二次創作小説(映像)※倉庫ログ
- 第18話 山道 ( No.57 )
- 日時: 2016/11/06 19:29
- 名前: パーセンター ◆AeB9sjffNs (ID: VYLquixn)
- 参照: 次の街を目指し、ハルは山道を進む。
「ふー、やっとここまで来たよ……」
カザカリ山道を進み、中腹まで辿り着いたハルは、迷わず休憩所へ足を踏み入れる。
そこまで体力に自信はないので、ハルにとって山道はなかなかつらい。
休憩所に入り、ハルが常設されている椅子に腰掛け、少し休んでいると。
「失礼しまぁす」
人が休憩所にやってきた。ハルと同じ、旅のトレーナーだろうか。
「あら、先客がいるみたいね。君も旅するトレーナー?」
女性だ。鮮やかな金髪のセミロングで、毛先は水色。大きな荷物を背負い、青白いグラデーションのかかった服に作業着のようなズボンを履いている。正直、あまり上下の服の組み合わせがあっていないように見える。
「ええ。ハルといいます」
「ハル君、いい名前ね。私はアリス。君と同じ、しがない旅のトレーナーよ」
アリスと名乗ったその女性はドスンと荷物を床に降ろし、ハルの横に座る。
「この山道、大変だよねー。ヒザカリタウンを抜けてサオヒメシティまで行きたいんだけど、荷物も重いし辛くて辛くて。私は空を飛べるポケモンも力持ちなポケモンも持ってないから、大変よ」
「そ、そうなんですか」
はー、と息を吐き、アリスは無造作に足を組んで手で顔を仰ぐ。気さくだが割と大雑把な人物だ。
「……ねえハル君、まだ体力残ってる?」
突然、そんなことを聞かれた。
「え? ま、まあ……最低限は残ってますけど」
次に何を言われるかをだいたい予測し、ハルはそう返す。
ポケモントレーナーなら、おそらくこう言ってくるだろう。
「じゃあさ、私とポケモンバトルしない?」
……やっぱり。
そんなこんなで、ハルとアリスのカザカリ山道でのバトルが始まった。使用ポケモンは一体ずつ。
「それじゃ行くよ、ライボルト!」
アリスのポケモンは、黄色い鬣を持つオオカミのようなポケモン。
『information
ライボルト 放電ポケモン
電気を周囲に呼び寄せる力を持ち
自身に雷を落としてエネルギーを蓄える。
鬣から放電したり雷雲を作ったりできる。』
「電気タイプのポケモン……なら、初陣だよ、イーブイ!」
対するハルのポケモンは、新顔のイーブイ。今日が初陣となる。
「早速始めるよ! ライボルト、放電!」
ライボルトが吼え、鬣から周囲へと放電し、電撃を撒き散らす。
「イーブイ、潜る!」
イーブイは素早く地面へと潜り、ライボルトの電撃を躱すと、すぐさまライボルトの足元から飛び出す。
潜るは地面タイプの技。電気タイプのライボルトには効果抜群だ。
「いいぞイーブイ! 続けてスピードスター!」
さらにイーブイは無数の星形弾を放ち、ライボルトへと追撃を掛ける。
「やるじゃん! ライボルト、負けてられないよ! 目覚めるパワー!」
ライボルトは素早く起き上がると、周囲に薄い水色のエネルギーの球体を放ち、星形弾を相殺する。
「イーブイ、噛み付く!」
イーブイは素早くライボルトとの距離を詰め、ライボルトの鬣に噛み付く。
「っ! ライボルト、振り払って!」
ライボルトはしつこく首を振ってイーブイを引き剥がそうとするが、イーブイはなかなか離れない。
「だったら放電よ!」
振り払うのを諦め、ライボルトは鬣から電気を発し、周囲に放電する。
口を離して躱そうとしたイーブイだが、避けきれずに電撃を浴びてしまう。
「さあ今度はこっちの番! ライボルト、シグナルビーム!」
ようやくイーブイを引き剥がしたライボルトが、激しい光を放つ光線を発射する。
電撃を浴びて動けないイーブイに光線が直撃し、吹き飛ばす。
「イーブイ! 大丈夫!?」
吹き飛ばされて地面に落ちたイーブイだが、起き上がってハルの言葉に応える。
「さあ、まだまだ行くよ! ライボルト、目覚めるパワー!」
「イーブイ、潜るで躱して!」
ライボルトが薄い水色の無数のエネルギーの球体を放ち、それに対してイーブイは再び地面に潜り、隠れてしまう。
「同じ手は通じないわ! ライボルト、放電!」
ライボルトが鬣から電撃を生み出す。
放つ電撃を足元へ集中させ、地面を叩き割ってイーブイを地上へ引きずり出した。
「え……!?」
「今よ! ライボルト、シグナルビーム!」
強引に宙に打ち上げられたイーブイに対し、ライボルトが激しく光を放つ光線を発射する。
空中で身動きできず、イーブイは光線の直撃を受けてしまう。
「放電!」
その隙を逃さず、ライボルトは咆哮とともに鬣から電撃を放出、イーブイを巻き込んで周囲へと放電した。
「イーブイ!」
放電に巻き込まれたイーブイが力なく地面に倒れる。
イーブイは戦闘不能、よってこの勝負は、アリスの勝利だ。
「アリスさん、強いですね……」
バトルが終わった後、二人は休憩所に戻って話し込んでいた。
自分から申し込んだバトルだからと、アリスは持っていた薬でイーブイを回復させてくれた。
「そりゃ、ライボルトは私のエースポケモンだもの。このイーブイ、まだ仲間にして間もないでしょう? 私、そういうの分かるんだよね」
「ええ、その通りです。確かに、昨日捕まえたばかりです」
ちなみにそのイーブイは今アリスの膝の上でブラッシングされている。
「やっぱり? 戦っててそんな感じがしたわ。強いとか弱いとかじゃなくて、まだ君の戦い方っていうのかな、そういうのをよく分かってないような気がしたの」
だけど、とアリスは続け、
「その割には、何だかとっても君に懐いているみたいよ? まだ分からない中で、一生懸命ハル君のために頑張ろうとしていたように私には見えたわ」
「……そうなの、イーブイ?」
イーブイの顔を見て尋ねると、笑顔と威勢のいい返事が返ってきた。
「さて、と……よいしょっ」
イーブイをハルの元に返し、重そうな荷物を担いで、アリスは立ち上がる。
「この後はヒザカリタウンに行くんでしょ? 確かヒザカリでは近いうちにバトル大会が開かれる予定だったはずよ。ハル君も出てみたらどうかしら? 私はなるべく早くサオヒメに行かないといけないから出場できないけどね」
確かヒザカリタウンにはジムリーダーもいたはずだ。しばらくはヒザカリタウンに留まることになるだろう。
「それと」
休憩所を出ようとしたところで、アリスは振り向く。
「今日は一対一のバトルだったけど、次に会う時にはもっと沢山の君のポケモンを見たいわね。きっと、そのイーブイみたいに君と仲がいいんだと思うわ」
「……はい。次に会うときがあれば、またバトルしましょう。今度は、僕が勝ちます!」
「その言葉、忘れないわよ? じゃあね」
笑顔で手を振り、アリスは休憩所を去っていった。
「……よし。僕もそろそろ行くか」
イーブイをボールに戻し、ハルも立ち上がる。
次の目的地、ヒザカリタウンは、山道を下ってすぐそこだ。