二次創作小説(映像)※倉庫ログ

第16話 Dantalion ( No.55 )
日時: 2016/11/05 23:30
名前: パーセンター ◆AeB9sjffNs (ID: VYLquixn)
参照: 次なる町に向けて進むハルに、事件発生!

ハルはサヤナと別れた後、計画していた通りヒザカリタウンに向けて、カザカリ山道に足を踏み入れていた。
カザカリ山道は、その名前の通りにカザハナシティとヒザカリタウンを繋ぐ道だ
山道であることや、ここまでの道路と比べると道がしっかり舗装されていないこともあって、なかなか歩きづらい。
また近くには比較的標高の高い山があるため、たまに山に生息するポケモンが食料を求めてこの山道や街まで下りてくることもあるという。
「結構きつい道だな……中腹には休憩所があるみたいだから、とりあえずそこまで進んで一旦休もうか」
ターミナルで地図を表示しながら、ハルは山道を進んでいく。
そんな時だった。
「……?」
道を少し外れた茂みの中から、一匹のポケモンが飛び出してきた。
体つきは猫のようで、長い耳が特徴。首回りをふさふさの体毛が覆っている、小柄なポケモンだ。

『information
 イーブイ 進化ポケモン
 非常に不安定な遺伝子を持っている。
 住んでいる環境に合わせて進化する
 ことで体の作りを変えて環境に適応する。』

図鑑によるとノーマルタイプのポケモンらしい。
だが、今はそんなことはどうでもよかった。なぜなら、ハルのような素人目でも分かるほどにイーブイは弱っていたからだ。
「ちょっ……ど、どうしたの? 大丈夫!?」
慌てて駆け寄り、イーブイを抱きかかえる。体に深い傷を負っているのが分かった。
「ここからだと……カザハナシティに戻った方が近いかな」
恐らく野生のポケモンだろうが、ハルとしては無視できない。急いでポケモンセンターに届ける必要がある。
しかし。
「おいおい、ちょっと待てよ」
「そのイーブイは私たちが狙ってるの。邪魔しないでもらえるかしら」
イーブイを追うかのように、男女の二人組が現れた。
「お前たちは……!」
つい最近見たような、黒装束に身を包んだその姿。間違いない、ゴエティアの下っ端だ。
「知っているなら話が早い。そのイーブイは俺たちが見つけたんだ。返せよ」
「そうよ。私たちは野生ポケモンを捕まえて戦力にしようとしているだけ。何も悪いことなんてしていないでしょう?」
下っ端たちの言葉を聞いた後、ハルはもう一度イーブイの傷を見る。
「……これから仲間に入れようと思っているポケモンなら、なんでこんなに酷い傷を負わせたんだ!」
「うるっせえな。どうせ捕まえるポケモンなんだから何しようと勝手だろ! 面倒だな、力尽くで取り返すぜ! 行け、ヤブクロン!」
「出て来な、キノココ!」
下っ端二人がポケモンを繰り出す。ゴミ袋のようなポケモンと、キノコの傘のようなポケモンだ。

『information
 ヤブクロン ゴミ袋ポケモン
 不衛生な場所を好んで生息する。
 餌となるゴミを求めて路地裏を彷徨い
 ゴミのポイ捨てをする人を付け回す。』

『information
 キノココ きのこポケモン
 夜に活動するため昼間は落ち葉の下で
 じっとしている。腐葉土が好物で
 雨が降った後にも活発に動き出す。』

「毒タイプに草タイプ……リオル、サイコパンチ! ヒノヤコマ、ニトロチャージ!」
ハルが叫ぶと、ベルトに付けたボールからリオルとヒノヤコマが飛び出す。
リオルは拳に念力を纏わせて、ヒノヤコマは全身を炎で包んで突撃し、ヤブクロンを殴り飛ばし、キノココを突き飛ばした。
予想外に耐久力が低く、ヤブクロンとキノココはその一撃だけで倒されてしまった。
「っ……嘘だろ!」
「私のポケモンが一瞬で……!」
焦る下っ端たち。下っ端から注意を逸らさず、ハルは木の実を取り出す。
「イーブイ、とりあえずこれをあげるから、もうちょっと頑張って……!」
体力回復効果のあるオレンの実を食べさせ、最低限の体力は回復させる。
だが、その時。

「お待ちなさい」

道を外れた獣道の奥から、別の人物が姿を現した。
「……ダン様!」
慌てて下っ端二人が背筋を伸ばして敬礼した。ハルもつられてそちらに目を向ける。
自然に果てしなく溶け込んでいない男だった。奇術師のような真っ白な帽子と真っ白な燕尾服に身を包み、顔には真っ白なメイクにいくつものトランプの模様のスタンプを押し、黒い杖を持っている青年だ。
「邪魔です。お主らは用済みだからもう帰れ」
ダンと呼ばれたその——声を聞く限り——男は、わざわざ敬礼した下っ端を突き飛ばし、ハルの目の前に立つ。
「リオルを連れた少年……なるほどなるほど。パイモンの言っていた人間ですな」
その男は、色々な人間の話し方が混ざったような奇妙な口調で話す。
「俺の名はダンタリオン。パイモンは知っているな? あれと同じ、ゴエティアの魔神卿の一人です。名前が長いので、組織の人間からは『ダン』と呼ばれております」
そう名乗り、ダンタリオンは不敵な笑みを見せた。
「私は変装が得意でしてな、昨日からカザハナシティに忍び込んでずっとお前をつけてたのさ。シュンインシティでは俺たちの邪魔をしたそうだが、その真意が知りたかったので。お友達を助けたかったのか? それとも、我々ゴエティアに敵意を持っているのか?」
目まぐるしく口調が変化し、聞いているとこんがらがってくる。
「そこで今回、あの者たち二人を向かわせてお前の真意を探った。その結果確信したぞ、お主は明確に我らゴエティアに敵意を持つ人間じゃとな。さらに」
ダンタリオンの口元が釣り上がり、明確な邪気を含んだ笑みを浮かべる。
「パイモンのお気に入りとなれば、間違いなく危険な存在。あれは所詮我儘なクソガキだが人を見る目だけは一流だからな、危険な芽は早めに摘み取るに限ります。よって、この俺様がここで直々に貴様を始末する」
そう言って、ダンタリオンはボールからポケモンを繰り出す。
「奈落に落とせ、ゴースト!」
ダンタリオンが繰り出したのは、胴体と手が独立した文字どおり幽霊のようなポケモンだ。

『information
 ゴースト ガス状ポケモン
 あらゆるものをすり抜けて移動し
 暗闇に隠れて獲物を狙う。しかし
 気配までも完全に消すことはできない。』

「名前通りゴーストタイプのポケモン……なら頼んだよ、ヒノヤコマ!」
ゴーストに対して、ハルはヒノヤコマを繰り出す。
イーブイの容態も心配だが、ダンタリオンを退けなければ進むことも引き返すこともできない。
「では行きますぞ。ゴースト、シャドーボール!」
ゴーストが両手を構えて黒い影を固めた漆黒の弾を発射する。
「ヒノヤコマ、躱して疾風突き!」
ヒノヤコマは素早く影の弾を躱すと、嘴を突き出して目にも留まらぬスピードで突撃する。
シャドーボールは後方まで飛んでいき地面にぶつかる。決して弱くはない一撃だがパイモンのスピアーと比べれば威力はよっぽど控えめだ。
「ゴースト、躱せ!」
だが思ったよりも身軽にゴーストはヒノヤコマの突撃を躱すと、
「気合玉!」
体の奥から闘気を生み出し、それをエネルギー弾として放出する。
ヒノヤコマに直撃、効果今一つの割になかなかダメージは大きい。
「っ、ヒノヤコマ、ニトロチャージ!」
力強く鳴いて全身に炎を纏い、ヒノヤコマは再び突っ込んでいく。
「ゴースト、シャドーボールです」
対して再びゴーストは漆黒の影の弾を放つ。
突っ込んでくるヒノヤコマに正面からぶつけてその勢いを止め、
「もう一度シャドーボールだ!」
もう一発、影の弾を放出する。
「ヒノヤコマ、こっちももう一度ニトロチャージ!」
だがヒノヤコマは影の弾を躱し、すぐさま炎で体を覆い、高速で突っ込んでいく。
炎の突撃がゴーストに直撃した。
その瞬間。

「ナイトバースト」

ゴーストを中心としてその周囲へドーム状に漆黒の衝撃波が放たれ、ヒノヤコマを吹き飛ばした。
「……!? ヒノヤコマ!」
なす術もなく吹き飛ばされてヒノヤコマは地面を転がる。
衝撃波と煙が晴れた時、そこにいたのはゴーストとは似ても似つかぬ、全く別のポケモンだった。