二次創作小説(映像)※倉庫ログ

第17話 横槍 ( No.56 )
日時: 2016/11/06 16:48
名前: パーセンター ◆AeB9sjffNs (ID: VYLquixn)
参照: 新たる魔神卿ダンタリオンの奇術が、ハルに襲い掛かる!

『information
 ゾロアーク 化け狐ポケモン
 幻影を自由自在に操り外敵を化かす。
 熟練したゾロアークが見せる幻影は
 最先端の科学技術をも騙すほど精巧。』

赤黒い鬣に真っ黒な体の、二足歩行の狐のようなポケモン。
「ゾロアーク……?人を、化かす……」
図鑑説明を見る限り、ボールから出てきた時点で既にゴーストに化けていたのだろう。
「火炎放射!」
さらにゾロアークは灼熱の業火を吹き出す。
「っ、ヒノヤコマ!」
地面に倒れるヒノヤコマに炎を浴びせて残りの体力を削り取り、戦闘不能にしてしまう。
「フフフ、呆気ねえ呆気ねえ。それでは、これで終わりにしましょうか」
闇の力を溜め込んだゾロアークが、ハルとの距離を詰めてくる。
「ゾロアーク、ナイト——」
ゾロアークが漆黒の衝撃波を放つ、その直前だった。

「ハッサム、アイアンヘッド!」

どこからか女性の声が響き、さらに真紅の弾丸がゾロアークに直撃し、吹き飛ばした。
正確には、真っ赤なポケモンが猛スピードでゾロアークに激突した。

『information
 ハッサム 鋏ポケモン
 虫の頑丈さと鋼の硬さを併せ持つ
 鉄壁の体。鋼鉄の鋏で捕らえたものは
 どんなに硬くても粉々にしてしまう。』

流線型の体つきをした真紅のボディを持つ虫ポケモンだ。
そして、そのハッサムの持ち主と思われるトレーナーの少女。
身長がとても高くスタイルも良い。赤と黒が主体のフレアスカートを着ている。
「……何者です」
「あなたは……?」
ダンタリオンは忌々しそうに、ハルは呆然とその少女の顔を見る。
「私の名はエストレ、たまたま通りかかったトレーナー。エストレさんとお呼びなさい。それより」
ハルの顔を見てそう告げた後、即座にエストレはダンタリオンの方に向き直る。
「生身の人間に対して直接攻撃を仕掛けるなんて、どういう了見なのかしら」
「……ククク」
苛立ちを募らせていたはずのダンタリオンだが、突然笑い出す。
「貴女も私の邪魔をするのですね。よろしい、だったら先にお前から始末する! ゾロアーク、火炎放射!」
立ち上がったゾロアークが再び灼熱の業火を吹き出す。
「ハッサム、躱して剣の舞!」
致命傷となる炎技だが、それを躱してハッサムは激しい戦いの舞を舞う。
「ハッサム、アイアンヘッド!」
「ゾロアーク、ナイトバースト!」
ハッサムが真紅の弾丸の如く突撃し、ゾロアークは両腕を地面に叩きつけて漆黒の衝撃波を巻き起こす。
威力は互角。魔神卿のポケモンであるゾロアークと互角に競り合えるハッサムが凄いのか、剣の舞を使ったハッサムと互角に渡り合えるゾロアークが凄いのか。
最後にはお互いに一旦離れ、再度攻撃を仕掛けようとする二者。
しかし、

「必殺針!」

ここにいる誰のものでもない声が響くと同時、上空から黄色い弾丸が飛来し、ハッサムを突き飛ばす。
続いてゾロアークをも突き飛ばし、一撃でゾロアークを戦闘不能にした。
次は一体誰かとハルがそちらを見れば、つい最近見たポケモン、スピアーだ。そして、空からはメタングに乗ったパイモンが降りてくる。
「また会ったね、ハル君。そして失礼、お嬢さん。ぼくの名前はパイモン。今回は君たちに用はないから安心して。用があるのはこいつだから」
そう言って、パイモンはダンタリオンの方に向き直る。
「ダン、ぼく言ったよね。ハル君はぼくのお気に入りだから手を出すなってさ」
「ああ。言ってましたね」
何の気なしにダンタリオンがそう返すが、その瞬間、パイモンの顔が怒りに染まる。
「なんだお前その態度はさぁ! この子を手に掛けたら容赦はしないって、忘れたのかよぉ! あぁ!?」
「それが何か? 危険な芽は早めに摘んでおくに限るでしょうが! それとも何か? このまま危険因子を放置して組織の崩壊を招くつもりか!?」
「バカかよお前はさぁ! 百年間の屈辱を果たす王の目的すら忘れたのかお前は! そんなことも分かんねえんようなバカなんならぼくがお前を処刑すっぞ! 今、ここで! この子たちと違ってお前の代わりなんていくらでもいるんだからさぁ!」
「ぐっ……だったら、この場はお任せしますよ。そこまで言うんなら後処理はお前に頼んだ、じゃあな」
そう吐き捨ててダンタリオンはゾロアークを戻すと本物のゴーストを繰り出し、ゴーストの能力でその場から消えてしまった。
「チッ……あー、イライラすんなぁ。同じ七魔卿のクセに何であんなにバカなんだ? まともに話が通じるのはアスたんくらいだよ……いっそ頭のいい忠実な部下でも雇った方が早いんじゃないかなぁ……」
残ったパイモンはぶつぶつと独り言を呟きながら、ハルとエストレの方を向く。
「いやぁ、ごめんねぇハル君。ダンの野郎はやたらと突っ掛かってくるバカだから扱いに困るんだよね。ちゃんとぼくが釘を刺しておくから、以後は安心してね」
だけど、とパイモンは続け、
「今回はダンの独断行動だけど、あんまりぼくたちの邪魔をし過ぎないほうがいいよ。ただ戦うだけならともかく、ぼくたちの計画の邪魔をされるのはごめんだ。ぼくは確かにハル君、君に期待してはいるけど、逆に言えばそれだけ。君のお友達にはなんの興味もないんだからね? そこのお嬢さん、君もだよ?」
じゃあね、とパイモンはスピアーを戻し、メタングの上に座ったまま飛び去っていった。
「エストレさん……助けていただいてありがとうございました」
「私は人として当然のことをしたまでよ。それより、そのイーブイを早くポケモンセンターに連れて行ってあげなさい」
「あ……そうだった! とにかく、ありがとうございました!」
命の危機に瀕しかけたので忘れそうになったが、腕に抱えたイーブイが重傷なのを思い出し、ハルは急いでカザハナシティへと戻る。



ポケモンセンターに駆け込み、ハルはイーブイを預ける。
ジョーイさん曰く、もう少し遅かったら危ないところだったらしい。
ロビーでしばらく待っていると、
「お待たせしました。まだ傷跡は完全には消えていませんけど、ここまで回復すれば普通に生活を送れますよ」
イーブイを抱え、センターの奥からジョーイさんが出てきた。
「よかった……今度からは、悪い人に会わないように気をつけるんだぞ」
ハルはイーブイの頭を撫で、外に帰そうとしたが、
「……?」
肝心のイーブイがハルの元を離れない。
「あら? そのイーブイ、君のポケモンじゃないの?」
「え? あ、はい。道中で怪我をしていたのを見つけたので、ここまで連れてきたんです」
ハルがそう返すと、ジョーイさんは、まあ、と驚いたような表情を浮かべる。
「すっかり君に懐いているようだったから、てっきり君のポケモンなのかと思ったわ」
「……はい? 懐いてる? このイーブイが、僕に?」
「そうよ。折角だから、君のポケモンにしてあげたら? そのイーブイもきっと喜ぶと思うわよ」
ハルがイーブイの方に向き直ると、イーブイもハルの顔を見上げて悪戯っぽい笑みを浮かべる。
「僕はそれで構わないけど……イーブイ、僕と一緒に来る?」
座り込み、イーブイと目線を合わせて尋ねる。
ハルの言葉に、イーブイは笑顔で頷いた。
「……分かった。それじゃ、今日から君は僕の仲間だ」
そう言って微笑み、ハルは空のモンスターボールを取り出す。
イーブイの前に差し出すと、イーブイは自分からボールに触れ、ボールの中に入った。ボタンの点滅は、すぐに止まった。
「……よし。それじゃイーブイ、これからよろしくね」
その後、ジョーイさんに礼を言い、ハルは改めてヒザカリタウンを目指す。