二次創作小説(映像)※倉庫ログ

第123話 武術 ( No.202 )
日時: 2017/07/02 12:04
名前: パーセンター ◆AeB9sjffNs (ID: VYLquixn)

「あ、そうだハル君」
ジゼを見送った後、唐突にハルはスグリに声を掛けられる。
「どうしたの?」
「さっき手の内は明かしたくないって言った手前言いづらいんだけど、ハル君とは久々にまた戦いたいって思ってたんだ。どうせハル君にはオレの手持ちも知られてるし、この後一戦、どう?」
ハルとしては嬉しい申し出だ。今の話を聞いてスグリとはしばらく戦えないと少しがっかりしていたところだったので、このバトルは是非受けたい。
「いいよ。僕もスグリ君とはバトルしたいと思ってたところだから」
「よっしゃ。それじゃ、善は急げだ」
話は決まった。
二人はポケモンセンターの地下、簡易バトルフィールドへと向かう。



「そうだな……三対三ってとこでどうかな?」
「うん、いいよ」
ハルとスグリがフィールドに立ち、バトルが始まる。
両者同時にボールを取り出し、ポケモンを繰り出す。
「頼んだよ、オノンド!」
「出て来い、コジョフー!」
ハルの一番手は、不利タイプの少ないオノンド。
対するスグリのポケモンは、小型の獣人のようなポケモン。格闘家のように体勢を取り、気を高めているようにも見える。

『information
 コジョフー 武術ポケモン
 流れるような華麗な連続攻撃を
 得意とする。圧倒的な手数によって
 パワーの低さをカバーしながら戦う。』

見た目通り、格闘タイプのポケモンのようだ。
「それじゃ、始めよっか。コジョフー、燕返し!」
バトルが始まると同時、コジョフーは一気に真横へと大きく飛び、オノンドの視界から姿を消す。
「っ!」
コジョフーが飛んだ方向へ振り向くオノンドだが、その時には既にコジョフーは壁を蹴って方向転換し、オノンドへと飛び掛かり、鋭い爪を振るってオノンドを切り裂く。
「オノンド、ドラゴンクロー!」
図鑑の説明の通り、コジョフーの一撃にはそこまで火力はない。
素早くオノンドは爪に龍の力を纏わせ、反撃の龍爪を振るうが、
「遅い遅い、燕返し!」
爪が振り下ろされる前にコジョフーはオノンドの背後へと回り込み、さらに鋭い爪を振り抜く。
さらに右手を地につけてそのまま回転し、刀の刀身のように白く輝く足でオノンドに蹴りを叩き込む。
「サイコパンチ!」
そしてコジョフーの攻撃はまだ終わらない。よろめくオノンドへ念力を纏った拳を突き出し、オノンドを殴り飛ばした。
「っ、速い……! オノンド、大丈夫?」
この程度で倒れるほど、ハルのポケモンは弱くはない。
吹き飛ばされたオノンドはすぐに起き上がり、体勢を立て直す。
「オノンド、反撃するよ! 炎の牙!」
長く鋭い牙に炎を纏わせ、オノンドはコジョフーへと突撃する。
「コジョフー、躱して燕返し!」
隠した爪を白く光らせ、コジョフーもオノンドを迎え撃つべく飛び出す。
しかし直接激突はせず、コジョフーはふわりと軽く跳躍し、オノンドの頭部を足場にして背後に回り、鋭い爪を立て続けに振るう。
「ドラゴンクロー!」
コジョフーの連続攻撃を受けるが、オノンドは気にせず両手に龍の力を纏い、その場で周囲を薙ぎ払うように回転しながら両腕を振るう。
攻撃同士かぶつかるが、オノンドはパワーでは負けない。龍の爪による斬撃が命中し、コジョフーを吹き飛ばす。
「よし! オノンド、続けて瓦割り!」
さらにオノンドは吹き飛ぶコジョフーを追って飛び出し、手刀を振り下ろす。
「コジョフー、躱してサイコパンチ!」
龍の爪を受けたコジョフーだが、しっかりと受け身をとって立ち上がる。
最低限の動きでオノンドの手刀を躱すと、横から念力を込めた拳を叩きつける。
「っ、オノンド、立て直して! シザークロス!」
長い二本の牙を構え、再びオノンドはコジョフーへと向かう。
「コジョフー、燕返し!」
立て続けに牙を振るうオノンドだが、コジョフーはその牙を躱しながら、鋭い爪でオノンドを切り裂いていく。
「サイコパンチ!」
「シザークロス!」
着地すると同時に念力の拳を振るうコジョフーに対し、何とか一瞬の隙を突き、オノンドは牙を振るってコジョフーを吹き飛ばした。
「ハル君、やるじゃん。オレのコジョフーの動きに、もう対応してるよね」
「まぁね。そのコジョフー、燕返しに比べてサイコパンチは少しだけ前隙が大きいよね。燕返しは比較的威力が低いから、僕のオノンドなら構わず反撃に出られるよ」
「そこまで気づかれてるかー。いやぁ流石はハル君だ」
とはいえ、まだコジョフーの残り二つの技は見えていない。
「だけど、オレとしても負けられないんでね。前回のリベンジを、果たさせてもらうよ……!」
力強い笑みを浮かべたスグリに呼応し、コジョフーは再び動き出す。
「コジョフー、サイコパンチ!」
両手の拳に念力を纏わせ、コジョフーが地を蹴って飛び出す。
「オノンド、躱してドラゴンクロー!」
流れるように放たれるコジョフーの連続パンチを躱し、オノンドは両腕に龍の力を纏わせる。
対して。
「コジョフー、ドレインパンチ!」
コジョフーが拳を突き合わせると、右の拳が淡い緑色に輝き出す。
立て続けに振るわれるオノンドの爪を躱し、拳がオノンドの腹部へと突き刺さる。
「っ、オノンド!?」
拳を撃ち込まれたオノンドは吹き飛ばされなかった。
その代わり、体から一気に力が抜けたかのように、その場で膝をついてしまう。
そして対するコジョフーの体の傷が、少しずつ癒えていく。
「これって……体力が吸い取られてる……?」
「そーゆーこと。ギガドレインとか吸血と同じ、所謂エネルギードレインってやつね」
エネルギードレイン。
相手に与えたダメージの半分を吸い取って回復する、厄介な性質の技だ。
エネルギードレインの性質を持つ技はいくつがあるが、ドレインパンチもその一つ。
「オレのコジョフーは耐久力は低いからね。相手の体力を戴いて補う必要があるんだ。さ、続けて燕返し!」
隠した爪を伸ばし、コジョフーは体勢を崩したオノンドへ飛び掛かる。
オノンドの周囲を飛び回りながら、鋭い爪を振るって華麗な連続攻撃を浴びせる。
「っ、オノンド、振り払って! ドラゴンクロー!」
両手に龍の力を纏い、オノンドは周囲を薙ぎ払うが、
「遅い遅い、躱してサイコパンチ!」
やはりというべきか、コジョフーには躱され、一旦下がったコジョフーは拳に念力を纏わせ、地を蹴って飛び出す。
「オノンド、シザークロス!」
オノンドは長い斧のような牙を構え、コジョフーを迎え撃つ。
牙の一振り目は躱されるが、続けざまに放った二振り目がコジョフーの拳に打ち勝ち、コジョフーの体勢を崩すと、
「瓦割り!」
手刀を振り下ろし、今度こそコジョフーにまともに攻撃を叩き込んだ。
「よし! オノンド、ドラゴンクロー!」
オノンドが吼え、両手に龍の力を纏わせる。
龍の力を帯びて蒼く光る爪を構え、コジョフーとの距離を一気に詰める。
しかし。

「コジョフー、飛び膝蹴り!」

コジョフーが地を蹴って飛び出す。
激突の寸前、コジョフーは首を思い切り振ってオノンドの爪を躱すと、返す刀で跳躍の勢いを利用した膝蹴りを叩き込む。
オノンドの頬へと膝を食い込ませ、そのまま脚を振るって地面へオノンドを叩き落とした。
「サイコパンチ!」
拳を突き出し、コジョフーは急降下する。
地面に叩きつけられたオノンドへ拳を叩き込み、オノンドを一気に戦闘不能にまで追い込んだ。
「つ、強いね……オノンド、お疲れ様。ゆっくり休んで」
ハルはオノンドを戻し、スグリとコジョフーの方へ向き直る。
「流石、スグリ君のポケモンだね。隙が少ないし、戦闘能力も高い」
「まぁねー。コジョフーの群れに遭遇した時に、一番動きがよかったやつを捕まえたからさ。コジョフーだけじゃない、オレのポケモンは野生の中でも特に優秀そうな個体を選んでるよ」
そんなことより、とスグリは続け、
「さ、ハル君の次のポケモンは?」
「コジョフーが相手なら、次は君だ。出てきて、エーフィ!」
ハルの二番手は、格闘タイプに有利なエスパーポケモンのエーフィだ。
「エスパータイプかぁ。有効打があんまりないけど、コジョフー、もう少し頑張ってもらうよ」
スグリの言葉にコジョフーは頷き、戦闘の構えを取る。
「エーフィ、先手こそ取られたけど、まだまだここから。立て直すよ」
エーフィは一歩踏み出し、相手となるコジョフーをその瞳に捉え、じっと見据える。