二次創作小説(映像)※倉庫ログ

第13話 ジムバトル! カザハナジムⅠ ( No.43 )
日時: 2016/11/01 20:53
名前: パーセンター ◆AeB9sjffNs (ID: F8Gg2X0Y)
参照: 二つ目のジムバッジを賭けた戦いが、始まる——

カザハナシティはそこまで大きな街ではないが、ポケモンバトルに力を入れている。
この街のジムリーダー・ヒサギが格闘タイプ使いなこともあってか、道場のような建物が多く立ち並び、街のショップにも戦闘に役立つ木の実やアイテムなどの品揃えが充実している。
また、隣町のヒザカリタウンとの間にはカザカリ山道という山道があり、他の道路と比べて道が険しい。



大会の翌日。
サヤナにじゃんけんで勝ったハルは早速、カザハナジムを訪れていた。
先程も述べたようにこの街には道場のような建物がいくつかあるが、その中で一番大きなもの。それがカザハナジムだ。
「失礼します……」
木製のドアを横にスライドし、ハルはジムの中を覗き込む。
内装はシュンインジムとは明らかに違っていた。バトルフィールドは硬い木製で作られており、フィールドの周りは畳で囲まれている。
壁には『全力』と書かれた大きな旗が掛けられている。
そして、フィールドの向かい側には、昨日大会の解説席に座っていた男。
青いシャツの上にベージュのベストを着ており、茶色の短髪はぼさぼさ。昨日もそうだったが表情が変わらず、何を考えているのかが分からない。
カザハナシティジムリーダー、ヒサギ。
「……おや。君は昨日の大会にも出場していた」
ハルの存在に気付き、ヒサギが歩み寄ってくる。
「ハルです。ジムに挑戦しに来ました」
「……なるほど。チャレンジャーか。俺はジムリーダーのヒサギだ」
大会の時とは一人称が違う。公的な仕事と使い分けているのだろう。
「専門は格闘タイプだ。……」
「……」
妙な空気が流れる。
ヒサギがそれ以上何も話そうとしないし、ハルも比較的内気な性格なので、こういう時に何を話せばいいのか分からない。
「……」
「……その」
ヒサギがようやく口を開いた。
「ええと……その、なんだ。バトルを始めようか」
「あ、はい……」
微妙な空気の中、ハルの二つ目のバッジを賭けたジム戦が始まる。



ルールはシュンインジムと同じ。使用ポケモンも二匹。
「来い、アサナン……」
まずはヒサギからポケモンを繰り出す。
人型の子供のようなポケモンだ。白い特徴的な頭の形をしている。

『information
 アサナン 瞑想ポケモン
 毎日瞑想の修行をすることで心が
 研ぎ澄まされていく。極限まで精神力を
 鍛えた個体のみが進化に到達する。』

「エスパータイプも持っているポケモンか。ならなおさらリオルは出せないから……出てきて、ヤヤコマ!」
対して、ハルは有利な飛行タイプのヤヤコマを繰り出す。
「……では始めるぞ。先攻は譲ろう」
「それじゃ、行きます! ヤヤコマ、電光石火!」
先に動いたヤヤコマが、猛スピードでアサナンへと突っ込む。
対して。

「アサナン……猫騙し!」

ヤヤコマがアサナンの眼前まで迫ったその時。
アサナンが、ヤヤコマの目の前で勢いよく手を叩いた。
「え……?」
予想外のアサナンの動きに戸惑うハル。
突然の衝撃にヤヤコマも驚いたのか、動きが止まってしまう。
「発勁!」
そしてそんな隙をジムリーダーが逃すはずもない。
アサナンが掌をヤヤコマに叩きつけ、弾き飛ばす。
「……猫騙しはバトルに出た最初の技以外では使えない技。その代わりに確実に先制し、相手の動きを確実に止める。序盤の流れを掴むのに最適」
ぼそぼそと小さな声でヒサギは説明する。
「なるほど……だけどもう使えないってことですよね。ならヤヤコマ、ここから立て直すぞ! 疾風突き!」
再び翼を広げて飛び上がり、ヤヤコマは嘴を突き出して突撃する。
「アサナン、バレットパンチ!」
アサナンが無数の弾丸のように連続で拳を繰り出す。
ヤヤコマの突撃のスピードにも負けない速度で拳を振るい、ヤヤコマを迎え撃つ。
「エアカッター!」
高速の突きが防がれるも、ヤヤコマは翼を羽ばたかせて風の刃を飛ばし、今度はアサナンを切り裂いた。
「なるほど……それならばアサナン、雷パンチ!」
立て直したアサナンの拳の周囲からバチバチと電流が走るような音が響き、その直後に拳の周りに電撃が迸る。
そのままアサナンはヤヤコマを狙って跳躍し、電撃を纏った拳を突き出す。
「電気技……! ヤヤコマ、躱して!」
飛行タイプのヤヤコマに電気技は効果抜群。慌ててヤヤコマは横に飛び、アサナンの拳を躱すが、
「逃がさん……バレットパンチ!」
空中だというのにアサナンは瞬時に方向転換し、弾丸のような連続パンチをヤヤコマに浴びせる。
「アサナンは短時間だが念力によって宙に浮くことができる……他のポケモンとは違い、空中でもある程度動けるぞ」
アサナンは一旦着地し、再び拳を構え直す。
「っ、ヤヤコマ、火の粉!」
ヤヤコマは嘴を開き、無数の火の粉を吹き出す。
「アサナン、発勁!」
アサナンは力を込めた右手を思い切り振り抜き、火の粉を一蹴すると、
「雷パンチ!」
再び拳に電撃を起こし、ヤヤコマへと向かっていく。
「ヤヤコマ、躱してエアカッター!」
「そうはさせん……連続で雷パンチ!」
殴りかかってくるアサナンを躱して、ヤヤコマは翼を羽ばたかせ、風の刃を飛ばす。
しかしアサナンは電撃の拳で空気の刃を全て破壊し、またも空中で方向転換すると、今度こそ電撃の拳をヤヤコマへと叩き込んだ。
「しまった……ヤヤコマ!」
拳の一撃を受け、ヤヤコマが地面に叩き落とされる。
ここで追撃が来たらもう避けられないが、空中浮遊が限界だったのか、アサナンは一旦着地した。
「危なかった……ヤヤコマ、まだいける?」
ヤヤコマは何とか立ち上がり、翼を広げる。
直後。

ヤヤコマの体が、青白い光に包まれる。

「え……な、なに!?」
初めての事態に戸惑うハル。
「……進化か」
対して、ヒサギの表情が僅かに変化した。小さく笑みを浮かべたのだ。
光に包まれたヤヤコマのシルエットが、変化していく。光が収まった時、そこにいたのはヤヤコマとは違うポケモンだった。
体つきに大きな変化はないが一回り大きくなり、翼もより大きくなった。目つきが鋭くなり、後頭部の羽毛が尖っているように見える。
「これ……は? もしかして……!」
「君は進化を見るのは初めてか。そう、今のはポケモンの進化だ。図鑑を確認してみるといい」
ヒサギに促され、ハルは図鑑を取り出す。

『information
 ヒノヤコマ 火の粉ポケモン
 体内の袋で炎を燃やす。火力が強く
 なるほど高速で飛べるようになるが
 最高速になるまでには時間がかかる。』

「ノーマルタイプが消えて、炎タイプになってる」
「……技も見てみるといい。進化すると新しい技を覚えることが多いぞ」
ハルはもう一度図鑑を確認する。ヒサギの言う通り、ヒノヤコマは新しい技を覚えていた。電光石火と火の粉を忘れたが、より強力な技へと変化している。
「……凄いよ、ヒノヤコマ。さあ、勝負はここからだよ。進化した君の力を見せてやろう!」
「これは楽しくなってきたぞ……さあ、どこからでもかかってこい」
ヒサギの口元が、明確に上がる。
「行きます! ヒノヤコマ、ニトロチャージ!」
ヒノヤコマが力強く鳴くと、その全身が炎に包まれる。
そのまま、ヒノヤコマはアサナンへと突撃していく。
「アサナン……雷パンチ!」
アサナンも真っ向から迎え撃つ。ヒノヤコマの突撃に合わせて、電撃を纏った拳を突き出す。
二者がぶつかり合う。激しく競り合った末、お互いに一歩退く。
「アクロバット!」
だがその後の動きはヒノヤコマの方が早かった。
素早くアサナンの背後に回り込み、アサナンを突き飛ばした。
「ッ、アサナン……!」
「ヒノヤコマ、もう一度ニトロチャージ!」
再びヒノヤコマは炎を纏い、よろめくアサナンへと突っ込んでいく。
「ぐっ……アサナン……雷パンチ!」
体勢を崩しながらも、アサナンは拳に電撃を纏わせ、ヒノヤコマへと殴りかかる。
再び、二者が正面から激突する。