二次創作小説(映像)※倉庫ログ
- 第122話 ジムバトル!イザヨイジムⅦ ( No.200 )
- 日時: 2017/06/30 10:28
- 名前: パーセンター ◆AeB9sjffNs (ID: VYLquixn)
大小無数の岩が、ルカリオへ襲い掛かる。
「っ! ルカリオ——」
行動する隙も与えられなかった。
無数の岩がルカリオを捕らえ、動きを封じ、押し潰す。
いくら格闘タイプのルカリオでも、この量の岩の中から脱出するにはかなりの時間が掛かる。
「ハガネール、ぶち壊す」
だが圧倒的な重量を持つハガネールになら、一瞬でその岩を破壊することができる。
ハガネールがゆっくりと結晶体の尻尾を持ち上げ、狙いを定める。
狙うは岩の下のルカリオ。標的目掛けて、周りの岩ごと容易く粉砕する勢いで、尻尾を振り下ろす。
しかし。
「まだ終わらない! ルカリオ、発勁!」
岩の下に捕らえられていたルカリオの体から、青い閃光が放たれる。
無数の岩を容易く破壊し、そのままルカリオを押し潰そうとしたハガネールの尻尾が、止まった。
「っ……!?」
慌てたマキナがハガネールの尻尾の下を見ると。
「なっ……まさか、ハガネールの尻尾を、持ち上げているノ!?」
流石のマキナも、驚きを隠せなかった。
体全体から、青い波導のオーラを放出させ。
ルカリオが膨大な量の青い波導を纏った両手を突き出し、ハガネールの尻尾と競り合っているのだ。
「ルカリオ! そのまま押し返せ!」
ルカリオがその瞳をカッと見開く。
刹那、ルカリオの両手からジェット噴射のように青い波導が放出され、ハガネールを押し返した。
尻尾を押し返してバランスが崩れ、ハガネールの巨体がぐらつく。
「今だルカリオ! ボーンラッシュ!」
青い波導を骨の形に変え、ルカリオは跳躍し、両手に長い骨のロッドを持つ。
二刀流の骨の攻撃が、ハガネールの顔面へ怒涛の連続攻撃を叩き込む。
「っ、とんでもない波導の力ネ……メガシンカによるトレーナーとポケモンのシンクロ率が、今までに見たことないくらい高い数値を叩き出している……なんて興味深いのかしら」
だけど、とマキナは続け、
「今はジムバトル、今すべきことは全力で勝ちを追い求めること。ルカリオはピンチになるほど波導の力が高まるポケモン。これ程の波導の力を見せるルカリオは初めてだけど、裏を返せばそのルカリオも体力は残り少ないということ。ハガネール、貴方も全力を見せるのヨ!」
ハガネールもまだ起き上がる。力強い咆哮により自らを鼓舞し、周囲の金属片が激しく回転する。
「ハガネール、メタルブラスト!」
ハガネールの周囲の金属片が一斉に輝き出す。
そこから放たれる鋼エネルギーの光線は一転に集まってその規模を増し、巨大なレーザー砲のように発射される。
「ルカリオ、波導弾!」
ルカリオも体を覆う波導のオーラを全て一転に集め、巨大な波導の念弾を作り上げる。
掌を砲口とし、巨大な砲弾のように青い波導の念弾が撃ち出される。
巨大な波導の念弾と、強大な鋼エネルギーの砲撃が正面から激突。
激しい音を立てて両者が競り合い、その末に波導の念弾が鋼の砲撃を撃ち破る。
遮るものがなくなった波導の念弾はまっすぐハガネールへと突き進み、鋼の顔面に着弾して青い爆発を起こした。
「ハガネール……!」
ハガネールが大きく仰け反り、背中から地響きを立てて床に倒れる。
動かなくなったハガネールの体が七色の光に覆われ、その姿をメガシンカ前の元の姿に戻す。
すなわち、
『ハガネール、戦闘不能。ルカリオの勝ちです。よって勝者、チャレンジャー・ハル!』
審判を務める人工知能が、勝敗を告げる。
持てる力の全てを出し切ったハガネールは、戦闘不能となって倒れていた。
「お見事ネ、ハルサン。何者にも負けない貴方の絆の力、この身にひしひしと感じたワ」
ハガネールをボールに戻し、マキナはハルの元へ歩み寄る。
「ありがとうございます。マキナさんのハガネールも、とっても強かったですよ」
ハルの言葉にマキナはにっこりと微笑み、パチンと指を鳴らす。
するとバトルで穴や亀裂だらけになった床や壁、天井が、みるみるうちに自動で修復されていく。
「このフィールドを構成している物質も、私が作り出したものなのヨ。生物の細胞をイメージして作っているから、人が整備しなくてもひとりでに傷が直ってしまうノ」
でもそんなことより、とマキナは白衣のポケットから小さな箱を取り出す。
箱の中には、小さなバッジが入っていた。灰色の歯車の形の中に白くGの文字が刻まれた、シンプルな作りのバッジ。
「これはガウスバッジ、イザヨイシティジム制覇の証ヨ。さあ、受け取って」
「はい、ありがとうございます!」
ハルのバッジケースに填められたジムバッジは、これで七つ。
ポケモンリーグ出場まで、あと一つだ。
そしてその後。
「ただいま。二人に続いて、勝ってきたよっと」
ハルの後、すぐにジムへと挑戦しに行ったスグリが帰ってきた。
その手には歯車の形をしたバッジ、ガウスバッジが握られている。
「お疲れ、スグリ君。マキナさんのハガネール、かなり強かったよね」
「そう? 確かに硬いし火力あったけど、動き遅いから全然想像の範囲内だったよ。寧ろその前のアイアントに手こずったかな。なかなか隙を見せてこないから」
「……俺はほぼ全部きつかったけどな。ギリギリで勝ったようなもんだ」
同じ相手でも人によって違った意見が出てくるのも、また面白い。
とはいえ、あのメガハガネールを想像の範囲内と言い切るあたり、やはり流石はスグリというべきか。
「そう言えば、一週間くらい後だっけ、この街で大きなバトル大会があるよね」
ハルがそう口を開く。アルス・ターミナルで得た情報によれば、ポケモンリーグマデル大会の次に大きな規模となる大会だ。出場制限は特になし、ポケモントレーナーなら誰でも出場可能。さらに成績に応じて、ポケモンリーグ大会でのシード権も与えられる場合がある。
「そうだったな。確かちょうど一週間後だぜ」
ジゼも思い出したかのようにハルに続く。
しかし、
「ああ、あれね。ポケモンバトルイザヨイリーグ、だっけ」
それを聞いたスグリの反応は、ハルが全く予想していないものだった。
「オレ、その大会出場しないから」
「えっ……!?」
すなわち、不参加。
ポケモンリーグに次ぐ大きな規模となる大会に、スグリは出場しないというのだ。
「なんでだよ? そんなにでっかい大会なら、強いやつともたくさん戦えるんだろ? 自分の腕を上げるチャンスにもなるじゃねえか」
驚いた様子で、ジゼがスグリに訳を尋ねる。
「ま、確かにジゼ君が言ってることは間違いないよ。強者揃いの大会になることは間違いない、ポケモンリーグ前の腕試しには丁度いいかもしれない」
だけど、とスグリは続け、
「オレさぁ、マークされたくないんだよね。そろそろ、他のトレーナーたちに目を付けられたくないんだ」
「どういうこと……?」
「手の内を明かしたくないのさ。この大会はポケモンリーグの次に大規模な大会。だとすれば、ここで好成績を出したらポケモンリーグでは必ずマークされる。要注意トレーナーとして警戒されるよね。対策されたからって負けるつもりはないけど、面倒じゃん?」
「でも、成績によっては予選のシード権が貰えるんだよ? スグリ君の実力だったら——」
「それに」
ハルの言葉を遮り、さらにスグリは言葉を続ける。
「オレにはシード権なんて必要ない。ハル君、ポケモンリーグの試合形式知ってる? 二百を越える参加者の中から、予選トーナメントを五連勝して勝ち抜いた十二人、それに四人の四天王を加えた十六人だけが本戦に出られる。でも、オレが目標としてるのは頂点、つまり優勝だけなんだ。予選で苦戦してるレベルじゃ、ポケモンリーグ優勝なんて到底辿り着けない。逆に言えばオレは予選で苦戦するつもりなんかない。どのみち勝ち上がるんだから、シード権なんて必要ないよね」
スグリの話は、あくまでそれを成し遂げられる実力があることを前提とした話。
しかし、ハルには納得が出来てしまう。スグリならそれが出来るのかもしれない、そう思ってしまう。
「要は天秤にかけたのさ。予選のシード権と、自分の戦力の情報、どっちが大事かってね。そして戦力の情報の方が大事だと判断した。そんなとこだよ」
話し終わると、スグリは得意げに笑う。
「……お前、凄いな。この時点でそこまで考えてるトレーナーなんて、そうそういないぞ」
「スグリ君だからこそ、思い付く発想だね……」
「まぁね。オレって頭いいし」
悪戯っぽくスグリは笑うと、
「二人は大会出るんだよね? オレは観客席から応援してるよ。ジゼ君のポケモンとか戦い方にも興味あるし。あとはハル君ならけっこーいい成績狙えるんじゃないかな? 二人とも、しばらくこの街にいるの?」
「うん。ポケモンの特訓とか、街の観光とかするつもりだよ」
ハルはそう答えるが、
「俺は次の街にジム戦に行く。一週間あれば、もう一つジムバッジを貰うくらい出来そうだからな」
どうやらジゼはすぐに別の街へと向かうようだ。
「大会までには、帰ってくるぜ」
「うん。それじゃ、頑張ってね」
「おうよ」
その後、リザードンの背中に乗って飛び立って行くジゼを、ハルとスグリは二人で見送った。