二次創作小説(映像)※倉庫ログ

第11話 カザハナシティ ( No.38 )
日時: 2016/10/30 18:01
名前: パーセンター ◆AeB9sjffNs (ID: PUqaVzEI)
参照: カザハナシティバトル大会、開幕!

「ハル! 勝ったよ!」
バッジを手にしたサヤナが、ポケモンセンターに駆け込んできた。
「おめでとうサヤナ! これで二人ともジムバッジを手に入れたね」
「うん! ハルに並んだよ! にひひー、次は追い越すからね」
とても嬉しそうにサヤナは笑い、ソファーに腰掛けているハルの隣に座る。
「カザハナシティまではちょっと距離があるよ。今日はいろいろあったし、明日カザハナシティに行こうか」
「そうだね。私も今日は泣いたり笑ったりでもうへとへとだよ」
一日で泥棒にあったり、ジム戦のリベンジを果たしたり。いくら元気いっぱいのサヤナでも流石に疲れるだろう。
「それじゃあ、今日は休もうか」
宿舎に戻り、明日はカザハナシティに出発だ。



マデル地方は、比較的他の地方よりもポケモンバトルに力を入れている。
そのため、不定期に色々な街でジムリーダーやテレビ局がバトル大会を開催しているのだ。
そしてこの街、カザハナシティでも今日、ジムリーダーであるヒサギがバトル大会を開催する。
「なになに、試合はポケモン一体ずつで、三回勝てば優勝……そんなに大きい大会ではないんだね」
ハルはターミナルで受信した情報を読み上げる。
二人は先程エントリーしてきたところで、トーナメントの組み合わせの発表待ちだ。
「こういう大会初めてだし、緊張するなぁ……」
「でもみんなバッジは一個までの初心者だし、きっと大丈夫だよ」
そんな話をしていると、ターミナルに一回戦の組み合わせが送られてきた。
「僕の一回戦の相手は……リオンって人か」
「私も知らない人だよ」
お互いに知らない人同士。初めて会う人なので断定できないが、少なくともスグリと当たるよりは二回戦進出の可能性は高そうだ。
「それじゃあ、頑張ろうね」
「うん! まずは一回戦突破だね!」
そして、いよいよマデル地方恒例のバトル大会、カザハナ大会が開幕する。



『さあ始まりました、カザハナシティバトル大会! 今回は特別に、今大会主催者、カザハナシティジムリーダーのヒサギさんに解説に来ていただきました! それではヒサギさん、今日はよろしくお願いします!』

『information
 ジムリーダー ヒサギ
 専門:格闘タイプ
 異名:静かなる闘志(サイレンスファイター)
 悩み:人見知り』

『……ああ。よろしく頼む』
男——ヒサギは何だか無愛想にそう返すが、会場は拍手や歓声で満ちていた。やはりジムリーダーともなれば注目を集めるのだろう。
『それでは今大会の第一回戦、ハル選手とリオン選手の出場です!』
『二人とも既にバッジを一つ持っているな。ハル君はシュンイン、リオンさんはヒザカリのジムバッジを獲得している』
初めて立つような立派なバトルフィールドに立つハル。小さな大会とはいえ観客もいるので、なかなか緊張する。
相手は背が高めの金髪ポニーテールの少女だ。向こうも緊張している様子だ。
『それでは第一試合、スタートです!』
試合開始の合図とともに、ハルとリオンは同時にボールを取り出し、ポケモンを繰り出す。
「出てきて、ヤヤコマ!」
「お願い、コンパン!」
ハルの繰り出すのはヤヤコマ。リオンのポケモンは紫色の体毛に覆われた赤い複眼を持つ虫ポケモンだ。

『information
 コンパン 昆虫ポケモン
 小さな目が沢山集まって大きな目に
 なっている。昼間は木の穴で眠っており
 夜に活動して餌の小さな虫を食べる。』

『ハル選手はヤヤコマ、リオン選手はコンパンを繰り出しました!』
『タイプ相性ならヤヤコマの方が有利だな。ヤヤコマはスピードも早い』
『つまり、この勝負はハル選手が有利ということでしょうか?』
『だがコンパンは補助技に優れる。上手くヤヤコマを撹乱できれば、勝機は十分にある』
無愛想ではあるが、きっちり解説をこなすヒサギ。流石はジムリーダーだ。
「よし、行くぞ! ヤヤコマ、電光石火!」
まず先手を取ったのはヤヤコマ。猛スピードで一気にコンパンに突っ込み、そのまま突き飛ばす。
「コンパン、サイケ光線!」
ひっくり返るが素早く起き上がり、コンパンは目から不思議な光を放つ光線を発射する。
「ヤヤコマ、躱して火の粉!」
ヤヤコマは光線を掻い潜ってコンパンに近づき、嘴を開いて無数の火の粉を吹き出す。
しかし、
「コンパン、躱して毒の粉!」
大きくジャンプして火の粉を躱すと、コンパンは全身を揺らして毒の鱗粉を放出。ヤヤコマは鱗粉を吸い込んでしまう。
『おおっと、ここでリオン選手のコンパン、ヤヤコマに毒を浴びせた!』
『毒タイプを持つコンパンの常套手段だな。このまま上手く撹乱していけるかどうかだが』
毒状態についてはもうハルは身をもって学習している。
「毒が蓄積される前に倒す! ヤヤコマ、疾風突き!」
「コンパン、虫食い!」
ヤヤコマが嘴を突き出して突っ込み、コンパンが鋭い歯を持つ口を構える。
だがコンパンが食いつこうとするよりも早くヤヤコマがコンパンを嘴で突き、押し飛ばしていた。
「いいよヤヤコマ! エアカッター!」
「っ、コンパン、サイケ光線!」
ヤヤコマが翼を羽ばたかせて風の刃を飛ばし、コンパンは目から不思議な光を放つ光線を放射して迎え撃つ。
空気の刃は光線で何とか防ぐが、
「電光石火!」
続くヤヤコマの高速の追撃に対応できずに、突き飛ばされてしまう。
「うぅ……コンパン、シグナルビーム!」
体勢を立て直し、コンパンが今度は瞳から激しい光を放つ光線を放射するが、
「ヤヤコマ、躱して疾風突き!」
素早く動き回るヤヤコマには光線が当たらず、再び高速の嘴の突きを受けてしまう。
「今だヤヤコマ、エアカッター!」
ふらつくコンパンに対して、ヤヤコマは翼を羽ばたかせ、風の刃を飛ばす。
躱すことも出来ずにコンパンは風の刃に切り裂かれ、そのまま戦闘不能になってしまった。
『ここで決着がついた! 一回戦、第一試合の勝者はハル選手! リオン選手のコンパンを圧倒して、二回戦進出です!』
『ヤヤコマのスピードを生かしたいいバトルだった。リオンさんのコンパンは苦手な相手と正面から向かわせ過ぎて防戦一方だったな。もう少し相手を翻弄できれば勝機はあっただろう』
ハルとリオンはお互いのポケモンを戻し、互いに一礼した後、フィールドを去っていく。



「……よし、一回戦は勝ったぞ」
ヤヤコマを回復させ、ハルはロビーに戻る。隠してはいたが、内心かなり緊張していた。
ハルは初戦だったので、一回戦が終わるまでにもう少し時間がある。
二回戦の組み合わせとサヤナを待つためにロビーで待っていると、第四試合目のバトルを終えたサヤナが戻ってきた。
「サヤナ! どうだった?」
「もちろん勝ったよ! 二回戦進出!」
どうやらサヤナも一回戦を無事突破したようだ。
そして。
第四試合目が終わったということで、二回戦の組み合わせが発表される。この大会は試合ごとに対戦相手がシャッフルされるため、トーナメントを辿っても発表されるまで次の相手は分からない。
そして。
注目の二回戦の相手は。
「うそ……!」
ハルにとって一番当たりたくなかった相手、スグリだった。