二次創作小説(映像)※倉庫ログ

第6話 ジムバトル! シュンインジムⅡ ( No.32 )
日時: 2016/10/29 12:39
名前: パーセンター ◆AeB9sjffNs (ID: O5n8tXdo)
参照: イチイのエース、チェリム。その実力は——

「行きます! リオル、電光石火!」
リオルが地を蹴って飛び出し、高速でチェリムに突っ込む。
ヤヤコマのものよりもさらに早いスピードで一気にチェリムに近づき、チェリムを突き飛ばした。
「続けて真空波!」
さらにリオルは腕を振り抜き、真空の波を飛ばす。
しかし、
「チェリム、マジカルリーフ!」
真空波を受けても顔色一つ変えず、チェリムは光を帯びた無数の葉っぱを放ち、リオルを切り裂く。
「チェリムの特性、フラワーギフト。日差しが強い時に、味方の攻撃力及び特防が上昇しますわ。真空波のような特殊技では、私のチェリムには大したダメージは与えられませんわよ」
「なるほど、日差しが強い時……日差しが強い? ……もしかして!」
そこでようやくハルは気づいた。
スボミーが最後に使った日本晴れ。あれは後続のチェリムを確実に強化させるために使った技だったのだ。
「ちなみに、日差しが強い時には他に葉緑素という特性を持つポケモンの素早さが上がったり、炎技の威力が上がったりします。また、天候に影響される技もあります。例えば」
そこでイチイは一拍置き、
「チェリム、ウェザーボール!」
チェリムが空気を固めたような白い球体を投げる。
球体は日差しを浴びて着火し、炎の玉となってリオルに迫り来る。
「!? リオル、発勁!」
咄嗟にリオルは青い波導を纏った右手を突き出し、炎の玉を防ぐ。
「さあ、まだまだ行きますわよ! チェリム、マジカルリーフ!」
「リオル、もう一度発勁!」
チェリムは光る木の葉を放ち、対してリオルは右手に波導を纏わせて突っ込んでいく。
右手を振るって木の葉を振り払い、
「岩砕き!」
その右手を岩をも砕く勢いで突き出し、チェリムを殴り飛ばす。スボミーよりは素早いが、それでもそこまで素早いポケモンではないようだ。
「続けていくよ。リオル、発勁!」
さらにリオルは再び右手に青い波導を纏う。
対して、
「チェリム、丁度いい位置取りです。行きますわよ」
砂地に落ちたチェリムが、立ち上がる。

「チェリム、自然の力!」

リオルの右手の一撃を耐えきり、チェリムが足元の砂地に、自然の力を送り込む。
刹那。
フィールド全体が大きく揺れ、地面を衝撃波が這い、リオルが吹き飛ばされた。
「っ、リオル!?」
攻撃を受けた直後、カウンターの要領で逆にリオルを吹き飛ばす。
「もう一度自然の力!」
体勢を立て直して芝生の上に立ったチェリムが、再び芝生に自然の力を送り込む。
「っ、来るよリオル! ジャンプで躱して!」
再び来る地面の揺れを躱すため、リオルは跳躍する。
しかし。
地面はいつまで経っても揺れず、代わりに草木の力を込めて淡く輝く光の弾が放出された。
「えっ!? リ、リオル、岩砕き!」
想定していたものと全く違う攻撃が来た。咄嗟にリオルは勢いよく右拳を振るい、光の弾を迎え撃つが、タイミングが遅れたのもあって相殺しきれず、反動で地面に落とされる。
「自然の力は文字通り自然の力を味方につけて攻撃する技ですわ。どんな力を得られるかはその地の自然、つまり地形によって変わる。砂地に足をつけて使った時は『地震』、芝生の上では『エナジーボール』が出たようですわね」
つまり、この技を覚えていれば立つ場所によって多種多様な技を使えるということ。
ここに来てハルはサヤナの言っていたことを理解した。
最初のポケモン、スボミーは倒せたが、次のポケモン、つまりチェリムに二匹とも倒された。スボミーも単騎で戦えるとはいえ、メインはチェリムのサポートなのだろう。毒を使ったり日差しを強くしたりしていたのがその証拠だ。
「さあ、チェリム、ウェザーボール!」
チェリムが周囲の空気を集め、白い空気の弾を放つ。
日差しを受けて着火し、炎の玉となって飛来する。
「リオル、躱して電光石火!」
リオルは素早く横に動いて炎の玉を躱すと、地を蹴って目にも留まらぬスピードで飛び出す。
「チェリム、躱してマジカルリーフ!」
「リオル、発勁!」
素早いステップでチェリムはリオルの突撃を躱すが、リオルはそこで踏み止まり、右手に波導を纏わせる。
リオルがチェリムの額に右手を叩き込んだが、その直後、光を帯びた木の葉が放たれ、リオルを切り裂いた。
さらに、
「自然の力!」
芝生に足をつけ、チェリムが自然の力を送り込み、草木の力を得て淡く輝く光の弾が放出される。
「っ、リオル、躱して!」
だが木の葉に切り裂かれ、リオルの回避のタイミングが遅れる。
直撃こそしなかったが、光の弾が当たり、リオルは押し戻される。
「なかなか粘りますわね……チェリム、ウェザーボール!」
「リオル、躱して岩砕き!」
チェリムが跳躍して、上空から白い空気の弾を落とす。
日差しを浴びて着火し、炎弾となるが、リオルは横に動いてそれを躱し、チェリムを追って跳ぶ。
「チェリム、躱して自然の力!」
繰り出されるリオルの拳を、思い切り首を振って躱し、チェリムは炎の弾により焼け焦げた芝生の上へと着地、足元に自然の力を送り込む。
直後。
燃え盛る炎の渦が出現し、リオルを巻き込んだ。
「……!? リ、リオル!」
日照りで強化され、リオルはかなりのダメージ。
まだ立ててはいるが、もう一撃食らえばもう持たないだろう。
「焼けた草の上に立ったことで『炎の渦』が発動したようですわね。残念ですが、次で決めますわ! チェリム、マジカルリーフ!」
チェリムが光を帯びた木の葉を浮かべ、一斉に放つ。確実に必中技で決める気だ。
「っ……リオル、発勁!」
だが勝ちたい。絶対に勝ちたい。襲い来る木の葉をどうにかして振り払い、そこからどうにかして道を切り開く。
策があったわけではないが、諦めたくない、どうにかしなきゃ、それだけの思いで、ハルは指示を出した。
刹那。

リオルの右手から爆発的な波導が吹き出し、光る木の葉を吹き飛ばした。

「なっ……これは!?」
「え……?」
予想だにしない事態に驚愕を隠せないイチイだが、それはハルも例外ではない。
リオルの右手からは、まるで青い炎のように青い波導が燃え盛っている。
「……もしかして、これはリオルの特性」
やがて、イチイがゆっくりと口を開く。
「特性と言っても、チェリムのフラワーギフトのような特性ではなく、リオルが持つ本来の能力という意味での特性ですわ。リオルというポケモンは、危険な状態に追い込まれた時に波導が強くなる」
しかし、とイチイは続け、
「強くなると言っても、本来は仲間にそれを伝えるための防御的なもののはず。まさかここまで強大な波導を操るなんて……」
ハルはトレーナーになったばかりなので、難しいことはよく分からない。
ただ、確実に分かることがある。
今、ジム戦というこの場において、流れは間違いなくハルに向いている。
「……何だかよく分からないけど、リオル、君はすごい。それだけは分かるよ。この勝負、勝とう!」
ハルの言葉に応え、リオルは大きく吠える。意識もしっかりと保っているようだ。
「す、凄いですわね。ですが、ジムリーダーは挑戦者を試す存在。いくら強大な力でも、それを使いこなせなければ、私とチェリムには勝てませんわよ」
「はい! 行くぞリオル、真空波!」
リオルが波導を纏った右手を勢いよく振り抜く。
真空の波に青い波導が乗り、波が青い波導の弾となって飛び、チェリムに直撃した。
「いくら強化されようと、特殊技では私のチェリムは倒せませんわ! チェリム、自然の力!」
芝生の上に立ち、チェリムは自然の力を送り込み、淡く輝く光の弾を撃ち出す。
「リオル、躱して電光石火!」
リオルが高速で動き出す。
エナジーボールのすぐ横を駆け抜け、チェリムに一気に接近、さらに、
「発勁!」
炎のように激しい波導を纏った右手を、チェリムに叩きつけ、吹き飛ばす。
「あと一発……あと一発で勝ちですのよ! チェリム、ウェザーボール!」
チェリムもまだ倒れない。周囲の空気を集めて白い玉を作り上げ、それをリオルへと放つ。
日差しを浴びて着火し、炎の玉がリオルを襲う。
「リオル、岩砕きだ!」
右拳を握り締め、リオルは正面から突っ込んでいく。
波導を纏った拳を振るい、ウェザーボールを砕き、さらにその勢いのまま、チェリムの顔面に拳を叩き込んだ。
「チェリム……!」
全力を乗せた拳の一撃を浴びて、チェリムが吹き飛ばされる。
今度こそ。
そのまま地面に倒れたチェリムは、目を回して戦闘不能となっていた。



「負けてしまいましたわ。在り来たりな言い方ですが、貴方がリオルを信じ、勝負を諦めなかった、その思いに応えたからこそ、リオルも力を存分に引き出せた」
ちなみに、勝負が決まった直後、リオルもフィールドに倒れてしまった。体力はもう限界を超えていたのだろう。
「いやぁ、リオルのおかげです。僕はただ、諦めたくなくて指示を出したんです。きっと、リオルも、ボールの中のヤヤコマもそうだと思ったから……」
照れたようにハルが顔を赤くしてそう言うと、イチイはにっこりと微笑み、
「それでは、これを。シュンインジムを制覇した証、ポケモンリーグ公認のジムバッジですわ」
小さな箱からバッジを取り出す。緑色のFという文字を、赤や黄色の花で色とりどりに装飾したような形状をしている。
「フルールバッジ、是非お受け取りください」
「はいっ、ありがとうございます!」
一つ目のジムバッジを手に入れたハル。
初めてのジム戦を、無事勝利で終えることができた。