二次創作小説(映像)※倉庫ログ
- 第22話 ヒザカリ大会 ( No.61 )
- 日時: 2016/11/10 17:23
- 名前: パーセンター ◆AeB9sjffNs (ID: F8Gg2X0Y)
ジム戦の翌日、ハルは大会が行われるスタジアムの前までやって来ていた。
ターミナルに送られてきた情報によれば、ヒザカリタウンで行われる大会は、ジムバッジの所有数が四個以下のトレーナーが出場できる大会のようだ。
ハルのバッジは現在三個。つまり、カザハナシティでの大会と違って、ハルよりも格上のトレーナーも多いということ。
「……だけど逆に考えれば、ここでいい成績を残せば自信にも繋がる。僕だってバッジを三つ持ってるんだ、やってやるぞ」
ジム戦後に参加登録は済ませておいた。自身を鼓舞し、ハルはそのまま会場内へ足を踏み入れる。
『さあ、いよいよヒザカリタウンバトル大会が開幕いたします! 今大会の出場選手はバッジを四個まで集めたトレーナーたち。果たしてどんなバトルを見せてくれるのでしょうか!』
スタジアム内の放送席では、二人の男女が一つのモニターに向かっていた。
やたらとテンションの高い実況の男性が、マイクを持って叫ぶ。今大会のために派遣されたアナウンサーだろう。
しかし。
『なお、今大会は、解説としてヒザカリタウンのジムリーダー、ポプラさんに来ていただきました! 皆さん、盛大な拍手を!』
女性の方は、もっとテンションが高かった。
『皆さぁぁぁん! こんにちはぁぁぁぁ! ジムリーダーのポプラです! 今日はよろしくねえぇぇぇぇ!』
湧き上がる歓声など一瞬で掻き消すかのように、ポプラの元気一杯の大声がマイク越しに響き渡る。
当然、マイクに向かってそんな大声を出せば、直後に来るのは耳をつんざくノイズ。
キィィィィィン! と嫌な音が会場に響き、皆が耳を覆った。
が、当のポプラは自分の声が観客の鼓膜を破壊しそうになったことに気づいていないらしく、
『あれぇ? 皆さっきまでの歓声はどうしたの? 今日は折角の大会なんだから、皆盛り上がっていくぜ!』
慌ててアナウンサーがポプラのマイクの音量を下げたため、今度は爆音が響かずにすんだ。
(ポプラさん、マイクいらないんじゃないかなぁ……)
ゆっくりと耳から手を離しながら、ハルは放送席を見上げる。おそらく、ハルだけでなく会場の誰もがそう思っているだろう。
『……それでは、気を取り直して! ヒザカリ大会の一回戦、第一試合を行います!』
すっかり静まり返っていた会場だが、アナウンサーの声によって再び会場は湧き上がり、いよいよ、大会が始まる。
『さあ、それでは続いての試合に参りましょう! 一回戦の第三試合、対戦するのは、現在バッジ三つ。昨日解説のポプラさんに勝利したばかりの、ハル選手!』
『おお、ハル君か! 昨日ジムでやったけど、強かったぜあの子!』
『そんなハル選手の相手は、同じくバッジ三つ、ダリ選手! 最近手に入れたのは、サオヒメシティのジムバッジのようです!』
『サオヒメのジムリーダーに勝ってるんだ! あそこの人は二重三重に戦術を組み合わせて戦ってくるから、そう簡単には勝てないはずだよ。私よりもずっとバトルが上手い人だし。だけどハル君もとっても強かったから、個人的には一回戦から注目の対戦カードって感じだねぇ!』
(そういえば、この間会ったアリスさん、サオヒメに向かうって言ってたな)
ハルはふと山道で戦った女性、アリスのことを思い出す。
『両者注目の名勝負の予感! それでは、両選手入場です!』
入場の合図を受けて、ハルは控え室からゆっくりと歩き出し、バトルフィールドに立つ。
対戦相手はハルよりも大柄で、筋肉質の少年だ。
「俺の一回戦の相手はお前か。ガキみてえだが、俺を楽しませる試合をしてくれよ」
「あ、えっと、はい……」
対戦相手のダリが自分よりもはるかにガタイが良く、目つきも悪いので、思わず後ずさりしそうになるハル。
しかしこれは公式のポケモンバトル。怯えることはない。すぐに威勢を取り戻す。
『それでは、ヒザカリ大会一回戦、第三試合、スタートです!』
アナウンサーの声と共に、両者は同時にポケモンを繰り出す。
「出てきて、ヒノヤコマ!」
「行きな、ヤミカラス!」
ハルのポケモンはヒノヤコマ。対して、ダリのポケモンは黒い帽子を被ったカラスのようなポケモン。
『information
ヤミカラス 暗闇ポケモン
森に生息するが食料を求めて街中に
姿を現わすこともある。夜にその姿を
見ると不幸になるという逸話がある。』
悪と飛行タイプのヤミカラスが相手。空を飛ぶポケモン同士の対戦となった。
「行くよ! ヒノヤコマ、疾風突き!」
先に動き出したのはヒノヤコマ。嘴を突き出し、目にも留まらぬスピードで突撃を仕掛ける。
ヤミカラスが反応するよりも早く、嘴でヤミカラスを突き飛ばした。
「続けてニトロチャージだ!」
ヒノヤコマが力強く鳴き、その体が炎に包まれる。
吹き飛ぶヤミカラスへ、さらに追撃を仕掛ける。
「ヤミカラス、守る!」
だがヤミカラスの周囲に、守りの結界が張られる。
ヒノヤコマが突撃するが、結界を前にして逆に弾き飛ばされてしまった。
「悪の波動!」
その隙を狙って、ヤミカラスは悪意に満ちた波動を放つ。
『おおっと! ダリ選手のヤミカラス、ヒノヤコマを弾き返しました!』
『防御の常套手段だねえ! 上手く使えば一気に流れを引き寄せられる技。ダリ君から見ればチャンスの場面だね!』
悪の波動の直撃を受け、ヒノヤコマが吹き飛ばされる。
「ヤミカラス、ドリル嘴!」
嘴を伸ばし、ヤミカラスはドリルのように高速回転しながら突撃を仕掛けていく。
「ヒノヤコマ、来るよ! 上昇して回避!」
体勢を崩されながら、ヒノヤコマは咄嗟に翼を羽ばたかせて急上昇。すんでのところでヤミカラスの嘴の攻撃を回避した。
「よし、エアカッターだ!」
回転を解いたヤミカラスに、ヒノヤコマが上空から翼を羽ばたかせ、風の刃を落とす。
ヤミカラスは風の刃を躱しきれずに、その身を切り裂かれる。
「ヒノヤコマ、アクロバット!」
「ヤミカラス、立て直せ! 悪の波動!」
ヒノヤコマが素早くヤミカラスへと近づいていく。
対して、空中で体勢を整えたヤミカラスが周囲へと悪意に満ちた衝撃波を放つ。
ヒノヤコマの攻撃は衝撃波に阻まれ、ヤミカラスには届かない。
「ヤミカラス、ドリル嘴!」
「ヒノヤコマ、ニトロチャージ!」
両者共に一旦距離を取り、ヤミカラスは嘴を伸ばして高速回転し、ヒノヤコマは全身に炎を纏い、一直線に突っ込んでいく。
お互いが正面から激突、威力は互角だが、この激突はヒノヤコマにとって互角では終わらない。
「ヒノヤコマ、アクロバット!」
両者がぶつかり合いの末に一旦離れた次の瞬間、ヒノヤコマは素早くヤミカラスの背後に回り込む。
『ヒノヤコマのスピードが上がっています! これは!?』
『ニトロチャージの追加効果だね! 炎の力で自らを加速させる! 炎タイプの攻めの常套手段! これはちょっとずつハル君に流れが向いてるかな!』
翼をヒノヤコマに叩きつけられ、ヤミカラスが突き飛ばされる。
「ぐっ、ヤミカラス、悪の波動!」
体勢を崩され、ヤミカラスは周囲へと悪意に満ちた闇の波動を放つ。
だがスピードの上がったヒノヤコマは悪の波動を素早く躱し、
「ニトロチャージ!」
力強く鳴いてその身を炎に纏い、ヤミカラスへと突撃を仕掛ける。