示する。
マキナの元へと戻っていたアイアントはすぐさま床へと潜る。
「っ、ラプラス、一発だけ耐えて! フィールド全体へ、冷凍ビーム!」
角の先からラプラスが全方位を薙ぎ払うように凍える冷気の光線を放つ。
光線は濡れた床を走らせ、床全体を凍りつかせてしまうも、地中のアイアントには届かず、その直後フィールドが揺れてラプラスの周囲から氷を突き破り、尖った岩の柱がラプラスを突き刺す。
それでも、ラプラスはまだ耐えた。しかし次の一撃を受ければ、もう持たないだろう。
ただ、
「アイアントを捕らえましたよ」
自信満々に、ハルはそう告げる。
「フィールドを凍らせてしまえば、アイアントは出てこられない。ストーンエッジで開けた穴から水を打ち込めば、アイアントは逃れられませんよね」
「甘いわネ。私のアイアントの顎の力はこのフィールドすら食い破る。氷を砕くくらい、造作もないワ。アイアント、帰って来なさい」
マキナの言った通りだった。マキナの近くの氷にヒビが入り、床から鋼の大顎が現れ、氷を砕く。
そして。
「今だラプラス! ハイドロポンプ!」
その瞬間をラプラスは見逃さなかった。
床から出て来た瞬間のアイアントへ、大量の水が発射され、アイアントを水流に飲み込み、押し流し、壁へと叩きつけた。
「っ! アイアント……」
どうやら耐久力は低いらしい。叩きつけられたアイアントは、目を回して床へ落ち、戦闘不能となってしまった。
「……やるじゃないノ。アイアントの動きを誘導したのネ」
「ええ。氷が割れたところを狙うつもりでした」
ハルの狙い通り。ラプラスがハイドロポンプを鞭のように薙ぎ払ったことで地面を濡らし、それを利用して床を凍らせ、アイアントの位置を特定させ、確実に攻撃を当てられるようにしたのだ。
「アイアント、お疲れ様。休んでてネ」
「ラプラス、ありがとう。ゆっくり休んで」
アイアントを倒した直後、ラプラスもダメージが限界だったのか、床に横たわってしまった。
お互いにポケモンを戻し、そして最後となるボールを手に取る。
「頼んだよ、ルカリオ!」
「おいで、ハガネール」
ハルの最後のポケモンは、エースのルカリオ。
そしてマキナのエースは、複数の鋼の鉱石が連結したような体を持つ巨大な大蛇のような姿のポケモン。頭部が非常に大きく、特徴的な大顎の形をしている。
『information
ハガネール 鉄蛇ポケモン
地中の奥深くに生息するがその
巨体故に動くだけで地震を起こす。
皮膚はあらゆる金属よりも頑丈だ。』
鋼と地面タイプを併せ持つポケモン。そして一番の特徴は、何よりその規模。
物凄く大きい。目測だが、10メートルはある。
野太い声で咆哮し、大気を震わせ、ハガネールは赤い瞳でルカリオを見下ろす。
「なんて大きさだ……こんな大きいポケモン、初めて見たよ」
カガチのバクーダを遥かに凌ぐ大物。だが、負けるわけにはいかない。
「分かっているとは思うけど、このハガネールは私のエース。すなわち、最強のポケモンなのヨ」
「分かってます。でも、僕のルカリオもエースなんです。負けられません」
ハルの言葉と共に、ルカリオは両手から青い波導を噴き出す。
「なるほど。では、始めるわヨ」
「はい! ルカリオ、ボーンラッシュ!」
ルカリオが両手を構えると、青い波導が長い骨の形を作り上げる。
骨のロッドを掴み、ルカリオは一気にハガネールとの距離を詰め、骨のロッドで殴りかかる。
しかし、
「っ!?」
ガキィン! と音が響き、ハガネールに叩きつけた骨が逆に弾かれた。
どうやらその見た目通り、その鋼の胴体はとてつもなく硬いようだ。
「だったら、やっぱり本気で行くよ! ルカリオ!」
骨のロッドを青い波導へと戻し、右手に纏わせ、ルカリオはハルの言葉に頷く。
「僕と君の、絆の力に応えて! ルカリオ、メガシンカ!」
ハルのキーストーンの光にルカリオのメガストーンが反応し、光を放つ。
七色の光に包まれ、ルカリオはその姿を変化させていく。
黒い模様を体に刻み、咆哮と共に光を薙ぎ払い、ルカリオはメガシンカを遂げる。
対して。
「なるほど」
何やら意味深な表情と口調で、マキナは頷く。
そして、
「ならば、こちらも」
そう返し、マキナは機械化した右腕を上げ、その掌を突き出す。
その掌の真ん中に填め込まれているのは、ハルが持つ輝く石と同じ。
すなわち、キーストーン。
「全ての数値を、凌駕する。計算しきれないほどの鋼の暴力を——ハガネール、メガシンカ」
ハガネールの顎の下に装着されていた小さな機械。
そこに填め込まれていたメガストーンが、光を放つ。
マキナのキーストーンとハガネールのメガストーンが七色の光を放ち、双方の光が繋がり、ハガネールを包む。
光がハガネールの体を包むが、たたでさえ圧倒的な巨体を持つハガネール、そのシルエットはあまり変わらない。特徴的な顎がさらに大型化した程度だ。
明確な変化が見られたのは、光を薙ぎ払ってその姿を現した直後。体を構成する鉱石の一部がさらに硬質化し、鋼の皮膚が剥がれ落ち強固な結晶体へと変化する。
そして剥がれ落ちた金属片は地面に落ちることなく、ハガネールの首回りを浮遊して回転し始めたのだ。
「これが、メガハガネールか……」
よく見ると、少しだけだがさらに大きくなっているように見える。もう少し首を上げれば、天井にぶつかってしまいそうだ。
「さあ、ハルサン。貴方のメガシンカの力と私のメガシンカの力、どっちが強いか、勝負ヨ」
「望むところです。絶対に、負けませんよ」
双方のエースとなるメガシンカポケモンが、真っ白なバトルフィールドに相対する。