二次創作小説(映像)※倉庫ログ

第15話 ジムバトル! カザハナジムⅢ ( No.46 )
日時: 2016/11/03 21:19
名前: パーセンター ◆AeB9sjffNs (ID: z5Z4HjE0)
参照: 再び謎の力を発動させたリオル。カザハナジム戦の行方は——

「行くよリオル! 発勁!」
「気をつけろカポエラー……相手は格段にパワーアップしてるぞ! メガトンキック!」
右手に燃え上がる青い炎のような波導を纏わせ、リオルが地を蹴って飛び出す。
カポエラーも逆立ちして回転を始め、突撃しながら強烈な蹴りを繰り出す。
二者が同時に激突。だが、強化された波導の力を得たリオルの右手が、遂にカポエラーに打ち勝ち、カポエラーを叩き飛ばした。
「続けて電光石火!」
「……ブレイクスピン!」
全身に波導を纏ったリオルが突っ込んでくるが、カポエラーは頭から着地すると同時に猛回転、やはりリオルを弾き飛ばす。
「いくら強化されようとも、カポエラーの回転を破らなければ、君に勝ち目はないぞ。カポエラー、そのままもう一度ブレイクスピン!」
その回転スピードを維持したまま、カポエラーが突っ込んでくる。
「リオル、一旦躱して!」
大きく跳躍し、リオルはカポエラーの回転攻撃を躱す。
(この状態ならリオルの攻撃力は十分。あとはこの回転を突破するだけ……だけど、どうすれば……)
だが、
「着地を狙え……ブレイズキック!」
カポエラーの両足が炎を纏う。
空中のリオルが着地するその瞬間を狙い、炎の蹴りを叩き込む。
その瞬間。
(……分かった!)
ハルは思いついた。カポエラーの回転を、打ち破る方法を。
「リオル、発勁!」
向かってくるカポエラーに対し、リオルは炎の如き波導を纏った右手を叩きつけ、カポエラーの炎の蹴りを食い止める。
「リオル、真空波!」
「弾け……ブレイクスピン!」
リオルが波導を乗せた真空の波を放ち、対するカポエラーは猛回転して真空波を弾くと、再びリオルへと向かってくる。
(来た……!)
決めるなら、ここだ。
リオルもそれを感じ取ったのか、ハルの指示を受けるより早く、ハルが思っていた通りに跳躍する。

「リオル! カポエラーの真上からサイコパンチ!」

波導を纏うリオルの右手を、さらに念力が覆う。
波導の力によって強化された念力の拳を、リオルはカポエラーの真上から思い切り叩き込んだ。
いくら回転で周囲からの攻撃を弾けたとしても、真上からの攻撃だけは防ぐことができない。ブレイズキックを使った時に、足に灯った炎がカポエラーの真上だけはカバーできていなかったのがその証拠だ。
「な……っ、カポエラー……!」
効果抜群のエスパー技の直撃を受けて、カポエラーは吹き飛ばされる。
二度、三度とバウンドして床に倒れ、そのまま目を回して戦闘不能となり、動かなくなった。



「君のリオルのその力、何とも不思議なものだ。格闘タイプ専門の俺でも、初めて見るものだった」
「ヒサギさんでも、この能力の詳細は分からないんですか……」
「ピンチに陥った時に発生するのかもしれないが、だとすれば大会の時に発生しなかったのはなぜかという疑問が残る。確かにリオルはピンチになると体から発せられる波導が強まるという特徴を持っているが、それとはまた別のようにも見える……ううむ」
格闘ポケモンのエキスパートであるヒサギでも、この力についてはよく知らないようだった。
「やはりポケモンというのは、まだまだ謎の多い生き物だ」
ともあれ、とヒサギは言葉を続け、
「決して最後まで尽きない、君と君のポケモンの闘志……見事だった。そう、闘志が尽きぬ限り、バトルの行方は最後まで決して分からない。最後までバトルを諦めず、勝利を収めた君に、カザハナジムのジムバッジを渡そう」
そう言って、ヒサギは小さな箱からバッジを取り出す。
拳を模したような、アルファベットのBの形をしているバッジだ。
「俺の格闘ポケモンたちを倒し、カザハナジムを制覇した証……その名もブレイクバッジ。受け取ってくれ」
「はい、ありがとうございます!」
リオルの能力について、詳細はやはり分からなかったが、これでハルは見事、二つ目のジムバッジを手に入れることができた。



その日の夕方に、サヤナもヒサギに勝利し、無事にジムバッジを手に入れた。
そんなサヤナに呼び出され、ハルはカザカリ山道の麓まで来ていた。
「どうしたの、サヤナ? もうすぐ日が暮れるし、ヒザカリタウンに行くなら明日まで待った方が……」
「ううん。その話じゃないんだ」
珍しく、といえば失礼だが、サヤナの口調と表情は今まで見た中では最も真剣味を帯びたものだった。
「ポケモントレーナーってさ、ポケモンを貰ってから一人で旅をする人が多いんだよ。全部のことを一人でやらないといけないわけじゃないけど、一人前のトレーナーになるためには、やっぱりある程度は一人で何でもできないとダメなんだね」
だから、とサヤナは続け、

「私たち、ここから別れて一人旅しよう」

「え……?」
あまりにも唐突だったため、ハルは思わず聞き返す。
「シュンインシティでポケモンを盗まれたでしょ? あの時、私一人では多分何もできなかった。ハルとスグリ君がいてくれたからどうにかなったけど、私、あの時からずっと思ってたの。もっと一人で何でもできるようにならなきゃって」
それに、とサヤナは言葉を続け、
「最初だけはハルに勝ったけど、その後はずっとハルの背中を追いかけてる気がするの。ジムだって先を越されたし。このまま一緒に旅をしてても、私はずっとハルに頼りきりになっちゃうと思う。だけど、それじゃダメなんだよね。だから」
「ここで、別れるんだね」
「うん。心配しないで、私だって駆け出しだけどポケモントレーナーだよ」
ハルはサヤナの目を見る。いつになく真剣味を帯びた、覚悟を決めたような眼差しだった。
「……分かったよ。それじゃ、一旦ここで別れよう」
正直、ハルにとってもサヤナがいてくれた方が安心できる。初めて来た地方を一人で旅するのは、正直に言えば不安だ。
しかし、サヤナの言葉を聞いて考えれば、その不安を乗り越えてこそ、もっと成長できるのではないだろうか。それに、自分の知らないところで、サヤナはもっと強くなるかもしれない。ライバルが強くなれば、ハルもそれに刺激されてもっと強くなれる。
だから、ハルはそう返した。
「にひひー、心配しないで。一日だけだけど、私の方が先輩なんだからね! それじゃ、しばらくさよならだね。ハル、次に会う時は私、もっと強くなってるからね!」
「うん。僕も頑張るよ。次に会った時にはまたポケモンバトルしよう。今度は、僕が勝つよ」



そして翌日、二人はそれぞれの道を選び、カザハナシティを後にした。
これからはいよいよ、ハルとサヤナの、一人旅が始まる——