二次創作小説(映像)※倉庫ログ

第5話 自信家 ( No.20 )
日時: 2016/10/28 12:44
名前: パーセンター ◆AeB9sjffNs (ID: F8Gg2X0Y)
参照: 実力者スグリ、その次なるポケモンは——

「出て来い、ジュプトル!」
スグリが繰り出したのは、緑色の二足歩行のトカゲのようなポケモンだ。頭や腕から、葉が生えている。

『information
 ジュプトル 森トカゲポケモン
 密林に暮らしている木登りの名手。
 大木の枝から枝へ自由自在に飛び回る
 驚異的な瞬発力と跳躍力を持つ。』

「ジュプトル……進化系ポケモンか……!」
種にもよるが、ポケモンは進化する生き物だ。
進化の方法も種によって異なるものの、基本的に経験と実力を積んで進化するものが多い。
つまり、スグリの持つこのジュプトルは普通のポケモンよりもより多くの経験を積んでいる、と考えられる。
「オレのジュプトルは強いよ? カザハナジムでやった時はまだキモリだったけど、その時からブイゼルたちより強かったしね」
スグリの言う通り、目の前のジュプトルは明らかに強そうだ。そもそも、進化しているのがその証だろう。
「だけど可能性はゼロじゃない。逆に言えば、このジュプトルを倒すことが出来たら僕たちもジムリーダーに勝てるってことだ。頑張るよ、リオル! 電光石火!」
ハルの言葉に応えて頷き、リオルは地面を蹴って飛び出すが、
「ジュプトル、電光石火!」
同時にジュプトルも動き出す。それもリオルよりずっと速いスピードで一気に突撃し、リオルを跳ね飛ばした。
「タネマシンガン!」
続いてジュプトルは口から無数の種をマシンガンのように連射する。
一発一発のダメージは大したことはないが、連続で当たるのでなかなか痛い。
「リオル、大丈夫?」
無数の種を打ち付けられたリオルだが、体勢を整え、自分の頬を叩いて気合いを入れ直す。
「よし、リオル、岩砕きだ!」
拳を握り締め、リオルは岩をも砕く勢いで拳を突き出そうとするが、
「遅い遅い! ジュプトル、燕返し!」
既にジュプトルはそこにおらず、代わりにリオルの上空に飛び上がっていた。
刀身のように白く輝く腕をリオルに叩きつける。燕返しは飛行タイプの技、リオルに効果は抜群だ。
「二度蹴りだ!」
体勢を崩すリオルに対し、ジュプトルは瞬時に二連発の蹴りを食らわせ、リオルをハルの元まで蹴り飛ばした。
「くっ……リオル、そろそろ反撃するよ! 発勁!」
「させないよ。タネマシンガン!」
右手に波導を纏ったリオルがジュプトルへと突っ込んでいくが、ジュプトルの放つ無数の種に阻まれ、リオルの右手はジュプトルに届かない。
「今だジュプトル! 燕返し!」
リオルの右手を覆う波導が弱まった瞬間を狙い、ジュプトルがリオルとの距離を一気に詰める。
刀身のように白く輝かせた右足を振り上げ、リオルを宙に蹴り上げる。
「しまった……! リオル、真空波!」
「とどめ! ジュプトル、タネマシンガン!」
腕を振り抜くリオルだが、空中という不安定な状態で狙いが定まらない。
真空の波は明後日の方向へと飛んでいき、次の瞬間、ジュプトルの放つ無数の種の弾丸がリオルを捉えた。
「リオル!」
ドサリ、とリオルが地面に落ちる。
目を回して、完全に戦闘不能になっていた。



「よしよし今日も好調好調。ジュプトルお疲れ様、戻ってていいよ」
バトルが終わった後、ジュプトルの頭を撫でてボールへと戻し、スグリはハルの近くへ歩み寄ってくる。
「す、凄いねスグリ君。全然敵わなかったよ……」
「ハル君、俺に負けたからってそんなに落ち込む必要ないよ。自分で言うのもなんだけど、オレって強いしさ」
いかにも自信家な発言だが、実際にスグリは強かった。ハルと違って一週間経っているとはいえ、同じ新人トレーナーとは思えないほどの強さだった。ポケモンの行動前後の隙がかなり少なく、動きも機敏で、トレーナー側の指示も素早く的確。ポケモンだけでなく、スグリのトレーナーとしての腕も優秀に感じられた。
「それに、ハル君もまぁまぁ強かったよ? まだ一日って聞いた時はブイゼルだけでサクッと決められると思ったし」
「あはは……ありがとう」
褒められたことに関しては嬉しいのだが、その評価のレベルを聞くとちょっと複雑な気持ちになる。そこまで低く見られていたのだろうか。
さーて、とスグリは大きく伸びをし、
「オレはもうちょっとここでバトルしていくけど、ハル君、明日ジム戦に行くんだよね? だったら今日はこの辺にしとけば? ポケモンの調整もしてあげないといけないだろうし」
「うん、そうだね……ていうか、ポケモンバトルって疲れるね……何戦もするとくたくただよ……」
ふう、と息を吐くハル。スグリはそんなハルに手を振り、別のトレーナーとバトルしにいった。



ポケモンセンターでポケモンを回復させていると、サヤナが戻ってきた。
「ハル! あの花屋さん、本当にポケモンジムだったよ」
「あ、やっぱりそうだったんだ。ジム戦はどうだった?」
「それがねー」
むー、とサヤナは口を尖らせ、
「ジムリーダーの人、すんごい強かったの! 一匹目のポケモンは倒せたんだけど、その次のポケモンに二体抜きされちゃった」
「そう……残念だったね」
「ハルも明日挑むんでしょ? 気をつけて頑張ってね。やっぱりジムリーダーって強いよ……」
分かりやすく落ち込むサヤナだが、
「だから、明日は近くにある林で特訓するの。そこの野生ポケモンはちょっと強いみたいだし、トレーナーの特訓の隠れた穴場にもなってるんだって!」
すぐに顔を上げて笑顔になる。切り替えも早い。
「ついでに新しい強いポケモンもゲットしちゃうかも!? それじゃハル、私もう少し地下で特訓してくるね!」
笑顔でハルに手を振り、サヤナはポケモンを回復させた後、センターの地下に降りていった。ハルと違って疲れ知らずだ。
しかし、トレーナーになりたての時とはいえ自分に勝ったサヤナもジムリーダーに負けたという。気を引き締めて挑まなければ。
「とりあえず、今日はもう休もうかな。明日に備えて、今日は早めに寝よう」
こうして、ハルの一日が終了する。明日は、いよいよ初めてのジム戦だ。



翌日。
「わ、思ったより大きい……」
ハルは地図に載っている花屋——ジムを訪れていた。
予想していたよりも大きい建物だ。ただ、やはりジムという感じはしない。というか、普通に一般客と思われる人々が花を買いに来ている。
「……」
建物の前でハルが呆然と立ち尽くしていると、
「おや、どうしたんだいお兄ちゃん。彼女に花でもプレゼントかい?」
店の中から、優しそうな表情の大柄の男性が出てきた。
「え? いや、ここがジムだって聞いたので、挑戦に……」
突然変なことを言われたので戸惑いつつも、ハルはそう返す。
すると男性はなるほど、と納得したような表情を浮かべ、
「お前さんポケモントレーナーかい。まだ若いのに頑張るねえ。よし、それじゃあちょっと待っててくれ。おーい、イチイちゃーん!」
店の方を向き、人の名前を呼ぶ。
しばらくして、
「お待たせしました。お呼びですか?」
店の奥から、女の人が出てきた。
桜の花びらが描かれた桃色のワンピースを着た女性だ。ピンクのロングヘアーに赤い木の実のような髪留めを差している。歳は二十歳前後くらいだろうか。
「イチイちゃん、この男の子はジムの挑戦者だ。お得意様は僕が代わりに接客しておくから、ジム戦をしてあげてくれ」
「了解しました」
おそらく店長だろうと思われるその男にぺこりと頭を下げ、女性はハルの方に向き直る。
「それでは、ついてきてください」
女性に連れられ、ハルは店の奥へと入っていく。
外からは見えない店の奥には、花を育てている庭のようなスペースがあり、その真ん中に、芝生と砂地で構成されたバトルフィールドがあった。
「それでは、挑戦者さん。貴方のお名前は?」
「はい、ハルといいます」
「ハル君……いい名前ですわね。それでは私も自己紹介を、私はシュンインシティジムリーダー、イチイ。以後よろしくお願いしますわ」
その女性、イチイは、上品な口調で名乗る。

『information
 ジムリーダー イチイ
 専門:草タイプ
 異名:花園生まれの姫君(ブロッサムプリンセス)
 役職:花屋の看板娘』

「この時期は多くの新米トレーナーさんが旅に出る時期ですの。貴方のような若い挑戦者の方々が多く、私も新鮮な気持ちでジム戦が出来ますわ」
柔和な笑みを浮かべ、イチイはモンスターボールを手にする。
「さあ、それでは早速、始めますわよ」
「……はい! よろしくお願いします!」
緊張を振り払い、気を引き締め、ハルはボールを握る手に力を込める。
ハルの初めてとなるジム戦が、始まった。